2017年10月31日火曜日

耳下腺腫脹

たまに来ます耳下腺や唾液腺が腫脹してくる人

食事をしていたら、急に顎の下がゴルフボールくらいの大きさに
腫れあがりました

でも今はだいぶ小さくなりました

という人は大抵、唾石が一時的につまった人です

口腔内に開口する部分のところに唾石が詰まっていれば、

見えることもありますし、触ってみるとコリコリ触れることもあります

なので、耳下腺や舌下腺、顎下腺の開口部が口の中のどこかを知っておく必要があります


唾石がつまっていると、開口部が白色に膨らんだり、発赤することがあるので、

唾液腺の開口部ということを知らないと、

「口内炎」と間違えてしまうこともあります



耳下腺の開口部は頬粘膜にあり、

顎下腺の開口部は舌の下側にあります

舌下腺も二つに分かれて開口しますが、顎下腺の管に合流して開口する管と

舌下に多数開口する管があります




耳下腺が腫れる病気はムンプスだけではありません





耳下腺が腫れている人をみたら

⓪周囲の流行を確認しましょう
ムンプスの流行があれば、可能性は高まります
男性であれば、精巣と頭痛は確認しておきましょう

①診察で大事なのは、まずは耳下腺かどうかの確認です
ポイントは下顎角が触れにくくなるのが耳下腺ぽいと言えます

②一応、両側性かどうかの確認をします
ですが、これはあまりあてにはならないので、絶対のものではありません
ムンプスも片側性だったものが、遅れて両側性になることもありますし、
化膿性耳下腺炎も両側性のことがあります

腫瘍の場合は両側が同時に腫れるということは稀なので、両側であれば、
可能性は下がると思われます
それ以外の原因はどちらも起こり得るので、あまり鑑別を絞るのに有用な所見とは言えません

③顔面神経麻痺の合併がないかチェックします
あれば、腫瘍性の可能性を考慮します

④皮膚所見をよくみます
蜂窩織炎になっていないかチェックします

⑤開口障害の有無をチェックします
咬筋が耳下腺の近くにあるため、炎症が波及すれば、開口障害はあってもよいでしょう
ただし、扁桃周囲膿瘍のように内側翼突筋に炎症が波及しても、開口障害は起こるので、
周囲組織への炎症の波及を懸念します

⑥口腔内をよく観察します
齲歯や衛生状態、乾燥具合を確認します
化膿性耳下腺炎は多くは逆行性感染で、口腔内の不衛生な人に起こることが多いです

⑦耳下腺を押しながら、頬粘膜に注目します
普通であれば、透明な唾液がシュッと出てくることが多いですが、
詰まっていると出てきません
化膿性耳下腺炎であれば、白色に濁ってどろっとした唾液が出てきます

⑧濁った唾液をすかさず培養とG染色を行います


⑨耳下腺と周囲に超音波を当てます
耳下腺内の腫瘍や膿瘍形成を確認します
周囲のLNの腫脹や頚静脈をみて、レミエール症候群の合併がないか確認します




耳下腺炎はもちろん口腔内の常在菌も多いのですが、思いのほか、
黄色ブドウ球菌が多いと知られています
院内発症例では、MRSAに注意が必要です

外科で手術後に化膿性耳下腺炎になる人をたまに経験します
おそらく脱水が契機になっているものとを思われます


化膿性耳下腺炎に膿瘍を合併する人もおり、USや造影CTも必要になることが多いです
唾石の閉塞が原因のことも多く、閉塞を解除しないと治癒が難しいこともあり、
口腔外科にコンサルトが必要です

唾石は耳下腺には少ないといわれていますが、
CTでみえないくらいの石は耳下腺にもあると思われます

そのため、どろっとした唾液では流出も悪いので、しっかり脱水を防いで、
口腔内の衛生環境を整えてあげるのが、重要です


耳下腺が腫れた人のポイント
・まずは耳下腺かどうかの確認
・両側か片側かはあまりあてにならない
・化膿性耳下腺炎は耳下腺を押しながら、口腔内をよく見る
・黄色ブドウ球菌が多いので、TSSも起こし得る

