2018年11月18日日曜日

頚椎症

頸椎症

手の痺れをみたときの鑑別疾患の筆頭は頚椎症です

頚椎症は加齢変性が原因で、神経の周りの組織が膨隆や肥厚して、

神経根や脊髄を圧迫することで、症状が出現します

症状からみると、運動障害、感覚障害、運動+感覚、特殊型の

4つと覚えておくと、分かりやすいです

病変の主座から考えると、

神経根症と脊髄症候にわけられます

脊髄症候は髄節と索路症候に分かれます

脊髄は圧迫を受けると、灰白質の前角から障害を受けることが多く、

徐々に障害範囲が広がっていきます

服部分類ではⅠ→Ⅱ→Ⅲへと進んでいくとされています




・「首っぽいね」の一歩先へ

痺れの鑑別の第一は、頚椎症ですが、

「首っぽいね」

で終わらせないように、

頚椎症を詳しく考えていきます


C7の神経根症状がメインだけど、

腱反射のdiscrepancyがあるから、ミエロパチーも加わっているかな・・・的な感じで、

病変部位を当てられるようになりましょう

内科医は中枢神経、脳神経のとり方はお作法で教わりますが、

神経根やミエロパチーを疑った時の診察は苦手な感じがします


頚椎症を疑った時にとる病歴や診察や5Dと言われます




今は売っていませんが、「臨床神経学の手引き」という名著で、5Dといわれています

なぜか、ネットで検索してもヒットしないので、あまり有名ではないようですが、

非常に有用です

いつも、5Dって結局何だっけ?

となってしまうので、今回まとめました

そこで、新たに7Dと提唱したいと思います

頸椎が7個あることにちなんでいます





この7Dは神経根症候ででるわけではなく、脊髄症候ででるものが多いです


ですが、痛みに関しては、神経根症候であり、

痛みが初発の場合は、神経根の障害であることが多く、

神経根か、脊髄症候かの鑑別に有用です



痛みの部位によっても、病変部位の推定が可能ですが、

急性に出現していれば、まずはACSの除外が必須です

また胆石発作でも同様に肩に放散するので、

内臓臓器の除外から始めます




・頚椎症の部位診断のステップ

①神経根か、脊髄症候か

→痛みの有無で、神経根か脊髄症候かを大まかに予測する

ジャクソン、スパーリングサインで、圧迫を誘発して、

症状の誘発をさせることもあります

ですが、手技自体で障害を悪化させるので、

障害が明らかな場合はあまりやらない方がよいかもしれません


軽く後屈させたり、いきむ動作や咳で痛みが悪化する場合は、

それ以上の誘発は不要だと思われます



②病変の高さはどこか

→支配している筋肉の萎縮・筋力低下や腱反射をとることで予測できます

 感覚の支配領域からもある程度は予測できます


腱反射で特に上腕二頭筋腱反射をとったら、指が屈曲した →C5病変

腕橈骨筋反射をとったら、指が屈曲した →C6病変

という奇異反射がみられることが多く、その場合は病変部位の推定が可能です


③脊髄症候ならば、灰白質(髄節)の障害か、白質(索路)の障害か

→下肢の所見や排尿障害の有無から、

 灰白質から白質のどの部分まで障害されているかを考慮します


下肢の腱反射が亢進したり、異常反射が出現していれば、索路症候であり、

服部分類Ⅱ以上となります

手だけの巧緻運動障害であれば、服部分類のⅠでとまっている可能性が高いです



・Discrepancyについて

見慣れていないと、出現してもわかりません

自分も最初は、この所見が何を意味しているかよく分かりませんでした

なんかいつもと違う動きだなあ、と感じた時は、だいたい異常です


それぞれの反射が、Cの何番に対応しているかを知っておくと、

病変部位の推定に役立ちます






・画像との比較

自分の診察で、

右・左の

C〇の

神経根・脊髄障害だ

と推定できるようになれば、

つぎは画像と比較してみます

画像と自分の推定病変部位が合致してこそ、

診断がつきます

しかし、画像で大した所見じゃないなあ

という時も往々にしてあるので、自分の所見を信じることも重要です



・ヘルニアとの違い

あまり意識しなくてもよいとは思われます

鑑別するメリットはあまりないと思います



頚椎症の経過は色々あることを知っておいたほうが良いとは思います

後屈や転倒で、悪化することが多いので、

症状が悪化したタイミングの前にそのような動作がなかったかどうかを、

しつこく聞くことが重要です


しかし、後屈は生活動作の一部なので、病歴聴取にもこつがいります


例えば、読書を腹ばいでしていなかったか、天井の電球を交換しなかったか

美容室で髪を洗わなかったか 

という聞き方をしてみるのも有用です



治療に関しては、経過の図の通りであり、

自然に軽快する症例もあることから、慎重になることが多いです

手術適応は整形外科医にお任せします


内科医にできることは、他の疾患の可能性をつぶすことです

特に運動障害だけでくるパターンの場合は、ALSと非常に紛らわしいです


痛みが先行し、その後、筋力低下や萎縮がくる場合、

神経疼痛性筋萎縮症との鑑別が必要になります


痺れと運動障害が急性に進む場合は、GBSやVB12欠乏が鑑別になります



頚椎症であることが疑わしければ、

悪化させないような、日常生活の指導がメインとなります


リリカ®やメチコバール®いれて、終わりではありません



頚椎症のまとめ

・痺れをみて、「首っぽいね」としない

・その先に行くには、頚椎症のどこに病変部位があるかを推定する

・推定するには、7Dを意識する

・病変を推定しないと、画像が読めない


1 件のコメント:

  1. 参考文献:臨床神経2012;52:469-479
    →頚椎症の診察について学ぶなら、これだけでよいくらい、非常にわかりやすいです

    返信削除