2018年2月20日火曜日

アニサキス

アニサキスは調べ出すと、面白くてとまりません

いろいろ興味深い病気です

そもそも、あんな小さな虫がかみついて、

どうしてあんなに胃壁があつくなったり、

痛みがあるのであろう?

と長年疑問でしたが、

どうやらアレルギー的な機序がメインのようです

それなら、納得です

ですが、アレルゲンがアニサキスの何であるのか?

というのが、次のテーマのようで、研究が進んでいます






臨床的には、CTで胃壁の極端な肥厚をみたら、

AGMLや胃アニサキス、胃がん、メネトリエ病を疑います

小腸壁の部分的な壁肥厚をみたら、ループス腸炎、好酸球性腸炎、angioedema、

小腸アニサキスが鑑別になりますが、小腸の場合はつめきれないことも多いです


アニサキスにとって、人間は最終宿主ではなく、

たまたま紛れ込んでしまった住処であり、

居心地は決していいとは言えず、数日で死んでしまうことが多いですが、

消化管から迷入して、消化管外に移り住み、

そこで塊になったり、バンド形成したりして、

悪さをすることもあります

なので、こんなとこからアニサキス見つけました!的な症例報告は

山のようにあります

そういう症例をみると、アニサキスの最後のあがきのように見えて、興味深いです





甲状腺中毒症と腹痛


腹痛の人をみたら、甲状腺疾患を疑え!

は言い過ぎの気がしますが、

原因不明の腹痛をみたら、甲状腺疾患は一度は疑ってもよいかもしれません

しかし、腹痛単独ではなく、頻脈や発汗といった甲状腺中毒症症状の有無や

吐き気を伴っている人が多いので、

症例を選ぶことも必要かと思います


甲状腺クリーゼやDKAは腹痛を起こすことが知られていますが、

決して原因疾患の検索をおろそかにしていいというわけではありません

DKAに内ヘルニアが合併していた人もいました

鶏と卵理論で、どちらが誘因で、どちらが結果かは難しい時もありますが、

DKAや甲状腺クリーゼといった、内分泌疾患のエマージェンシーな疾患は、

誘因が何であるか?

そして、合併症はあるか?

といった視点で見ることが大事です

CT陰性の腹痛

腹痛の人はCTがとられる機会は多いと思います

せっかくCTとったからには、写っているものは、全て確認しましょう

特に忘れがちなのが、下肺と脊椎病変と精巣です


実は肺の下のところに転移性肺腫瘤を疑わせる結節がうつっていた!

とか

下肺の肺炎や胸膜炎、膿胸があった

とか

脊椎の脇に軟部組織の腫脹があった

とか

精巣が捻じれて、腫脹しており、造影効果が薄かった
⇒精巣捻転だった!

とかです




単純CTで診断できない腹痛の時は、造影しますが、

それでも原因が分からない時もあります

その時の鑑別は全身性の疾患の一つの症状として、

出てきていることが多いので、他に何かないかROSをとりにいくことが重要です

2018年2月18日日曜日

胸壁の腫瘤と膿瘍

胸壁にしこりができた人を見たら、どう考えれば良いでしょうか

まずは乳腺由来かをみます

そして、乳腺でなさそうなら、

癌か感染症を考えます



胸壁の癌も膿瘍もまれですが、大事な事があります

胸囲結核を忘れてはならないということです

しかし膿瘍を穿刺しても染色も、培養も感度が低いので、

引っかからない事もあります

その時は、膿瘍壁の一部を生検したり、

手術で取ってくるしかありません

胸囲結核は今ではまれな疾患であり、忘れられた疾患のような感じなので、

時には思い出しましょう

結核はどこにでも感染します








細菌感染の場合、意外にサルモネラが多いことに驚きです

ここには報告されていませんが、

結核とともにいつもmimicになる梅毒を忘れてはいけません


インフルエンザ後

インフルエンザの流行があると、入院が増えます

理由はインフルエンザに罹って動けなくなってしまう高齢者が増えるという事と、

合併症による入院が増えます

インフルエンザは他のウイルス感染症と違って、筋痛が多いです

高齢者がインフルエンザに罹ると、若者とは違ったプレゼンテーションでやってきます

動けなくなった

食事をとらなくなった

吐いている

などです

熱はない事もあります


合併症に関しては、整理しておく必要があります

インフルエンザと診断して、満足してはいけないときもあります

インフルエンザが多すぎて、

全ての症状がインフルエンザのためと思ってしまいがちですが、

インフルエンザにしては何かがおかしい時は、

合併症を発症しているかもしれないので、注意が必要です


例えば、インフルエンザ罹患後のショックは何を考えますか?