非外傷性の骨折

外傷がない時の骨折は時に、難しいものです

特にwalk inで歩いてきた人では、なかなか疑えません

慢性の関節炎として、漫然とOAや捻挫として対応されているcaseもあります

非外傷性骨折には三つあります

①疲労骨折
正常な強度を有する骨に、日常生活で受ける外力 を超えるような非生理的外力が加わったことによる骨折とされています

反復する労作があれば、疲労骨折を疑うのは、さほど難しくないでしょう

②insufficiency fracture  
強度が低下した骨に生理的外力が加わったことに よる骨折
骨粗鬆症をはじめとする骨脆弱性を基盤として生理的外力による骨折とされています

難しいのは、このinsufficiency fractureです
日本語訳は脆弱骨折です

好発部位は恥坐骨や膝、足部、踵骨、大腿骨頭軟骨下です

まさか、そこって折れるの???

という場所です


この骨折は外傷はなく、日常のささいなきっかけで起こることから、
内科医は骨折を想起することができず、
どうしても周囲組織の関節や靭帯を原因と考えてしまいます

さらに自覚症状に乏しく、歩いている人がほとどんです

この脆弱骨折は非常に見逃しが多いことが知られており、
CTをとっても見逃される骨折です

後で、放射線の先生に「先生、あの人折れてますよ」と言われないようにしましょう


こんなパターンに注意しましょう

・高齢女性の外傷歴のない、よくわからない鼠径部痛。でも歩ける
 ⇒恥骨の脆弱骨折のことがあります

・高齢女性の外傷歴のない、よくわからない股関節痛。
 ステロイド使っていないし、アルコールのみでもないので、
 大腿骨頭壊死は疑わない。一応、MRI撮ってみると・・・
 ⇒MRIで何やらぐちゃっとした大腿骨頭が見える時は、
  大腿骨頭軟骨下脆弱骨折のことがあります

・高齢女性の外傷歴のない、慢性の足関節炎と思ってフォローしている症例
 腫れてはいるが、あまり痛がらない。本人は捻挫が治らない印象。
 関節液を抜いても、炎症成分はなし
 サポーターしていくらか楽になる。痛み止めでいくらか痛み減る。
 ⇒足部(踵骨)の脆弱骨折のことがあります


上記は全て自分の失敗談です
特に足部に来ると本当に難しいです。
足関節炎にしか見えません。


脆弱骨折を疑うポイントは
・骨粗しょう症が背景にある
・関節の周りを痛がるけど、関節の所見に乏しい人
・自覚症状が乏しく、意外に歩ける人が多い
 (いつも見ている骨折とは痛がり方が全然違う)
・原因不明の慢性単関節炎では、結核も大事だが、
 骨折をまずは除外する


疑ったらMRIを撮影しましょう

③病的骨折(pathologic fracture)  
基礎疾患により骨の強度が脆弱化して起こる骨

悪性腫瘍の骨転移が代表例です







2017年10月21日土曜日

失神と痙攣

人は間違います

医者は誤診します


その原因は色々あって、

こうあって欲しいという心理的なバイアスがその一つです


この病気だったら、

帰せるし、フォローもいらないし、

患者さんも医者もハッピー


という気持ちがあったりすると、

その病気に当てはまるような情報を自然に集め、

当てはまらないような情報は、スルーしてしまい、

自分で正しいと思い込もうとしてしまいます


そんな時は、

何となく、診断が間違っているんじゃないか、

と深層心理で感じる事は多々あります

ですがこの思考を払拭するのは、わかっていても大変です


失神の場合は、いつもいつも、てんかん発作だったんじゃないか

ということが鑑別になりますが、

神経調節性失神だったらいいのに

と心で思いながら、診療をしてしまいます


例えば、若い男性が仕事中に意識を失って


救急車できた時を考えてみると、、、



病院に来てもまだ少しぼーっとしている

意識消失後の朦朧が長いのは、てんかん発作っぽいけど、

病歴だと、座って立ち上がった後だし、

起立性低血圧なんじゃないか?


