2019年11月17日日曜日

すくみ足

すくみ足という症状は意外に知られていない気がします

救急には「歩行困難」「歩けない」という症状でこられます
そこで「歩けない」を「すくみ足」に変換することができれば、
鑑別は一気に狭まります


今まで出会ったすくみ足の人は、
・歩行困難の主訴できたため、救急でtPA対応がされました
 MRI後に脳梗塞が否定されたけど、やっぱり歩けないから相談された症例

・この一年間で2回も歩行困難の症状で入院となっていましたが、経過観察で自然に軽快したため退院となっていました。(この場合、熱中症やBPPVがゴミ箱診断的に使われていることが多いです)その後も徐々に歩きが悪くなってきた症例

・マンホールの上に乗ったら、そこから動けなくなってしまって救急車で来院した一例


という感じで、すくみ足は本当に動けなくなるので、救急車で受診することが多いです
救急車で来るので、診察よりもとりあえず画像へ
という流れになりがちで、結局、画像が何もない・・・原因は???となります

受診時に既存の神経疾患が診断されていれば簡単ですが、
診断されていない「いきなりすくみ足」ケースもあります

そのため、すくみ足という症候を知っておくと、鑑別が狭まり、
その背景にある疾患を精査することにつながりますので、大変有用です


すくみ足とは

歩行の開始、または歩行中、方向転換時に足底があたかも地面にへばりついたようになって歩けなくなる状態を言います

もちろん、麻痺や痛み、関節拘縮、感覚異常、失調がないことが前提です


すくみが起こるのは、何も足だけとは限りません

手の場合は、字を書いている際中に止まってしまったり、小さくなってきたりします
歯ブラシや箸を使用している時にも出現することがあります

発語の場合は、出だしの声が出にくかったりします


すくみ足が出やすい状況があります
多くは屋内で出現します、そして転倒の原因になります

転倒してきた人の上流に何があるのかを考えると、実は原因はすくみ足だった!
そしてすくみ足の原因を調べると、背景にパーキンソン病があった!!

ということもあるかもしれませんので、転倒した原因にはこだわるようにしましょう

下流ばかり見ずに、上流を見る癖をつけましょう



すくみ現象の機序はよくわかっていません

すくみ現象は、パーキンソニズムの中でも最も未解明な症候といわれています
たくさんの機序が複合的に関係しているといわれています

だからこそ、ドパミンいれるだけで改善しない症例もあります

L-dopa不応性の運動症状をaxial motor symptomとよび、
すくみ現象(freezing)はその一つです

他のaxial motor symptomは歩行障害、姿勢制御障害、転倒、嚥下障害、流涎があります



すくみ足の原因疾患

多いのは、脳血管性パーキンソニズムやPSPです
もちろん、パーキンソン病も多いです

他のパーキンソニズムを呈する疾患でも起こります


パーキンソン病と他のパーキンソニズムを呈する疾患の鑑別方法は、
歩行がwide baseかどうかです

パーキンソン病以外の疾患では、wide baseになります


治療はまずはLdopaでよいですが、MAO-B阻害薬も効果があるといわれています
ほとんどが、ドパミン反応性ですが、中にはドパミンいれて悪化したり、
ドパミン入れても変化がなかったりする症例もあります

薬物治療で難渋するようなら、脳深部刺激法(STN-DBS)を考慮します




非薬物療法も重要です

患者さん、家族への情報提供はもちろんです
その上で、出来る限り環境整備を行います
この辺はケアマネやリハビリとの協力が必要になってきます


dual taskはすくみ足が増悪することもありますが、taskの種類によっては改善することもあります
この逆説的現象をparadoxical movements,paradoxical kinesiaといいます

大事なのは、taskの組み合わせで、
患者さんにあったtaskの組み合わせを見出すことが重要です

例えば、歩行時にグーパーを行ってもらうとかで、歩行が改善する人もいます
どの動作を一緒に行うと、歩行が可能かいろいろ試すことが重要です



すくみ現象(すくみ足)まとめ
・「歩行困難」「歩けない」の主訴を解きほぐし、「すくみ足」に変換できるようにしよう
→救急車で来院する「いきなりすくみ足」症例も多い


・すくみ足の機序は様々、パーキンソニズムを呈する疾患なら何でも起こす
→PDと他の疾患との鑑別はwide baseかどうか


・治療は薬物療法、外科治療、非薬物療法
→まずはしっかりLdopaいれて反応性を確認する


参考文献:
神経内科Vol.83 No.3
日本臨床76巻 増刊号 4(2018)

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