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2022年8月7日日曜日

両下肢脱力を来した女性(身体所見編)

病歴聴取から以下のような鑑別が考えられ、取りたい所見は以下のようにました 



鑑別疾患にも優先順位はありますが、診察にも優先順位をつけることが大事です


外来は「時間圧」があります
悠長に神経診察できないことが多いです





ポイントは鑑別疾患が大きく変わる診察は何かを意識することです


例えば、咽頭痛であれば、咽頭に所見があるかどうかは最重要です
    次に大事なのは開口障害です


失神であれば、シェロング試験はmustです


今回の両下肢の痺れや脱力であれば、腱反射が亢進していれば、
脊髄病変を疑いますので重要です

またミエロパチー vs  ニューロパチーの構図になっているので、
その場合、lineが引ける感覚異常があるかどうかは非常に重要になります


この所見だけは時間をかけてでもとる必要があります



神経疾患全般に言えることですが、
神経診察でわかるのは、異常となっている解剖学的な部位です


たまに一般診察を疎かにしている人がいますが、一般診察も重要です

一般診察で分かるのは、病因・病態です



例えば脳梗塞であれば、
頸動脈雑音、心雑音、両側上肢の血圧の差、塞栓徴候、皮疹(顔面の帯状疱疹)などで、解離や頸動脈狭窄、IEが判明する場合があります


今回であれば、M蛋白によるニューロパチー、POEMSが鑑別です


そうなると、浮腫や皮疹・多毛がないか?という目で診察が必要になります

血管炎やサルコイドーシスも鑑別であり、皮疹や結節がないかも重要です



神経診察と一般診察をごちゃごちゃにとるのではなく、
切り離して考えます


神経学的異常部位をみつけようとしているのか? 
病態を探ろうとしているのか?

と頭が整理されます





今回の神経診察では、
剣状突起の下に感覚鈍麻がありました

この所見は非常に重要で、ミエロパチーを示唆する所見です


この時点でポリニューロパチー vs ミエロパチーは、
ミエロパチーに軍配があがります


次はミエロパチーの鑑別に入ります






さて、この症例はMRI を再検されていますが、胸髄に明らかな病変はありませんでした


頸椎はやや狭窄がありましたが、脊髄内に高信号はなく、
頸椎症性脊髄症の診断も微妙でした


しかし、患者さんの症状は悪化の一途をたどり、
画像では明らかではないものの、髄液検査で蛋白上昇や診察の所見から
何らかの脊髄炎があるものとして、ステロイドパルスの治療に踏み切られました


パルス後は症状は軽快傾向であるとのことでした
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脊髄病変を疑った時は、上司がまとめてくれたこの分類を思い出します




今回の症例の結論は出ていません

ただステロイドが効く病態であるということで、鑑別が多少絞られました


その中で、除外できているもの、除外できていないものを丁寧に区別し、

今後、経過観察していくことが重要になります



診断も治療も非常に難しい症例でした



まとめ

・鑑別疾患だけではなく、身体所見にも優先順位をつけよう

→時間がなくても、絶対にやらなければならない診察がある


・神経疾患を疑った時は、神経診察と一般診察を分けて考える

→神経診察では神経の解剖学的異常部位を探すことができる。つまりどこの画像をとるべきか?が分かる

 一般診察では、その原因となった病態のヒントがあることがある


・ミエロパチーを疑った場合の進め方

→圧迫病変ないか、炎症はないか、脱髄はないか?