目撃者は手をガサガサしていたって言ってるけど、

本人は自分で動かしてたって言っているし、

痙攣発作とは言えないんじゃないかな


もし、てんかん発作だったら、

この若者から運転免許を取り上げなければならないし、


医者としても辛いし、患者さんも辛い


うん、今回は仕事で疲れてたって言ってるし、


仕事中、何だか気持ち悪くなったって言っているし、


ちょっとよく分かんないところもあるけど、

神経調節性失神か起立性低血圧ってことで間違いない!


今日は帰ってもいいです

何かあったらまた来てね



みたいな感じで、自分がこうあって欲しい

という診断に、いつの間にか、

深層の自分が自分を誘導してしまう事はよくあります


しかし、それは全く患者さんの為にはなっていません

てんかんを見逃されて、ハッピーな訳ないです

患者さんからしたら、誤診されただけで、いい迷惑です




どうすれば防げるか?


これは前回の失神の病歴で、出てきた多人数がkeyです

病歴は多人数からとったほうがよいですが、

診断も多人数で行った方が間違いは少ないです


それは優秀な指導医がいるいない

という事は関係なく、

自分が声に出すか出さないかが重要です


声に出して、他人にプレゼンしてみると

自分の思考がよくわかります


ひどい時は、自分で喋っていて、完全に矛盾していることを口走り出します

自分も喋っていて、何でこんなこと話しているのだろう

と恥ずかしくなることさえあります


Out putすると、自分を見つめなおすことができ、

自分が深層の自分に誘導されていた事に気がつくことができます


そして、おまけで指導医のコメントも聞けます



そうですよね


意識朦朧しすぎですよね


この文脈で、ガタガタ動いていたら、

それは痙攣発作ですよね


みたいな感じで、我に帰ります




なので、一人で診療している、もしくはプレゼンをしなくなってきた

という人は黄色信号です




失神と痙攣の違いは知識としてはもちろん知っておいた方がよいです


ただ、本当に間違える時は、

知識レベルの問題ではなく、

バイアスによって起こることも知っておいた方がよいです





頭の中では綱引き状態です

ただ、心理的には失神であって欲しいと

思ってしまっているので、


どちらかというと、

最初から痙攣側に贔屓していた方がよいかもしれません


これは自分の思考の癖であり、

一人一人違うものです


思考の癖を早く掴むことが、

誤診を防ぐコツになります


失神について

自分の目の前で失神されると、結構びっくりしますが、

多くはそうではありません


誰の目にも触れずにバタンと倒れて、

音がして、見に行ったら倒れていた

慌てて、周りの人が救急車を呼んだ

待っている間、横にしていたら、目が覚めた


病院受診時にはもう何ともない

本人はもう大丈夫と言っている

早く帰りたいと

検査や心電図、CTとっても何もないので、帰宅

もしくはとりあえずの不整脈精査目的で一泊入院


このような診療が行われている事が多いのではないでしょうか

何がいけないのでしょう?



この診療では、病歴が抜け落ちています



失神の診療の一番の肝は、とことん病歴にこだわることです


失神の前はどうだったか?

失神した時はどうだったか?

失神した後はどうだったか?


