去勢抵抗性前立腺癌の治療薬として、2014年に本邦でも承認されています
前立腺癌は男性ステロイドホルモンであるアンドロゲン(テストステロン、DHT、DHEA)が前立腺腫瘍細胞のアンドロゲン受容体(AR)に作用し増殖します
通常、生体内ではアンドロゲン合成は主に精巣で行われ、一部が副腎でも行われています
そのため、アンドロゲン除去療法と呼ばれるホルモン療法が進行した前立腺癌の治療になります
ですが、アンドロゲン除去療法後でも、血清テストステロン濃度が去勢レベルにあるにもかかわらず、病勢の増悪を認める症例があります
そういった前立腺癌を去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)といいます
CRPCの増殖には、副腎などの性腺外のテストステロンがアンドロゲンの重要な供給源と考えられています
ですので、副腎でのテストステロン産生を抑えることで、
前立腺癌の治療になるというコンプセトでできた薬がザイティガ®️です
へえ〜
でもそんなマニアックな薬、普通の内科医が知っておく薬なのでしょうか?
そうなんです
ザイティガ®️はぜひ、内科医に知っておいて欲しい薬なのです
なぜなら、
ザイティガ®️は必ずプレドニゾロンを併用しないといけない薬だからです
ザイティガのもつCYP17阻害作用のため、テストステロンやDHTだけでなく、
コルチゾールの産生もストップさせてしまいます
つまり、ザイティガ®️を服用している人が、
何らかの原因でプレドニンをのまなかった場合、副腎不全になるのです!
皆様、ステロイドを元々内服している人であれば、副腎不全のことはとても気をつけますよね
ですが、ステロイドを服用していない人でも薬剤性に副腎不全を起こすことがあります
副腎不全は非特異的な症状が多く、疑うことが難しい病気です
そして、疑ったものの、まさかその原因が薬剤だったなんて・・・
というpit fallがあります
副腎不全を疑った場合、その原因が薬剤ではないか?
ということにまずは思いをはせましょう
副腎不全の細かい診断は成書を参考にしてください
ここではよくあるpit fallを解説します
①意外に短期間の使用でも起きてしまう人がいる
②内服だけではなく、関節注射や軟膏でも起きてしまう人がいる
③セレスタミン®️がステロイド入っているとは知らずに、
他の抗ヒスタミン剤に変更して、副腎不全が起きてしまう
セレスタミン®️は皮膚科から時折でている薬で、抗ヒスタミン薬とステロイドの合剤で、
慢性の蕁麻疹の方などに処方されていることがあります
ステロイドが含まれていることを知らずに安易に薬を中止すると、
副腎不全になり得ますので、注意が必要です
副腎の血流
動脈は複数ありますが、静脈は1本です
そのため、副腎はうっ血しやすい臓器といわれています
静脈血流が障害されると、副腎はうっ血し腫脹します
うっ血が解除されないと、梗塞に陥り、出血します
交通外傷や敗血症でひどいショックの場合、
両側の副腎出血が起こり、副腎不全が起こることがあります
両側の副腎出血で副腎不全が起こる前に、両側の副腎が腫大している場合があります
こういった所見を見つけたら、副腎不全に注意しましょう
薬剤性副腎不全が起こる要因はいくつかあります
医師要因 × 患者要因 × 薬要因(薬局)
の3つがあると思います
一番は医師要因でしょうか
ステロイドを使用するときは、患者さんには口酸っぱく副腎不全のことを伝えます
口頭だけではなく、文書にしてお渡しするのが定石です
その上で、確認事項として
患者さんが理解力はどうか?
→薬の副作用についてしっかり理解できる人かどうかを見極める必要があります
薬を管理する人は誰か?
→施設職員さんであれば、まず安心です
他の薬との相互作用はどうか?
→リファンピシン内服していたら、倍量必要になることがあります
機序で分類すると、
コルチゾール生合成阻害、コルチゾールの代謝UP、コルチゾールの代謝down、
副腎出血、免疫チェックポイント阻害薬に分けられます (by up todate)
ミトタン 、ザイティガ、リファンピシン、ニボルマブ、セレスタミン・・・
どれも内科医にはあまり馴染みはありませんが、
このマルチモビディティ(多疾患併存状態)の時代では、まとめて他科の薬を継続処方することもよくあります
ですので、これらの薬を内服している人が調子が悪くなった場合、
副腎不全を想起することが重要です
機序で覚えるときは正常の流れに沿って覚えるのがいいです
ですが、実際は下記の様な流れで考えていきます
まとめ
・副腎不全は想起するのが難しい疾患なので、普段から閾値低めに鑑別にあげる
・副腎不全が想起できたら、まずは薬剤が原因でないかを考える
・今の症状を全て薬で説明できないか?という思考のくせをつける
you tube解説動画:https://youtu.be/hTGNxRUo8IM
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