2017年11月10日金曜日

めまい

めまいの診療は内科医の腕の見せ所です

出来る内科医かを見極めたければ、失神か、めまいの人の診療を見れば分かります

めまいは症状が辛く、

おえおえ吐いていては病歴もとれませんし、

身体所見もCTもとれません

めまいの人を見たら、まずやることは労ってあげることです


本当に辛いです


共感出来ない人は、自分の耳に、冷水を入れてみてください

もれなく、めまいと気持ち悪さが出現して、まっすぐ歩けなくなります


めまい10か条を作りました




めまいのまとめです

めまいの病歴も、

痛みと同じで、図に表せるといいですね


そこでのポイントは、吐き気とめまいを一緒にしない事と

頭位変換での悪化を詳しく聞くことです


聞き方を意識しないと、

なんでもかんでも、BPPVになってしまいます

小脳梗塞でも頭を動かせば、

めまいは悪化します

頭をどの方向に動かした時に、めまいが悪化するのか

という事を細かく聞かなければなりません

臥位から坐位や立位で悪化している場合は、

起立性低血圧かもしれません




めまいのpit fallは、たまに起立性低血圧の事があります

耳か、脳か

の問題の前に、

まず大量出血していないか、心臓は大丈夫かと考えましょう



急性重度のめまいの時に

前庭神経炎か脳梗塞か

という事が議論になります

そこでの鑑別方法で、

よく言われているHINTSです

中でも重要なのが、

HITです


HITが陽性であれば、前庭や前庭神経に関わる部位に異常があると言えます

HITが正常であれば、前庭神経は正常に働いているという事であり、

前庭神経に関わらない場所で、めまいが生じているという事になります


なので、

「前庭がやられているかどうかを見極める所見」


と覚えておいたほうが良いです


「脳梗塞か前庭神経炎かを見極めるテスト」と覚えてしまうと、

応用がききません


前庭神経がやられれば、HIT陽性になるため、

前庭神経の核や神経に虚血が生じても同じ結果になります


炎症でも虚血でも脱髄でも


前庭神経がやられれば、HITは陽性になります


なので前庭神経を栄養している血管、

つまりAICAの梗塞の場合、

やられ方によっては、HIT陽性になります


なので、AICA梗塞で出る他の所見を探しに行く必要があります

内耳がやられると、難聴がでますし、

顔面神経がやられると、顔面神経麻痺がでます

前庭神経核を栄養しているPICA梗塞でも起こりえますが、

非常に稀なので、

まずはAICA梗塞をしっかり否定できるようになりましょう


なので、前庭神経炎というためには、

HITがまず陽性になり、

AICA梗塞で出現する他の所見がない

という事を示さなければなりません




もっと簡単に、中枢か、末梢かを見極めるためには、

この4つを注目します

Vascular riskと眼振と

歩行と神経学的異常です


なので、めまいの人は病歴を長々とるよりも、

すぐに眼をみて、どういう眼振が出ているかで、

方針を立てられる事があります


気持ち悪い中、色々、話聞かれるよりも、

眼をみただけて、

今日は入院ですね

と言ってもらえると、患者さんも楽です


まさにめまい診療では、眼は口ほどにものをいうのです





めまいの人の神経診察は脳幹の局所解剖を意識して診察します

脳幹の脳梗塞は横文字の名前がつきまくっているので、

ややこしいです

いつも、名前なんてつけなくてもいいのに

ただの脳梗塞でしょ

と思ってしまいます


ただ、

研修医にこの神経学的な異常のパターンは

Dejerine syndromeだね

というと、

おーーー

となって、なんだか凄そうと思わせる事ができます


いわゆる、猫騙し

ならぬ

研修医騙しです


2017年11月8日水曜日

喘鳴~心不全・喘息・気管支炎問題~

喘鳴にまつわる
心不全、喘息、気管支炎問題です

ここは一番難しいですが、やりがいのある分野です



喘鳴が目立つ肺炎像がある人

この時期増えます


肺炎として、抗生剤治療をするが、

喘鳴はいっこうによくならない


こういう時に、主治医の頭の中では・・・

喘息の既往はないが、喘鳴だけがやたらと目立つから、

喘息がこの高齢で発症したのであろうか?