2017年7月6日木曜日

ミエロパチーを疑ったら

ミエロパチーはたまに出くわします
内科医としての山があるとすれば、ミエロパチーはその一つでしょう
似たような状況は間質性肺炎の急性増悪

つまりやるべきことをしっかりやる
ルーチンはルーチンでやるときです

むしろ同じ思考過程に落とし込めるので、楽ではありますが、
詰めきれない時も多く、もやもやが残る領域です

そこを詰めていくのが、内科医としての腕の見せ所でしょうか


ミエロパチーを疑う時は、幾つかあります
  • 急に歩けなくなった人
  • 明らかなレベル形成を伴う感覚障害(むしろこの所見はミエロパチーを狙わないと、とれない所見。ささっさと手足触る、なんちゃって感覚チェックではダメです)
  • 脳梗塞かと思って、頭部のMRIが空振りで、よく見ると顔はスペアされていた
  • 大動脈術後の下肢の麻痺
  • GBSかなと疑った時
  • VB1欠乏かなと疑った時
  • 転倒後、手を痛がっていて、手が上手く使えない人
などなどです。疑う事が出来たら、次はしっかりとした感覚の身体所見をとりましょう。
あとは腱反射や直腸診も忘れずに。

ミエロパチーの時のように、身体所見がものをいう時ってありますよね。
そういう時に心がけていることは、

「一手間を惜しまない」

という事。

これが一番の診断への近道であるとよく感じます。

忙しい外来でも、面倒だなと思っても、一手間かけるべき時があります
その時は割り切ってしっかり病歴や身体所見をとりましょう








Clin Neuroradiol (2015) (Suppl) 25:183–187







2018年7月12日木曜日

ギランバレーかなと思ったら

ギランバレーは思いつくと、


ギランバレー来たー!

という感じで、ギランバレーにしか見えなくなります

足が動かしにくく、痺れもあり、先行感染もある

と来れば、ギランバレーを疑うのは当然です


ですが、ギランバレーに飛びついてしまって、

他の病気の鑑別が飛んで行ってしまうことが多々あるので、

一度冷静になる必要があります



基本的にこれがあったら、絶対、GBSともいえないので、

臨床像や身体所見、補助検査を用いて、総合的に診断します


大事なことは他の疾患の除外です

Stroke mimicならぬ、ギランバレーmimicです

大脳鎌の病変とかは知識的には大事ですが、

実際は稀です

でも一応チェックします



他にも鑑別すべき疾患は山ほど教科書的には挙げられますが、

一番の対抗馬は横断性脊髄炎です




両下肢の対麻痺となると、ミエロパチーが鑑別になるので、

しっかり診察しないといけません


ギランバレーを疑った場合は、

手足をチョンチョンと触って、

感覚は大丈夫ですかー?

という診察では、全然ダメです


チョンチョン診察は、内科医がよくやる感覚系の診察ですが、

ギランバレーの時は、レベル形成があれば、ミエロパチーを疑いますので、

しっかりと感覚を取りに行くことが重要です





ギランバレーのように思いついたら、

それにしかみえなくなってしまった場合、

ギランバレーに合わないような所見は、無視してしまうことがあります


ギランバレーに限ったことではありませんが、

人は見たいように見て、自分の都合の良いように解釈します



あれ?

何かおかしいな

と思っても、

まあいいか、大した所見でもないし、

カルテに書くほどではないな

という軽微な異常を闇に葬ることはよくあります


そんな時は、闇ではなく、

心の中に留めておいて、

いつでも取り出せるように注意を少しだけ傾けておきます


そうすることで、もう一度、新しい何かイベントがあったときに、

違う疾患をすぐに想起できるようになります



例えば、何となく物がダブって見える時もある、

日内変動があるような気がする

といった所見があれば、もしかすると、重症筋無力症かもしれません



何か変だなと思った時は、

その所見を大事にするといいことがあります






2025年5月7日水曜日

長大な脊髄病変に出会ったら

40代女性 主訴:左下肢の痺れ、歩行困難  ※症例は架空です

生来健康な会社勤めの方


現病歴:
来院の2週間前から背部痛や腰痛、季肋部周囲の痛みが出現

腹筋を始めたので、そのせいだと思っていた

その後も痛みが続き、夜間も眠れない程になった
だんだん、左足に痺れや感覚鈍麻が出てきた

近医整形外科受診し、ヘルニア疑いと言われ、
ロキソニン、リリカを処方された

痛みは改善したが、尿が出なくなった

リリカのせいと言われリリカを中止し、尿カテが留置された

リリカ中止した後も尿意を感じず、
歩くのも困難になってきたため、精査目的で来院


診察では四肢の腱反射が全て亢進しており、
バビンスキー・チャドック反射も見られた

下肢三重屈曲現象もあった

MMTは左腸腰筋が4、
他の左下肢のMMTは5-であった

感覚ではサービカルラインを認め、
Th1以下で痛覚・冷覚・触覚が低下していた

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緊急で撮像した単純MRIにて、
頸髄と胸髄に長大な脊髄病変が見つかりました

