2019年7月9日火曜日

無菌性髄膜炎の行き先

髄膜炎の対応は大きく二つに分かれます

本気の対応と念のため対応です

細菌性髄膜炎はウイルス性と違って、

重症度が違うので、誰がみても髄膜炎だ!

という感じになるので、

細菌性髄膜炎を疑った場合は、本気対応になります

一方、ウイルス性の場合は、

外来でもよくみるので、

明らかにウイルス性の髄膜炎が疑われれば、

ルンバ―ルしないこともあります


頭痛や発熱が続くようであれば、しますか?

みたいな感じのフォローになることが多いです




一番、難しいのは、高齢者の発熱・意識障害でしょう


脳梗塞後遺症で、ADLも悪い高齢者

誤嚥性肺炎が疑われるような肺炎はある

しかし、いつもより意識が悪い

肺炎からの敗血症による意識障害でも矛盾はしないが、

髄膜炎も頭によぎる


どうしよう・・・


本気で髄膜炎対応すべきか?


というのが、一番多いシチュエーションだと思います

結論からいうと、

このプレゼンテーションに本気の髄膜炎対応はしていません

あまりにもcommonだからです

そして、たいてい敗血症性脳症で

髄膜炎ではありません


(もちろん時間と人が潤沢にあれば、

本気の髄膜炎対応を行ってもよいと思いますが、

本気の場合、tPAモード的に人が必要です)


では実際はどうするかというと、

とりあえず、CTRX2gで治療を開始します

PRSPやリステリアの可能性は低いと思われるので、

積極的にVCMやABPCは最初からは入れません


その後、経過みて改善がなければ、念のためルンバールします

例え髄膜炎だったとしても、

CTRXをしっかり髄膜炎doseで入れておけば、

大けがはしないので、

高齢者の髄膜炎を疑った時の対応では、いい落としどころかと思っています







本気の髄膜炎対応

つまり細菌性髄膜炎を疑った場合の対応です

この場合は、簡単です


全て決まっているので、あまり考えることはありません

大事なのは、やるかやらないかです

脊髄反射的に進んでいくので、

反射的にできるようにしておくことが大事です


アナフィラキシーの時やtPAの時の対応と同じです

体にしみこませて、自然にできるようにしておきましょう


何より大事なのは、血培をいち早くとることです

そして、ルンバールは後でいいという事です



もう一つ注意点があります

それは、ステロイドをいれるかどうかと、

入れるタイミングです

抗生剤より先か同時に入れることになっているので、

忘れがちなので、覚えておきましょう


抗生剤が入っていた場合は、ステロイドは入れませんのでご注意を


無菌性髄膜炎の場合

ルンバ―ルの結果、無菌性髄膜炎パターン(単核球優位、グラム染色で菌陰性)だった

という時が最も悩ましいです



この場合、

髄膜炎ではなく、脳炎や髄膜脳炎の場合もあるので、

痙攣や意識障害があれば、脳炎として切り替えて対応をしたほうが良いです


脳炎であれば、なんといっても早めにヘルペスをカバーするために、

アシクロビルを投与します


髄液のPCRや抗体も提出します

ですが、HSVのPCRは48時間以内の場合、

陰性になることがありますので、

2-3日後に再検したほうがよいと思われます




脳炎ではなくて、髄膜炎の可能性が高ければ、

①最初の思考は、細菌性髄膜炎として治療するかどうかです

リステリアやマイコプラズマは有名ですが、無菌性髄膜炎パターンになることがあります




up to dateにも、患者さんの状態や背景疾患によっては、

細菌性髄膜炎としてエンピリックに治療するのも選択肢になると書いてあります



そして、万が一、実は前医で抗生剤が入っていた!

という情報が飛び込んできたら、

やむなく、細菌性髄膜炎として対応せざるを得ない状況になります


往々にして、髄膜炎対応の最初は、情報があまりありません

そんな中で、決断を下していなければなりませんので、

途中で軌道修正はよくあることです


②抗生剤を入れるかどうか悩んだ後は、

アシクロビルを入れるかどうかを考えます


HSV-2やVZVは髄膜脳炎を起こす代表的なウイルスであり、かつ治療が可能です


アシクロビルを入れるかどうか悩んだ後は、

ゆっくり考えます




無菌性髄膜炎の行き先

無菌性髄膜炎が治らない時は一番困ります


まるで、細胞性免疫不全者の発熱みたいな感じです

FNは反射的に治療しないといけませんが、

細胞性免疫不全者の発熱に対しての治療は戦略が必要です


その構図ととても似ています


無菌性髄膜炎パターンは、とてつもないほど鑑別が多いので、

一つ一つ、つぶしていくしかありません

検査を銃弾爆撃的に出せばいいというものでもなく、

検査前確率をいかに高めるか

ということが大事です


そして、最終地点は結核性髄膜炎だと思っています






無菌性髄膜炎まとめ
・髄膜炎対応には二種類ある
→本気の細菌性髄膜炎対応と念のため対応

・細菌性髄膜炎を疑ったら、反射的に動けるように

・無菌性髄膜炎の時は、戦略的に
→治らなかった時の行き先は結核性髄膜炎

参考文献:レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版
     up to date  Aseptic meningitis in adults

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