2019年12月19日木曜日

症例カンファレンス ~この症例が、病院機能評価で問われるとしたら何の項目でしょうか?~

発表者「お願いします、ディスカッションポイントは診断です」

----------------------------------------------------------------------------------
症例 92歳 男性 主訴:酸素化低下
Profile:9-12月まで圧迫骨折で入院歴あり
    その後、施設へ退院 
    ADLは立位は可、車椅子移乗は介助が必要なレベル
--------------------------------------------------------------------------------------
①ディスカッション:snap diagnosisは?

司会「はい、じゃあ、圧迫骨折の人が呼吸苦や低酸素血症になったら、
   何を思い浮かべますか?
   まあこの症例は骨折して退院後なので、ちょっとシチュエーションは違いますが」


研修医N「圧迫骨折後の呼吸苦ですか??
    うーん、肺塞栓とか?」


司会「いいね!動かなくなるから、DVT-PEは起きてもいいね、他には?」


発表者「他ですか?うーん、脂肪塞栓とか?」


司会「脂肪塞栓はどちらかというと、頸部骨折とかで起こるかな。
   あまり腰椎の圧迫骨折では見ないね。

   骨折すると痛いでしょ?そして何がされる?」


研修医「コルセットですか?じゃあ、誤嚥性肺炎とか?」


司会「そうだね!誤嚥性肺炎もよくあります。
   痛みで変な姿勢で水分とったりしている人が多いからね。
   痛みのせいで、十分に咳が出来なくなったりするし。
   他には?」


研修医「・・・・」

司会「痛みのせいで、カテコラミンがでたり、NSAIDsが入ったりして、
   心不全になることもよくあります。
   こんな風に圧迫骨折後の呼吸苦で起こりやすいことは知っておいていいね。」


------------------------------------------------------------------------------------------
現病歴:入院3か月前  圧迫骨折 その後、後方固定術施行
             その後ずっとリハビリ 
    入院5日前   3か月間のリハビリを経て、施設へ退院となった

    入院3日前   食欲低下あり
           37度台の微熱が出現
    入院1日前   往診あり、風邪薬が処方された
    入院日    SPO2 80%と酸素化低下あり、入院依頼
           救急車にて当院搬送となった

既存症:高血圧、不眠症、COPD、褥瘡、認知症
内服:ロゼレム、ワンアルファ、ブロチゾラム、重カマ、カルボシステイン、センノシド、パリエット、カロナール

来院時バイタル
体温36.9度、血圧71/41、脈88、SPO2 97%(0.5L)、呼吸数27回/分
意識レベル クリア
----------------------------------------------------------------------------------------------
②ディスカッション:このバイタルみてどう動く?


司会「意識レベルって本当にクリアなの?
   クリアっていうのは、見当識障害がない、
   つまり、時と場所と人が完璧に言えないといけないんだけど、
   認知症も進行している人なんだよね?
   そんな人が「時」を正確に言えるとは思えないんだけど・・・」


発表者「そうですね、そこまではチェックしていないので、クリアではないですね
   JCSⅠ台です。」

司会「了解です。あと見た目はどうでしたか?」

発表者「えーっとですね、あんまり重症感はなかったような・・・ 
  自分でストレッチャーからベッドへ移動できたような・・・
  あれ、どうだったかな・・・?」


司会「そうだね、記憶に頼ると失敗するので、記憶より記録ですね。(笑)
   カルテ記録はとても大事です。

  さて、この状況どうしましょう?

  自分一人と看護師さんしかいない状況だったら、どんな風に動きますか? 
  病歴とる?診察する?処置する?

  こういう状況って、病歴とってー、診察してー、そこから検査してー、治療してー
  ってやっていると、遅いので、同時並行で物事が進んでいきますね。」


研修医「血圧が低いので、再検したいです。」


発表者「再検して83/41でした。
      末梢の冷感は特になかったです。」


研修医「わかりました。では、ショックと考えて、
    正中にルートをとって、外液を全開で投与したいので、
    それは看護師さんにお願いします。その間に診察します。」


司会「なるほど、ありがとうございます。
   他の皆さんはどうですか?」


専攻医\N「この状況だと、まだ何の血圧低下か分からないので、
     心原性という可能性もあります。
     心不全が悪化する可能性もあるかもしれないので、
     本当に外液を全開で入れていいかは考えないといけないと思います。」


司会「そうだね。」

専攻医N「あとは、ルートとるときに血液培養もとります。
    ガスもとるので、そこで血培もとります」


司会「ありがとうございます。
   そうですね、血培という選択肢があれば、
   ルートとる時に一緒に取ってしまえばいいですね。

   今回の血圧低下をショックと言っていいかは、まだわかりませんが、
   ショックを見た時の対応はどうですか?

