2022年5月20日金曜日

腰痛のアプローチをup dateしよう

國松先生も同じようなことを言っていましたが、
症候学は自分のセッティングにアレンジしないといけない
と思っています

自分なりに使えるように変えていく必要があります


多くの症候学のテキストのアプローチは、
誰かにとってはベストかもしれませんが、自分にとってはベストなものではありません


そんな鑑別考えないでしょ!?というものまで載っていたりします


症候学は自分が診ている患者さんの層にフィットしたものでなければなりません



症候学や診断学も進化しています


中でも「腰痛」はその最たるものではないでしょうか?


なぜなら、以前は原因不明の非特異的な腰痛と言われていたものは、
実は原因が判明することが多いと言われ出しているからです

                                                          PLoS One . 2016 Aug 22;11(8):e0160454.  



さらにすごいのは、原因によっては治療が可能になってきています

ハイドロリリースのおかげです

筋骨格系の痛み診療は、新時代がきています


ということで、自分なりに腰痛のアプローチをまとめてみました




ですが、これはあくまで自分用です

一人一人、使い勝手が良いアプローチは違うと思います


何度か試してみて、自分の置かれた状況に合わないと思えば、
自分なりにアレンジすることが重要です


皆様も自分なりのアプローチを確立していくことが、
症候学を学ぶ目標になるのではないか、と思います










 

2022年5月15日日曜日

上手な脳の使い方 〜あなたが最高のパフォーマンスを発揮するために〜

本日の症例はOP(器質化肺炎)でPSL6mg内服中のADL フルな70歳女性でした


2日前前からの微熱を主訴に来院され、前日にコロナ検査陰性でしたが、

微熱が続くため来院されました


結果的には、OPの増悪として対応された一例でした

 





発熱外来の特殊性


この時代、何か症状があれば発熱外来(つまりPPE着用や電話問診)でみることになります


発熱外来では診療スタイルがだいぶ変わります


発熱外来を担当していない人のために「発熱外来の特殊性」を列挙してみます


・トリアージが非常に重要


・物理的にも精神的にもアクセスしにくい(バイタル取りに行くのも一手間かかる)


・他の緊急性が高い疾患が紛れていることがよくある

→SAH、尿路結石嵌頓による敗血症性ショック、PCP、大動脈解離など実際にありました


・電話越しに重症感を把握しないといけない


・顔が見えないので関係性を作りにくい


・だいぶ待たされている症例が多く、相手がイライラしている


・コロナじゃなければ、熱源は明日以降でもいいか・・・という邪まな考えが浮かびやすい



発熱外来では無意識に

頭の中のワーキングスペースの半分がコロナかどうか?で埋まっています


脳で考えられることにはキャパがあります


今まではコロナ以外のことに100%力を注げていました


つまり、純粋に熱源はどこか?という問題だけを考えることができました



今はコロナかどうかに50%の力を注いでいる状況です


コロナの重症化リスクはどうか?

コロナを疑うような曝露歴はあるか?

コロナを見逃した時のインパクトはどうか?

ワクチンはうったか?