⇒喘息の治療をしてみたい!


心不全の既往はないが、心不全もあってもいいかもしれない

しかし浮腫もないし、体重増加もない

⇒でも、とりあえずラシックスうってみたい!


そもそも、施設から持ち込んだ何かのウイルス性気管支炎やマイコプラズマか

⇒非定型肺炎の治療も追加してみたい!


といった具合で、なんとなく治療が開始されることが多いです

そして、どの治療もうまくいかず、泥沼化していきます



なぜこうなってしまうのか?


それは軸足がぶれているからです


軸足とは、つまり「診断」です

最初の段階では、診断は必ずしも正しい必要はなく、
暫定的に診断をして、
まずはその暫定診断にのって治療することが重要です


治療はいつもいつも、スパッとスマートな治療ができるとは限りません


絶対この病気!⇒治療!⇒ほら、治った!

なんてことは稀です


現実は、

うーん、A(PMR)かもしれないし、B(RAや脊椎関節炎、偽痛風)かもしれない

でもC(IEや化膿性関節炎)だったら、AやBの治療が非常にまずい

少なくとも、Cに害になる治療はしてはいけない


まだAとBの鑑別は完全にはできていないけれど、

このままではADLがガタ落ちしてしまう

○○の要素があり、現状ではA>Bと思う

だからまずは、Aとして治療だ!


といって治療するのが、現実の臨床です


治療開始は、綱渡りのような感覚で、そろーりそろーりと進んでいく印象です




よく、電解質の治療のところで引用される言い方ですが、

結局は「北」にいけばいいのです


東京から出発して、東へいってもいいし、西へいってもいい

だが、南には行かないようにする

西へいって、何かおかしいと感じれば、

途中で軌道修正すればよく、

だんだんと北へ進めばよい


という教えです


大事なのは、スタートの時点で、

東に行ったり、西にいったり、南へ行ったり、一気に進まないことです

自分が一体どこにいるのかわからなくなります


そして、南にいかないようにすること

つまり、治療をして悪化する病気がないかどうかを考えておく必要があります



そして、途中で何度も立ち止まることです

途中で何かおかしいと感じるためには、

ベッドサイドに頻回に通う必要があります

電解質の補正の場合は、数時間毎のフォローアップが必要でしょう





この教えを知ってから、自分で治療することに勇気がわきました

最初から完璧である必要はなく、

一番大事なのは、軌道修正であることがわかれば、

最初の一歩を踏み出せます




ですが、高齢者では、オッカムの切れ味が落ちて、

ヒッカムの格言が必要になることはあります

つまり複数の病気が合併していることは多々あり、

同時に治療しないとよくならないこともあります


ですが、多くの症例で同時に、

心不全、喘息、ウイルス性気管支炎、細菌性肺炎が起きたという人はまれだと思います

なので、ここではまず、

どれか(心不全、喘息、気管支炎)に
軸足を置く努力をしましょう
軸足をおいたら、徹底的にその治療をします



スルメ
(意味がわからない人はまど・みちおさんの「するめ」という詩を検索してください)