3つの時間に分けて病歴をとることが重要です


DrGという番組では、病歴聴取に基づいたVTRが流れますが、

イメージはあのVTRを作れるくらい、

ありありと倒れた情景が目に浮かんでこなければなりません


イメージが浮かばなければ、病歴聴取が甘いということになります


もちろん、目撃者がいなければ、診断は困難です

ですが、想像するのが大事です


倒れた瞬間は見ていなくても、

その前にはこうだった

その後はこうだった

といった病歴は拾えます


3つのうち、2つの時間の病歴は拾える事が多いです


救急隊からの情報も大事で、

現場の空気感や状況を細かく聞かなければなりません

とても暑い仕事場で、窓も閉めきっていた、むわーっとしていた とか、です



何より、救急車に目撃者が乗ってきたら、すぐに帰してはいけません


目撃者が乗って来なければ、

できることなら、目撃した人に電話をして、病歴をとります


そして、一人ではなく、多数の人から目撃情報を手に入れることで、

情報が立体化してきます


一人から病歴をとると、間違った情報だったり、

勘違いが含まれるので、信憑性を高めるには

多くの人から病歴をとるのが一番です



失神は一過性意識消失発作の中に含まれ、

一過性意識消失の結果、姿勢が保持出来なくなり、

かつ自然に、そして完全に意識の回復が見られること

とされています


つまり、失神もどきがたくさんあります


例えば、一時的に意識を失い、目が覚めたが、

なんだかぼーっとしているし、足が少し動かしにくい

といった症状が残るものは失神とは言えません

意識消失発作➕発作後の下肢脱力となります

なので、完全に戻っているというのが、Keyです


まずは失神を正しく診断することが、

失神の診療では大事です


失神した人は外傷を負っている人が多く、

時にはJATEC対応も取らなければなりません

内科的なアプローチと外科的なアプローチが必要な症候群であり、

失神を正しくマネージメント出来る医者は優秀な内科医です



失神の病態は一過性の脳血流低下です

色々分類はありますが、

絵に描いてしまった方がわかりやすいです


心臓から脳へいく血流が一時的に途絶えてしまうので、


例えば肺塞栓でも起きますし、そもそも血液に酸素がないといけないので、

一酸化炭素中毒でも起こりえます


血流の流れと、血液の中身を考えると

自然と鑑別が出てきます

一応、覚え方としては、

失神の綴りはsyncopeであり、

それをもじって覚えることが多いです



大事なのは、心原性と大量出血を見落とさないことと、

神経調節性失神を狙って診断しにいくことです


それには、くどいですが、病歴が最も重要です


失神の診療には時間がかかるものだと割り切った方がよいでしょう

救急で時間がなければ、とりあえず入院させて、

入院後じっくりお話を聞きましょう




失神診療の難しいところは、すぐには診断がつかないところです


診断がつけば簡単です

子宮外妊娠だった

胃潰瘍からの大量出血だった

心筋梗塞に伴うSSSだった

重症のASだった


なら、根本治療へ繋げられますが、

ほとんど原因は診断できません


その場合の考え方は、

リスクの層別化です


ハイリスク症例かどうかを見極め、

入院させるかどうかを決めます


それにはたくさんのルールがありますが、

一番大事な事は医者の判断であったと言われています




失神の診療は、

その医者の臨床力が分かってしまうので、

オスキーにはもってこいだと思います

2017年10月20日金曜日

乾癬

乾癬は脊椎関節炎の代表的な疾患です

乾癬は非常に多彩な症状を呈します


その原因の一つが、サイトカインの異常であることがわかってきて、

サイトカインごとに疾患を分けるcytokine taxonomyという考え方が生まれてきています


自己免疫疾患は自己抗体で、

自己炎症性疾患はサイトカインで、

分類する


これは治療につながるので、

頭の中がスッキリ整理されて、非常にいい分類方法だと思います


例えば乾癬はTNFαやIL17Aが問題となっており、

GCAやRAはIL6が問題です

FMFやTRAPS、ベーチェット病、AOSDはIL1が問題です

もちろん、問題となるサイトカインは一つではなく、オーバーラップしています



