2020年12月1日火曜日

急性仙腸関節炎 〜化膿性・化膿性・化膿性〜

 仙腸関節痛を疑った場合に次に考えることは、関節炎かどうかです


つまり、画像で炎症を示唆する所見(USで液体貯留、MRIで高信号)があれば、

仙腸関節炎を疑います


どこの関節も同じですが、

関節痛と関節炎は天と地ほど違いますので、ここは大事なところです



そして、関節炎であれば急性か慢性かを考えます

病歴ですぐにわかるので、ここは難しくありません


慢性の仙腸関節炎の鑑別は、脊椎関節炎(強直性脊椎炎、乾癬、IBD関連など)が多いので、

鑑別は難しくはありませんが、急性の場合は鑑別が難しくなります



急性仙腸関節炎


なんと言っても一番に考えるのは、化膿性の仙腸関節炎です

それ以外には、結晶誘発性(CPPD、痛風)のこともありますし、

外傷や妊娠によって誘発されたり、腫瘍に随伴して起こることもまれにあります



ですが、頻度的にも疾患の重大性からも、

急性の仙腸関節炎を見たら、まずは化膿性の仙腸関節炎を疑うべきです



化膿性の仙腸関節炎を疑うポイントはいくつかあります

・20ー30代の若年女性に多い

・かなり急激な発症で、激痛で身動きが取れない

・NSAIDs の効きが悪い

・他の感染症(尿路感染症、皮膚の感染など)が先行していたり、伴っていることがある

・全身の炎症所見(発熱、CRP上昇)がみられることが多い



化膿性の仙腸関節炎のリスクファクターがあります

・IV drug user
・アトピーがある人(特に小児)
・妊娠


診察では、感染性心内膜炎が原因のこともあるので、

他の関節に所見がないかをチェックしたり、心雑音を聞いたり、

塞栓兆候がないか、目や口腔や手掌・足底のチェックが必要になります


原因微生物は、MSSAが最多です

他には連鎖球菌や緑膿菌、大腸菌、クレブシエラなどです

ブルセラも古典的に有名ですが、かなりまれです


原因微生物は何でもありと思っておいた方が良いですが、

どうしてもエンピリックにいかないといけない時は、

まずはMSSAをしっかりカバーする抗生剤を選びましょう


化膿性仙腸関節炎のいやなところは、血液培養で菌が同定できないことがあることです


感度は報告によっては、50%前後とされており、

関節穿刺の関節培養は75%くらいとなっています


出来る限り、原因微生物を捉える努力は必要です



なぜなら、長期的な抗生剤治療が必要になるからです

エンピリックに治療する疾患ではありません


が、放っておくと敗血症性ショックになったりすることもあり、

救命のためにはエンピリックに治療することもあります



まとめ

・急性の仙腸関節痛を疑ったら、急性の仙腸関節炎かどうかを考える

→画像で所見がある時は、炎症病態の可能性が高い


・急性仙腸関節炎であれば、まずは化膿性の仙腸関節炎を疑う

→explosive onsetと表現されるように、感染症の病態にしては経過がかなり急激で痛みが強い


・化膿性仙腸関節炎は血培が生えにくく、繰り返し取ったり、関節穿刺を行い関節液培養で菌名を同定する努力が必要

→治療期間が長期であり、エンピリックに治療することはお勧めできない


参考文献:

Clin Rheumatol(2016)35:851-856 →急性の仙腸関節炎のレビュー

Reumatology 2007 ;46:1684-1687 → 子供と大人の化膿性仙腸関節炎の違い

Infect Dis Obstet Gynecol 2003;11:53-57    →妊婦の化膿性仙腸関節炎15例のまとめ




0 件のコメント:

コメントを投稿