老年医学・高齢者医療で大事にしていることは、この3つです
①2つのレール
②適切な仮説を立てて、仮説に沿って進んでいくこと
③診断や治療を目的としてはいけない
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①2つのレール
今まで元気であったご高齢の方が入院しました
だんだん医者として慣れてくると、
その患者さんの最後の落とし所まで想像することができるようになります
高齢者が食べられなくなった場合、血液検査やCT検査、胃カメラはすぐに行われます
そして薬の見直しも重要です
参考:高齢者が食事をとれなくなったら
それらの検査で原因がわからなかった時の落とし所は、
副腎不全やうつ病、結核性髄膜炎といった疾患が考えられます
本気で調べるとしたら、何をするかをまずは考えます(医療のレール)
次に、その全てを実行するのではなく、
患者さんの希望や患者さんのこれまでの人生を聞きます(患者さんのレール)
この2つのレールを重ねていくイメージで検査を進めていきます
この考え方は家庭医療的な学術用語でいうと、
PCCM(patient-Centered Clinical Method)、
患者中心の医療の方法と呼ばれます
ですが、いきなりPCCMを全て理解するのは難しいので、
まずは2つのレールという考え方を身に付けてください
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②適切な仮説を立てて、仮説に沿って進んでいくこと
原因不明な状態や今後の見通しが立ちにくい状態では、
仮説を立てるというのは、非常に大事です
近未来を想像できないと手探りの毎日になってしまい、
患者さんも家族もスタッフも不安になります
そんな場合は得られた情報から、適切な仮定を立てます
現状ではこの疾患の可能性が高いので、こんな治療を試してみます
〇〇くらいで改善が見込まれますので、その時点で再評価します
というような感じで、ある程度の具体的な見通しを立てることが大事です
看護師さんとうまくコミュニケーションがとれない先生は、
この仮定ができていないことが多いです
先生が何を考えているかわからない、
今後の予定を教えてください
とよく言われる先生は注意が必要です(自分もですが・・・反省)
仮説を立てる時は、なるべく良い仮説を立てましょう
みんなが頑張れる仮説がいい仮説です
高齢者が食べられなくなった場合、
本当に何を調べても原因がわからない時には、5つ考えるようにしています
(あんまり大きな声では言えませんが・・・)
① アパシーによる食欲低下:アリセプトを試す
②パーキンソニズムによるうつ傾向・食欲低下:Ldopa製剤を試す
③高齢者うつによる食欲低下:抗うつ薬(リフレックス®️など)を試す
④機能性ディスペプシアやGERDによる症状:ガスモチン、六君子湯を試す
⑤副腎不全による症状:ステロイドを試す
(もちろん、Lapid ACTHできる状況なら診断確定させてから。
ただ寿命が限られており、余命が1ヶ月以内と判断した場合は検査せずにいれる場合もあり)
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③診断や治療を目的としてはいけない
昔の自分は、病気をなんでもかんでも診断したり、
病気を治療することは、患者さんのためになっている
と 信じていました
今になって考えれば過剰であったと反省しています
診断をすること、治療をすること、
それはとても素晴らしいことですが、それが医療の目標ではありません
そこは氷山の一角で、大事なことはもっと下にあります
本当の目標は、患者さんや家族が幸せになるということです
診断や治療は患者さんが幸せになるための手段であって、
目的ではありません
「人をhappyにする」という信念は、
学生時代に行った北海道の実習先の病院の先生に教えてもらいました
いったん忘れかけていた信念ですが、また思い出しました
人との出会いや言葉の出会いは大事ですねえ(しみじみ)
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