インフルエンザ後の細菌感染症による敗血症性ショック

インフルエンザによる心筋炎からの心原性ショック

心筋梗塞を発症し、不整脈や心破裂

心膜炎からの心タンポ

横紋筋融解からの高カリウム血症、腎不全で不整脈

TSS  トキシックショック症候群

などなどです


インフルエンザとともに他の疾患も隠れている事はあるので、

インフルエンザの合併症という視点と、

インフルエンザじゃなかったら、

他に何が考えられるかを一度考えてみてると、見逃しが減るかもしれません






インフルエンザ脳症には飛びついてはいけません

有名ですが非常にまれなので、

他の鑑別の除外の方が重要です


2018年2月7日水曜日

リウマチと感染症

関節リウマチは呼吸器感染症が多いです

理由はリウマチは、気管支や肺に病変を作ることが多いためです

つまり、肺にもともと備わっている局所免疫が落ちています

さらに全身の免疫も落とすような、薬を使うことが多いので、

呼吸器感染症が多いのです





















2018年2月5日月曜日

強皮症

強皮症

強皮症は限局型と限局性(局所性)という名前があって、まず混乱します

ここは英語で覚えたほうがよさそうです


部分的な皮膚変化のあることを、localized(局所性)強皮症といわれます


この概念は実はSLEでも問題になります

皮膚エリテマトーデス(Cutaneous lupus erythematosus:CLE)は、

皮膚限局性のエリテマトーデスです

しかし、SLEの方はもっとややこしくて、

SLEの皮膚症状のことも、CLEと言ってしまっているので、

さらに意味が分かりません

SLEのことは置いておいて、今回は強皮症についてです

localizedな強皮症に特異的な臓器障害は認められませんが、

稀に皮膚意外にも症状がでることがあります

全身性強皮症との鑑別点は、

レイノー症状がない

爪床の変化がない

ことがあげられます

特異的な抗体も陰性のことが多いです

ただし、抗核抗体は陽性となることもあります


localizedな強皮症が全身性に伸展することはほとんどありませんが、

全身性強皮症がlocalizedな強皮症として出現することはあります

やっぱりややこしいですね



全身性強皮症の病態は3つにわけて考えます

①炎症・免疫:自己抗体、puffy finger
②血管障害:レイノー、肺高血圧
③線維化:間質性肺炎、皮膚硬化

といった組み合わせで、分類基準も作られています

強皮症は見逃されていることも多く、

みる人がみれば、手や顔をみた瞬間に分かる病気です

ですが、進んでしまった強皮症はなかなか治療が困難です

なので、見ただけでわからない強皮症の時に、診断していきたいものです

一番、疑う主訴はレイノーでしょう

レイノーできた人をみたら、必ず爪をチェックします

ダーモスコピーがなくても、あきらめずに爪の生え際を頑張ってみてください

肉眼でも見える人はいます

レイノーがあって、NFCC(爪郭毛細血管異常)があれば、

2-3年以内に20-30%が、全身性強皮症に伸展するといわれています

自己抗体まで加われば、70-80%に可能性はupするので、

抗体を出す前にチェックしておきましょう

皮膚硬化の範囲でDiffuseとLimitedにわけられます

それぞれの病態に少しずつの違いがあります

間質性肺炎はどちらも起こしますが、

肺高血圧はlimitedで多いです





強皮症に限らず、膠原病は生活習慣と密接なかかわりがあります

リウマチであれば、関節を守るために、

片手で重いものをもってはいけないとか

SLEであれば、

日光を極力さけるか、日焼け止め対策をしっかりするとか

強皮症であれば、レイノーを防ぐために、

寒さ対策をしっかりします

手だけではなく、「寒い」と感じたら、起きてしまうので、

全身を温める工夫が必要です

不安や喫煙もレイノーを悪化させるので、

禁煙は必須です


治療は臓器ごとにことなるため、

臓器障害の程度をフォローすることが、強皮症外来のメインになります



2018年2月4日日曜日

神経と膠原病

膠原病はいつも典型なプレゼンテーションで発症するとは限りません

ある時は呼吸器科で、

ある時は眼科で、

ある時は皮膚科で、

そして神経内科で、

見つかる事があります

あらゆる臓器に障害を起こす可能性があるので、