軸足をおく、つまり、暫定診断をするためにはどうしたらよいかというと、

それはやはり病歴や身体所見、検査が重要になってきます

しかし、

認知症があったり、高齢になると、自分の病歴や症状をうまく伝えることができません


流行りのROSをとってみても、

労作時呼吸苦+
喘鳴+
体重増加-
夜間発作性呼吸困難-
起坐呼吸-
血痰-
寝汗-
鼻汁-

といったような感じで、


「で?」


となり、鑑別が進みません


夜中の具合の悪さを本当に見たければ、

ベッドサイドのごみ箱の中のティッシュの量をみたりします

よく観察すると、夜間に痰が増えている人では、

夜にティッシュの消費量が上がっていることに気が付きます



浮腫がないかをみるには、

臥位が続いている人であれば、

脛骨前面ではなく、大腿内側後面や体幹背側をみないと分かりません


病歴が使えない時もありますし、身体所見が一見乏しい時もあります

しかし、それはこちらの受け取り側の問題で、

能動的に患者さんから発していなくても、

こちらにレセプターがあれば、

患者さんからのメッセージを受動的に感じとることができます





無言のメッセージを感じ取ることが、ベッドサイドでは重要です


これは、カンファレンスで議論していても、わかりません

日本のカンファレンスはベッドサイドから離れすぎているので、

やや臨床に即していないカンファレンスが多い印象です


患者さんに出会った瞬間に、カンファレンスでの議論が吹き飛ぶ光景を

何度も目にしてきました


診断に悩んだら、患者さんのところに何度もいく

というのは、忘れがちですが、大事なパールです




原因不明の喘鳴

喘鳴をみたら

まずはstridorかどうかを確認します

頸部の方が強く聞こえないかどうか

吸気時の方が強く聞こえないかどうか

そもそも、stridorは聴診器がなくても、ぜえ、ぜえ言っているので、

すぐにやばいことが分かります


stridorがある人は窒息しかかっている人なので、

緊急で気道確保が必要な人かもしれません

なので、すぐに対応が必要です

鑑別疾患を挙げて、疾患に特異的な治療を・・・

えーっと、まずは喉頭蓋炎かもしれないから、血培とって抗生剤を・・・

などと、のん気なことは言っていられてません



どんな疾患であれ、どんな病態であれ、

stridorをみたら、

気道確保(挿管や輪状甲状靭帯切開)の準備と

急変する可能性があるので、

そのつもりで救急カートを用意し、応援を呼びます


窒息してすぐに心肺停止になる人もいます


挿管ができそうなら、喉頭ファイバー(できればビデオ)で声帯をよく観察します

実臨床では、そんなところを見ている余裕がないことが多いので、

鑑別は気道確保ができてからします


鑑別としては、咽頭から喉頭(特に声帯)、声門下と順番に考えていきます


stridorは救急外来で出会うことが多く、

喉頭外炎やアナフィラキシーの喉頭浮腫、

異物誤飲が多いというイメージがあるのではないでしょうか


実は入院中の患者さんにも突然起こりえます

stridorで当直中に呼ばれたことがある人もいるのではないでしょうか?


なぜか別の疾患で入院になっている人でも、

ある日突然、stridorを起こすことがあります


例えば、脳梗塞で嚥下機能が悪くなってしまった人で、

片側の声帯麻痺を起こしていた場合、

痰が声帯(動いている方でも、動いていない方でも)に引っ付くと

突然、stridorを起こし、呼吸困難が出現することがあります


吸引でうまく、痰にヒットすれば、すぐに改善します

こういう症例はよく、CTとられていますが、

何もないねえ

でいつの間にか、改善してしまい、

鑑別が浮かばないことがあります

確定するには喉頭ファイバーや気管支鏡で、

動いていない声帯と引っ付いた痰があれば確定です


他にもいろいろあります


コントロール不良の関節リウマチの人が、
急に嗄声や呼吸困難を来した

輪状披裂関節炎かもしれません

 輪状披裂関節も関節炎で侵されます
 炎症のため、咽頭痛や嚥下時痛、会話時の疼痛が起こります
 輪状披裂関節の運動障害のため、嗄声や呼吸困難、喘鳴が生じます

耳鼻と臨床 Vol. 34 (1988) No. 1Supplement1 p. 258-263



経鼻胃管で栄養投与中の人が、
急に「ぜええ、ぜええ」言い出した

Nasogastric tube syndromeかもしれません

 経鼻胃管が入っている人で、突然起こる両側の声帯麻痺です
 非常に稀な疾患ですが、起こると重篤で、知らないと訳が分かりません
 残念ながら、経鼻胃管を入れてからいつ起こるかは予測困難です

