2019年7月19日金曜日

鈍的脳血管障害 治療編

では実際に鈍的脳血管障害が見つかったらどうするかをみていきます



①部位の同定


まずは、無症状のこともあるので、

一か所みつけて満足しない、ということが大事です

両側のこともありますし、

椎骨と内頚動脈の両方に損傷があることもあります

②Denver 分類

スクリーニングでも出てきたDenverです

今度はCTAでの血管の形態の評価を行います


ですが、Denver分類にはありませんが、

外傷後の攣縮という病態はあると思っています



しかしその時点では、攣縮なのか、壁内血腫なのか、解離なのか

の評価は難しいと思われます


外傷診療の肝は、

時間とともにダイナミックに状態が変化していくことです

攣縮なのか、解離なのかは、フォローのCTAで判断していきます



②Denver 分類

Grade1は壁肥厚や解離によって、狭窄が25%以下に起こるものです


その場合、脳梗塞の発症頻度はとても少ないです


Grade2は狭窄が25%以上になっているものです

Grade2になると、脳梗塞の発症率が跳ね上がります


Grade1や2の時に早期発見を行い、ヘパリンを投与することが、

海外のガイドラインやuptodateで、とても重要と強調されています








Grade5で生き残れる人はほぼいません


治療

Gradeが分類できれば、それぞれに対して治療法が推奨されています

歴史的にヘパリンが用いられることが多いようです


椎骨動脈解離の時の治療の混沌としているのに比べると、

圧倒的にヘパリン推しなのが、意外でした


報告をみると、ヘパリンの使用で恐ろしいほど、

脳梗塞が減っています(発症率が、1/10とかになっています)


抗血小板でも同等の成績を残している報告もありますが、

今後、手術になった場合、ヘパリンであれば、すぐに切れるのが利点のようです


ですが、日本の文献では多くは抗血小板薬で治療が行われているのが、

散見されます

日本人は海外の人と比べて、脳梗塞のリスクが低いという推察がありますが、

実際どうなのかは、よくわかりません(日救急医会誌 2009;20:212-20)


なので、毎回、症例ごとに整形外科と脳外科Drと相談して、

決めていくしかなさそうです


個人的には、頸椎骨折があれば、

安静が強いられることも多いと思うので、

その間はDVT予防にヘパリン皮下注を行うので、

それくらいならやってもよいのでは、と思います


脳梗塞が発症するのは、受傷後10-72時間以内が多いので、

せめて3日間くらいは、抗凝固しておきたい気もします


手術を控えているなら、ヘパリン持続で

手術がないなら、ヘパリン皮下注射で

が落としどころではないかと思います


内科医ができるのは、このくらいで、

本当に閉塞しかかっていたり、仮性動脈瘤を形成している場合は、

血管内治療が選択肢になります





鈍的脳血管障害 治療まとめ
・CTAでDenver Gradeをつける

・歴史的にもエビデンス的にも、ヘパリン推し
→日本人のデータはあまりないので、注意

・脳外科がいないと、いざとなった時に厳しい
→tPAが使えないので、血管内治療をしないといけない


参考文献:Uptodate

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