臨床のパールや自分なりの考えをノートにまとめました。自分のポケットの中だけでなく、皆様にもみていただき、ご意見ご感想を頂ければ嬉しいです。実臨床への適応は自己責任でお願いします。
2022年5月20日金曜日
腰痛のアプローチをup dateしよう
2022年5月15日日曜日
上手な脳の使い方 〜あなたが最高のパフォーマンスを発揮するために〜
本日の症例はOP(器質化肺炎)でPSL6mg内服中のADL フルな70歳女性でした
2日前前からの微熱を主訴に来院され、前日にコロナ検査陰性でしたが、
微熱が続くため来院されました
結果的には、OPの増悪として対応された一例でした
発熱外来の特殊性
この時代、何か症状があれば発熱外来(つまりPPE着用や電話問診)でみることになります
発熱外来では診療スタイルがだいぶ変わります
発熱外来を担当していない人のために「発熱外来の特殊性」を列挙してみます
・トリアージが非常に重要
・物理的にも精神的にもアクセスしにくい(バイタル取りに行くのも一手間かかる)
・他の緊急性が高い疾患が紛れていることがよくある
→SAH、尿路結石嵌頓による敗血症性ショック、PCP、大動脈解離など実際にありました
・電話越しに重症感を把握しないといけない
・顔が見えないので関係性を作りにくい
・だいぶ待たされている症例が多く、相手がイライラしている
・コロナじゃなければ、熱源は明日以降でもいいか・・・という邪まな考えが浮かびやすい
発熱外来では無意識に
頭の中のワーキングスペースの半分がコロナかどうか?で埋まっています
脳で考えられることにはキャパがあります
今まではコロナ以外のことに100%力を注げていました
つまり、純粋に熱源はどこか?という問題だけを考えることができました
今はコロナかどうかに50%の力を注いでいる状況です
コロナの重症化リスクはどうか?
コロナを疑うような曝露歴はあるか?
コロナを見逃した時のインパクトはどうか?
ワクチンはうったか?
などを考え、問診をとらなければなりません
脳のエネルギーとともに時間も費やすことになります
そのため、50%の力と時間で熱源を探すことになります
さらに感染対策や感染の不安、相手のイライラ、慣れない電話での問診によって診断力が落ちます
おそらく、普段の30%くらいの力で熱源を探している状況だと思っています
そんな状況ですので、当たり前ですが診断エラーが増えます
診断エラーを防ぐための第一歩は、
まずは発熱外来という診療スタイルは、危ないという認識が必要です
たまには、臨床以外のこともお話します
自分の脳をうまく使う方法、
自分の最高のパフォーマスで働く方法です
参考文献:最高の脳で働く方法 デイビッド・ロック
「自分は要領が悪い」
「患者さんが増えてくると、キャパオーバーになる」
「仕事が終わらない」
そういった会話は、夜の医局では日常茶飯事です
自分もそうでした
夜遅くまでカルテを書いている自分に、
よくわからない優越感や満足感に浸っていた気がします
ですが、できれば要領よく働きたいとずっと思っていました
今では自分なりに工夫して、
要領がわかってきましたので、働き方のヒントをお伝えします
「医師の仕事は考えることではありません。
judgment(決断)ですよ。」 矢野晴美 先生
自分が研修医の時に言われた言葉です
この言葉の通り、医師の仕事は判断や決断をすることです
そして、決断するということは非常に脳のエネルギーを使う作業です
前頭前皮質は周囲の世界と自分の意識の関わりを司る中心的な部分です
ここで意思決定と問題解決を行なっています
前頭前皮質では物事を深く考え、何かを判断や決断する時に使われます
ただし、無限に考えることはできません
脳にはキャパがあります
この本では舞台というメタファーで語られています
前頭前皮質を役者たちが芝居をする小劇場の舞台に見立てるとわかりやすいです
何か考えが生じた時には、頭の中(舞台)に役者が登場します
例えば、PHSの電話でもいいでしょう
電話に出て何かしらの問題を聞かなければなりません
そうなると、脳内(舞台)ではPHSにかかってきた問題(役者)にスポットライトが当たってしまいます
今まで書いていたカルテにはスポットライトが当たらなくなり、
手を止めなければなりません
舞台には他にもたくさんの役者(問題)がいます
・10分前にかかってきた薬変更の依頼
・5分前にかかってきた指示変更の依頼
・今書いていたカルテの内容
・10分後に患者さんとの面談の約束
そして舞台の広さには限りがあります
舞台にあげられる役者にも限りがあります
そのため、誰(どの問題)を舞台に挙げるか、
記憶に留めておくべきかを考えなければなりませんし、
舞台に上がったら、どの役者(問題)にスポットライトを当てるかを判断せねばなりません
スポットライトを当てるというのは、その問題を解決・判断するという作業です
全ての役者にスポットライトを当てることはできません
問題は一つずつしか解決できませんよね?