腰椎には病変はありませんでした


上記症状以外にヒントはありません

既往もなく、家族歴はありません
アルコール飲酒はなく、内服は何もありません

SLEやSS、RAを想起させるようなROSはありません
視覚や視野の異常もありません

皮疹もありません
血液では炎症反応上昇はなく、梅毒・HIVは陰性です

全身のCTでも特記すべきことはありません


この後、どのように診断を詰めていきますか?
治療はどうしますか?


ミエロパチーを疑った場合、
緊急で手術が必要になるような脊髄を圧迫している病変
(血腫・膿瘍・骨折・椎間板ヘルニア)がないかの確認が必要です


そのため、MRIが撮像されますが、
今回は圧迫病変はなく、脊髄内に病変を認めました



ミエロパチーの鑑別のためには

①発症様式と時間経過:超急性、急性、亜急性、慢性

②脊髄内の分布(短軸)

③病変の長さ(長軸)

が重要になります


脊髄の生検ができないため、
MRIでの画像所見と脊髄以外の病変、自己抗体から詰めていく必要があります




病歴の中でも時間経過は非常に重要です

いつも以上に詳細な病歴をとりましょう



脊髄病変は、原因が特定できないことも多々あります

その場合、病名は特発性横断性脊髄炎になりますが
特発性というためには、とことん調べる必要があります


さらに、最初に診断がつかなくても、
治療経過中に判明することもあり、診断の見直しが必要です


長大な脊髄病変の場合、まず想起する疾患はNMOSDです

NMOSDの診断には、抗アクアポリン4抗体が重要です

1週間くらいで結果が判明します


抗アクアポリン4抗体のELISA法は
コマーシャルベースで測定できるようになったことはありがたいのですが、
CBA法に比べると感度が低いという問題があります


そのため、ELISA法で陰性の場合は、CBA法で提出する必要があります


CBA法も陰性の場合、抗MOG抗体や抗GFAP抗体を提出するか検討します



MRIはできれば造影も行います

造影効果の有無でも鑑別が絞ることができます


各疾患ごとに分布や造影の特徴がありますので、
それぞれの疾患で見られる〇〇サインがないか確認します










脊髄サルコイドーシスの診断は非常に難しいです

ポイントは脊髄以外の部分のヒントを見逃さないことです

そして、診断のためには、
ヒントがなくても積極的にサルコイドーシスらしさを探しにいく必要があります

NCSや生検、ブロンコで診断がつくことがあります


まとめ
・長大な脊髄病変は、病歴、画像、抗体で鑑別していく
→特に造影MRIの読影が大事
 ステロイド前に血液と髄液をたくさんとっておく

・最初に診断がつかなくても、治療経過や時間が経てば診断がつくことがある
→常に診断の見直しを

・炎症性脊髄症と非炎症性脊髄症の鑑別は難しい
→特にdural AVFやサルコイドーシスは診断を間違いやすい


2018年11月18日日曜日

頚椎症

頸椎症

手の痺れをみたときの鑑別疾患の筆頭は頚椎症です

頚椎症は加齢変性が原因で、神経の周りの組織が膨隆や肥厚して、

神経根や脊髄を圧迫することで、症状が出現します

症状からみると、運動障害、感覚障害、運動+感覚、特殊型の

4つと覚えておくと、分かりやすいです

病変の主座から考えると、

神経根症と脊髄症候にわけられます

脊髄症候は髄節と索路症候に分かれます

脊髄は圧迫を受けると、灰白質の前角から障害を受けることが多く、

徐々に障害範囲が広がっていきます

服部分類ではⅠ→Ⅱ→Ⅲへと進んでいくとされています




・「首っぽいね」の一歩先へ

痺れの鑑別の第一は、頚椎症ですが、

「首っぽいね」

で終わらせないように、

頚椎症を詳しく考えていきます


C7の神経根症状がメインだけど、

腱反射のdiscrepancyがあるから、ミエロパチーも加わっているかな・・・的な感じで、

病変部位を当てられるようになりましょう

内科医は中枢神経、脳神経のとり方はお作法で教わりますが、

神経根やミエロパチーを疑った時の診察は苦手な感じがします


頚椎症を疑った時にとる病歴や診察や5Dと言われます




今は売っていませんが、「臨床神経学の手引き」という名著で、5Dといわれています

なぜか、ネットで検索してもヒットしないので、あまり有名ではないようですが、

非常に有用です

いつも、5Dって結局何だっけ?