などを考え、問診をとらなければなりません

脳のエネルギーとともに時間も費やすことになります


そのため、50%の力と時間で熱源を探すことになります


さらに感染対策や感染の不安、相手のイライラ、慣れない電話での問診によって診断力が落ちます


おそらく、普段の30%くらいの力で熱源を探している状況だと思っています



そんな状況ですので、当たり前ですが診断エラーが増えます


診断エラーを防ぐための第一歩は、

まずは発熱外来という診療スタイルは、危ないという認識が必要です



たまには、臨床以外のこともお話します


自分の脳をうまく使う方法、

自分の最高のパフォーマスで働く方法です


参考文献:最高の脳で働く方法 デイビッド・ロック



「自分は要領が悪い」

「患者さんが増えてくると、キャパオーバーになる」

「仕事が終わらない」


そういった会話は、夜の医局では日常茶飯事です


自分もそうでした


夜遅くまでカルテを書いている自分に、

よくわからない優越感や満足感に浸っていた気がします



ですが、できれば要領よく働きたいとずっと思っていました


今では自分なりに工夫して、

要領がわかってきましたので、働き方のヒントをお伝えします


「医師の仕事は考えることではありません。 

 judgment(決断)ですよ。」 矢野晴美 先生



自分が研修医の時に言われた言葉です


この言葉の通り、医師の仕事は判断や決断をすることです



そして、決断するということは非常に脳のエネルギーを使う作業です



前頭前皮質は周囲の世界と自分の意識の関わりを司る中心的な部分です

ここで意思決定と問題解決を行なっています



前頭前皮質では物事を深く考え、何かを判断や決断する時に使われます


ただし、無限に考えることはできません


脳にはキャパがあります


この本では舞台というメタファーで語られています

前頭前皮質を役者たちが芝居をする小劇場の舞台に見立てるとわかりやすいです



何か考えが生じた時には、頭の中(舞台)に役者が登場します


例えば、PHSの電話でもいいでしょう

電話に出て何かしらの問題を聞かなければなりません


そうなると、脳内(舞台)ではPHSにかかってきた問題(役者)にスポットライトが当たってしまいます


今まで書いていたカルテにはスポットライトが当たらなくなり、

手を止めなければなりません


舞台には他にもたくさんの役者(問題)がいます

・10分前にかかってきた薬変更の依頼

・5分前にかかってきた指示変更の依頼

・今書いていたカルテの内容

・10分後に患者さんとの面談の約束



そして舞台の広さには限りがあります

舞台にあげられる役者にも限りがあります


そのため、誰(どの問題)を舞台に挙げるか、

記憶に留めておくべきかを考えなければなりませんし、

舞台に上がったら、どの役者(問題)にスポットライトを当てるかを判断せねばなりません


スポットライトを当てるというのは、その問題を解決・判断するという作業です


全ての役者にスポットライトを当てることはできません


問題は一つずつしか解決できませんよね?



これが優先順位をつけるということです


実は脳の中で最も優先すべきは優先順位をつけるということなのです

そして優先順位をつけることこそが、最もエネルギーを使う作業なのです



なので、研修医のみなさんがまずやる作業は、


①今日一日の仕事を書き出す

②時系列に沿って並べる

③優先順位をつける


となります


そして、それを紙に書き出すという作業が重要です


頭の中に覚えておくだけでもエネルギーが必要になるからです


頭の外に書き留めておけば、脳のエネルギーを温存できます



脳が使えるエネルギーには限りがあります



街中で車を運転する時、急発進しては急ブレーキで止まるような

ガソリンの無駄使いをする運転は誰もしませんよね


全然、エコじゃないです


ですが、脳のエネルギーは知らない間にそのように使っています


脳のエネルギーを上手に使うためには、

・優れた意思決定を行う能力(診断やマネージメント)は節約すべき貴重なリソースであると考えましょう

 無限に適切な判断ができるわけではありません


・エネルギーを消費する優先順位付けを最優先にします

 自分の仕事の中で何を優先させるかを決めることが重要です

 救急外来のリーダーになった時は自分は患者さんを直接みるのではなく、

 救急外来をまわすことを最優先とします


・最も注意を必要とする場面では、エネルギーが残っている時間にしましょう

 その時がわかっているのであれば、エネルギーを温存するか休んでおきましょう


・思考モード(エネルギー消費激しい)と作業モード(書類作業)の時間を分けましょう


・考えられる舞台は狭く、情報が多すぎると脳が処理できなくなります

 教育者は注意しましょう


・舞台にあげやすい役者(目に入った仕事)ではなく、最も重要な役者を舞台にあげることを心がけましょう


・一つの意思決定・判断が終わらなければ、次の操作を開始できません

 2つの意識的な知的作業を同時にすることはできません(二重課題干渉)