これが優先順位をつけるということです
実は脳の中で最も優先すべきは優先順位をつけるということなのです
そして優先順位をつけることこそが、最もエネルギーを使う作業なのです
なので、研修医のみなさんがまずやる作業は、
①今日一日の仕事を書き出す
②時系列に沿って並べる
③優先順位をつける
となります
そして、それを紙に書き出すという作業が重要です
頭の中に覚えておくだけでもエネルギーが必要になるからです
頭の外に書き留めておけば、脳のエネルギーを温存できます
脳が使えるエネルギーには限りがあります
街中で車を運転する時、急発進しては急ブレーキで止まるような
ガソリンの無駄使いをする運転は誰もしませんよね
全然、エコじゃないです
ですが、脳のエネルギーは知らない間にそのように使っています
脳のエネルギーを上手に使うためには、
・優れた意思決定を行う能力(診断やマネージメント)は節約すべき貴重なリソースであると考えましょう
無限に適切な判断ができるわけではありません
・エネルギーを消費する優先順位付けを最優先にします
自分の仕事の中で何を優先させるかを決めることが重要です
救急外来のリーダーになった時は自分は患者さんを直接みるのではなく、
救急外来をまわすことを最優先とします
・最も注意を必要とする場面では、エネルギーが残っている時間にしましょう
その時がわかっているのであれば、エネルギーを温存するか休んでおきましょう
・思考モード(エネルギー消費激しい)と作業モード(書類作業)の時間を分けましょう
・考えられる舞台は狭く、情報が多すぎると脳が処理できなくなります
教育者は注意しましょう
・舞台にあげやすい役者(目に入った仕事)ではなく、最も重要な役者を舞台にあげることを心がけましょう
・一つの意思決定・判断が終わらなければ、次の操作を開始できません
2つの意識的な知的作業を同時にすることはできません(二重課題干渉)
・マルチタスクは一番やってはいけません
認知能力は8歳児並に低下するといわれています
・脳に警戒をさせてはいけません(SNSの通知の常時オン状態)
複数の事柄に注意が分散することは、脳への負担が大きいのです
一方で何も考えずに物事を進めることができること「自動操縦モード」に入っている場合もあります
これは脳のエネルギーを使わず行えるルーティン動作です
前頭前皮質では主に意思決定や判断を行い、
ルーティン動作(反射や習慣といったりする)は大脳基底核で行われています
大脳基底核はパターンを旺盛に取り込み、ルーティン動作を3回繰り返すだけで、
長期増強プロセスが始まるといわれています
車の運転を考えるとわかりやすいのではないでしょうか
見知らぬ場所での運転は疲れますよね
それは前頭前皮質が働いているからです
一方、通い慣れた通勤の道の運転は疲れませんよね
それは大脳基底核が働いているからです
無意識に前頭前皮質から大脳基底核へのバトンタッチが行われます
そうなれば、注意を払うことなく、こなすことができるようになります
上級医が一度に多くのことをしているように見えるのは、
大脳基底核のルーティン動作をうまく使っているからです
救急外来はまさにです
救急外来で出会う主訴の多くは、すでに何度も経験しています
上級医の頭の中では、パターン認識されており、
何も考えずに反射的に動けるようにトレーニングされています
研修医のみなさんは、
まずはこの状態を目標にするのが良いのではないでしょうか
自分も2年目にたくさんの救急患者さんを見たときに、この状態になった気がします
勘違いしないで欲しいのは、これは悪い状況ではありません
何も考えずに診療しているわけではありません
むしろ逆です
もっと考えられるようになったのです
当たり前にやることにエネルギーは使わず、
さらに一歩先のことを考えるためには、必要な成長過程です
具体的に自分が実践している働き方
・今日行う仕事の流れを仕事行く前に確認
・病院に着いたら、朝一番に仕事の内容を時系列に沿って書き出す
・優先度が高い仕事をチェックする
・メールは見た瞬間に返す(2回開くのは時間の無駄)
・診察したらすぐにカルテを書く(その時間込みで回診する)
・頭を使わないでできる書類作業は、午前中にはしない(もったいない)
・本当に集中したい時は話しかけれない場所で行う(話しかけられると作業が中断して効率が悪い)
例えば、透析の血液データチェック、外来予習
・マルチタスクはせず、一つずつ終わらせる
・テンプレを有効利用する
主訴や処置ごとに作っておく
・家族との次回の面談日は、面談した時に決めておく
(また電話するのがもったいない)
・カルテの検索機能を上手に使う(カルテ種や検索ワードを駆使)
・明日の仕事を前日の寝る前に確認
いかがでしたでしょうか?