 2013 Jul;19(7):822-4. doi

乾癬の皮疹


乾癬の皮疹は一箇所だと、白癬に似るので、迷ったら必ずKOHをしましょう

色んなタイプの乾癬がありますが、

ほとんど尋常性です

まれに重症化して、紅皮症になったり、

膿疱が全身に多発する膿疱性乾癬が起こります


膿疱性乾癬はステロイドを使っていた乾癬の人が急にやめたりすると

出る事があります


膿疱性乾癬の皮疹はギョッとするほど、汚い印象の皮疹です


肺炎の画像だけでは、菌名がわからないのと同様に、

皮疹だけでは原因はわかりませんので、

梅毒やAGEPが膿疱性乾癬の場合は鑑別になります


乾癬の既往がなく、急にくるとびっくりしますが、

乾癬があれば、あーあれね

ということになります



乾癬はHIVの人でも起こるので、

必ずHIVはチェックします

特に乾癬の皮疹が重症な場合や場所が典型的ではない場合、

HIVは忘れないようにしましょう




乾癬の関節炎


関節炎は軸関節の場合と末梢の場合があります

末梢の場合、痛風やリウマチと診断されている事も多いので、

Seronegative RAや結晶が証明されていない痛風は

かなり怪しいです


加えて、DIPに所見があったり、

付着部炎があったりすれば、乾癬の可能性がありますので、

病歴をとりなおしたり、

皮疹や爪の所見を探します


皮疹はケブネル現象が起きやすいところ

つまり擦れるところをみます

乾癬の皮疹は出たり引っ込んだりするので、

何回も探す努力が必要です




乾癬は関節や皮膚だけの病ではなく、

心の病も合併します

心筋梗塞や脳梗塞、骨粗しょう症も多いので、

全身の管理が必要です




脊椎関節炎

脊椎関節炎はリウマチに比べて、患者にも医者にも認識されていない関節炎です

そもそも脊椎関節炎は病名ではなく、症候群であり、色んな症状を呈します

有名なのが炎症性腰痛や関節炎、付着部炎、腱炎です

まずは脊椎関節炎であることから認識しないといけません

乾癬性関節炎や反応性関節炎などはその先です






何となく知ってはいるけど、

実際に診断した事がある人は少ないのではないでしょうか


脊椎関節炎はとても見落とされている疾患の代表です

見落とされてしまう理由はたくさんあります


関節炎や付着部炎で病院に来ても、

痛風や偽痛風、使いすぎとして対応されてしまう事が多いです

なぜなら脊椎関節炎の関節炎はNSAIDsが効いてしまって、

その場を凌げるからです


そんな事が何度も続いているうちに、

誰かが、

尿酸も下がっているのに何で何度も繰り返すんだ?

足の親指以外に関節炎を起こすし、

変な痛風発作だなあと、

考え、

これってもしかして脊椎関節炎?

という思考で発見される事が多いです



脊椎関節炎を発症する人は、若年で仕事をしている人に多く、

痛みも若い頃からあって、

慣れているので、

病院受診しない事も多く、診断機会が少ないという事もあげられます



炎症性腰痛があっても

一度、整形外科で椎間板ヘルニアや座骨神経痛と言われてしまうと、

既往を聞いても、原因不明の腰痛ではなく、ヘルニアとなってしまい、

患者も医者もヘルニアで思考が停止してしまいます


あとは脊椎関節炎は自己炎症性疾患と自己免疫性疾患の中間のような疾患であり、

自己抗体がありません

リウマチやSLEのように血液で引っ掛ける事が出来ないので、

診断には診察が重要視されます


慣れていないと難しいので、

リウマチ科以外の科では、見落とされてしまう事が多いです



見落とさないためには、どうしたらよいのでしょうか

主に五つの症状に着目します

これらを狙って取りにいきます


特に付着部炎は関節炎とは場所が少し異なるので、

関節だけで触っていてもダメです


痛風発作にしては場所が変で、

繰り返しているようなら、

爪と皮膚を狙ってみにくい癖をつけましょう


2017年10月19日木曜日

意識障害の人の診察

昏睡状態の人が来た時や意思疎通がとれない人の診察で、

困ってしまったことは誰しもあるのではないでしょうか


項部硬直含め、一般的な診察はもちろんしますが、

神経診察は、本人の協力がないと診察にならない項目が多く、

何していいのやら?