   サルも聴診器って習いました?」


研修医「え?それって、ショックの時の対応なんですか?」


司会「えー?違うの?ショックの時の対応って福井の林先生、言ってなかったっけ?」

研修医「なんか、どの主訴でも救急車できたら、
    だいたいやっているなあっていう気がして、なんでも使っていました(笑)

    あまりショックの時って気がしませんでした。」


司会「まあ、確かにそうだけどね、もともとはショックの時の対応なんだよ。
   中でも今回大事なのは、超音波と心電図だね。
  
   最近はショックの時の超音波の検査をRUSH(Rapid Ultrasound in shock)examとして、
   流行ってきているね。

   何みるんだっけ?」

研修医「ポンプ、タンク、パイプです、あと肺を見ます」


司会「はい、ありがとうございます。

   ポンプ(Pump)は心機能、心嚢水、右室の拡大、心臓の内腔などを見ます
   
   タンク(Tank)は体液量の評価をIVCをみたり、胸腔内、腹腔内の液体貯留をみます

   パイプ(Pipes)は大動脈解離や瘤、下肢のDVTをみます

   肺は気胸の有無やうっ血があるかどうかをチェックします

   網羅的に系統だって、チェックすることで見落としが減りますね。
   まあ、もちろん、その前に診察するわけですけども。」

-----------------------------------------------------------------------------------
身体所見 
見た目 るい痩が著明 36kg
末梢は冷たくも暖かくもない

痰がらみがひどく、吸引すると白色の痰が引けた
口腔内は汚染あり
胸部 呼吸音 全体的に減弱あり  
   心雑音なし
腹部 平坦 軟 圧痛は心窩部から右季肋部にあり
   筋性防御なし

四肢 浮腫なし


-----------------------------------------------------------------------------------------
③ディスカッション:ここで出てきていない大事な診察は?

司会「隠すねえ(笑)
   皆さん、追加の診察で何を聞きたいですか?」


研修医「頸静脈をみたいです!」

発表者「頸静脈は張っていませんでした。
    臥位にしても張っているようには見えませんでした。」

司会「了解です。ショックの時に頸静脈はとても大事です。
   末梢が暖かいか、冷たいか。
  そして頸静脈がはっているか、張っていないか

   この二つはショックの時に、パパっととることができて、
   非常に有用な所見なので、血圧が低い人をみたらまずこの二つは必ずチェックしましょう。

   ところで、頸静脈の診かたはみなさん、分かりますか?
  
   頸静脈には内頚静脈と外頸静脈がありますよね。
   本当は内頚静脈の↓に二度沈む拍動を探したいのですが、
   なかなか慣れないと、見るのは難しいです。
   
   特に高齢者の場合、動脈が蛇行して動脈の↑に来る拍動のせいで、
   内頚静脈の↓に沈む拍動は分かりにくかったりすることもよくあります。
   これは触ってみないと分かりませんし、それでも難しい時は超音波を当てます。

   なので、まずは簡単に見える外頸静脈で代替してもよいと思います。

   
   よく頸静脈の怒張はありませんでした。というプレゼンを聞きますが、
   そんなものあるわけないだろう!
   って言いたくなる時も結構あります。


   頸静脈の怒張の意味わかりますか?
   頸静脈の怒張というのは、内頚静脈の↓に沈む拍動がなくなり、
   べたっと内頚静脈が浮き出てしまっていることです。
   (と沖縄の宮城先生が言っていました)

   この状態になるのは、3つの病態しかありません。分かりますか?」


外科医「緊張性気胸」

研修医「心タンポ、肺塞栓。つまり閉塞性ショックになるものですか?」


司会「その通りです。だからこれらを疑っていればいいですが、
   めったにお目にかかる病気ではありません。
   
   なので頸静脈の診かたは、頸静脈の怒張があるかないかではなく、
   もっと実用的に使いましょう。

   実際に使えるのは、外頸静脈です。
   外頸静脈をみることで、そのtopがだいたい内頚静脈の拍動のtopと同じなので、
   外頸静脈をみることをお勧めします。

   45度の角度で外頸静脈がうまく観察できない時にはどうしたらよいでしょうか?」


研修医「寝かせてみます。」


司会「そうですね、寝かせると普通の人は見えます。
   寝かせても外頸静脈がみえないというのは、かなりの血管内脱水があるという事です
   他にはどうですか?」

研修医「・・・」


司会「外頸静脈がありそうな部位の心臓に近い所を指で押さえてみます。
   そうすると、ふわっと、外頸静脈が浮き出てきます。
   そしてその指を離すと、また消えていきます。
 
   そうやって、外頸静脈の位置を把握して、どこにtopがみえるかを確認します
   それを胸骨角からの距離を測定しておけば、治療効果判定に使うことができます。

   なので怒張があるかないかだと、もったいないので、
   血管内volumeの治療効果判定にも使える外頸静脈をしっかり観察しましょう」



司会「では、症例に戻りましょう。
   今回は臥位にしても外頸静脈があまり見えなかったようです。
   ということは、かなり血管内脱水があるということでしょう。

   ショックの鑑別として、心原性、hypo、閉塞性、distributiveがありますが、
   今回はhypoや敗血症が可能性としては上がりますかね。

   さてこの後どうなっていきました?」

-------------------------------------------------------------------------------------------------
その後、外液の補液にて血圧は上がってきたため、
誤嚥性肺炎の疑いで胸部CT検査へ進んでいった

しかし、CTでは肺炎像はみられなかった

血液検査にて肝酵素やbilの上昇はなかったが、胆道系酵素の著明な上昇があり、
炎症反応も上昇していた

そのため、胆管炎を疑い、USや腹部CTが追加され、閉塞起点の評価が行われた

しかし、明らかな閉塞起点は確認されず、胆嚢の腫大や壁肥厚も確認できなかったため、暫定的に胆管炎疑いにて、抗生剤が開始となった

MRCPは入院後予定
---------------------------------------------------------------------------------------------------------
④ディスカッション:この症例で、病院機能評価で問われる項目は何でしょうか?

