aPTT 混合試験結果判明後、本患者はプレドニゾン治療を開始した
胸部、腹部、骨盤の CT では、潜在的な癌所見は認められなかった
入院 3 日目に、下肢に新規の斑状出血が出現したため、FEIBA 単回投与施行し、
その後は新規病変出現や拡大はなかった
低用量シクロホスファミドがレジメンに追加され、
患者の第 VIII 因が 10% で aPTTがほぼ 正常範囲となり、入院 10 日目に退院した。外来では免疫抑制療法を漸減し、患者は完全寛解を維持している。
最終診断:後天性第VIII因子インヒビター
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●様々な出血
斑状出血は、血管周囲からの皮下血管外漏出、平坦で、境界明瞭な濃い紫色、変色する。
活動性紫斑病 (老人性紫斑病) は、日光暴露による、高齢患者の前腕と手に斑状出血斑紋
日光暴露老化で皮下脂肪組織量減少、血管が脆弱となる 通常 1 ~ 4 cm に過ぎない
血腫は、血管外腔の血液集積。深部組織血腫は見えない、皮下血腫は隆起、周囲に斑状出血
原因には外傷と自然発症がある
高齢者虐待(米国)では、60 歳以上の 10 人に 1 人が何らかの形で経験
筋肉血腫危険因子:抗凝固剤(最多)高齢、女性、高血圧、慢性腎不全、末梢血管疾患病歴
●止血について
①一次止血(第一次血栓形成(血小板と血管が関与))点状出血を伴う皮膚粘膜出血
②二次止血(フィブリン関与の血腫形成) 凝固因子が関与、関節・筋肉血腫を惹起。
●後天性aPTT 延長
① 抗凝固剤、②LAC、③VWF欠乏症、④ VIII、IX、XI、 XII 因子 インヒビター等
抗リン脂質抗体症候群での、筋肉の自然出血の報告はない。
VVFは第 VIII 因子と直接相関 aPTT延長 は、VWF 因子が20 ~ 30% 未満で延長
後天性VWF欠乏症は、リンパ増殖性疾患、自己免疫疾患、心臓病等に合併し
後天性第 IX 因子欠乏症はまれ、通常分娩後女性
後天性第 XI 因子および第 XII 因子欠乏症は出血(傾向)は示さない。
●後天性第 Ⅷ因子インヒビター(後天性血友病 A )
第 VIII 因子に対する自己抗体、数週間から数か月後に症状を呈する。
診断時年齢の中央値は 78 歳。高度の出血(症状)を呈し、筋肉内出血もある。
がんや自己免疫疾患の合併例もあるが、症例の50%以上では原因不明である。
年間発生率は0.1 ~ 1.5 /100 万人 、凝固検査のアーチファクトがよくある
診断
Ⅰ:抗凝固剤暴露(ヘパリン他)の除外
ヘパリナーゼによるヘパリン消去後、① aPTT 再検 ②TT、③抗 Xa 検査
Ⅱ: aPTT mixing study
① aPTT正常: VIII 因子、IX 因子、 XI 因子、 XII 因子等の欠乏を示唆す
② aPTT 延長:インヒビターの存在を示唆
Ⅲ:第 VIII 因子インヒビターを Bethesda アッセイで定量化
BU で表示され、第 VIII 因子活性の 50% を中和するインヒビター量を示す
治療
①凝固カスケードにおける危機的な出血回避目的で、薬剤使用による止血達成
②インヒビター除去目的の免疫抑制剤の投与
後天性凝固因子インヒビターを有する患者への免疫抑制戦略は、グルココルチコイド療法が基本となる。シクロホスファミド追加で、一次免疫抑制後応答が加速し、完全寛解率の大幅な上昇に繋がる。
リツキシマブも使用されているが、リツキシマブ追加での初回治療奏効率は、グルココルチコイド使用の場合と同等である 。
③原疾患(undrling cause)特定
第 VIII 因子補充法:①デスモプレシン②第 VIII 因子濃縮物輸血
高力価患者 (>5 BU) や保存的管理でも出血持続する場合
① 遺伝子組換え第 VIIa 因子や
② FEIBA などのバイパス剤(bypassing agent)
③ 抗線維素溶解薬 (アミノカプロン酸やトラネキサム酸など) は補完療法14,15、
④ 組換え型ブタ第 VIII 因子
⑤エミシズマブ
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個人的に疑問だったのは、なぜ前腕にできたか?でした
後天性血友病の好発部位は臀部や腸腰筋だと思っていたので、
前腕にできる理由がわかりませんでした
ただ、本文にも書いてありますが、高齢者虐待であれば、確かにありうるのかなと思いました
虐待まではいかなくても、高齢者は腕を引っ張ったりされやすく、
知らず知らずに外傷を負っているのかもしれません
後天性血友病は治療が遅れると出血して死んでしまう病気なので、
なるべく早期に診断し、治療をする必要があります
バイパス剤は普通の病院にはまず置いていないので、
取り寄せに時間がかかることもしばしばです
後天性血友病は、止血のためのバイパス剤と免疫抑制剤など思い切った治療が必要なので、
専門家の先生のいる病院に送った方が良いと思います
ただし、後天性血友病は高齢者の病気です
出血の影響で状態が悪いと、送ることもできずに、
そのまま治療せざるを得ない時もありますので、今回の症例の流れを知っておくと良いのかなと思います
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