・マルチタスクは一番やってはいけません

 認知能力は8歳児並に低下するといわれています


・脳に警戒をさせてはいけません(SNSの通知の常時オン状態)

 複数の事柄に注意が分散することは、脳への負担が大きいのです



一方で何も考えずに物事を進めることができること「自動操縦モード」に入っている場合もあります


これは脳のエネルギーを使わず行えるルーティン動作です


前頭前皮質では主に意思決定や判断を行い、

ルーティン動作(反射や習慣といったりする)は大脳基底核で行われています


大脳基底核はパターンを旺盛に取り込み、ルーティン動作を3回繰り返すだけで、

長期増強プロセスが始まるといわれています



車の運転を考えるとわかりやすいのではないでしょうか


見知らぬ場所での運転は疲れますよね

それは前頭前皮質が働いているからです


一方、通い慣れた通勤の道の運転は疲れませんよね

それは大脳基底核が働いているからです



無意識に前頭前皮質から大脳基底核へのバトンタッチが行われます

そうなれば、注意を払うことなく、こなすことができるようになります



上級医が一度に多くのことをしているように見えるのは、

大脳基底核のルーティン動作をうまく使っているからです



救急外来はまさにです


救急外来で出会う主訴の多くは、すでに何度も経験しています


上級医の頭の中では、パターン認識されており、

何も考えずに反射的に動けるようにトレーニングされています


研修医のみなさんは、

まずはこの状態を目標にするのが良いのではないでしょうか



自分も2年目にたくさんの救急患者さんを見たときに、この状態になった気がします


勘違いしないで欲しいのは、これは悪い状況ではありません


何も考えずに診療しているわけではありません



むしろ逆です


もっと考えられるようになったのです


当たり前にやることにエネルギーは使わず、

さらに一歩先のことを考えるためには、必要な成長過程です



具体的に自分が実践している働き方

・今日行う仕事の流れを仕事行く前に確認

・病院に着いたら、朝一番に仕事の内容を時系列に沿って書き出す

・優先度が高い仕事をチェックする

・メールは見た瞬間に返す(2回開くのは時間の無駄)

・診察したらすぐにカルテを書く(その時間込みで回診する)

・頭を使わないでできる書類作業は、午前中にはしない(もったいない)

・本当に集中したい時は話しかけれない場所で行う(話しかけられると作業が中断して効率が悪い)

 例えば、透析の血液データチェック、外来予習

・マルチタスクはせず、一つずつ終わらせる

・テンプレを有効利用する

 主訴や処置ごとに作っておく

・家族との次回の面談日は、面談した時に決めておく

(また電話するのがもったいない)

・カルテの検索機能を上手に使う(カルテ種や検索ワードを駆使)

・明日の仕事を前日の寝る前に確認


いかがでしたでしょうか?


最初のうちは、働くことで無我夢中だと思います

いつの間にか時が過ぎて、疲れきった自分がいるのではないしょうか?