最初のうちは、働くことで無我夢中だと思います
いつの間にか時が過ぎて、疲れきった自分がいるのではないしょうか?
ですが脳の使い方を覚えると、
パフォーマンスはアップし、
皆さんの本領を発揮できます
意識すべきは、
脳のエネルギーを節約することです
仕事前に仕事の予習をして、
優先順位を決めて、
仕事中はマルチタスクをやめて、
覚えなくていいことは紙に書いて、
集中する時は集中します
決断や判断、優先順位を決めることに全精力を使えるようにします
どうしてかというと…
医師の仕事は決断することだからです
ACNES 〜診断してからが勝負〜
2022年5月13日金曜日
昨日元気で今日ショック、皮疹がなければ・・・②
症例サマリー
関節リウマチに対して、アクテムラ使用中のADLフルな70歳女性
前日まで元気であり、本日、ショックバイタルで集中治療が必要な状態
エントリー不明の菌血症がありそうで、感染性動脈炎を合併している
敗血症性ショックに準じて、輸液やNAで全身管理
ドレナージポイントがないため、エンピリックに抗生剤を投与している
そんな状況で・・・
細菌検査室「血培陽性の報告です。
〇〇さんの〇月×日の血液培養、2/2セットでGPC が陽性になりました。」
ということで、やはりGPCが検出されました
次に聞くことはなんでしょうか?
GPC が検出された場合、clusterかchainかどうかを聞きます
T「 clusterですか?chainですか?」
細「chainです」
Chainだった場合に次に聞くことは、溶血の有無です
T「溶血していますか?」
細「溶血しています」
ということで、GPC chainで溶血している細菌まで絞られました
となると、鑑別は
・侵襲性肺炎球菌感染症(脾機能不全者で特に)
・劇症型連鎖球菌感染症(GAS、GBS、GGSなどの全てのβ溶連菌)
上記のどちらかに絞られました
肺炎球菌ワクチンを接種ずみであること、脾臓は普通サイズであったことから、
劇症型連鎖球菌感染症を疑いました
となると、起因菌はGAS か non - GASです
近年、GGSが高齢者の菌血症の重要な病原菌である報告例が多数みられます
日本でもGGS菌血症はコモンな菌血症になりつつあります
そのため、GGSの菌血症に出会ったことがある医師は、
蜂窩織炎で血液培養とったら生えてくる菌
高齢者のfocus不明な発熱で生えてくる菌
抗生剤がなんでも効くので、治療がしやすい菌
というイメージがあるのではないでしょうか
しかし、時にGGSはGASと同じような振る舞いをすることがあります
今回の症例は結局、S.dysgalactiaeでした
治療は順調でICUも出ることができました
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連鎖球菌について
連鎖球菌は身近な菌でありながら、実は非常にわかりにくいです
その理由は
・分類がわかりにくい
・種類が多い
・名前がコロコロ変わる
・1つの菌が多くの病態や感染を起こす(その後の免疫病態も)
が挙げられます
細かい菌名は後で良いので、まずは大きな分類から頭に入れておきましょう
①溶血の有無
②Lancefield分類
この二つが重要です
検体採取から陽性までの時間 一般にこの時間が短いほど真の菌血症である可能性は高いBacT/Alert systemを用いた血液培養では肺炎球菌による重症感染症の多くは10~15時間で陽性になることが報告されている

JJAAM. 2011; 22: 330-6
2022年5月12日木曜日
昨日元気で今日ショック、皮疹がなければ・・・①
70歳 女性 主訴:意識消失
(※症例は加筆・修正を加えています)
Profile:RAでアクテムラ使用中、ADL フル
