2019年5月9日木曜日

毒素病態の難しさ

医者になってからまず出会う壁は、診断の難しさです

実際の患者さんの症状は多様であり、

典型的な疾患のプレゼンテーションで来る人は、稀です

時間が経てば、症状が揃ってわかりやすいのですが、

行き着くところまで行き着いていない時の状態は、

診断がとても難しいです


しかも軽症の場合、なんだかよくわからなかったけど、

よくなってしまうこともあります


そんな代表的な病態が、毒素が悪さしている病気です

例えば、TSS、TSLS、破傷風、ボツリヌス、ブ菌の腸炎、CDIなどです

これらは、軽症であれば、無治療でも治癒することもあるでしょう

そんな時は診断をつけることは困難です


毒素性の病態の難しさは二つあります

一つ目は、重症度の幅が広いことです

CDIであれば、抗生剤をやめて自然に下痢もよくなる人もいるでしょう

一方で、中毒性巨大結腸症になり、亡くなる人もいます


TSSであれば、バイタルは安定しているが、

充血と下痢がなぜか続いている

というフェーズもあります

ショックや臓器障害もなければ、TSSともいえず、

そういう場合は、TSS崩れの状態だね


と思って経過を追います



破傷風も肩こりくらいで終わっている人もたくさんいると思われますが、

そんな軽症の破傷風の人を診断する労力もお金も時間もありません


なので、軽症者を捕まえて、診断に労力を使っても、誰も得しません



大事なのは、

そういう自然軽快しうる毒素性病態があるんだ

ということを認識しておくです


原因のよくわからない腸炎や筋肉痛を見たら、

それって、毒素かも

と思いをはせることができます





二つ目の毒素病態の難しさは、

重症になった場合でも、

局所所見が地味な割に、

全身状態やバイタルの崩れが派手な点です

ぱっと見、そこまでドレナージは要らないかな

と思ってしまいそうな傷でも

そこに潜んでいる菌が、

毒素を出していることで起きる病態です


なので、

膿があろうがなかろうが、

菌がいそうな部位を洗ってこなければ治りません



そして毒素病態が面白いのは、ドレナージをすると、

みるみるよくなることです


ずっと下痢をしていた人も、

ドレナージが終わったら、ぱたりと下痢が止まったり、

バイタルがみるみるよくなることを経験します


毒素病態は

菌量は、問題ではありません

一匹でも残っていれば、起こし得る


という病態ですので、

ちょっとでも怪し場所があれば、積極的にドレナージをお願いしましょう






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