2021年2月5日金曜日

教育回診 〜新型コロナウイルス感染症の蘇生・重症管理について〜

 COVID患者さんの蘇生・ICU管理


新型コロナウイルス感染症をみるためには、病院を超えた連携が必要であり、

チームを組んでの総力戦です

チームになるためには、役割分担が必要です


ただ、役割分担をするとCOVIDの患者さんの全体像を把握することは難しくなります

軽症者ばかりをみている病院と、重症者ばかりをみている病院では、

COVIDの全体像が見えないのではないかと危惧しています


そこで今回は重症COVIDをみている先生方と質疑応答という形で、勉強会を行いました




















































本日の学びやメモ


挿管患者さんの腹臥位療法について

・コンプライアンスが悪く、ガチガチに硬いH型の場合は予後が厳しい(助かるかは半々くらいのイメージ)

・腹臥位療法をすることで、P/Fが改善するが、元に戻すとP/Fが悪化してくる人が多い

・いつまで続けるかは難しいが、しばらくして改善してくる人もいる

・血行動態が悪いとひっくり返せないので、ECMOになることがある

・腹臥位療法は16時間がスタンダードだが、できるだけでもOK

・挿管してから48時間は腹臥位療法+肺保護換気がセット

・腹臥位療法をしてから4時間後に効果判定(P/F)

・腹臥位療法してP/Fが200以上保てる人はweaning進めていく

そういう人は3-4日で抜管できることが多い

・PEEPはなるべく10くらいに持っていきたい、結果としてPEEPを下げられる症例は早めに抜管できる

・腹臥位療法後、またP/Fが150くらいに戻る症例はすぐには抜管できず、肺保護換気を1週間くらい続けて抜管できることもある

・肺保護換気と腹臥位療法で改善する人がおり、以前に比べてECMOの使用が免れている

・腹臥位療法がこの疾患に特異的な治療なのかは不明


awake proningについて

・ネーザルハイフローと腹臥位療法でかなりの人が挿管を免れて改善している

・第一波の時には挿管していた人が、ネーザルハイフローと腹臥位療法で挿管しなくて済んでいる

・awake proningが次のスタンダードの治療になりうる可能性がある

・awake proningの際はAラインは入れず、モニターは軽くして過ごしてもらう

・腹臥位療法によって努力呼吸が減る、VQミスマッチ改善、胸郭コンプライアンスが減る、不均一さが改善するなど、色々メリットがある

・腹臥位療法で改善しているのは、自発呼吸誘発性肺障害が減っている可能性がある

・silent hypoxieaのためか腹臥位療法で息苦しくなる人はあまりいないので、協力的なことが多い

・重傷者が転院搬送になるときは、腹臥位療法で救急車で運んでもらう

そうすると、酸素がリザーバーだったのが、搬送時には2Lくらいになっていることもある

・awake proningの進行形のRCTは2つあり

・awake proningの問題点は、awake proningで挿管すべきタイミングを逸してしまっていないかを検討しなければならない

・挿管の検討基準は、awake proningにて頻呼吸や努力呼吸が改善しない場合、もしくはFiO2 0.7超えれば挿管を検討


他の質問

・搬送のタイミングは酸素5Lを超えて頻呼吸・呼吸苦あれば、転院のタイミング

・造影CTはCOVIDの経過に沿わない状態変化や循環動態の崩れがあった時に検討

・ヘパリン使用していても、小さな肺塞栓が見つかることはあるが、頻度は少ない

・挿管はRSIが良いとは言われるものの、高度肥満症例では換気困難になる可能性もあり、控えたり、DSIになることも実際はある

・挿管困難に備えて声門上デバイスを用意しておく

・身体所見の中では、呼吸様式や呼吸数に以前よりもかなり注目するようになった

・急変の際は、igel®︎は実際に気道確保で用いられていないことが多い

両手法でしっかり圧迫することが大事

・デカドロンを使っていて悪化する人に次に何を使うべきかは、議論があるところ

人によっては、パルス、アクテムラなど

・アクテムラを使用しても大きな害はなさそう

・デカドロンを使用した後の治療は漸減中止も試されたりしている

・ICUに入るような重症例では、ヘパリンの持続点滴が行われる

それでも脳梗塞を発症してしまう症例は少ないながら確かに存在する

・アスペルギルスの報告歴が増えてきたが、実際はほとんどみない

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感想

エビデンスがない中でも、病態生理を考えることで、治療法を確立していく姿勢に感銘を受けました。生理学の勉強をしなおしたいと思いました。


最後に「総合診療医はこういう得体の知れない問題が出てきた時に強いよね」と言っていただきました。逃げないで、立ち向かう。これが一番大事な事なのだと改めて思いました。