となってしまうので、今回まとめました

そこで、新たに7Dと提唱したいと思います

頸椎が7個あることにちなんでいます





この7Dは神経根症候ででるわけではなく、脊髄症候ででるものが多いです


ですが、痛みに関しては、神経根症候であり、

痛みが初発の場合は、神経根の障害であることが多く、

神経根か、脊髄症候かの鑑別に有用です



痛みの部位によっても、病変部位の推定が可能ですが、

急性に出現していれば、まずはACSの除外が必須です

また胆石発作でも同様に肩に放散するので、

内臓臓器の除外から始めます




・頚椎症の部位診断のステップ

①神経根か、脊髄症候か

→痛みの有無で、神経根か脊髄症候かを大まかに予測する

ジャクソン、スパーリングサインで、圧迫を誘発して、

症状の誘発をさせることもあります

ですが、手技自体で障害を悪化させるので、

障害が明らかな場合はあまりやらない方がよいかもしれません


軽く後屈させたり、いきむ動作や咳で痛みが悪化する場合は、

それ以上の誘発は不要だと思われます



②病変の高さはどこか

→支配している筋肉の萎縮・筋力低下や腱反射をとることで予測できます

 感覚の支配領域からもある程度は予測できます


腱反射で特に上腕二頭筋腱反射をとったら、指が屈曲した →C5病変

腕橈骨筋反射をとったら、指が屈曲した →C6病変

という奇異反射がみられることが多く、その場合は病変部位の推定が可能です


③脊髄症候ならば、灰白質(髄節)の障害か、白質(索路)の障害か

→下肢の所見や排尿障害の有無から、

 灰白質から白質のどの部分まで障害されているかを考慮します


下肢の腱反射が亢進したり、異常反射が出現していれば、索路症候であり、

服部分類Ⅱ以上となります

手だけの巧緻運動障害であれば、服部分類のⅠでとまっている可能性が高いです



・Discrepancyについて

見慣れていないと、出現してもわかりません

自分も最初は、この所見が何を意味しているかよく分かりませんでした

なんかいつもと違う動きだなあ、と感じた時は、だいたい異常です


それぞれの反射が、Cの何番に対応しているかを知っておくと、

病変部位の推定に役立ちます






・画像との比較

自分の診察で、

右・左の

C〇の

神経根・脊髄障害だ

と推定できるようになれば、

つぎは画像と比較してみます

画像と自分の推定病変部位が合致してこそ、

診断がつきます

しかし、画像で大した所見じゃないなあ

という時も往々にしてあるので、自分の所見を信じることも重要です



・ヘルニアとの違い

あまり意識しなくてもよいとは思われます

鑑別するメリットはあまりないと思います



頚椎症の経過は色々あることを知っておいたほうが良いとは思います

後屈や転倒で、悪化することが多いので、

症状が悪化したタイミングの前にそのような動作がなかったかどうかを、

しつこく聞くことが重要です


しかし、後屈は生活動作の一部なので、病歴聴取にもこつがいります


例えば、読書を腹ばいでしていなかったか、天井の電球を交換しなかったか

美容室で髪を洗わなかったか 

という聞き方をしてみるのも有用です



治療に関しては、経過の図の通りであり、

自然に軽快する症例もあることから、慎重になることが多いです

手術適応は整形外科医にお任せします


内科医にできることは、他の疾患の可能性をつぶすことです

特に運動障害だけでくるパターンの場合は、ALSと非常に紛らわしいです


痛みが先行し、その後、筋力低下や萎縮がくる場合、

神経疼痛性筋萎縮症との鑑別が必要になります


痺れと運動障害が急性に進む場合は、GBSやVB12欠乏が鑑別になります



頚椎症であることが疑わしければ、

悪化させないような、日常生活の指導がメインとなります


リリカ®やメチコバール®いれて、終わりではありません



