機能性消化管疾患(functional gastrointestinal disorder:FGID)は、
器質的な疾患を認めないにも関わらず、腹部症状を呈する疾患です
FGIDにはたくさんの疾患が含まれますが、
胃十二指腸障害の代表的な疾患が機能性ディスペプシア(functional dyspepsia:FD)です
FDは2016年に改訂されたRomeⅣ基準では
「上部消化管内視鏡検査を含めた各種検査において、
症状の原因となる器質的な疾患を認めないにも関わらず、
①つらいと感じる心窩部痛
②つらいと感じる心窩部灼熱感
③つらいと感じる食後のもたれ感
④つらいと感じる早期飽満感
のうち1つ以上の症状があり、これらが6か月以上前に初発し、
3か月以上持続しているもの」
と定義されています
RomeⅢからⅣへの変更点は、
4つの症状全てにおいて「つらいと感じる」という文言が追加されており、
日常生活に影響を及ぼすかどうかが重要視されています
日本の2014年のガイドラインには罹病期間は言及されていません
Rome基準はあくまで研究目的につくられていますので、現実的ではありません
つらい症状がある人を3か月待ってから診断する必要はありませんので、
期間に固執する必要はないです
昔は内視鏡検査で異常がなければ、気のせいにされていた時代が、
今や、機能性です
時代が変わると病名がつくのですね
FDの病態
FDの病態は一言でいうと複雑です
最近は脳腸相関が重要であるといわれています
さらにはそこに腸内細菌叢を加えたmicrobiome brain-gut axisとよばれる概念が提唱されています
腸内細菌叢が乱れることによってか、
感染性腸炎の後にIBSやFD症状を訴える人がいます
感染性腸炎後IBSやFDといわれており、最近のトピックです
(Aliment Pharmacol Ther 2015;41:177-188)
その目で外来をやっていると、かなりの頻度で出会います
FDの考え方
FD症状を訴えてきた人の考え方は、
①まずは器質的疾患の除外です
そこで大事なのは、
体重減少、再発性嘔吐、出血、嚥下障害、高齢、発熱といった症状です
アラームサインと言われています
高齢者の場合は、積極的に悪性腫瘍を検索し、なければ薬剤性を疑います
中高年の場合も、やはり悪性腫瘍を疑うべきです
若年者の場合は、消化性潰瘍をまずは想起したくなります
重要なのは、FD症状に対してすぐに上部消化管内視鏡検査を行わず、
PPIでお茶を濁している症例が多数あるという事です
PPIで効いたからOK
ではなく、効果があったとしても胃カメラは行っておいたほうがよいでしょう
若年者の場合、実際は難しいこともありますが・・・
②ピロリ菌関連
ピロリ菌に伴うFDは少ないですがあり得ます
そのため、FD症状があれば、
上部消化管内視鏡検査とピロリ菌検査はセットと考えておいた方がよいでしょう
ただ、NNTは14とあまり効果は高くないので、期待はあまりしないほうがよいでしょう
③本当のFD
①、②は同時並行で考えつつ、実際はFDとして対応することが多いでしょう
そこでの考え方は、
FDは消化器疾患としては考えず、心身症として考えることをお勧めします
心身症とは、「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、
器質的ないし機能的障害が認められる病態」とわれます
ただし、うつ病や神経症といった他の精神障害に伴う身体症状は除外することになっています
簡単にいうと、心理的な原因(ストレス)が器質的な疾患を発症・悪化させる疾患群です
心身症の概念が頭の中にあると、難治性の喘息やFDに出会った場合に「薬一辺倒」のアプローチから抜け出すことができます
(1)FDが起こる準備因子
(2)FDが発症した発症因子(トリガー)
(3)FDが持続している持続因子
に分けて考え、それぞれにアプローチすることができます
FDの治療
ガイドラインでフローチャートがでていますのでご参考ください
FDまとめ
・FDかなと思ったら、まずは器質的疾患の除外とピロリ菌の検索を
→除菌して症状改善したら儲けもの
・FDは消化器疾患というよりも心身症の側面が強い
→こじれた時は、準備因子・発症因子・持続因子を考えてみる
参考文献:日医雑誌 第147巻 第10号/2019年1月
機能性消化管疾患ガイドライン2014 機能性ディスペプシア(FD)
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