ですが脳の使い方を覚えると、

パフォーマンスはアップし、

皆さんの本領を発揮できます



意識すべきは、

脳のエネルギーを節約することです



仕事前に仕事の予習をして、

優先順位を決めて、

仕事中はマルチタスクをやめて、

覚えなくていいことは紙に書いて、

集中する時は集中します



決断や判断、優先順位を決めることに全精力を使えるようにします



どうしてかというと…


医師の仕事は決断することだからです


ACNES  〜診断してからが勝負〜

ACNESは知ってる人にとっては、診断は容易です

本当に大変なのは、診断後です 


主治医力が試される疾患です







キシロカインの皮下注射で痛みは劇的に改善します

劇的に良くなることが診断には大事です


注射前に痛みの点数を教えてもらって、注射後の点数と比べます
半分以下の点数になることが多いです


劇的に効くので、患者さんの驚きが一番、診断的な価値が高いと思います


内科をしていると、スパッと治せる疾患は少なく、
患者さんから喜ばれることは少ないですが、PMRとACNESは本当に喜ばれます


ただ、これで終わらないのがACNESです

一発目の皮下注射は、治療というよりは診断に重きがあります



ACNESは診断すると嬉しくなってしまいますが、
ピットフォールもあるので気をつけましょう


①他の腹痛の原因にACNESが合併することがある

便秘や生理痛、腸炎といった腹痛に合併することがあります
丁寧に診察すると、最強の圧痛点と他の圧痛点が別であることに気がつきます


そんな時はキシロカインの皮下注射でACNESの痛みをとってあげます
そうすると、残った病気の腹痛になるので診察もしやすくなります


緊張性頭痛に後頭神経痛が合併するのと同じです


②ACNESはあったが、他の疾患だった

帯状疱疹がACNES的に来ることがあります


帰宅の際には、必ずぶつぶつが出て来ないか確認してもらうように伝えます

特に高齢者では



③治療に関して同僚に相談すると、話が噛み合わない


これはあるあるです

難治のACNESを見たことがないDrは、ACNESの治療の難しさを知りません


そのため、

「本当にACNESなの〜?」
「うつが背景にあるんじゃないの〜?」
「診断を見直した方がいいんじゃない?」


というアドバイスをいただくことがありますが、これは本質がずれています

診断は間違いないことが多く、困っているのは治療です


いかに治療したら良いか?を相談しているのに、
診断の話をされてしまうことが多く、話が噛み合いません


ACNESの専門家はいないことがよくわかります





ACNESは診断よりも治療が難しい病気です


治療の選択肢を知っておきましょう





治療に関しては、再発した時に治療の流れを全部伝えます

こうなったらこうしますと
最終的には手術があることも伝えますが、手術に至る人は稀です


海外は手術の閾値が低いのか、下記の報告では2人に1人が手術に至っています


裏技として「ペンレステープ」が一番効く印象です

もちろん、適応外使用なのでしっかり説明してから使用を検討してください


    

若い人が多いのでできれば手術を避けたいのが、医師と患者さんの思いです


なので、あの手この手で治療します



それでもよくならない人もいるので、その場合は手術が効果的です
ただし、手術しても再発することもあります



手術を考えた時の問題点は・・・・


①誰が手術してくれる?

自施設の外科の先生や形成外科の先生が経験あれば、ラッキーですが、
ほとんどやっていないです

そもそも病気自体を知らない人がほとんどです


自施設で難しそうなら、他の施設を紹介するしかありません


日本の報告されている文献を参考に、その先生に紹介することになります


②手術のタイミングは?


良性疾患であり、
手術しなくても治る人もいるので手術に踏み切るタイミングが難しい病気です


本人が手術を希望するタイミングが、適切なタイミングなのだろうと思います


③手術で完治する?


残念ながら再発することがあります
創部の瘢痕に伴いまたACNESが出現する人がいます


その場合、再手術するか、
もう少し根本の神経から切断するという方法で治癒する人もいるようです

再発した場合は、手術してくれた先生と相談しましょう




まとめ
・ACNESは診断よりも治療が難しい病気
→キシロカイン皮下注射は治療よりも診断的価値が高い

・ACNESのピットフォールを知る
→他の疾患に合併しうる(他の疾患+ACNES)
 他の疾患がACNESっぽく来る(他の疾患→ACNES)
   
・治療の流れを知っておく
→局所麻酔→局所麻酔+ステロイド→ブロック→手術
 

2022年5月13日金曜日

昨日元気で今日ショック、皮疹がなければ・・・②

症例サマリー


関節リウマチに対して、アクテムラ使用中のADLフルな70歳女性

前日まで元気であり、本日、ショックバイタルで集中治療が必要な状態

エントリー不明の菌血症がありそうで、感染性動脈炎を合併している

敗血症性ショックに準じて、輸液やNAで全身管理

ドレナージポイントがないため、エンピリックに抗生剤を投与している



そんな状況で・・・



細菌検査室「血培陽性の報告です。

      〇〇さんの〇月×日の血液培養、2/2セットでGPC が陽性になりました。」

   


ということで、やはりGPCが検出されました


次に聞くことはなんでしょうか?