 経鼻胃管挿入後、12時間後に起こったという報告や
 1か月くらいたって起きたという報告もあれば、
 抜去して2週間たってから起きたという報告まであり、
 タイミングがばらばらです

 ですが、痛みがでることが多いので、経鼻胃管入れている人が、
 喉を痛がりはじめたら注意が必要です
  
 治療も確立したものはありませんが、まずは胃管を抜くことが必要です
 予後は比較的良いと言われており、
 声帯機能は回復する症例が多いようです

Otolaryngology–Head and Neck Surgery (2006) 135, 677-679


他にも、挿管していた人であれば、数日後に声門下狭窄を起こすこともあります


このように、入院中でも、stridorの人に出会う機会はたくさんありますので、

パニックにならないように、心の準備はしておきましょう






本題の喘鳴についてです

喘鳴の人をみたら

よくある疾患である

心不全、喘息、COPDをまずは考えます

ここでは、呼吸器vs循環器の押し付け合いになってしまう構図がたまにみられます

この問題に関しては、あとでまた説明します


ここに流行や季節によっては、細気管支炎が入ってきます

細気管支炎は冬のこの時期にはやることが多いので、

今後注意が必要です


ウイルス性の細気管支炎は
原因不明の喘息になりえます


よくあるのは、原因不明の喘鳴の人が、各病棟に多発します

循環器病棟では、心不全という診断で入院になったけれど、

喘鳴が強く、治療しても喘鳴がなかなかとりきれない

本当に心不全なのかなあ?


呼吸器病棟では、喘息の診断で入院になったけれど,

治療しても喘鳴がなかなかとりきれない

本当に喘息なのかなあ?


という具合です

実は同じ施設から来ている人達だったという共通点には、

各科で一緒にカンファレンスでもしない限り、わからないことが多いです


sick contactを聞けば、分かるじゃないかというと、

そこがpit fallです


施設内で流行している疾患は、職員さんもわからないことがあります

Aさんは心不全で入院になった

Bさんは喘息で入院になった

Cさんは誤嚥性肺炎で入院になった

Dさんはなぞの喘鳴で入院になった

といった感じになるので、

職員さんもsick contactといわれてもピンとこないことがあります


医者が変に病名をつけるので、

その原因がウイルスであることに気が付かれていないことがあります


なので、この時期の治らない喘鳴をみたら、

まずは施設やデイサービス、リハビリ、透析室といった場所の流行状況を確認します


小児の場合、学校や保育園、家族内の流行を確認すれば終わりですが、

高齢者は実は色々行くところがあります


流行の確認は、聞き方を工夫します

「最近、施設の中でぜえぜえ言っている人が増えていませんか」

「心不全や喘息で入院する人が増えた印象はありませんか」

という風な聞き方がよいかもしれません



上記を考えつくした人のみに、挙げても許される鑑別疾患があります


それは、再発性多発軟骨炎です

血液疾患(リンパ腫やMDS)に合併したり、膠原病に合併したりすることがあります

普段、軟骨、つまり耳周りを注目してみていますか?



喘鳴のこの3ステップは、「総合診療医の三段階」と言っている人もいます

各段階で考えることがたくさんあり、非常にやりがいのある症候です


喘鳴をみたら
・まずはstridorかどうかの確認
⇒wheezesとstridorは紛らわしい時がある
 わからなければ、stridorとして考えてみる
 stridorの方が緊急性が高い

