超高齢者の場合、意識障害がそもそもあるのかどうかの判断が非常に難しいです
そこで有用なのは、もともとのベースとの比較です
小児診療の時に大事なフレーズがここでも生きてきます
「いつもと比べて、どうですか?」
これが超高齢者の診療でも非常に重要です
超高齢者の場合、認知症や脳梗塞の影響で意識レベルのベースは色々です
今、目の前の患者さんが、もともとの意識レベルなのかどうか我々にはわかりません
なので、「意識障害」の有無を確認するために、普段をよく知る人から話を聞きますが、
普段を知る人は、家族とは限りません
月に1度しか会わない家族よりも、ケアマネや訪問看護、ヘルパーさんの方が、
普段の状況をよく知っていることもあります
普段をよく知っている人から、「いつもと様子が違う」ということを聞き出せたら、
今度は具体的に「何が違うのか」を聞き出します
特にADLや食事量、行動、発話量に注目します
「いつもと様子が違う」=「意識障害」ではありません
高齢者の場合、「意識障害」というカテゴリーで考えた方が良いのか、一度立ち止まる必要があります
私たちは、目の前の患者さんのプロブレムを「あるカテゴリー」に入れることで、
そのカテゴリーの中で、診断までアプローチしていきます
胸が重苦しい・・・と言っている患者さんの場合、
我々は「胸痛」というカテゴリーで考え、「心筋梗塞」まで診断していきます
ここにピットフォールがあります
「失神」のカテゴリーで考えていたら、実は「意識障害」だった
「意識障害」のカテゴリーで考えていたら、実は「失語」だった
「認知症」のカテゴリーで考えていたら、実は「高度難聴」だった
「急性の意識障害」のカテゴリーで考えいてたら、実は「慢性の意識障害や認知症(そもそも変化なし)」だった
というように、
「カテゴリー」を入れ間違えてしまうと、我々は診断を誤ります
超高齢者の意識障害で、救急外来のセッティングで行き着く先は、非痙攣性てんかんです
非痙攣性てんかんはよく見ると、小さな震えやぴくつきがみられることが多く、
その目で見ることが重要です
実際の対応
超高齢者診療で大事なことは、結局、よくわからなかったけど、
時間が経ったら治ってしまうことが多い、という事実です
救急外来の対応としては、
①〇〇対応(tPA対応、髄膜炎対応、緊急カテ)や敗血症のような緊急で処置や治療が必要になる疾患を除外する
老年症候群としての意識障害の場合、
胸痛がなくて心筋梗塞だったり、発熱がなくても敗血症ということはよくあります
やや網羅的になるかもしれませんが、緊急事態でないということは確認しましょう
②緊急で対応が必要な疾患ではない場合は「時間」に身を委ねる
緊急で処置や治療が必要な疾患ではなければ、
軸足をどこかに置いて、ゆっくり腰を据えて待ちます
例えば、尿路感染症疑いで脱水傾向もあり、意識障害を起こしていると思われるので、
輸液と抗生剤をして、明日まで待とう
老年症候群の一症状としての意識障害なら、明日には今日よりもよくなっているはずだ
もし、意識障害が遷延するようなら、髄膜炎も考慮して髄液検査も考慮しよう
あとはfocal signは目立たない視床梗塞の可能性もあり、MRIを検討しよう
それらが問題なければ、非痙攣性てんかんの可能性もあり、脳波やセルシンをトライしよう
みたいな感じで待ちます
ただ入院させて時が過ぎていくのではなく、これは時間が解決してくれるはず!という感じで、
受け身の姿勢で待つのではなく、積極的に待つイメージです
まとめ
・超高齢者の意識障害を認識するためには、普段をよく知る人から「いつもと様子が違う」ということを聞き出すことから始める
→次に、普段のADLや行動、食事量、会話内容、発話量が、元々と比べて、何がどう違うかということを聞く
・超高齢者の場合、意識障害だと思ったら、実は〇〇ということがある
→実は失語だった、実は視覚障害や半側空間無視だった、実は難聴だったというのは、
実は詳細に診察すればわかる
・超高齢者の意識障害の診療は「時間」を意識する
→救急外来では、タイムリミットがあるもの、緊急で対応が必要なものをとりあえず除外する
入院後は「時間」が経つと、見えてくるものがあり、積極的に待つ
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