2019年6月19日水曜日

BPSDはなぜ起こるのか

私は病院の中の3Dチームに属しています

3Dとは、dementia(認知症),delirium(せん妄),depression(うつ)です

この3つはとても親和性が高く、

認知症の人に抑うつ症状やせん妄がでることは多く、

看護師さんが困るとことの一つではないでしょうか

各病棟を回り、困っていることに対応しますが、

その多くは、認知症患者さんのうつやせん妄、BPSDです



BPSD(Behavioral and psychological symptoms of dementia)は

認知症の行動・心理症状とされ、

以前は周辺症状や問題行動と言われていました


記憶障害、見当識障害、注意障害、構成障害、言語障害、失行、失認といったものが、

中核症状と呼ばれ、

NPI(Neuropsychiatria Inventory)の12項目や不潔行為が、

周辺症状、BPSDと言われます



BPSDはせん妄とは違いますが、

症状は似通っています


極論をいうと、

病院で困るのが、せん妄で、

在宅で困るのが、BPSDです


BPSDの中でも最も皆さんがお困りなのは、

個人的には、不潔行為、排泄に関わる問題かと思います


先日も外来に来るはずだった患者さんが来ませんでした

そのかわり、息子さんだけが来院され、

どうして本人は来ないのか?

と尋ねると、

便をしても拭かないから、体中に便がついている状態で、

とてもとても病院には連れてこれなかったとのことでした



もう一つは、易怒性でしょうか

些細なことで、妻と喧嘩して、

怒った夫が包丁をもってきて、

妻に襲い掛かったため、

妻が夫に体当たりして、

なんとか自分の身を守り、

その後、警察沙汰になった人もいました



外来していると、

実は・・・

といって、上記のようなことが、頻繁にあります


BPSDに詳しくないと、対応できませんよね




認知症は治らない病気だから、やることはない?


そんなことはありません

確かに中核症状に対しては、やれることは少ないかもしれません

しかし、BPSDに対しては、やれることがいっぱいあります




人間はBio,Psycho,Socialな存在


人間が人間たるためには、

Bio,Psycho,Socialがそろっていることが必要です

よく家庭医療の分野で出てきるBPSモデルですが、

これをもとにBPDSを考えてみましょう


認知症が発症すると、今まで簡単にできていたことができなくなってきます

料理を失敗したり、

簡単なことも覚えられなくなります


それ自体も本人は分かっているので、ショックです


ですが、周りがわざわざ指摘してきます

「おじいちゃん、何度いったら分かるの?」

「さっきも言ったでしょ!」

と言われて、さらに追い打ちがかかります



そりゃあ、つらいですよね





そういったつらい状況が、ずっと続き、

ある時、人や物事に対する反応として、

BPSDが出てきます


BPSDが起こるのは、本人のせいではなく、

周りのせいなのです






例えば、

財布がなくなった時に、

誰かが隠したんだと

怒りだすBPSDが有名ですよね



そして、その時に

「誰も隠してなんかいませんよ!」

「自分で置き忘れたんでしょ!!」

と強くいってしまうと、

本人は怒られた!!とだけ、記憶してしまいます

内容は覚えていません


そして嫌な思いだけが残り、

怒った人に対して、負の気持ちだけが湧いてきてしまいます

そのため、易怒性につながったり、

介護の抵抗につながったり、

妄想につながったりしていきます




ここでも認知データと感情データです

認知症の人は、簡単に言うと、


認知データは覚えられませんが、

感情データは覚えていられるのです


認知データは、海馬や大脳で処理され、

感情データは、大脳辺縁系で処理されるため、

処理する場所が違うのです


認知症の人は感情を失ってはいません

そのことに気が付くと、

認知症の人への対応が変わります

自分の気持ちは相手に伝わってしまいます


大脳辺縁系は共鳴します

よくも悪くもです



BPSDまとめ
・人間はバイオ・サイコ・ソーシャルな存在である
・BPSDを引き起こしているのは、私達かもしれない
・大脳辺縁系は共鳴する

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