GPC が検出された場合、clusterかchainかどうかを聞きます


T「 clusterですか?chainですか?」


細「chainです」


Chainだった場合に次に聞くことは、溶血の有無です


T「溶血していますか?」


細「溶血しています」



ということで、GPC chainで溶血している細菌まで絞られました


となると、鑑別は


・侵襲性肺炎球菌感染症(脾機能不全者で特に)

・劇症型連鎖球菌感染症(GAS、GBS、GGSなどの全てのβ溶連菌)


上記のどちらかに絞られました


肺炎球菌ワクチンを接種ずみであること、脾臓は普通サイズであったことから、

劇症型連鎖球菌感染症を疑いました



となると、起因菌はGAS  か non - GASです


近年、GGSが高齢者の菌血症の重要な病原菌である報告例が多数みられます

日本でもGGS菌血症はコモンな菌血症になりつつあります


 GGS菌血症 日本からの報告



そのため、GGSの菌血症に出会ったことがある医師は、


蜂窩織炎で血液培養とったら生えてくる菌

高齢者のfocus不明な発熱で生えてくる菌

抗生剤がなんでも効くので、治療がしやすい菌


というイメージがあるのではないでしょうか



しかし、時にGGSはGASと同じような振る舞いをすることがあります



今回の症例は結局、S.dysgalactiaeでした

治療は順調でICUも出ることができました

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連鎖球菌について


連鎖球菌は身近な菌でありながら、実は非常にわかりにくいです


その理由は

・分類がわかりにくい

・種類が多い

・名前がコロコロ変わる

・1つの菌が多くの病態や感染を起こす(その後の免疫病態も)


が挙げられます


細かい菌名は後で良いので、まずは大きな分類から頭に入れておきましょう


①溶血の有無

②Lancefield分類


この二つが重要です




劇症型連鎖球菌感染症


ゲシュタルトは今回の症例の経過が典型的です

(感染性動脈炎で来た症例は劇的にレアですが・・・)



パターンとしては、

①壊死性筋膜炎パターン
②STSS(トキシックショック)パターン
③focus不明の菌血症 + 敗血症性ショックパターン
④その他(髄膜炎、化膿性関節炎など)

です



以前は劇症型連鎖球菌感染症といえば「GAS」でした

GASは「人喰いバクテリア」とも称され、恐れられていました



ですが、この病態はGASだけではなく、
全てのβ溶連菌で起こりうる病態であり、
B群やG群/C群の溶連菌でも起こります



そして近年、GGSが増えてきています

http://www.iph.osaka.jp/s008/020/010/030/beta/20180326151226.htmlより








今回の症例は血液培養が陽性になるまでの時間が12時間をきっており、
非常に菌量が多いことが予想されました







検体採取から陽性までの時間 一般にこの時間が短いほど真の菌血症である可能性は高いBacT/Alert systemを用いた血液培養では肺炎球菌による重症感染症の多くは10~15時間で陽性になることが報告されている

 [Rinsho Byori 58 : 498 tv 507, 2010] 


末梢血のグラム染色をすれば、菌が見えたのかな・・・と想像しました







本症例のように急激な経過を辿る感染症は他にもあり、
例えば、クロストリジウム・パーファリンゲンスや髄膜炎菌菌血症・・・などです


こういった劇的に悪化するスピードが早い感染症の場合、
「末梢血をグラム染色してみる」という発想が重要です


末梢血をグラム染色で染めたことはありますか?


