喘鳴をみたら
まずはstridorかどうかを確認します
頸部の方が強く聞こえないかどうか
吸気時の方が強く聞こえないかどうか
そもそも、stridorは聴診器がなくても、ぜえ、ぜえ言っているので、
すぐにやばいことが分かります
stridorがある人は窒息しかかっている人なので、
緊急で気道確保が必要な人かもしれません
なので、すぐに対応が必要です
鑑別疾患を挙げて、疾患に特異的な治療を・・・
えーっと、まずは喉頭蓋炎かもしれないから、血培とって抗生剤を・・・
などと、のん気なことは言っていられてません
どんな疾患であれ、どんな病態であれ、
stridorをみたら、
気道確保(挿管や輪状甲状靭帯切開)の準備と
急変する可能性があるので、
そのつもりで救急カートを用意し、応援を呼びます
窒息してすぐに心肺停止になる人もいます
挿管ができそうなら、喉頭ファイバー(できればビデオ)で声帯をよく観察します
実臨床では、そんなところを見ている余裕がないことが多いので、
鑑別は気道確保ができてからします
鑑別としては、咽頭から喉頭(特に声帯)、声門下と順番に考えていきます
stridorは救急外来で出会うことが多く、
喉頭外炎やアナフィラキシーの喉頭浮腫、
異物誤飲が多いというイメージがあるのではないでしょうか
実は入院中の患者さんにも突然起こりえます
stridorで当直中に呼ばれたことがある人もいるのではないでしょうか?
なぜか別の疾患で入院になっている人でも、
ある日突然、stridorを起こすことがあります
例えば、脳梗塞で嚥下機能が悪くなってしまった人で、
片側の声帯麻痺を起こしていた場合、
痰が声帯(動いている方でも、動いていない方でも)に引っ付くと
突然、stridorを起こし、呼吸困難が出現することがあります
吸引でうまく、痰にヒットすれば、すぐに改善します
こういう症例はよく、CTとられていますが、
何もないねえ
でいつの間にか、改善してしまい、
鑑別が浮かばないことがあります
確定するには喉頭ファイバーや気管支鏡で、
動いていない声帯と引っ付いた痰があれば確定です
他にもいろいろあります
コントロール不良の関節リウマチの人が、
急に嗄声や呼吸困難を来した
⇒輪状披裂関節炎かもしれません
輪状披裂関節も関節炎で侵されます
炎症のため、咽頭痛や嚥下時痛、会話時の疼痛が起こります
輪状披裂関節の運動障害のため、嗄声や呼吸困難、喘鳴が生じます
耳鼻と臨床 Vol. 34 (1988) No. 1Supplement1 p. 258-263
経鼻胃管で栄養投与中の人が、
急に「ぜええ、ぜええ」言い出した
⇒Nasogastric tube syndromeかもしれません
経鼻胃管が入っている人で、突然起こる両側の声帯麻痺です
非常に稀な疾患ですが、起こると重篤で、知らないと訳が分かりません
残念ながら、経鼻胃管を入れてからいつ起こるかは予測困難です
経鼻胃管挿入後、12時間後に起こったという報告や
1か月くらいたって起きたという報告もあれば、
抜去して2週間たってから起きたという報告まであり、
タイミングがばらばらです
ですが、痛みがでることが多いので、経鼻胃管入れている人が、
喉を痛がりはじめたら注意が必要です
治療も確立したものはありませんが、まずは胃管を抜くことが必要です
予後は比較的良いと言われており、
声帯機能は回復する症例が多いようです
Otolaryngology–Head and Neck Surgery (2006) 135, 677-679
他にも、挿管していた人であれば、数日後に声門下狭窄を起こすこともあります
このように、入院中でも、stridorの人に出会う機会はたくさんありますので、
パニックにならないように、心の準備はしておきましょう
本題の喘鳴についてです
喘鳴の人をみたら
よくある疾患である
心不全、喘息、COPDをまずは考えます
ここでは、呼吸器vs循環器の押し付け合いになってしまう構図がたまにみられます
この問題に関しては、あとでまた説明します
ここに流行や季節によっては、細気管支炎が入ってきます
細気管支炎は冬のこの時期にはやることが多いので、
今後注意が必要です
ウイルス性の細気管支炎は
原因不明の喘息になりえます
よくあるのは、原因不明の喘鳴の人が、各病棟に多発します
循環器病棟では、心不全という診断で入院になったけれど、
喘鳴が強く、治療しても喘鳴がなかなかとりきれない
本当に心不全なのかなあ?
呼吸器病棟では、喘息の診断で入院になったけれど,
治療しても喘鳴がなかなかとりきれない
本当に喘息なのかなあ?
という具合です
実は同じ施設から来ている人達だったという共通点には、
各科で一緒にカンファレンスでもしない限り、わからないことが多いです
sick contactを聞けば、分かるじゃないかというと、
そこがpit fallです
施設内で流行している疾患は、職員さんもわからないことがあります
Aさんは心不全で入院になった
Bさんは喘息で入院になった
Cさんは誤嚥性肺炎で入院になった
Dさんはなぞの喘鳴で入院になった
といった感じになるので、
職員さんもsick contactといわれてもピンとこないことがあります
医者が変に病名をつけるので、
その原因がウイルスであることに気が付かれていないことがあります
なので、この時期の治らない喘鳴をみたら、
まずは施設やデイサービス、リハビリ、透析室といった場所の流行状況を確認します
小児の場合、学校や保育園、家族内の流行を確認すれば終わりですが、
高齢者は実は色々行くところがあります
流行の確認は、聞き方を工夫します
「最近、施設の中でぜえぜえ言っている人が増えていませんか」
「心不全や喘息で入院する人が増えた印象はありませんか」
という風な聞き方がよいかもしれません
上記を考えつくした人のみに、挙げても許される鑑別疾患があります
それは、再発性多発軟骨炎です
血液疾患(リンパ腫やMDS)に合併したり、膠原病に合併したりすることがあります
普段、軟骨、つまり耳周りを注目してみていますか?
喘鳴のこの3ステップは、「総合診療医の三段階」と言っている人もいます
各段階で考えることがたくさんあり、非常にやりがいのある症候です
喘鳴をみたら
・まずはstridorかどうかの確認
⇒wheezesとstridorは紛らわしい時がある
わからなければ、stridorとして考えてみる
stridorの方が緊急性が高い
・どうみても喘鳴なら、心不全・喘息・COPD問題へと進む
⇒軸足をどこにするかが重要で、
軸足を決めたら、しっかり治療しきることが大事
・心不全・喘息・COPD問題で解決が難しい時
⇒ウイルス性の細気管支炎でないか、流行を再確認する
・喘鳴の最終段階
⇒再発性多発軟骨炎を含めた稀な鑑別を考え始める
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