頚椎症のまとめ

・痺れをみて、「首っぽいね」としない

・その先に行くには、頚椎症のどこに病変部位があるかを推定する

・推定するには、7Dを意識する

・病変を推定しないと、画像が読めない


2020年2月6日木曜日

昼カンファレンス ~病歴は逆行性ではなく、前向性に聞く~

症例  83歳 男性 主訴:左下肢脱力

Profile:神経内科で右手のジストニアでフォロー中、ドパコール内服している

現病歴:もともとジストニアの影響で右手が動かしにくい
    いつからかは不明だが、左下肢が動かしにくかった
    
    来院当日、朝5時に動けなくなっている本人を息子が発見
    トイレの中で尿失禁しており、動けなくなっていた
    その後は、自分で歩行でき、walk inで救急受診

既往・既存:右手のジストニア
内服:ドパコール
生活:ADL フル、仕事もしている、喫煙:1箱/日、息子と生活
-----------------------------------------------------------------------------------------------------
ディスカッション①:他に聞きたいことは?

司会「はい、ありがとうございます。
   この症例は早朝に息子さんに連れられて、歩いて救急外来を受診されたのですね?」

発表者「はい、救急車ではなく、普通に歩いてこられました」

司会「わかりました。では何か病歴でとりたいことはありますか?」


学生「意識状態はどうでしたか?」


司会「意識はずっとあったみたいです。意識を失ったりはしていません。」


学生「話す感じはどうでしたか?」

発表者「それは何を意図しているのですか?構音障害ですか?失語ですか?」

学生「う・・・」


聴衆「学生さんに厳しいな(笑)」

発表者「だって、質問の意図が分からなかったんです」


司会「僕にもこんな感じなので、気にしないでください(笑)

   まあ、ここでは呂律不良があったかどうかでしょうか?」


発表者「呂律不良はなかったです」

司会「ありがとうございます。他にはどうですか?」


研修医「吐き気はありましたか?」

発表者「ありませんでした」


研修医「これまでに転んだり、外傷歴はありますか?」

発表者「ありませんでした」


司会「はい。ありがとうございます。

   この病歴の中でとても気になることがあります。
  この症例のkeyになるところですね。

   それはどこかわかりますか?」


シーン

専攻医「いつからか不明というフレーズですか?」


司会「その通りです!
   いつからか不明というのは、
   患者さんが「いつからかって言われても、よくわからないなあ・・・」

   といったのかもしれません。

   自分の体の異変を正確に記憶している人の方が珍しいので、
   本当に分からないのだと思います。

   
   その時に我々は
  じゃあ、しょうがないか、とあきらめてはいけません

   聞き方を変えれば、いつが発症か分かる可能性があります。

   さて、どうやって聞きますか?」


研修医「仕事をしている人であれば、仕事は出来ていたかとかですか?」


司会「そうですね、仕事している人であれば、その聞き方はいいですね。
   もちろん仕事の内容の含めて聞きましょう。


発表者「仕事はしていたようですが、今はしているかは聞いていませんでした」


司会「わかりました。他にはどうですか?」


専攻医「新聞とか見ていたりする人なら、新聞をしっかり取りに行けていたかとかはどうですか?」


司会「なるほど、いいですね。新聞に限らず生活リズムに合わせて聞くのが大事です。


   まとめると、

   今までやってきたことやできていたことがあれば、
   それが出来なくなったタイミングがないかを探るような質問をすることで、
   発症時期が分かる可能性があります。