司会「はい、ありがとうございます。
   まあ、診断は胆管炎でよいのではないでしょうか。


発表者「でもbilがあがっていませんし、画像上も胆管の拡張はありませんでした。」


司会「まあ、それもよくありますね。
   造影すれば、門脈周囲の造影効果が見えたりして診断に有用かもしれませんが、
   診断基準に照らし合わせても、胆管炎の疑診にはなります。

  極論すると、
  胆嚢炎の診断は診察で行い、胆管炎の診断は検査で行います。

   胆管炎というのは、診察はあてにならないので、検査だよりです。」


発表者「わかりました。」


司会「では、皆さんに最後の質問です。
   この症例で、もし病院機能評価が行われるとしたら、
   評価者は何を質問するでしょうか?」


専攻医「(笑)先生、そんなの分かるんですか?」


司会「わかります。僕が病院機能評価するとしたら、
   この症例では必ずこの項目をチェックします。

   それは何でしょうか?」


研修医「えーなんだろう?超音波したか?とかですか?」


司会「違います」


研修医「うーん、わかりません」


司会「では、聞きます。
 
   皆さん、qSOFAって聞いたことありますか?」


研修医「あー、なるほど、ありますね。

    確かにこの症例もqSOFAでやれば、敗血症が疑われます。」



司会「そうですね、来た時点でqSOFA3点で、敗血症が疑われます。
   事実、すぐに血培はとっていますよね。

   ということは、みんな敗血症は最初から頭にありましたよね?



   じゃあ、聞きますが、

  
  この症例で抗生剤が入ったのは、病院に来てから何分後ですか?



発表者「えっと、、、最初は肺炎かと思っていましたが、CTで肺炎がなくて、
    その後、血液検査が帰ってきて、胆管炎かもしれないってなって、
    またCT撮り直したりして、結局その後なので、けっこう時間かかっています。」



司会「ですよね。この症例の肝はここです。


  敗血症が想起された症例で、
  いかに抗生剤を早く入れられるかどうか?

   みんなしっかり教育されているので、
   痰や尿といった検体があれば、グラム染色してそれをみてから、
   抗生剤決めていませんか?


   バイタル落ち着いていたり、すぐに検体がとれてグラム染色に、
   時間がかからないのであれば、そのプラクティスでもいいです


   ですが、検体をとるまで抗生剤をいたずらに待ったり、
   敗血症っぽいけど、focusがはっきりするまで、検査のために、
   抗生剤をまったりしていませんか?

   
   覚えておいてください。  
 

  最初から正確な診断の下、正確な抗生剤投与を目指さなくてもいいんです

  それよりもスピードの方がはるかに大事です

  なんでもいいから、抗生剤を早く入れてください


   検体が少し後からとれたり、グラム染色を後からして、
   どうやら痰は肺炎球菌のようだ
   ってなったら、その後から変えてもいいんです

   
   抗菌薬の投与が遅れれば遅れるほど、死亡率は悪化します
                                    (N EngJ Med 2017,May 21)

   敗血症に伴う血圧低下があるなら、なおさら早く入れましょう
   

   自分が抗生剤を投与していない時間で、
   患者さんの命がだんだん短くなっているかもしれないという感覚をもちながら
   診療することが大事です。


   ということで、自分が病院の機能を評価するなら、
   この症例では、抗生剤をいつ入れたかをチェックします。」
   


研修医「確かに、血圧が下がっていて、他の鑑別もある中で、
    抗生剤を早く投与しなければならないという感覚は抜けていたかもしれません」


研修医「ですが、qSOFAって認知症のある高齢者の人の場合、意識レベルがひっかかってしまって、難しくないですか?」


司会「その通りです、昔はqSOFAなんてなかったですし、
   自分もqSOFAに頼ってこなかった世代なので、ほとんど使いません。

   ですが、初学者が敗血症を想起するためには有用だと思います。


   敗血症の診療のポイントは、

  いかに早く敗血症を想起・認知できるかと

  いかに早く介入(抗生剤投与やドレナージ)できるかです。

   伝えたいことは、qSOFAを使いましょうということではなく、
   敗血症を想起・認知した時に、

   早く抗生剤投与をしないといけない

   という焦燥感に駆られてほしいという事です。
   
   もちろん、ドレナージできるものがないかの検索も非常に重要です。

   
   ではこれくらいで終わりにしましょう。
   とても勉強になる症例でした、ありがとうございました。」

まとめ
・記憶より記録が大事
→正確なカルテよりも、早く書く方が大事


・血圧低下をみたら、末梢と頸静脈をチェックして、RUSHにつなぐ
→詳細な病歴聴取よりも、早く超音波を当てることが大事


・敗血症を想起したら、
→正確な診断よりも、早く抗生剤投与することが大事



2019年12月16日月曜日

眼球の水平運動

MLF症候群

って聞いたことあるけど、よくわからん!という人のために・・・


眼球運動を車に例えて考えると、いろいろ分かりやすいです


まずは、タクシーに乗って、反対側から運転手に指示するようなイメージです

右を向きたい時に、
はじめに指示するのは、左の前頭眼野(area8)です

その指示が、反対側(右)の橋のPPRFに行きます
PPRFが水平注視機構の中枢です

まさに運転手

右に行けといわれて、運転手がハンドルを右に曲げると、
右の外転神経核に命令が伝わり、
右眼が外転します(右の車輪が右に曲がります)