どの科からも見つかる可能性は秘めています


その中で神経と膠原病の関係をみてみます

神経を中枢と末梢に分けて考えます

そして、原疾患で起こす病態、治療に伴うもの、原疾患に合併しやすい病態の

3つの視点で考えるとわかりやすいかと思います

大事なのはいつでも、感染症です

いかに早く、感染症を除外できるかがポイントです




結局は全ての治療を行う事も多いですので、

しっかり髄液の検体を取っておく事が大事です


NPSLEで一番多いのは頭痛と言われています




SSは悪性リンパ腫の合併が多いので、

リンパ腫も念頭におく必要があります

あとは高ガンマグロブリン血症からM蛋白血症に至る事もあるので、

M蛋白血症にともなう神経障害という視点も必要です






神経ベーチェットを疑われせるような、白質病変があった際は一番、最悪です

確定診断が生検しかないからです

リンパ腫、中枢神経原発血管炎、MSのどれかは結局わからない事もあります

ステロイド使ってしまうと一旦よくなるので、

本来は治療の前に検体を取る事がベストなのですが、

脳なのでハードルが高い事もしばしばです


生検ができなければ、

身体所見、病歴、画像、検査で総合的に判断します

2018年2月2日金曜日

移動性関節炎と早期関節炎

先日、右手関節炎の腫脹、疼痛できた50歳代の男性がいました

数日の経過の急性発症の単関節炎だったので、

例によって化膿性の否定のため、血培をとって、関節穿刺して、

培養出して、細菌と結晶がない事を確認して、

レントゲンとって、抗体出して、

と諸々してロキソニンで経過を見ました


すると、1週間後には、右手関節の腫脹は治りましたが、

今度は反対側が腫れてきました

おやおや、これはもしや移動性関節炎ではないか!?

という事で、また検査追加しました

しかし移動性関節炎と付加性関節炎は有名な割に、

実はあまり鑑別が絞れないと言われているようです




あんまりこれにこだわらない方が身のためです

今回は結局、ACPA陽性で、後日、指のあつぼったさも出現してきました

早期関節炎から移動性関節炎、そして関節リウマチという流れでした

関節リウマチは教科書的には、慢性の多関節炎のカテゴリーに含まれますが、

発症した時点を見れば、急性の単関節炎のプレゼンテーションはありえます

なので、急性であっても、単関節炎であっても鑑別に入れておくべきです



関節リウマチは最近、いい薬が沢山でて、

しかも早期に治療するほど関節予後が良い事も知られてきました

そのため、早期診断が叫ばれて、診断基準も変わりました

さらに診断を早めるために、早期関節炎という概念が提唱され、

リウマチを早く見つける努力がなされています

そして関節炎ではなく、関節痛からすでに、

唾をつけておこうみたいな考え方で、CSAという概念も生まれました


まるで、出世魚です


リウマチ膠原病科の専門医によって、

将来、関節リウマチになりそうだなと判断された関節痛をCSAというようです

そしてついに関節が腫れると、早期関節炎と言われます

そして早期関節炎をフォローしていると、関節リウマチになっていく人がいます

できれば、発症してから3ヶ月以内に治療が開始された方が予後が良いようです


病気は喘息でも、片頭痛でも何でもそうですが、

雪だるま式に悪化して、悪化してから治療をしても、

なかなか治りません

リウマチも一緒です

今までは白か黒かのように、

リウマチか、リウマチじゃないかの二択でしたが、

これからはグレーが出来たイメージです

グレーの人はなるべく早く、リウマチ膠原病科に相談すべしと言われています

そばにいなければ、自分でフォローするしかないですが、

3ヶ月後フォローとかでは、時すでに遅しなので、

グレーの人は小まめにフォローが必要です









実は病気が違っても考え方はどれも似ています

病気になる前の言わば、前駆期の状態をいかにピックアップできるか

が焦点になっています

リウマチもようやくその流れに乗ってきたようです


上記の考え方は、

コテコテの関節リウマチを見る事が少なくなった今までは、

目の前に診断のつかない関節痛の人が来た時に、

どのようにフォローしていけばよいかという

道標になる気がします


SDoH 健康の社会的決定要因







健康の社会的決定要因というとなんだかよくわからない日本語です

つまり、健康に関わるものは一体、何なんだ?

