2022年2月26日土曜日

透析とは 〜飛行機を手動で飛ばしているようなもの〜

透析を勉強するときに必ず出てくるのが、濾過と拡散の原理です

ですが、原理の段階で力尽きてしまう人が多いのではないでしょうか


透析の原理はさておき、透析の概念について自分なりの見解を述べたいと思います



透析室に初めて入った時に既視感がありました



それは、飛行機の中に似てるということでした



飛行機に入る前のチェックインのように、
透析室に入る前に列を作って並び、体重を確認しながら決められたベッドにいきます

ベッドで横になって、寝ている人もいれば、TVを見ている人もいる
まるで透析室は機内のようでした


透析が終わったら、目的地に到着した乗客のように
みなそれぞれの日常へと帰っていく・・・


透析室はまるで飛行機の中みたいだ・・・

というのが、透析室の第一印象です


この第一印象はあながち間違っておらず、
医師は機長、ナースはCA、MEは整備士のように見えてきます


機械を扱う世界はどこも同じだなあと思いました


     



透析を飛行機に例えると、透析の導入は離陸に相当します


飛行機が途中で着陸することがないのと同じように、

透析を一旦始めた場合、途中で止めることはほとんどありません

透析を終了するタイミングは着陸に相当します



飛行機が飛んでいる間は維持透析に相当します


フライトを快適にするのが、機長やCA、整備士の仕事であり、
維持透析を快適にするのが、透析医師やナース、MEの仕事です


飛行機はほとんどが自動で操縦できますが、
透析は人の手による調整が必要になります


透析モード、DW、除水速度、ダイアライザ、QB、QD、透析の温度、透析時間、抗凝固薬など毎回確認が必要です



患者さんは機械のように決められた動きや生活をするわけではありません


食事や塩分の量も毎回違いますし、薬の飲み忘れがあったりします
年をとってくれば、食が細り体重が減ってきたりします

日々、体内の変化に合わせて、透析の設定を変えていかなければなりません


このようなプロセスは「透析処方」と呼ばれます



患者さんの現時点の体調に合わせた透析処方を行うことが重要になります

適切に透析処方を行ったとしても、ハプニングやトラブルはつきものです



短期的なトラブルでは、血圧が下がった、KやPが上がった、BNPが上がった
中期的なトラブルでは、透析アミロイドーシス、心不全、脳梗塞、シャントトラブル
長期的なトラブルでは、フレイルが進行し生活ができなくなってきた、食事がとれない


といったトラブルにも対応していく必要があります



もう一つの仕事は途中で墜落させないことです

寿命を真っ当できるように、なだらかに着陸にもっていくのも大事な仕事です




腎臓を守れなかったかわりに、

命と生活と人生を守るのが透析医師の仕事だと思います





透析では「至適透析」を目指そうといわれます


至適透析とは、生体内環境が可能な限り正常に近く、
死亡や合併症をきたすことなく、長期的な透析患者の生命予後を良好に保つ透析

のことをいいます

つまり、命と生活と人生が守られた透析だと思います


至適透析のためには、医学的な視点と患者さんの視点の双方からみて、
最適である必要があります



検査データだけ完璧でも、患者さんが透析終わりにぐったりして、
一日何もできないような状態では至適透析とは言えません


逆に患者さんは何の症状もなく体調はいいというけれど、
BNPが上昇し続け、DWまで到達しないような状況も至適透析とは言えません


そう考えると、至適透析に至っている人はごくわずかではないでしょうか



 

まとめ

・透析室は飛行機内と似ている

→快適なフライト(維持透析)のために医師、看護師、MEが協力して働いている


・透析が始まったら、途中で終了することはほぼない

→途中のフライト(維持透析)を快適にするためには、短期的、中期的、長期的なトラブルに対応していく


・至適透析を実現するためには、医師と患者さんの両方の視点から最適である必要がある

→透析医師は腎臓の代わりに命と生活と人生を守っている

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