・どうみても喘鳴なら、心不全・喘息・COPD問題へと進む
⇒軸足をどこにするかが重要で、
 軸足を決めたら、しっかり治療しきることが大事

・心不全・喘息・COPD問題で解決が難しい時
⇒ウイルス性の細気管支炎でないか、流行を再確認する

・喘鳴の最終段階
⇒再発性多発軟骨炎を含めた稀な鑑別を考え始める


2017年11月2日木曜日

ビタミンD

ビタミンDは最近ホットな話題です

昨年から天然型のビタミンDを測定できるようになったため、

今後、VD欠乏の知見が深まっていきそうです

ビタミンDについて

ビタミンDはそもそもビタミンではありません

生体内で合成可能であり、ホルモンです



生体内の皮膚で日光にあたることで、合成することができます

食事中からも摂取できますが、圧倒的に日光浴のほうが効率がよいです

一日15分の日光浴でよいとされますが、

現代人や施設入所者、入院患者さんは、日の光にあたっている時間はほとんどありません

なので、実はビタミンD欠乏は相当数いるといわれています

しかし無症状のことが多く、症状が出ても非特異的なものばかりで、

誰に積極的に疑ってよいかは、まだよくわかりません


現状では、線維筋痛症のように全身の痛みがあり、

特に骨痛を訴えるような人は、積極的に疑ってもよいと思います

その時に測定するのが、25(OH)ビタミンD:天然型ビタミンDです


これまでは、わが国では活性型のビタミンDしか保険で測定できず、

本来のビタミンD欠乏をしっかりと診断できなかった時代が続いていました



では、なぜ活性型ビタミンDを測定することでは、

本来のビタミンD欠乏を発見できないのでしょうか?

活性化している方が、本来のビタミンの量を反映しそうですよね


ですが、それでは甘いようです


活性型ビタミンDに比べて、天然型ビタミンDの方が圧倒的に量が多く、

半減期も長く安定しているためです

活性型ビタミンDは半減期は短く、量も少ないため、変動が激しい検査です



    



活性型のビタミンDは、骨や副甲状腺、腎臓、消化管に主に働き、

血中のカルシウム、リンを上昇させる効果があります


ビタミンDのイメージ

天然型と活性型は、ダム湖の水とダムから出てきて調節された水のような関係です


湖の水を供給する雲:食事や皮膚(紫外線)

貯まったダム湖:天然型ビタミンD

貯まった水を調節して、下流に流すダム:腎臓

ダムから流れてきた水:活性型ビタミンD



    


ポイントは、腎臓以外でも天然型は活性型に変わることができるという事です


以前は活性型になるためには、腎臓を通さないとならないと考えられてきましたが、

腎臓を介さず、天然型ビタミンDが直接標的臓器に到達し、

そこで、活性型になり作用を示すことが分かってきました


そのため、活性型ビタミンDが正常でも、

天然型のビタミンDが減ると、ビタミンD欠乏として症状が現れます



    


活性型ビタミンDを測定しても、

体内に貯蔵されているビタミンの量は分からず、

必要な検査は、天然型ビタミンであることが分かります



その場合の治療は理にかなっているのは、天然型のビタミンDを投与することです

これは見たまんまです


天然型を入れても、ダム湖に一回たまって、必要な分量が下流に流れていくため、

安全に投与することができます


   


今は天然型のビタミンDを薬として処方できないのが、

実臨床で悩ましい所です

カルシチュウがランクル製剤以外の人にも処方できるようになれば、

よいのですが・・・



では、活性型ビタミンDを測定する機会はないか?

といわれると、そうではありません


高カルシウム血症の時に、PTHもPTHrPも問題なく、

腫瘍性病変が否定されているような時、

つまり、活性型ビタミンDが増えるような肉芽種性疾患を疑っている場合は、

活性型ビタミンDを測定する意義があります





この場合、ダムに異所性に穴が開いたイメージです

活性型ビタミンDが増えるので、それを直接測ることで診断します



では、薬として、
活性型ビタミンDを補うとどうなるでしょうか?

活性型ビタミンDを投与するということは、

下流に思いっきり、水を流しているようなイメージなので、

容易に過量になることが分かります

体の中に調節する場所がないので、内服量を調節するしかありません


特にエルデカシトロールは、半減期が長いため注意が必要です



          



ちなみに活性型ビタミンDを薬として補っている時に、

活性型ビタミンDを検査しても、増えているわけではありません

フィードバック機構が働くためといわれています



CKDの人は何が起きているのか?

