2022年5月15日日曜日

ACNES  〜診断してからが勝負〜

ACNESは知ってる人にとっては、診断は容易です

本当に大変なのは、診断後です 


主治医力が試される疾患です







キシロカインの皮下注射で痛みは劇的に改善します

劇的に良くなることが診断には大事です


注射前に痛みの点数を教えてもらって、注射後の点数と比べます
半分以下の点数になることが多いです


劇的に効くので、患者さんの驚きが一番、診断的な価値が高いと思います


内科をしていると、スパッと治せる疾患は少なく、
患者さんから喜ばれることは少ないですが、PMRとACNESは本当に喜ばれます


ただ、これで終わらないのがACNESです

一発目の皮下注射は、治療というよりは診断に重きがあります



ACNESは診断すると嬉しくなってしまいますが、
ピットフォールもあるので気をつけましょう


①他の腹痛の原因にACNESが合併することがある

便秘や生理痛、腸炎といった腹痛に合併することがあります
丁寧に診察すると、最強の圧痛点と他の圧痛点が別であることに気がつきます


そんな時はキシロカインの皮下注射でACNESの痛みをとってあげます
そうすると、残った病気の腹痛になるので診察もしやすくなります


緊張性頭痛に後頭神経痛が合併するのと同じです


②ACNESはあったが、他の疾患だった

帯状疱疹がACNES的に来ることがあります


帰宅の際には、必ずぶつぶつが出て来ないか確認してもらうように伝えます

特に高齢者では



③治療に関して同僚に相談すると、話が噛み合わない


これはあるあるです

難治のACNESを見たことがないDrは、ACNESの治療の難しさを知りません


そのため、

「本当にACNESなの〜?」
「うつが背景にあるんじゃないの〜?」
「診断を見直した方がいいんじゃない?」


というアドバイスをいただくことがありますが、これは本質がずれています

診断は間違いないことが多く、困っているのは治療です


いかに治療したら良いか?を相談しているのに、
診断の話をされてしまうことが多く、話が噛み合いません


ACNESの専門家はいないことがよくわかります





ACNESは診断よりも治療が難しい病気です


治療の選択肢を知っておきましょう





治療に関しては、再発した時に治療の流れを全部伝えます

こうなったらこうしますと
最終的には手術があることも伝えますが、手術に至る人は稀です


海外は手術の閾値が低いのか、下記の報告では2人に1人が手術に至っています


裏技として「ペンレステープ」が一番効く印象です

もちろん、適応外使用なのでしっかり説明してから使用を検討してください


    

若い人が多いのでできれば手術を避けたいのが、医師と患者さんの思いです


なので、あの手この手で治療します



それでもよくならない人もいるので、その場合は手術が効果的です
ただし、手術しても再発することもあります



手術を考えた時の問題点は・・・・


①誰が手術してくれる?

自施設の外科の先生や形成外科の先生が経験あれば、ラッキーですが、
ほとんどやっていないです

そもそも病気自体を知らない人がほとんどです


自施設で難しそうなら、他の施設を紹介するしかありません


日本の報告されている文献を参考に、その先生に紹介することになります


②手術のタイミングは?


良性疾患であり、
手術しなくても治る人もいるので手術に踏み切るタイミングが難しい病気です


本人が手術を希望するタイミングが、適切なタイミングなのだろうと思います


③手術で完治する?


残念ながら再発することがあります
創部の瘢痕に伴いまたACNESが出現する人がいます


その場合、再手術するか、
もう少し根本の神経から切断するという方法で治癒する人もいるようです

再発した場合は、手術してくれた先生と相談しましょう




まとめ
・ACNESは診断よりも治療が難しい病気
→キシロカイン皮下注射は治療よりも診断的価値が高い

・ACNESのピットフォールを知る
→他の疾患に合併しうる(他の疾患+ACNES)
 他の疾患がACNESっぽく来る(他の疾患→ACNES)
   
・治療の流れを知っておく
→局所麻酔→局所麻酔+ステロイド→ブロック→手術
 

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