本日の東京GIMは、呼吸困難の主訴で救急車で来院された60代男性の症例でした
今まで診断がついておらず、救急外来から入院となり、
入院後にALSの診断がついた症例です
今回は症例解説とは別で、身体診察の重要性について考えてみたいと思います
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今回のように「いきなり〇〇」という症例に救急外来で出会うと、
とてもびっくりします
救急外来で、
いきなりAIDS、いきなり進行した強皮症、いきなりALS、いきなりPOEMS、いきなりIVL・・・
診断がされていない慢性疾患の急性増悪パターンには常に注意が必要です
いきなり〇〇かも!?と気がついたら、
一度、立ち止まって考えることができます
いきなりALS症例に対して、挿管をしてしまってよいでしょうか?
あえてすぐにはしないという選択もあり得ます
「いきなり〇〇」という症例に出会うためには、
常に頭の片隅に鑑別疾患を立てておき、
身体所見をとる時にレセプターを生やしておく必要があります
身体診察の知識を知っているか、知っていないかの問題ではありません
レセプターを生やしているか、生やしていないかが問題です
病歴も重要ですが、なかなか病歴だけでは診断を確定することはできません
そもそも病歴がとれないこともあります
時間がなかったり、語れなかったり・・・
そんな時には、身体診察が非常に有用です
身体診察の名人には、病気が見えています
そういう先生に出会ったことがない先生もいるかもしれませんが、
本当にすごい先生は、次元が違います
身体診察は知識であり、技術であり、情熱と経験が必要な分野です
知識があってもこればっかりは難しい・・・
例を挙げます
甲状腺機能低下症で嗄声が起こることを知っていも、
目の前の患者さんの少しくぐもった声から甲状腺機能低下を疑えるでしょうか?
これまで一度でも、声で甲状腺機能低下を診断した先生がどれだけいるでしょうか?
MGで眼瞼下垂が来ることは学生さんでも知っていますが、
今、診察し終わった患者さんに眼瞼下垂があったかどうか、覚えていますか?
身体診察の名人と凡人の差はここにあります
身体診察はとりに行くものではなく、感じるものです
参考:身体所見
身体診察をとりに行っている時点で、ほぼ勝負は決まっています
ただし、狙ってとった身体所見で解釈が難しい時があります
それは、神経診察と皮膚診察です
この2つの診察を上達させるための一番の近道は、
自分が尊敬する人の診察風景を何度も目に焼き付けることです
身体診察の勉強は今も昔もベッドサイドにしかないと思います
身体診察をおろそかにしなければ、
患者さんに出会った瞬間に診断をつけられるという機会が増えていくと思います
そうすると、今回の症例のように「いきなり〇〇」という患者さんにも出会うでしょう
診断を早期につけられるようになれば、患者さんをより良い方向へ導いているはずです
それが、今回のように治らないALSだったとしても・・・
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