という事が研究されているようです

私達がやっている医療は、実は患者さんの健康にはあまり寄与しておらず、

他の要因も沢山あるという事です

なので、視野を広げて患者さんをみる必要があります

治らない喘息の原因は、

薬が効いていないからではなく、

精神的なストレスや周囲の環境のせいかもしれません


喘息のように、

自分の周りの環境によって悪化する病気は実は沢山あります



甲状腺機能更新症や偏頭痛、IBS、SLE、

などなど

病気の治療に興味がいきますが、

たまには薬以外にも目を向けてみると良いかもしれません

2018年2月1日木曜日

ICF. 国際生活機能分類

最近、外来でフォローしていた人が高齢化している影響で、

外来から在宅になる事が多くなってきました。

入院から自宅に帰る前に、多職種カンファレンスが開かれる事が多いと思いますが、

ようやく多職種カンファレンスが楽しくなってきました。


医者になったばかりの頃は、退院調整はケースワーカーさんに丸投げでした。

指導医も丸投げしていたので、そういうものだと思っていました。

医者は病気を治すのが仕事。

治ったら、次の患者さんを治す。

病気が治った人の退院調整はMSWの仕事。

餅は餅屋の考え方。

そういう考え方のDrはまだ沢山いる気がしますが、

入院だけを診るDrはそれで困らないかもしれません。

ですが、自分が在宅も診るとなると、話は別です。

在宅は入院とは全く異なる頭で、考えなければなりません。

自分の患者がどんな環境に住んでいて、

どんな暖房器具を使っていて、

どんな人がその家族を支えてくれているのか。


病気を探す病歴聴取とはまた異なる情報取集能力が必要になります。

病気を探したり、治療が上手な人が在宅が上手という事ではありません。

在宅診療で一番重要な能力は「想像力」です。

沢山、在宅の技術はありますが、本質ではありません

患者さんの1日の生活を「具体的に」想像する事ができるかが重要です


想像できますか?


今、入院中の患者さんが自宅に帰ったとして、


朝起きてから、トイレはどうするのか、

夜に起きた場合、誰が対応するのか、

家族をどうやって呼ぶか、

歯磨きは誰がするのか、

体交は何回やるか、

オムツは何時に替えるのか、

介護者は膝が痛そうだが、病院には行っているのか、

介護者を支えているのは、誰か、

薬はどうやって取りに行くのか、


などなど


1日の生活を想像出来たら、1週間の流れを想像します

このスケジュールで本人は疲れてしまわないだろうか、

介護者はどこで一息つけるのか、

サービスが手薄な時はあるだろうか、

などなど



具体的な生活のイメージを描けないと、在宅でみていくことはできません


在宅診療は、入院診療だけでは絶対に身に付かない能力が沢山必要なので、

是非、在宅診療に行ってみることをお勧めします


入院中の患者さんは、


同じ服を着て、

同じ部屋に居て、

同じ食事を食べ、

同じリハビリをしています


患者さんの人生は、目に見えているものではありません


認知症で寝たきりで、誤嚥性肺炎になっている状況は、

その人の人生のたった1ページです

999ページを私達は知らないのです

にもかかわず、私達は患者さんの人生の終わり方を決めようとします

違和感しかありませんが、現実です

ACPが普及してくれる事を祈ります



入院管理は苦手でも、在宅は楽しい!という人もいます

天性の感覚で、在宅が上手にできる人は、問題ないと思いますが、

自分にはそんな感覚はなかったので、

必ず周到な準備をしてから、在宅に挑みます


自分が必ずしている準備が、ICFを作成することです

ICFとは国際生活機能分類のことです

今やこれなしでは、多職種カンファレンスは行えません

ICFを全て埋めてから多職種カンファレンスを開きますし、

そこで得た情報を元にどんどんup dateしていきます




私達の人生は一つしかありませんが、

在宅に行くといろんな人の人生を疑似体験出来ます

それを面白いと感じる事ができれば、在宅むきといえるでしょう