同時にシャフト(MLF)を通じて、左の動眼神経核に命令が伝わり、
左の動眼神経を介して、左眼が内転します(左の車輪が左に曲がります)




本来の車なら、ハンドル一つで左右に行けますが、
眼の場合は、右向きの時の回路と左向きの回路が別なので、
ハンドル・シャフトなどをもう一セット、反対側に作らないといけません



MLF症候群は、左右の車輪をつなぐ、シャフトが壊れた状態

外転神経核近くであれば、橋に病変があり、
動眼神経核近くであれば、中脳に病変があります


そんな時に、輻輳をさせてみて、問題なければ橋病変が示唆され、
輻輳ができなければ、病変は中脳でしょう



MLF症候群をみたら、輻輳できるか確認する


PPRF(水平注視の中枢)がやれたというのは、
ハンドルがやられたという事です


指令がきても、両輪ともにタイヤは動かず、車は曲がりません


PPRFは外転神経核が近いので、外転神経核がやられた時も同じような状態になります

ここでさせてみるのは、VOR(前庭眼反射)です


頭を急に振っても、物体がぶれないのは、VORのおかげです


ということは頭を水平方向に振ると、VORが働いて眼球が動くのです


PPRFがやられてしまった場合でも、VORは保たれているため外転でできます

しかし、外転神経核がやられた場合は、VORでも外転できなくなります


注視麻痺をみたら、VORを確認する




PPRFとMLFも近傍にありますので、同時にやれることがあります

同じ側のハンドルとシャフトが壊れた状態で、ワンアンドハーフ症候群と呼ばれます


症状は、PPRFとMLFの足し算です


この場合、MLFが障害されるのは、橋のことが多く、
輻輳反射が保たれるのも納得できますね




核上性麻痺

指令する後部座席の人がいなくなった、もしくは指令が聞こえないという場合です

そうすると、反対側が急にハンドルが軽くなったイメージで、
反対側のPPRFの刺激が強くなり、

病巣を向く共同偏視になることがあります



逆にてんかん発作のように興奮する病態の場合は、
指令が強くなって、病巣から目をそらすように眼球が偏倚します



実際に患者さんを診察しなくても、
眼球偏倚があるかどうか間接的にわかる方法があります


それは、CT画像で黒目をみるのです

その目みると、意外と偏倚しているのがよくわかります



2019年12月15日日曜日

症例カンファレンス ~ぼやっとする症例~

研修医「症例は80歳女性の左の動眼神経麻痺の人ですが、
    MRIでは右小脳に新規梗塞がありました。
    どう考えればよいでしょうか?」
------------------------------------------------------------------------------------------------------------
症例 80歳女性 主訴:浮動性めまい?

Profile;高血圧で治療中、糖尿病なし、小脳梗塞の既往あるが、ADLフル

現病歴:来院当日、午後までいつも通り
    午後、自分で車を運転してスーパーまで行った
    スーパーで買い物をした帰りの車の中で、
    「ぼやっとした感じ」になった
    ちょっと危ないかなと思ったが、何とか車を運転して自宅に帰った
    
    自宅で夕飯の支度を作ろうと、座位から立位になって、
    歩いたら「めまい」がした
    左目がぼやっとする感じになった
    
    夕方、救急外来を受診

ROS:麻痺なし、呂律不良なし、強いめまいなし、歩行障害なし 
   嚥下障害なし、頭痛なし、頸部痛なし

既往・既存:高血圧、右小脳梗塞

内服:Ca拮抗薬、バイアスピリン

生活:ADLフルな主婦、喫煙なし、アルコール飲酒なし
-------------------------------------------------------------------------------------------
研修医「身体所見では、左目の動きがおかしく、左目の動眼神経麻痺を疑いました
    他の脳神経は正常でした

    四肢の麻痺や感覚障害はありませんでした

    右手の回内回外・指鼻指はやや拙劣でしたが、
    もともと右小脳梗塞があるので、新規なものかは判断が難しかったです。

    めまいや動眼神経麻痺があったので、脳梗塞を疑いMRIを撮影しました。
    MRIでは右の小脳に小さな新規脳梗塞がありましたが、
    これでは病変の説明にならないと思いました。

    よくみると、右のIC-PCに脳動脈瘤がありました。
    ですが、目の動きがおかしいのは左目であり、
    これも病変ではないと考えました。
  
    糖尿病はない人ですし、
    この動眼神経麻痺についてどう考えたらよいでしょうか?
    」

--------------------------------------------------------------------------------------------------
①病歴についてディスカッション

指導医「興味深いね。
    まず、病歴に戻るけど、最初の症状は何だったのかな?」

研修医「めまい?っぽくなったとも言っていましたし、   
    車を運転していたら、ぼやっとしたようです。」

指導医「ぼやっと、って何?(笑)
    それは視力低下なのか、複視なのか、視野障害なのか、半側空間無視なのかな?
    
