2017年8月27日日曜日

失語について

上手く喋れない人を見たら、

まずは構音障害なのか、失語なのかを見極めが大事とよく言われますが、

その前に、意識障害ではないかという目で見る必要があります


急に喋らなくなった人が実は肝性脳症だった

なんてことはよくあります


なので、喋らなくなったから、失語だ!脳梗塞だ!

と突っ走らず、意識障害をきたす疾患を同時に考えます


意識障害でなくても心因性の反応で、喋らなくなる人もいます


意識障害でなさそうならば、失語 vs 構音障害の鑑別です

構音障害は咽頭や口周りの筋肉がうまく働かず、言葉が上手く出てこない状態です

失語は口や咽頭の筋肉の動きに問題はありませんが、

読む、話す、聞く、書くのどれかがやられている状態です


普通に診察していれば、だいたいどちらか分かりますが、

物品呼称をさせたり、文章を読んでもらったり、復唱させてもいいです


ですが、どちらもかぶっている時もあり、悩ましい時もあります



失語に関しては、よく言われるのは、運動失語と感覚失語です

その見極めは流暢かどうか、努力して頑張って喋っているか、どうかです

努力して、なんとか喋ろうとしている人は、運動性失語です


一方、感覚性失語は流暢にしゃべる事が出来ますが、

情報量は少なく、あまり意味が伴っていません


あまり知られていませんが、失語はfocal signです

つまり脳梗塞の局在診断に使える徴候です


MCA領域にブローカ野もウェルニッケ野も存在するため、

中大脳動脈症候群とも考える事ができます

皮質がやられることで生じるため、多くは塞栓性の脳梗塞で見られることが多いです

穿通枝の梗塞で起こるラクナの型は幾つかありますが、

ラクナ梗塞で失語だけ出るなんてことはありません

まずはこの原則を知っておく必要があります



しかし、現実は甘くはありません


前大脳動脈や後大脳動脈の梗塞でも失語が生じることはあります

さらには穿通枝の梗塞でも失語は起こりえます

そういったものは皮質下性失語と呼ばれます


代表的なものに視床の障害で起こる視床性失語というものがあります

視床性失語の最大の特徴は、ボソボソ喋り、自分からはほとんど喋らないことです


内包膝部の梗塞でも同じような失語になるのは、

視床と大脳皮質をつなぐ経路であり、視床がやられたのと同じことが起こるからでしょう

視床がやられると、様々な症状がでるので、いまいち、

局在診断がはっきりしない時は、視床の梗塞かもしれません


特に急に元気が無くなった人を見たら視床梗塞を疑います




急に出た失語の場合は、脳卒中が鑑別ですが、

緩徐に進行する失語を見たら、変性疾患や腫瘍性病変、脱髄疾患を考慮します


変性疾患でも病歴が上手くとれない場合は脳梗塞と診断されてしまう人もいます


認知症の中には、失語がメインにくるものもあります


意味性認知症、進行性非流暢性失語、logopenic progressive  aphasiaがあります






これらは色々なパターンの失語でくるので、

古典的な分類の〇〇失語とは分類が出来ません


なので無理やり型にはめようとせず、

そういった失語がメインの認知症もあるのだということを知っておきましょう

1 件のコメント:

  1. ノートいいですね!こういう人間味のあるものの方がすっと入ってきます。勉強させていただきます🎵

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