早期に見つけて、治療介入を早くすることで、
関節を守ることもできるようになってきました
バイオ製剤の恩恵を受けられるメインの人は、これからリウマチになる人々です
しかし、
これまでリウマチと戦ってきて、変形しつくしてしまい、
炎症もおさまってしまっているリウマチ患者さんにとっては、
バイオ製剤はあまり恩恵がありません
最近のガイドラインでは早期診断!早期治療!が叫ばれておりますが、
一方でこのような、晩期の関節リウマチの方はどうしたらよいのでしょうか
晩期関節リウマチ
晩期の関節リウマチをどうみていくかは、今後の高齢化してきた
日本のトピックでもあると思います
非がん患者さんの緩和ケアについての啓蒙が進んでおり、
心不全や末期腎不全、COPD、認知症については語られることも多くなってきました
ですが、リウマチ患者さんの緩和ケアについて、
述べられているものは見たことはありません
実は非常に悩ましい分野だと思っています
関節リウマチの治療は非常にポリファーマシーになりやすいです
DMARDsが複数あったり、
鎮痛薬として、NSAIDsやアセトアミノフェンが入ったり、
骨粗しょう症予防でBP製剤や活性型VDが入ったり、
ステロイドをつかったことがある人は、DMになってしまっていたり、
他の併存疾患で薬を内服していたり、
と圧倒的に薬が増えやすいです
関節リウマチのような炎症性疾患の痛みは麻薬よりも、
DMARDsの方が効果があり、
簡単に中止することもできません
なので、薬の中止のタイミングは非常に迷います
リウマチ患者さんも当たり前ですが、認知症になりますし、
年をとって死んでいきます
死因はリウマチに伴う間質性肺炎やアミロイドーシスといった
古典的な合併症ではなく、
心筋梗塞や脳梗塞、呼吸器感染症、がんといった
普通の死因で亡くなることがほとんどです
なので、晩期の関節リウマチの患者さんを診る時は、
3つの視点が必要だと考えています
①Life(生活)を守る
リウマチで困るのは関節の破壊です
関節の破壊を食い止めることが、治療の目標の一つです
関節が破壊されると、仕事や家事、趣味に支障をきたします
趣味がなくなると、元気がなくなり、ADLが落ちたり、
精神的に落ち込んでしまう人が多いので、
趣味や仕事は生活の中で非常に重要な位置を占めています
生活が守れているかどうかは、ADLやIADL、AADLといった項目で、
一般的には確認するのがよいです
(1) 基本日常生活動作(BADL)
起居動作、移動動作、食事動作、排泄動作、整容、入浴動作、コミュニケーション等の基本動作
(2) 手段的日常生活動作(IADL)
買い物、調理、洗濯、電話、薬の管理、財産管理、乗り物の乗り方等の日常生活上の複雑な動作
(3) 拡大日常生活動作(AADL)
生活の充足度、満足度、時間の使い方や過ごし方、知人との交流、趣味
関節リウマチの治療効果判定には、mHAQというものもあり、
上記を組み合わせたような指標です
なので、生活を守れているかどうかは、関節の機能がうまく保てているかどうか、
ということであり、リウマトロジストとしての腕の見せ所でもあります
②Life(命)を守る
関節リウマチの患者さんは一般の人よりも寿命が短いことが知られています
その原因は古典的な合併症というよりも、
脳梗塞や心筋梗塞、がん、呼吸器感染症といった原因で亡くなることが多いです
そのため、関節だけよく見ている場合ではありません
関節は守れたが、命は守れなかったでは、元も子ももありません
関節予後と生命予後は分けて考える必要があります
高血圧や糖尿病、脂質異常症の管理をしたり、
感染症の予防のため、予防接種を推奨したり、
転倒予防や骨折予防のため、骨粗しょう症の治療をしたり、
リウマチの治療以外にも、たくさんやることがあります
なので、外来が基本のリウマチ診療は、
外来が非常に忙しいのが特徴です
リウマチ以外の診療も適切にこなせるリウマトロジストは、
スペシャリストであり、ジェネラリストでもあります
③Life(人生)を守る
上の2つがクリアできているリウマトロジストは多くいます
ですが、人生を守れているリウマトロジストはそう多くはないと思います
なぜなら、リウマチ科の先生は基本は専門職であり、人数も少ないため、
落ち着いているリウマチ患者さんや寝たきりで看取る方針になった場合は、
自分で管理せず、開業医の先生にゆだねたり、
一般の内科の先生にお願いしているケースが多いと思います
または、癌になったり、心筋梗塞でなくなるということも多く、
最期は手を離れてしまうことも多いです
なので、「リウマチ患者さんの緩和ケア」がなかなか議論されない背景は、
上記のような理由で、
そもそも、リウマトロジストがそういった看取りに立ち会う機会が少なく、
議論されてこなかったのではないかと思ってしまいます
ですが、数年の経過でリウマチの患者さんをみていると、
最初は躍起になってコントロールをよくしようと頑張ったりしていましたが、
認知症が進行してしまったり、
フレイルが進行し、リウマチどころではなくなってきた患者さんも大勢います
そういった方の場合、リウマチの治療以上に大事なことがあります
それは、治療ではなく、人生のサポートです
ADLや認知機能の低下に応じて、適切な支援を検討したり、
ACPをして、残りの時間をどう過ごすか家族と相談したり、
最期を苦痛なくやすらかに看取ったり、
このように、家庭医や緩和医としての知識が必要になってきます
本物のリウマトロジストはこの3つのLifeが守れるDrだと思います
が、さすがに忙しい外来でそこまでできないと思うので、
家庭医の先生と一緒にタッグを組むのがよいのかと思います
晩期関節リウマチ
・寿命は一般の人よりも短いが、
古典的な合併症で亡くなる人は少ない
・心筋梗塞や癌、呼吸器感染症で亡くなることが多い
・3つのLifeを守るという自覚をもって診療する
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