    まずはそこを聞いてみよう。
    どうやって聞けば見分けられる?」

研修医「車がだぶって見えるとかですか?」

指導医「まあ、そうだね、
    車を運転している状況なら、センターラインや信号機が二本に見えたかどうかを
    聞いてみると、複視の有無が分かるかもね。

    もし、複視なら両眼性と単眼性のチェックも必要だから、
    片目を隠して、チェックしましたか?
    と聞くのも大事だよ。

    あとは、視野障害や半側空間無視だったらどうかな?」

研修医「どちらかによっていったり、ぶつけてしまったりとかですか?」

指導医「そうだね。視野障害と半側空間無視は、
    病歴だけだと区別するのは難しい時もあるけど、
    そういった病歴はあったのかな?」

研修医「どちらかに寄ったりすることはなかったようです」

指導医「了解、あとは左目がぼやっとするっていう病歴があるね。
    これは両目でみて左側のこと?それとも左目のこと?」

研修医「左目のことらしいです。」


指導医「えー!?   それはおかしいね。
    複視だとしても、左目の単眼性複視だとすると、脳が原因ではなく、
    目の問題になってしまうし、
    視力低下にしても、左目だけなら、それは脳が原因ではなく、
    目や視神経の問題になってしまうね。

    もう一度、本人がいう「左目がぼやっとする」という病歴を確認しにいこう」



--------------------------------------------------------------------------------------------------------
(追加病歴)
本人「車を運転していたら、急に左目がぼやっとする感じになりました。
   物がダブって見えたりはしませんでした。
   視力が落ちたというか、なんとなく、かすむというか・・・
   左側というわけではなく、左目がぼやっとしたり、
   普通になったりしました。

   めまいは自宅にいた時はありましたが、病院に来てからはないです。
   今も物が二重に見えたりはしません。」


指導医「なるほど・・・・そういうことですか・・・」
---------------------------------------------------------------------------------------------------------
②身体所見についてディスカッション

指導医「動眼神経麻痺って言ってたけど、瞳孔は?」

研修医「3/3、対光反射+/+でした」


指導医「・・・・眼位は?」

研修医「正中でした」

指導医「え?それって、おかしくない?
    だった、動眼神経麻痺だったら、外側に偏倚しそうだけど。」

研修医「確かに・・・
       でも、なんだか左目の動きが悪いんです」


指導医「OK、見に行こっか」
----------------------------------------------------------------------------------------------------------
追加診察

(その目で見れば)左目の眼瞼下垂あり
意識すれば、挙上できるので常にあるわけではない

瞳孔 3/5mm 対光反射 +/鈍

眼位は正面視で、正中
右向きで、右眼は外転OK、左目の内転障害あり
右向きで、時折、右眼が外側へ眼振出現する

他の方向は全て問題なし
どの方向でも複視訴えなし

輻輳 できない

残りは同じ所見

神経診察まとめ
(1)瞳孔不同:左目が散大、対光反射鈍
(2)左眼瞼下垂
(3)左目の内転障害
(4)輻輳障害
---------------------------------------------------------------------------------------------------------
③病態についてディスカッション

指導医「これは動眼神経麻痺じゃないね。
    いや、正確には動眼神経麻痺なんだけど、半分正解で半分違うというか。

    まあ、結論からいうと、左のMLF症候群だね。
  
    でも今回は、MLF症候群単独でないところが、難しいところだ。


    こういう神経解剖は全て、覚えきれないから、
    その都度、教科書で確認しよう!

    さてどこが病変かな?」


~教科書で勉強タイム~


(1)瞳孔不同

指導医「瞳孔不同に関しては、
    動眼神経の副交感成分が障害されているのは、間違いないね。
    やられたのが、EW核か、そこからでた髄内線維か、髄外線維か。

    でも線維成分であれば、
    副交感神経は動眼神経の体性運動神経の下行枝に並走している
    だから、外からの圧迫でない限り、副交感神経線維だけやられることはない。

    今回はICPCに動脈瘤があるけど、反対側だから関係ない。
   
    だから、線維成分ではなく、EW核がやられたんじゃないかな?

    EW核があるのは、上丘レベルの中脳背側だ。」



(2)左眼瞼下垂

指導医「そして、左眼の眼瞼下垂。

    眼瞼下垂と眼裂の狭小化はちょっと違うけど、
    ホルネルなら眼裂の狭小化と言われます。

    左眼が散瞳しているから、ホルネル症候群ではないけど、
    しっかり見極めるなら、暗がりで確認するのがいいね。

    今回も暗がりで確認して、左眼が散瞳していたから、ホルネルではないね。

    眼瞼下垂はこの文脈なら、上眼けん挙筋の不全麻痺でしょう。


    だけど、高齢者の場合、
    もともと腱膜性の眼瞼下垂になっていることもよくあります。
 

    でも今回の眼瞼下垂は急性だと言い切ることができます。

    それはどうしてでしょうか?」


研修医「??もともとの顔を確認したからですか?」


指導医「それもよく行われますが、違います。
    
    病歴です。左眼がぼやっとした、という訴えがあったでしょ?