染めるなら、遠心分離してbuffy coatをみましょう














JJAAM. 2011; 22: 330-6



GGSについて

G群C群の中でも重要な菌は、S.dysgalactiae subsp equismilis(SDSE)が多いです

SDSEは時にA群も陽性のことがあります



SDSEはGASっぽくなってきているのは、菌自体がGASに似てきているようです







    


感染症学雑誌 第84巻 第 5 号付録


劇症型連鎖球菌感染症でGASが原因の場合は、クリンダマイシンの併用は有効なようです


となると、次のCQは
「SDSEによる劇症型連鎖球菌感染症はクリンダマイシンは有効か?」となります


JHNにちょうどCQに答えてくれるまとめがありました







JHNにはよいまとめがたくさんありますので、おすすめです


まとめ
・昨日元気で今日ショック、皮疹がなければ・・・背景を考える!
→溶血性貧血や胆管炎があれば、Clostridium perfringens 
 脾臓がなければ、侵襲性肺炎球菌感染症、Capnocytophaga canimorsus、髄膜炎菌
 肝臓が悪ければ、Aeromonas hydrophila
 高齢者であれば、GASやS.dysgalactiae subsp equismilis(SDSE)

・劇症型連鎖球菌菌血症を起こすのは、GASだけではない
→S.dysgalactiae subsp equismilis(SDSE)はGASと同じ振る舞いをすることがある

・劇的なスピードで悪化している感染症をみたら、末梢血のグラム染色をしてみる
→buffy coatを染めてみよう
 

2022年5月12日木曜日

昨日元気で今日ショック、皮疹がなければ・・・①

 70歳 女性 主訴:意識消失

(※症例は加筆・修正を加えています)


Profile:RAでアクテムラ使用中、ADL フル


現病歴:来院当日の午前中まではいつも通り元気 

    午後から吐き気あり、悪寒戦慄あり、

    その後、意識消失したため救急車で来院


既往:関節リウマチ、骨粗鬆症

内服:デノタス、プラリア、アクテムラ

生活:ADLフル、独居

予防接種:肺炎球菌ワクチン2回接種ずみ


バイタル BP 120/80. P 80,SPO2 95%,RR 20, T 36.8、意識 清明

身体所見は特記すべきものなし 皮疹みられず


血液検査 WBC 6000, Hb 12, Plt 28万, CRP 0, 肝胆道系酵素・腎機能 問題なし

尿検査 膿尿なし 細菌尿なし

単純CT  肺炎像なし、胆嚢壁肥厚なし、膵腫大なし、腹水なし、腸管壁肥厚なし

血液培養 採取


経過

悪寒戦慄や吐き気、意識消失で救急車で来院したが、

来院後は症状なく、バイタルも安定していたが、経過観察目的に入院となった


入院後、嘔吐や強い背部痛が出現

造影CT撮影されたが、大動脈解離や膵炎像はみられず

胸部〜腹部大動脈周囲に脂肪織濃度上昇あり

縦隔にも炎症所見あり

膵臓周囲に液体貯留あり

他に感染源となる部位はみられず


その後、ショックバイタルになり、乳酸上昇・乏尿あり

敗血症性ショックとして広域抗生剤開始

ICU入室しCVやAラインを留置

大量輸液とノルアドレナリン投与開始


心原性や閉塞性ショックはなし

皮疹みられず


背部痛や膵臓周囲の液体貯留あり、重症膵炎疑いで入院となった

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考察


来院当日の午前中まではいつも通りでしたが、

午後から夕方にかけてショックに至っています


膵炎疑いで入院となりましたが、膵臓腫大はみられず、

膵酵素の上昇もないため、膵炎ではないと考えられました



この急激な経過は感染症です


「昨日、元気で今日ショック。皮疹があれば儲けもの」


という青木先生のパールがありますが、まさにその経過です


この経過であれば、鑑別は逆に絞られます


・TSS/STSS 

・髄膜炎菌感染症 

・リケッチア感染症 

・脾臓がない人の肺炎球菌/インフルエンザ桿菌/髄膜炎菌/Capnocytophaga感染症 

・肝臓が悪い人のVibrio vulnificus/Aeromonas hydrophila

・黄色ブドウ球菌などによる急性感染性心内膜炎


今回は皮疹はありませんが、上記疾患も鑑別になります


何らかの感染症であることは間違いないため、型のごとく感染症の三角形に当てはめます


感染症の三角形


 