   例えば、日課にしていた散歩とか、運転とか、趣味の体操とかです。

   何かずっと続けていたことが終わったタイミングは、
   もしかしたら体調の変化があったからかもしれません。

   それらの時期が重なっているのであれば、それが発症時期なのでしょう。



   病歴聴取において最も大事なことは、
   いつまで元気であったかを明確にすることです。

   なぜなら、時間経過が病態に直結するからです。


   そして、上手な病歴聴取の方法は
   今から遡って、症状が始まった時期を聞くのではなく、
   もっとさかのぼって、元気だったときから聴取するのです。
   

   つまり逆行性ではなく、前向性に聞きましょう!



発表者「そういう風には聞けていませんでした。

    ただこれまでに日常生活で困ってはいなかったようで、
    本人に聞いても今も困っていないようです。」


司会「なるほど、
  ということは日常生活はいつもどおり送れるくらい軽い症状だったのかもしれませんね。
  では診察にいきましょう」
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身体所見
BP200/90、P94(reg/reg)、T 37.0、SPO2 97%
意識 清明
見た目 歩いて入室 少し左足をひきずるような歩き方をしている

心雑音なし  呼吸音 清

脳神経 問題なし
運動
MMT 腸腰筋 5/4
   大腿四頭筋 5/4
   他 5/5
ミンガツィーニ 左でやや下垂するが保持はできる

小脳 左手で指鼻指や回内回外がやや稚拙

不随運動なし

感覚 痺れなし 問題なし


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ディスカッション②:さて診断は?

司会「さあ、皆さん何を考えますか?」


学生「脳梗塞」

司会「はい、ありがとうございます。では他にはありますか?」


学生「脳梗塞」


司会「はい、ありがとうございます。脳梗塞に2票入りました(笑)」


研修医「脳梗塞」

専攻医「脳梗塞」

専攻医「脳梗塞」


司会「はい、ありがとうございます。脳梗塞に9票入りました(笑)
   皆さん脳梗塞でいいですか?」


研修医「うーん、脊柱管狭窄症とか?」

司会「はい、ありがとうございます。他にはどうですか?」


専攻医「末梢のどこか」


司会「末梢のどこか!ってざっくりですね。
   まあいいでしょう。10票分くらいですかね。」


専攻医「もともと右手のジストニアがあったので、それが左足にもきたとか?」

司会「なるほど。3票分ですね」


外科医「CO中毒」

司会「そうきましたか(笑)まあ、あるかもしれませんね。5票あげます。
   
   他にはどうですか?ちなみに僕の票は100票です(笑)」


専攻医「慢性硬膜下血腫とか?」


司会「その通り!はい、僕の100票はCSDHです(笑)

   このプレゼンテーションはCSDHです。
   
  高齢者が最近なんとなく歩きにくくて、
  麻痺といえないくらいの下肢の脱力で来ます。

  そして脳梗塞にしては、部位がよくわからない。

   こんな時はCSDHのことが多いです。


   さて最後にスタッフの先生に聞いてみましょう」


スタッフ「これは頚損ですね。

     もともと首が狭くて、軽い外傷契機に脊髄がやられたのだと思います。
     なのでCTとっても骨折はなく、MRIで脊髄がやられているパターンの
     非骨症性の脊髄損傷だと思います。」


司会「確かに!なるほど。それは大事な鑑別ですね。

   頸椎損傷に1万票あげます。

  頚髄損傷は忘れがちな疾患ですが、後々悪化することもあり、見逃したくはない疾患です。

   
   この前も入院中の患者さんが転倒して、前額部をきって出血した人がいました。
   
   その人はもともとある手の痺れ以外に、
   意識障害や麻痺、頸部痛、頭痛はありませんでしたが、
   一応、外傷機転もよくわからなかったので頸椎のCTをとりました。
 