となってしまう事もあると思います


そういう時は、

まずバイタルをよく考えます

脳出血のように脳の中で何かが起きていれば、

血圧は上がっているのことが多いです


逆に下がっていれば、

ましてやショックならば、

意識よりも、まずはショックの対応からです


そういうのはJATECでよく習います


バイタルをみたら、次はトキシドロームを使って診察します


そして、ほとんど同じですが、

薬関連の疾患でないか

という視点で、観察します

腸蠕動音楽やクローヌスをよく見るのが、

セロトニン症候群では重要です



そして、神経診察を行います


ただし、協力が得られない場合の神経診察は


いつものルーチンの内容とは異なります


この場合、脳幹の反射を利用するものが多いです


診察にて、脳幹が生きているかを見極めます



意識障害は脳幹がやられた時か、

大脳全体がやられた時か

に分かれるので、どちらがやられているのかをある程度、


診察であたりをつけます



ただし、代謝性の場合や変な脳症の場合や痙攣発作の場合、

脳幹もやれるような所見が出る事もあり、あたりが外れる事もよくあるので、

盲信はよくありません




神経でもう一つ重要なのは、

laterarityです


MMTはとれない事が多いので、

膝立てやアームドロップテストで、

左右差がないかを見極めます



神経診察は協力が不可欠な診察もありますが、

協力してくれなくても

とれてしまう所見もあるので、

諦めずにとりましょう


多血症

脳梗塞は本当に奥が深いです

研修医の頃はあまり脳梗塞に対して、興味がわきませんでした

ほとんどがアテローム性や心原性であり、

パスを入れれば、物事が進んでいくので、流れ作業になっていた感じがしたためです


パスはいい面と悪い面があります

悪い面は、使いまくっていると、臨床力が落ちます

良い面はたくさんあります

作業効率がよくなり、医療安全的にも経営的にもメリットはあります


医者一人一人で治療に差が無くなるので、

よくも悪くも医療の平均化につながります



しかし、

脳梗塞の背景疾患までは、パスでは見つけられないので、

病歴と身体所見が重要です




TIAや脳梗塞に対して、しっかり病歴をとり、診察をして、

検査データを見直すと、


実はこれが原因だったんだ!