①患者背景

まずは患者背景がなんといっても大事です

患者背景は3つに分けて考えます

(1)免疫:皮膚バリア、局所の免疫(気管支の繊毛運動etc)、好中球、
       細胞性免疫、液性免疫(脾臓の有無etc)、薬、腫瘍、DM、CKD、LC

(2)暴露:食事、人(シックコンタクト、性行為、結核、小さな子供etc)、動物、
       虫、淡水(カヤック、カヌーetc)、海外渡航、職業

(3)余力・全身状態:バイタル、基礎疾患(心臓、腎臓、肺、肝臓etc)、
             認知機能、余命、人生観



 今回の症例では、RAに対してアクテムラを使用中でした

 生物学的製剤は一般細菌感染症や結核のリスクをUPさせます


 アクテムラはCRPが0になるという危ない薬です
  
 そのため、アクテムラを使っていてCRPが0でなかったら、やばいと思った方が良いです 


 今回の症例はCRPは0です


 CRP based medicineをしているDrは気をつけてください


 曝露は特にありません 小さな子供との接触は1ヶ月前に孫にあった程度でした

 余力はありませんね。バイタルが危険な値になっています
   乳酸上昇や乏尿が出現しており、ショックといって良いと思います



②部位

 次に感染症を疑うのであれば、感染部位を考えます


 今回の症例では背部痛が急激に出現しています
 CTでは大動脈周囲の炎症がありました

 それ以外に画像上もfocusとなる部分はなく、暫定的に感染性動脈炎という診断になりました

 背部痛は大動脈の炎症のためか、もしくは椎体や硬膜外膿瘍の危険もあります


 エントリーになる部位はなく、primary bacteremiaです

 小児では有名ですが、高齢者でもよくあります


 高齢者の菌血症の4人に1人はprimary bacteremiaです

       Enferm Infecc Microbiol Clin . 2007 Dec;25(10):612-8.

 

③微生物


高齢者のprimary bacteremiaはGPC(ブドウ球菌、GGS)かGNR(腸内細菌)が多いです
 

感染性動脈炎の原因といえば、サルモネラや黄色ブドウ球菌、梅毒、結核などです

血液培養陰性の感染性大動脈炎との戦いは本当に辛いです







動脈炎ではなかなか鑑別は絞られませんが、
この急激な経過は、A群β溶連菌(GAS)や侵襲性肺炎球菌ですね

肺炎球菌ワクチンは接種済みであり、GASの可能性が最も高いのではないかと思いました


ですが、GASの急激な経過を疑った時は、同時にGGSも鑑別になります



④治療


感染症で最も大事な治療は、ドレナージです


特にTSSやTSLSでは、非常に重要です


今回の症例は毒素病態(充血、皮疹、下痢)はありませんでしたが、

TSSやTSLSの除外はできない状況です


TSSやTSLSは「一匹でもいたらショックを離脱できない」と考えよ

と言われるような病態です


壊死性筋膜炎も同様の病態です


全身管理はもちろんですが、

同時並行でドレナージすべき部位があるかを一生懸命探す必要があります


今回の症例では造影CTまで施行しておりますが、どこにもありませんでした


そうなると全身管理と抗生剤しかありません

余力がない敗血症性ショックの状況ですので、エンピリックに治療を開始します


TSSやTSLSといった毒素病態を疑った場合は、

クリンダマイシンやIVIGも追加で投与されることがあります


今回の症例では明らかな毒素病態はなかったため、クリンダマイシンの追加は行いませんでした



そんなことを考えていたら、入院翌日の午前中には血液培養陽性の報告がありました


なんだと思いますか?



Where is the answer ?

吉田松陰先生を彷彿とさせるような先生達が集う 勉強会で症例提示させていただきました ※症例は一部修正・改変しております  

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