   CTでは頸椎の骨折はありませんでしたが、
   もともと頸椎症の影響で脊柱管が狭くて、MRIにて中心性脊髄損傷がありました。


   転倒した人全員に、頸椎のCTを撮れという意味ではありません
   ですが、頸部痛がないからとか、麻痺がないからだけでは除外は出来ません
   
  高齢者は上手に訴えることができないので、
  頭部CTをとる時は必ず、
  頸椎CTもとるかどうかを思い出す癖をつけた方がいいですね。


   さて、実際はどうでしたか?」


発表者「なるほど。実際は左上肢の小脳失調を疑わせる所見があり、
    血圧が高かったので、小脳梗塞や出血だと思って、CTをとりました。」


司会「なるほど、でもですね。
   
   左手の小脳失調の所見ほど難しい神経診察はありません

   右利きの人の場合、左手が少し不器用なのはなんとなくみんなわかりますよね
   特に高齢者はそれが顕著に出ることもあります

   なので左手の小脳所見の異常には注意した方がいいです

   左利きなのに、右手より不器用そうに動いたりするのであれば、異常としてもよいでしょう。
   なので利き手の確認も重要です」
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経過

頭部CTにて、両側(右>左)の慢性硬膜下血腫が見つかった

脳外科コンサルト後、手術が行われ、すたすたと歩行できるようになった
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司会「はい、ありがとうございます。
   
   やっぱりCSDHでしたか。
   でも頸椎損傷は合併していてもいいので、気を付けたほうがいいですね。

   CSDHを起こしているということは軽微な外傷はあったかもしれないということですから」


脳外科Dr「実はこの症例は後々聞くと、数日前から車の左側をぶつける自損事故を起こしていたみたい。
    そして代車が来たんだけど、それもまた左側をぶつけてしまっていたらしいよ」


司会「なるほど、その病歴が最初に分かっていれば、左の半側空間無視とうことがわかり、病歴の時点で診断に近づけたかもしれませんね。


   その病歴は、左下肢の脱力を逆行性に聞いても出できませんが、
   いつまでいつも通り元気だったかという視点で、
   運転という動作を前向性に聞いていくと、拾えたかもしれませんね


   非常に勉強になる症例でした。ありがとうございました。」



脱力(力が入らない)時に考えるのは、
全身の問題か、局所の問題か、急性か、慢性かです

これにより、病態×解剖を絞れます

診察を追加し解剖がよくわからなければ、神経や筋に関わらない可能性があります

一番多いのは、高熱(敗血症、インフルエンザ)でぐったりしている場合です
冬であればインフルエンザで動けなくなる高齢者は非常に多いです




下肢の脱力と聞くと思い浮かべるのは、ミエロパチーです

ミエロパチーは落とし穴がいっぱいです


よくある間違いは、両下肢の脱力だからそこを支配している神経根や脊髄の病変だと思い、腰椎の検索だけ行ってしまう事です


脊髄の病変の場合は、脊髄内を走行している線維の解剖の特徴により、
頚髄や胸髄の病変でも下肢だけに症状がでることがありますので、
疑われるレベルの病変より上位は、病変部位として全て可能性が残ります


ミエロパチーを疑ったらやることは、
氷を使って、温痛覚の評価を詳細に行うことです

手でちょんちょんの触覚だけの評価ではダメです






まとめ
・病歴は逆行性ではなく、前向性に聞く
→いつまで元気だったのかを聞くことは、病態が何であるかに直結している


・高齢者のよくわからない下肢の脱力や歩けなくなったというプレゼンは、CSDHを想起する
→同時に頚髄は大丈夫?という思考の癖を身に付ける


・ミエロパチーを疑ったら、レベル形成の感覚障害を氷を使ってチェック
→手でちょんちょん触覚チェックではだめ











皮疹の見方

皮疹の見方 皮疹の見方と言っても状況によって考え方が異なる。 皮疹だけをみてどう考えるかだけではなく、 どんな文脈で皮疹が出てきたか、 が重要である。 我々が皮疹に出会う状況は皮疹と全身症状のバランスによって3つに分けられる。 ① 全身症状がメイン(発熱、関節炎、ショックなど)だ...

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