と感動することがしばしばあります



例えば、


繰り返す脳梗塞で紹介となり、精査にて

クリプトコッカス髄膜炎だったこともあります


他には、

脳幹症状を伴うめまいで入院精査となりましたが、数分で治ったので、

TIA疑いでバイアスピリンが開始となっていた人がいました


よく聞くと、振り向いた時や手作業をしている時に起こっていて、

診察すると、左手の橈骨動脈が微弱であり、血管雑音が鎖骨下で聴取され、

鎖骨下動脈の高度狭窄で、カテーテル治療に進んだという人もいました



検査データからも背景疾患を診断できる時もあります

塞栓性脳梗塞で入院となったこれまで心房細動を指摘されたことのない人で、

なぜか最近体重減少があり、内科で精査されていたが、原因不明でした

なぜか、脳梗塞で入院となった時に血液検査で炎症反応が上がっていました

これは感染性心内膜炎を想起させるプレゼンテーションであり、

血培がすぐに陽性となりました


脳梗塞で炎症反応が上がっていて、感染のフォーカスがはっきりしていなければ、

必ず血培はとったほうがよいです



検査データで分かる脳梗塞の背景疾患として、

多血症があります


多血症は骨髄増殖性疾患に含まれ、相対性と絶対性に分かれます


絶対性の一次性多血症がいわゆる真性多血症です


二次性には喫煙やEPO産生腫瘍などがあります


ちなみに、豆たんコタツという赤血球増殖マシーンともいうべき、

暖房器具が使われている地域が長野県にはあります


冬になるといつもHt50%を超え、

夏になると減るというサイクルを繰り返していた人がいました

症状はありませんでしたが、


検査データから、豆たんコタツ使ってますか?と聞くと、


やはり使っているとのこと


やめるように何度も注意してもやめてくれず、結局脳梗塞を起こしてしまいました

ガスをとると、いつもCOが上がっているので、

やめてないことがすぐにわかります

ただ、安くてあったかくて伝統のある暖房器具なので、

なかなか世の中(というかこの地域)からは無くなりそうもありません



長野県の冬の風物詩はインフルエンザだけでなく、

豆たんコタツに伴う一酸化炭素中毒もあります



インフルエンザと豆たん関連の入院が増えまくるので、

もうすぐ嫌な季節がやってきます



前振りが長くなりましたが、

脳梗塞から多血症が見つかったりする事もありますし、

健康診断でたまたまという事もあります


生命予後が他の血液疾患と比べて長いため、

内科医は避けては通れないのが、骨髄増殖性疾患です


最近、ジャガビという薬が出て、治療が変わってきています

それにしてもお菓子のパクリみたいなネーミングで、

覚えやすくていいですね

ということで、骨髄増殖性疾患についてです










2017年10月18日水曜日

RCVSっぽさ

RCVSを診断するにあたり、

RCVSっぽいなあと思う状況は色々ありますが

有名なのは新規の薬です


特に血管に作動する薬が多いです


ピットフォールとして、片頭痛と非常に似通った症状を呈するので、

RCVSは片頭痛と間違えられる事があります


そのため、激しい頭痛に対して、トリプタン系の薬を使ってしまうことも多いですが、

RCVSの誘引になる薬の中にトリプタンが含まれているので注意が必要です

トリプタンでさらに増悪させてしまう危険があります


なのでRCVSを疑った時は、片頭痛らしくても、

トリプタンは避けて、まずはプリンペランを入れる事が多いです

これで治ればラッキーです


薬でピットフォールその2は、ボスミンガーゼです

これは薬という認識がなく、鑑別になかなかあがりません


鼻出血に対して、耳鼻科でボスミンガーゼを入れてもらった人が、

その後、急に頭痛と変な脳神経症状が出現した


こうなったらボスミンガーゼをすぐに抜き取るしかありません


薬は内服薬ばかりではないのです


もう一つ、RCVSの誘引で有名なのが、排尿や排便です


排尿するたびに、頭痛が出るという人もいます

頭痛が怖くて尿をしたくないから、カテーテル留置する人もいます


RCVSの人は大抵、不穏状態で、一見、過換気発作やヒストリーではないかと

思うほどに痛がる人が多いです


頭痛のファーストインプレッションも大事で

じっとしているかと

悶えているかです

それで鑑別がつけられます



頭痛で死ぬ疾患は?

と聞かれれば、くも膜下出血が代表です


ですが、

三叉神経痛も自殺したくなるほどの痛みであるといわれます


SUNCTの人が

後日、痛すぎて、手首を切って戻ってきたこともありました

三叉神経痛もしっかり治療しないと、

死ぬ病気である事を忘れないようにしましょう



RCVSでは滅多に死にませんが、

症状が可逆的でない症例もあります


RCVSの場合は時間が経ってから、脳梗塞を発症したりすることもあるので、

入院して悪くなると、イメージが悪いので、

そういう 病気であると

あらかじめ伝えておく必要があります

Road to RCVS

救急外来での主訴頭痛というのは、

意外に研修医にとっては、苦手意識は少ない

まずはくも膜下出血除外のために頭部CTを撮る事が多く、

あまり深く考えず、ややパターン化されている印象がある


確かに、突然発症の病歴じゃなくても、くも膜下出血のこともあるし、

意識消失が主訴のくも膜下出血もあるし、

若い人でもくも膜下出血を発症する人はいる


閾値を低くCTを撮るという事は、くも膜下出血の見逃しが減るかもしれない

しかし、CTでくも膜下出血がうつっているのに、

見逃されてしまうケースが増える可能性がある


本気ではなく、頭痛だから、めまいだから、失神したから

という鑑別なしで、念のために撮ったCTほど危ないものはない


これは感染症の世界でいうところの

固有の菌名があげられなければ、抗生剤を入れてはいけない

のと全くおなじで、

固有の疾患を疑っていると言えなければ、CTはとるべきではない


そういう時は、本気ではくも膜下出血を疑っていないので、

読影が甘くなってしまう危険がある


なので、患者の不安を払拭したり、患者の希望に沿うというメリットもあるので、

記念CTをとる事はあるとは思うが、

そういう時こそ、読影が甘くなっていることに、自分が気づかなければならない



絶対くも膜下出血に違いない!