    左眼がぼやっとしたの正体は、急に起こった左眼の眼瞼下垂だと思います。


    上眼瞼挙筋は動眼神経の体性運動神経成分が支配していますが、
    今回は、他の運動神経成分は障害を受けていません。

    それはおそらく、動眼神経核(もしくは核近傍)でやられているからだと思います。


    動眼神経核は中間核、正中核、腹内側核、腹外側核、内臓性核の5核があり、
    それぞれ血流支配が異なり、側副血行路もあります。

    そのため、動眼神経麻痺と一言でいっても、
   部分的な障害が多く、
   まだらにやられることはよくあるようです


     なので、今回はやたらと難しいのです。」






(3)左目の内転障害

指導医「そして、MLE症候群。これって毎回、考え直さないと、よくわからなくなるよね。
 
    MLFというのは、水平方向に眼球を動かすときに問題になってくるもので、
    動眼神経麻痺とは違います。

    分かりやすくいうと、目の動きは、車の車輪をイメージするといいです。

    右向くと、右眼は外転するし、左眼は内転する。
    逆に、左向くと、左目は外転するし、右眼は内転する。

    車の車輪(前輪)も一緒でしょ。
    右に曲がる時には、右のタイヤと左のタイヤは一緒の動きをする。

    ということは、右と左をつないでいるシャフトが車にはある。

    目にももちろん、あって左右をつなぐシャフト的な役割の線維が、
    内側縦束、つまりMLFです。

    MLFは下部中脳から上部橋までを走行しています。

    今回は一元的に考えれば、
    動眼神経核近くの中脳のMLFが障害されているのでしょう。」







(4)輻輳障害

指導医「じゃあ、最後に輻輳の障害だ。
    MLF症候群の多くは、輻輳はできるって書いてあるよね。
   
    でもこれは障害された場所によるんだ。

   
    そもそも輻輳の中枢はよくわかっていないと言われるけど、
    大まかな流れは分かるよね。

    目の前の近くのものに焦点を合わせるために、
    まずは視覚野(後頭葉)に刺激が入って、その後、色々あって、
    結局、中脳背側の動眼神経核(内直筋亜核)に刺激が入り、
    両側の動眼神経から両側の内直筋に作用して、両目がより目になる。


    ということは、輻輳ができない時点で、
    中脳背側がやられている可能性が高いってことだよね。

    普通のMLF症候群は動眼神経核近傍ではなく、橋で障害されるから、
    輻輳は保たれているけど、
    今回は中脳の動眼神経核近傍のMLF症候群だから、
    輻輳までやられているっているわけだね。」


研修医「なるほどー」


指導医「まとめると、この4つの症状はすべて、
    中脳背側に病変があることを示しています。
    それが急に起こったということは、間違いなく原因は脳梗塞でしょう。
    

    最初のMRIは発症して間もなかったため、写らなかっただけです。
   
    そもそも小さな脳梗塞であり、切り方によっては写らないこともあります。

    ですが、病歴と診察上は、絶対に中脳背側の脳梗塞です。
    
    確かめるために、再度、thin sliceでとりなおしましょう。」


研修医「わかりました。」









   

              入院時               入院翌日



まとめ
・「ぼやっとする」とは何を意味するのかを明確にする
→視野障害?複視?視力低下?半側空間無視?
 今回は眼瞼下垂でした


・眼球運動の水平方向の動きは、車の車輪を思い出す
→前輪をつなぐシャフトがMLF


・動眼神経核・核近傍の動眼神経麻痺は、まだらにやられることが多い
→輻輳のチェックも忘れずに行う

参考文献:神経眼科を学ぶ人のために 医学書院
     イラストでわかる神経症候 丸善出版 ←超お勧めです
     東女医大誌 第59巻 第6号 頁705~716
     神経眼科 35:270~281.2018
     あたらしい眼科 35(3):301~304,2018

2019年12月12日木曜日

症例カンファレンス ~snap diagnosisの本当の意味~

研修医「症例は高カルシウム血症の精査加療目的で入院となった95歳女性です。」
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
症例 95歳女性 主訴:高カルシウム血症治療で紹介

Profile:骨粗鬆症や膝のOAで加療中、ADLはフル、認知症なし

現病歴:来院の2か月前までは食事摂取良好だった
    来院の1か月前より食思不振が出現、食事量に変化はなかったが、
    無理やり食べている感じだった
    経過みていたが改善なし、食思不振が続いていた

    かかりつけ受診し、血液検査にてカルシウムが14mg/dLであり、
    加療目的に当院紹介

ROS:便秘あり、口渇あり、食思不振あり、倦怠感あり、
   嘔吐なし、頭痛なし、めまいなし、
   両膝痛はもともとあり、体重減少なし、黒色便なし、腹痛なし

既往・既存症:骨粗鬆症、腰椎圧迫骨折、膝のOA

内服:エディロール、アスパラCA、ボンビバ、
   ジクロフェナク、オメプラゾール、カロナール
   →過剰内服は絶対ないとのこと

生活:家族と生活しており、ADLはフル

身体所見、バイタルは安定しており、意識レベルは清
見た目はややぐったり
口腔内は乾燥あり
心雑音なし、呼吸音は清
腹部 平坦 軟 圧痛なし
四肢 浮腫なし
関節 手の指は変形性変化あり、両膝はOA様の変形あり