ありがとうございました。


2021年2月1日月曜日

MRS:meningitis-retention syndromeについて

変な尿閉をみたら


尿閉は泌尿器科的緊急事態ですが、急性の尿閉 が、

子供や若い成人、女性に起こることはめったにありません


そのような場合には、神経学的な病因を考慮したほうがよいです

感染症で尿閉が起こる2つの神経学的な原因として、

末梢神経障害(仙骨領域の単純ヘルペスや帯状疱疹)と中枢神経障害(meningitis- retention syndrome、ADEM、脊髄炎)があります


尿閉の患者さんを見たら、

まずは物理的な閉塞や薬剤の副作用で尿閉が起こっていないかを確認し、

陰部や会陰部に皮疹がないかをチェックしましょう



 無菌性髄膜炎はよくある神経疾患ですが、尿閉を合併することが稀にあります

頭痛や項部硬直がある場合、MRSが原因かもしれません



 MRS:meningitis-retention syndromeについて 

2005年にsakakibaraらが尿閉を合併した無菌性髄膜炎の3例の症例を報告して以来、

meningitis-retention syndrome:MRSという用 語が使われるようになり、近年報告例が増加しています


MRSという名前ではありませんが、無菌性髄膜炎による尿閉の症例報告は以前よりあり、

発症年齢は1-63歳(平均33.1歳)と幅広く、性別は40:14と男性に多かったと報告されています

発症から尿閉の出現までの期間 は1-13日(平均3.5日)、尿閉の持続時間は3-159日 (平均14.8日)であり、排尿障害などの神経学的後遺症を残した報告例はなかったとされています


 原因として報告されているは、

大多数がウイルス (EBウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペ スウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス) ですが、

リステリアや髄膜炎菌が原因の症例報告もあります


 鑑別診断として、仙骨領域のヘルペス 、ギランバレー症候群、急性散在性脳脊髄炎(ADEM:acute disseminated encephalomyelitis)、脊髄炎、多発性硬化 症 、 視神経脊髄炎 ( NMO : Neuromyelitis Optica)、脳幹脳炎、くも膜下出血後の髄膜炎、他の尿閉を来すcommonな疾患(糖尿病性神経障害、腰部椎間板ヘルニア、尿路系の感染症、前立腺肥大 症、薬剤性)があげられます


自分の経験ではMRSだと思ったら、結果的にADEMや自己抗体関連脳炎だったという症例がありました


MRSは知っている人は一発診断できますが、あくまで症候群なので鑑別疾患は幅広いです

MRSと分かっても、そこから原因を突き止めていくことが大切です


この症例は、MRSだねとドヤ顔している場合ではありません

油断せずにいきましょう


MRSの症状

MRSは発熱や頭痛、項部硬直といった髄膜刺激徴候と尿閉を伴いますが、

意識障害や痙攣、失語、ミエロパチーを示唆する症状やレベルを形成する感覚障害はありません


ADEMの場合、脳炎症状や痙攣発作、脊髄炎症状がみられることが多いので、

その場合は積極的に頭部のMRIを撮りましょう

ADEMの場合、MRIで白質病変や脊髄の異常信号が見られることが多いです


MRSの予後

 MRSは予後良好で、自然軽快する報告が多いですが、

 原因微生物は多岐にわたり、個々の症例で治療薬を考えなければなりません


重要なのは、治療できる疾患を早期に治療開始することです

特にヘルペス感染が否定できない場合は、アシクロビルをエンピリカルに投与し、

PCR 陰性を確認し、中止を検討することが実臨床では多いと思います

免疫抑制療法(ステロイドパルス) は効果的であるという症例報告例もありますが、

エビデンスは乏しいです

 

初期治療としては、尿閉からの腎後性腎不全に進展させないために

膀胱カテーテルを留置しておくことが重要です

その後、泌尿器科と協力して、尿カテ抜去に向けてリハビリをおこないます


まとめ

・なぜこの人が尿閉?という違和感を感じたら、MRSかもしれないと考える

→無菌性髄膜炎の人に尿閉を合併する病態がある(MRS)


・MRSはあくまで症候群であり、診断名ではない

→原因微生物や病態が多彩であり、予後がいい病態から悪い病態まで幅広い鑑別疾患が残っている


・MRSはまずはHSVやVZVをしっかりカバーすることが重要

→ADEMでステロイドが必要な症例もあり、

 意識障害や痙攣発作が合併した場合は、積極的に画像評価を行う


参考文献:

  ( 1 ) : Elsberg CA:Experinences in spinal surgery.Observaytions upon 60 laminectomies for spinal disease.Surg Gynecol Obstet 16:117-135,1913

 (2)林 良一,大原慎司 : 感染症 Elsberg 症候 群.Annual Review 神経 1 : 126-132,2004. 

( 3 ) R. Sakakibara, et al.: “‘Meningitisretention syndrome’: a review, Neurourology and Urodynamics 32(1): 19–23, 2013. 

( 4 ) R. Sakakibara, et al., “Meningitis-retention syndrome: an unrecognized clinical condition,” Journal of Neurology, 252(12):1495–1499, 2005.

 (5):伊藤祐二郎,他:発熱と尿閉を主訴に受診した中 枢神経系炎症性疾患2例の治療経験.泌尿器科紀要 55(10): 655-659,2009 

( 6 ) : Fujita K, et al.:Urinary retention secondary to Listeria meningitis. Internal Medicine.;47(12):1129–1131. 2008 

( 7 ) : Kirkpatrick M,et al:Spinal cord dysfunction in  neonatal meningococcal meningitis. European Journal of Pediatrics.;153(5):367–368. 1994

誰も教えてくれなかったコミュニケーションの話

※症例は架空です 勉強会終了後、看護師さんよりフィードバック 毎日のデイリーカンファは素晴らしいけれど、 患者さんに今日、何が行われるかとか、 話し合った内容が伝えられないことがある 家族にはしっかり面談をして、何が行われるか伝えていることが多いが、 患者さんが置いてきぼりになっ...

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