現病歴:来院当日の午前中まではいつも通り元気
午後から吐き気あり、悪寒戦慄あり、
その後、意識消失したため救急車で来院
既往:関節リウマチ、骨粗鬆症
内服:デノタス、プラリア、アクテムラ
生活:ADLフル、独居
予防接種:肺炎球菌ワクチン2回接種ずみ
バイタル BP 120/80. P 80,SPO2 95%,RR 20, T 36.8、意識 清明
身体所見は特記すべきものなし 皮疹みられず
血液検査 WBC 6000, Hb 12, Plt 28万, CRP 0, 肝胆道系酵素・腎機能 問題なし
尿検査 膿尿なし 細菌尿なし
単純CT 肺炎像なし、胆嚢壁肥厚なし、膵腫大なし、腹水なし、腸管壁肥厚なし
血液培養 採取
経過
悪寒戦慄や吐き気、意識消失で救急車で来院したが、
来院後は症状なく、バイタルも安定していたが、経過観察目的に入院となった
入院後、嘔吐や強い背部痛が出現
造影CT撮影されたが、大動脈解離や膵炎像はみられず
胸部〜腹部大動脈周囲に脂肪織濃度上昇あり
縦隔にも炎症所見あり
膵臓周囲に液体貯留あり
他に感染源となる部位はみられず
その後、ショックバイタルになり、乳酸上昇・乏尿あり
敗血症性ショックとして広域抗生剤開始
ICU入室しCVやAラインを留置
大量輸液とノルアドレナリン投与開始
心原性や閉塞性ショックはなし
皮疹みられず
背部痛や膵臓周囲の液体貯留あり、重症膵炎疑いで入院となった
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考察
来院当日の午前中まではいつも通りでしたが、
午後から夕方にかけてショックに至っています
膵炎疑いで入院となりましたが、膵臓腫大はみられず、
膵酵素の上昇もないため、膵炎ではないと考えられました
この急激な経過は感染症です
「昨日、元気で今日ショック。皮疹があれば儲けもの」
という青木先生のパールがありますが、まさにその経過です
この経過であれば、鑑別は逆に絞られます
・TSS/STSS
・髄膜炎菌感染症
・リケッチア感染症
・脾臓がない人の肺炎球菌/インフルエンザ桿菌/髄膜炎菌/Capnocytophaga感染症
・肝臓が悪い人のVibrio vulnificus/Aeromonas hydrophila
・黄色ブドウ球菌などによる急性感染性心内膜炎
今回は皮疹はありませんが、上記疾患も鑑別になります
何らかの感染症であることは間違いないため、型のごとく感染症の三角形に当てはめます
Enferm Infecc Microbiol Clin . 2007 Dec;25(10):612-8.
感染症で最も大事な治療は、ドレナージです
特にTSSやTSLSでは、非常に重要です
今回の症例は毒素病態(充血、皮疹、下痢)はありませんでしたが、
TSSやTSLSの除外はできない状況です
TSSやTSLSは「一匹でもいたらショックを離脱できない」と考えよ
と言われるような病態です
壊死性筋膜炎も同様の病態です
全身管理はもちろんですが、
同時並行でドレナージすべき部位があるかを一生懸命探す必要があります
今回の症例では造影CTまで施行しておりますが、どこにもありませんでした
そうなると全身管理と抗生剤しかありません
余力がない敗血症性ショックの状況ですので、エンピリックに治療を開始します
TSSやTSLSといった毒素病態を疑った場合は、
クリンダマイシンやIVIGも追加で投与されることがあります
今回の症例では明らかな毒素病態はなかったため、クリンダマイシンの追加は行いませんでした
そんなことを考えていたら、入院翌日の午前中には血液培養陽性の報告がありました
なんだと思いますか?
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