逆にダム(腎臓)がうまく働かず、活性型ビタミンDが出てこない時を考えてみます


腎臓が悪くなると、決まった順番で、ホルモンの変化が生じます

腎臓の不調を敏感に感じ、まずは、FGF23が増えます

FGF23は骨芽細胞から分泌されるホルモンで、主にリンの排泄を促します

次に、CKDのStageが進むと、活性型ビタミンDが減ってきます

その結果、カルシウムやリンの低下を招くと同時に、PTHの抑制がとれるため、

PTHが上昇してきます

これが二次性の副甲状腺機能亢進症です





CKDが進んでくると、

カルシウム、リン、FGF23、ビタミンD、PTH、薬剤が

複雑にからみ合い、

カオスの様相を呈してきます



ビタミンDについて

・ビタミンDはビタミンではなく、
カルシウムやリンを調節するホルモンである
・天然型が問題になるのは、欠乏
⇒日光浴を推奨
・活性型が問題になるのは、過量
⇒薬物治療の際に注意が必要
・活性型と天然型のビタミンDを測定するタイミングは全く別である


高カルシウム血症

電解質の体内の流れ

カルシウムの流れの前に、電解質全般のお話です

大まかな電解質の体内動態の原則を知っておくと、

電解質の勉強がしやすいです


体の中に入った電解質は、腸管で吸収され、

吸収されずに便からも少し排出されます

吸収された電解質は血中に入り、リザーバーに貯蔵されます

このリザーバーが電解質ごとに違います

カリウムの場合、体中の細胞内(主に筋肉)です

カルシウムやリンの場合、骨です

マグネシウムの場合、骨と細胞です

ナトリウムにはリザーバーがなく、細胞外と血液中に主に存在します


私達が血液検査でみているのは、体内の電解質の総量ではなく、

血液中の濃度です

血液中の電解質濃度は常に一定になっています

勝手に一定になっているわけではなく、それぞれの監視役がいます

そして、監視役の命令で動く、手下になるような物質もあります

その物質によって、リザーバーからの出し入れが調節されたり、

腎臓から排泄される量を調整しています


このような機構がそれぞれの電解質で整っていることを知っておくと、

電解質の勉強がしやすいです



高カルシウム血症

高カルシウム血症が見つかる状況は大きく3パターンです

①健康診断で高カルシウム血症が偶然みつかるパターン

この時は、カルシウムの値はさほど高値にはなることはなく、

ほとんど無症状のことが多いです

この状況では、副甲状腺機能亢進症と家族性低Ca尿症を疑います

FECaを計算し、あやしければ畜尿でCaの量を測定します

家族性低Ca尿症は治療の必要がないことが多く、

副甲状腺機能亢進症と間違えないことが重要です





②高カルシウム血症の症状(便秘、腹痛、倦怠感、多尿、脱水、結石)でみつかるパターン

③意識障害があり、非常に高度な高カルシウム血症でみつかるパターン

②や③のケースは悪性腫瘍関連の可能性が高くなってきます



カルシウムの体内動態

カルシウムのリザーバーは骨です

体内のCaの99%が骨の中に存在します

血中はたったの0.1%しかありません

そのたった0.1%の濃度を測って、我々はカルシウムが高い・低いと議論しているのです

血中のカルシウムを監視しているところが、副甲状腺です

副甲状腺がカルシウムの値を感知し、PTHを分泌し、

血中濃度を一定にするように調整しています

そのため、このPTHが過剰に出てしまうと、カルシウムの濃度が高くなります

PTHが過剰になるとリンが減少する傾向になるため、

PTH関連の高カルシウム血症の場合、

・カルシウムの上昇は軽度
・リンは低め

という特徴があります


高カルシウム血症のアプローチ


高カルシウム血症を見た時の第一段階はPTHを測定します