血液検査 Hb9、MCV100、肝胆道系酵素上昇なし
     Alb 3.8、BUN 38、Cr 1.9、Na140、K 2.3、Mg 1.4、Ca 14.5

CT 明らかな腫瘍性病変はみられず

心電図 異常なし

まとめ:超高齢だが、認知症もなく、ADLフルだった95歳女性
    OAで膝の痛みがあり、NSAIDs服用しており、
    骨粗鬆症の治療のため、BP製剤、活性型VD、カルシウム製剤内服中だった
    1-2か月前より、食思不振、倦怠感、便秘が出現
    血液検査にて高Ca血症を認めたため、高Ca血症に起因する症状と疑われた
----------------------------------------------------------------------------------------------------------
研修医「・・・という方です。入院後、補液で徐々に下がり、今は正常値になっており、
    食事も全量食べられています。Kが低いので、Kは補充しています。
    Mgも低かったので、点滴で補正しました。
    血ガスでは、わずかにアルカレミアで、HCO3 28と代謝性アルカローシスでした
    呼吸性の代償は正常でした。

    高Ca血症の原因として、薬剤性が疑われたので、
    エディロールとカルシウム製剤は中止し、
    腎障害もみられたため、NSAIDsも中止しています。
    一応、iPTHも出しましたが、こちらは12pg/mlでした
    正常値でしたが、Caが高いわりに・・・抑制されていない?のかな?
     
    あと、入院後膝の痛みがあったり、手首が痛くなって、偽痛風を疑い、
    コルヒチンで治療中で、こちらは改善傾向です」


ボス「OK、今のプレゼンは自分で何点くらいかな?」

研修医「・・・そうですね、前よりはまとまっていないので、10点くらいですかね。」

ボス「10点満点中?(笑)」

研修医「違いますよ!」


ボス「そうだね、まだ頭の中が整理できていないように聞こえるね。
   入院後、まだK欠乏があるけど、この原因は?」

研修医「えーっと、尿から21meq/Lでているので、尿中から排出されていると思います。
    内服でKを補充しています。」

ボス「じゃあ、FEKやgCr換算は?」

研修医「えーっと・・・」

ボス「まあ、いいんだ。計算は。
   ただアルゴリズムをみると、書いてあるよね。いろんな計算。

   でもここでは、消化管からでるか、細胞内に入るか、腎臓からでるかでしょ
   病歴から下痢はない。細胞内にどんどん入る要素もない。
   だとすると、腎臓から捨てられているのかな。
   でもin不足の要素はあるかもしれないね。

   まず低K血症をみたら、必ずチェックしなければならないことがあるよね
   
   それはMgだ。Mgは入院後どう?」

研修医「補正後、いったん正常値になりましたが、
    また低くなってきて、今は1.7です。」


ボス「Mgの補正をしっかりしないと、いくらKを入れても意味がないんだ。
   だからMgの補正はしっかりしておこう。
   血液中のMgって体全体だと、どれくらいを占めるか知ってる?

   たった1%なんだ。

   ってことは、血液中でMgが欠乏してるっていうのは、
   相当な欠乏だから、一回点滴で補充しても全然足りないんだ

   KとMgの欠乏の原因は何だろうね。お酒は飲まない人でしょ。
   今は便秘だけど、もともと下痢とかあったのかな?」

研修医「もともとまでは聞いてません。」


ボス「了解。あと、Caの高値は薬剤性っぽいよね。
   頻度も多いし。
   
   でもだからこそ注意しないといけない。

  いつも心に薬と結核だけど、
  みんな薬剤性と決めつけてはいけない。

   Caの異常を認めた時には、Pと一緒に語らないとダメなんだ

   Pはどうだった?」

研修医「Pは2.3です」

ボス「ちょっと低めだね。
   それは活性型ビタミンD中毒としてはおかしくない?

   活性型ビタミンDでCaが上がる場合は、Pも上がるよね。
   ということは、iPTHやPTHrPの関与を考えないといけない。

   iPTHのところで、いい戸惑いがあったね。
   Caが高いわりに、iPTHが抑制されていない?、って言ってたね。
   確かに、iPTHは正常値か異常値だけでは語ってはいけなくて、
   文脈によって、その人にとって正常値は異なる。
   ただ今回はそれでも低めだから、原発性副甲状腺機能亢進症の可能性は低いかな


   あとは、Hb低下もあるね。貧血と高Ca、腎障害をみたら、何を考える?」


研修医「多発性骨髄腫ですか?」


ボス「そうだね、ミエローマだね。昔はMPくらいで、出来ることが限られていたけど、
   最近はレナリドマイドとかが使えるようになってきて、
   抑えこめるようになってきたから、見つける意義も出てきたよね。