リチウム内服患者さんは副甲状腺のネガティブフィードバックがうまくいかず

原発性の副甲状腺機能亢進症の状態となるため、

薬を中止して経過をみるしかありません


第二段階は悪性腫瘍の可能性があるかどうか検索することです

悪性腫瘍関連の場合、

1)PTHrP関連:扁平上皮癌、腺癌(肺、膵、腎)
2)骨転移・骨融解:乳がん、多発性骨髄腫
3)活性型VD産生:悪性リンパ腫

の3パターンがあります


多くは上記の二つであり、後はその他となります


カルシウム濃度はPTHだけでなく、活性型VDとカルシトニンによっても規定されています

活性型VDが過剰に作られてしまうような肉芽腫性疾患や

薬として過分に補われてしまう薬剤性の活性型VD関連の可能性もあります

その場合は、リンが上がることが多いので、予測することが可能です


骨粗しょう症の治療の啓蒙が進み、治療がしっかり入る方が増えてきました

そのため、最近の高カルシウム血症の患者さんは、薬剤関連が多い印象です


いつの間にか腎機能が悪化している高齢者は多いので、

活性型ビタミンDを処方している時は、腎機能とカルシウムの値に気を配りましょう


2017年11月1日水曜日

ワレンベルグ診断編 後半

ワレンベルグの診断が難しいわけ

まずは、教科書通りにならないことが多いことです

なんと、partialワレンベルグの多いことか

典型的な症状は全てそろわないのが普通です


いつも、何かと何かの組み合わせです

めまい+軽度の呂律不良+軽度の小脳失調

他、何もなし

みたいな感じで、どれが組み合わさるかはわかりません


陰性のものに気をとられると、

ワレンベルグではないのかな?

と錯覚してしまいます

なので、何か(この所見)がなければ、ワレンベルグではない

という否定の仕方はやめた方がよいでしょう


逆に、この所見があれば、ワレンベルグではない

というのもやめた方がよいです


ワレンベルグには色々な亜型があり、

同側の錐体路徴候、つまり同側の麻痺を呈する症例もあります

Opalski症候群といわれます


また、PICAとAICAが一緒になっている人もおり、

その場合、AICAの症状(顔面神経麻痺)もでることがあります


このように小さな場所に核が密集しており、

さらに血管の灌流も個人差が大きい場所なので、当然といえば当然です




一度、ワレンベルグを疑ったら、
あとは芋づる方式でいろいろ探しに行きます




個人的なワレンベルグ症候群の印象
・最初はヒントは少ないが、時間が経つと誰でもわかるようになっていくタイプのクイズのような感じです
・最初の少ない徴候でいかにワレンベルグを想起できるかが、見落とさないコツになります
・ワレンベルグ症候群を疑ったら、徐々に悪化する可能性がある疾患を伝えておくと、患者の信頼をなくさずにすみます

ワレンベルグ診断編

ワレンベルグを想起するタイミングは色々あります

強い後頚部痛がある人

めまい、吐き気が強い人

ふらふらして、まっすぐ歩けない人

急にむせるようになった人


などなどです

入口はたくさんありますが、よく出会うシチュエーションは

やはり「めまい」でしょう

めまいの時には、末梢性 vs中枢性となり、

中枢性の代表的なめまいが、ワレンベルグ症候群や小脳梗塞です


ワレンベルグ症候群を疑ったら、

自分の中では眼鏡をかけ直すイメージで、丁寧に診察を行います




眼と頭をワレンベルグ様に切り替えます

「ワレンベルグを疑って診察します!」と心の中で宣言して、

診察に入ります


カルテも誰が見ても、ワレンベルグ疑っているカルテだなあ

と分かるようにアピールします

例えば、
瞳孔の左右差なし(部屋を暗くして観察したが、左右差みられず)

とかです


ワレンベルグのように見えているのに、

疑わないと見逃す病気や徴候は実はたくさんあります

感染症の中では、IEが有名です

見えている人には、IEにしか見えませんが、

見えていない人には、何も見えません

狙って聞かないと、心雑音は聞こえませんし、

体位を変えないとARは聴取できないかもしれません



ワレンベルグ診断のPit fall

・病歴
めまいや吐き気が強い人は、それどころではないので、嚥下が少ししにくいことや後頚部の痛みをしっかり伝えてくれないことがあります
ワレンベルグで有名な徴候をROSでとりにいくのは、難しいこともあります
なので、病歴でひっかからなくても、除外しないようにしましょう


・身体所見
普段のルーチンの神経診察ではとらないような、ホルネル徴候(部屋を暗くする)であったり、カーテン徴候であったり、開鼻声を狙ってとりにいきます

つまようじでチクチクしたり、氷を持ってきたり、部屋を暗くしたりと、

ひと手間かけることがコツです

軽微な小脳失調を優位ととるか迷うことが多いですが、
ここがポイントです

小脳の所見の一つがグレーな場合、どう対応しますか?

①「この文脈で」、「この所見!!」という考え方をします

つまり

「ワレンベルグ疑い」という文脈で、

「右利きの割に、右手の方が不器用さがある」時には、

やはり優位ととる

といった具合です

②時間をあけて再現性があるかどうかをみる

ただしこの場合、TIAであったり、RCVSであったりすると、所見がなくなってしまう可能性があり、注意が必要です

③他の先生にも一緒に診察してもらう

これが一番現実的でしょうか
ただし、一人であれば使えない手です

そこで、

④小脳の診察法をたくさん知っておく

これが一番便利です

小脳所見の診察は皆さんどれくらい知っていますか

半球と虫部で症状が異なるので、まずはそこからです


正中の虫部がやられると、体幹失調が起こります

歩行や姿勢に問題が出てきますが、四肢には大きな問題はありません

臥位から坐位に体位変換する時に注目してみてみると、

やたらと足を大きく上げたり、体が屈曲したりすることから疑います

坐位を保持するのに、いつも柵につかまっているかもしれません



半球がやられた場合は、測定障害や協調運動障害、企図振戦が出てきます

簡単にいうと、距離感が分からなくなります

発語の場合、言葉と言葉の距離が分からず、断綴言語になります

眼の動きも同じで、眼がover shootして

目標物を通り過ぎてしまい、行き過ぎてから戻ってくるような目の動きをします

医学的でない言い方でいうと、

ガチャガチャした印象を受けたり、泳いでいるような目になります


上肢の誘発法は指鼻指試験が有名ですが、

Stewart-Holmes rebound phenomenonや指タップ、肩揺さぶり試験を追加すると

さらに感度も特異度も高くなるでしょう


特に指タップは簡単で鋭敏なので、お勧めです

親指のしわのところにめがけて、人差し指を立てて、

とんとんとリズムよく、続けてもらいます

パーキンソニズムがあると、リズムが悪くなり、振幅が小さくなります

小脳失調があると、たたくポイントが毎回ずれる所見が得られます


このように指鼻指試験が若干、拙劣かなと思った場合は、

他の小脳所見をとりにいくと、

あーやっぱりこれも異常、これも異常

という積み重ねで、異常が明確になり、

自信をもって小脳失調があるという事ができます


・MRI

後方循環系の脳梗塞はすぐにはDWIで光らないこともあります
時間をあけてとったり、thin sliceでとったり、矢状断でとったりする工夫がなされます


以上のように各所で、pit fallがあり、

時間経過とともに症状も明確になっていくため、

後医は名医になりやすい疾患です

だからこそ、あの時の診察では、こうだった! 

と自信をもって言えるように、診察の内容をしっかりカルテ記載しておくことが重要です




ワレンベルグを疑った時
・細かい診察も大事だが、心意気の方が大事
・イメージは眼鏡をかけ直す感じ

Where is the answer ?

吉田松陰先生を彷彿とさせるような先生達が集う 勉強会で症例提示させていただきました ※症例は一部修正・改変しております  

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