   ということで、TPとAlbの解離や腰痛はあったのかな?」


研修医「TPは6.8でAlbが3.8なので、あまり解離はないようです
    腰痛もありませんでした」


ボス「OK、まあこれで否定はできないけど、
   積極的に検査をしろ!といっているわけではないよ。
   考えておくことが大事なんだ。」


研修医「わかりました」


ボス「あと、やっぱり、この症例は貧血がおかしい。
   消化管や婦人科の悪性腫瘍からの出血による鉄欠乏性貧血かもしれないね

   そして、その悪性腫瘍がもしかしたら、PTHrPを産生しているかもしれない
  
   でないと、Pが低いのは活性型VD中毒では説明できないからね。

   なるべく、臨床では一元的に考えるのがコツなんだ。
   何次元も考えだしたら、何でもありになってしまう。


   だからどんな症例もまずは一元的に考えられないか?と最初に考える。



   研修医の先生からしたら、僕なんてふらっと現れて色々いってくるただのおじさんでしょ?」



研修医「ふふふ(笑)」


ボス「それでもいいんだ。

   プレゼン聞いて、それってこれだよね!
   っていうのは、今、ほとんどsnap diagnosis で言っているんだ。

   診断する時には、色々な方法があって、一つは仮説演繹法があるよね
   あとはsnap diagnosisとか、徹底的検討法とか。

   じゃあ、一番、失敗する方法は何だと思う?」


研修医「??何ですか?」



ボス「それはアルゴリズム法だよ。
   
   今回も電解質を調べたらあったでしょ?

   こうだったら、こう、みたいなフローチャート的な流れのやつ。
   
   あれが一番危ない。
     
   だって書いてないでしょ。今は便秘だったけど、以前は下痢の症例とか。
   アルゴリズム法やフローチャートは限界があるんだ。

   だから、その流れにのせるために計算をするんじゃなくて、
   
   まず仮説を立てる

   そして、その仮説があっているかを検証するために、計算するんだ。
   矛盾ないか確かめるために。

   順番が逆なんだよ。



  だから、一番大事なのは、仮説を立てること。

  それがsnap diagnosisの本当の意味だよ。


   臨床はあて物ではない。

   snap diagnosisで当たったから、すごい!というわけではない。

   
   まず、snap diagnosisとして仮説を立てて、
  それを検証していく作業の方がはるかに重要なんだ。

  snap diagonosisで当てることを目標にしてはいけない。


   sanp diagonosisはあくまで、検証するためのたたき台として存在しているんだ。


   僕も外来やっていると、小人が7人くらい頭の中にいて、
   それぞれの小人がぎゃーぎゃー言っているんだ
   
   この症例はこれに決まっている!・・・とか
   いやいや、何を馬鹿なこと言っているんだ・・・とか
   まあまあ、いいこと言ってるんじゃない?・・・とか

   そうやって、一度立てた仮説をすぐに小人たちが検証し始めるんだ。

   いるよね。小人?」


研修医「(苦笑い)」


T「もちろん、いますよ。小人ですよね。

 じゃ、お薬出しときますね(笑)

  
 何気にやっているsnap diagnosisはそういう意味があったと言われてみれば納得です。

 snap diagnosisの本当の意味ですね。

 診断の中身よりも、ひとまず立てることに意義がある。


 今回の症例の先生のsnap diagnosisは、
 腫瘍があって、そこからの貧血とPTHrP産生による高カルシウム血症、
 そして、もともと下痢があり、低Kと低Mg血症が起こっている

 ということですね。


 僕の中ではちょっと違っていて、この症例のsnap diagnosisは、

 OAでNSAIDsが開始され、腎障害が起こり、
 エディロールの薬剤性高Ca血症からの食思不振のせいで、
 食事のin takeが低下し、KやMgが低下した
 
 さらに高Ca血症からの多尿のため、
 Na利尿が働き、Kが排泄され低K血症が起こった。

 高Ca血症があると、Mgの腎での再吸収障害があるので、
 低Mg血症も併発した

 貧血は食思不振やPPIからのVB12欠乏かなと。

 そして、今はNSAIDsをきった影響や、
 低Mg血症、入院というストレスがあり、偽痛風が発症している。

 というのが、一元的なストーリーかなと思いました」


ボス「そうだね、そういうストーリーもあると思う。
 
   大事なのはsnap diagnosisが思い浮かんだら、それでおしまいじゃないってこと。 
   
   
   どっちの診断が正しいかとかじゃなくて、
   何でもいいから、仮説を立てることが大事なことで、
   さらに大事なのは、それが正しいかどうかを検証する作業だね。


   どう?いいこと言うでしょ?」


T「はい、ありがとうございました。」



まとめ
・Caの異常を語る時は、Pもセットで


・Kの低下を語る時は、Mgもセットで


・snap diagnosisで当てることよりも、
 最初に何でもいいから
 snap diagnosis(仮説=たたき台)を立てることが重要、
 そしてそれを検証する作業がとても重要


・アルゴリズム法は逆から使う

参照:
カリウムについて
https://dr-note.blogspot.com/2019/07/blog-post_16.html

カルシウムについて
https://dr-note.blogspot.com/2019/07/blog-post_55.html

ビタミンDについて
https://dr-note.blogspot.com/2017/11/blog-post_88.html

皮疹の見方

皮疹の見方 皮疹の見方と言っても状況によって考え方が異なる。 皮疹だけをみてどう考えるかだけではなく、 どんな文脈で皮疹が出てきたか、 が重要である。 我々が皮疹に出会う状況は皮疹と全身症状のバランスによって3つに分けられる。 ① 全身症状がメイン(発熱、関節炎、ショックなど)だ...

人気の投稿