と思ってCTをとれば、

どこかに出血があるはずだ!逆に、くも膜下出血じゃなかったら、何の病気なんだ?

ということになり、目を皿のようにして、出血を探すであろう



さて、ここからが本番

くも膜下出血の典型的な病歴なのに、

頭部CTで異常がない

あれ?困った



1,頭部CT陰性のくも膜下出血

2,そもそもくも膜下出血ではない病気


の2パターンを考えないといけない


ここで、研修医は雷鳴様頭痛という言葉を思い出し、

Uptodateなどを見ながら、鑑別をあげていく


そこでよく鑑別に出てくるのが、

RCVS、椎骨動脈解離、脳静脈洞血栓症、下垂体卒中である


他にもあるが、上記をまずはおさえておく必要がある


上記はMRIで診断する事が多いが、

いずれも狙わないとMRIをとっても見落とす可能性がある

そもそも撮り方を工夫しないといけないものばかりである



RCVSの場合は末梢の脳血管までMRAをとってもらわないといけない

RCVSは血管が攣縮する疾患だが、中枢側よりも末梢から攣縮するといわれている

一度、RCVSを見ると何でもかんでもRCVSに見えてしまうが、

しっかり他の疾患を除外する事が重要である



椎骨動脈解離はBPASも加えてもらう必要がある


静脈洞血栓症を頭痛だけで疑うかは議論のあるところではあるが、

疑ったら、SWIやMRVを追加しないといけない


下垂体卒中も下垂体を狙って撮らないと見逃す事がある


なので、2の流れで進めると、病歴だけでは難しければ、

結局MRIが必要な疾患が残る事が多い


救急ですぐにMRIを撮れなければ入院で経過をみるしかないと思う





1の流れで進めると

次にやることは、ルンバールである

しかし普通に考えて、痛み刺激や光刺激ですら

はばかられるくも膜下出血なのに、

腰に針を刺すという刺激はよいのであろうか

それで再破裂した症例はないのであろうか

というのが、長年の疑問であった


この疑問にストレートに答えをくれる文献がないので、


これこそエキスパートの意見やローカルルールを決めないといけない問題だと思う


個人的には、2の流れもあるので、MRIに進む事が多い


それで動脈瘤も探せるし、くも膜下出血も探す事ができる

MRIとCTでくも膜下出血がわかならなくて、ルンバールでわかった

という症例報告も実際にあるが、やはり症例報告もので稀である

Journal of Japanese Congress on Neurological Emergencies (2014) Vol. 26 : 32-37


結局どうしても分からなければ、脳外科の先生と相談するのがいいと思う

2017年10月17日火曜日

Road to 側頭動脈炎 パート2

側頭動脈炎を疑っても、診断までにはハードルがたくさんあります


入院するとせん妄になるから、入院させたくない人もいれば、

熱が出てても困っておらず、畑したいので入院したくない人もいます

外来で調べざるを得ない時もあります


そういった時はある程度検査プランと道筋を伝える事が重要です

あくまで一例です

当たり前ですが、検査は症例に応じて考えます




このように本気でやると、けっこう大変です


安らかに最期を迎える準備をしている高齢者に

余計な検査は不能な時もあります

検査しまくって、病気を見つけて治す事だけが医療ではありません


実臨床ではchoosing wiselyが重要です



本気で調べる時は、本人が困っている時です


検索していくと、他の疾患だったという事があります

側頭動脈炎くずれと勝手に呼んでいます


何となく頭痛と熱が続いているから、側頭動脈炎を疑っていたが、


CTとると、副鼻腔炎と硬膜外膿瘍だった!とか

髄液検査でクリプトコッカス髄膜炎だった!とか

一応血培とったら、

翌日、GPCが生えてきて、椎間板炎、化膿性関節炎、硬膜外膿瘍だった!!とか


色んな感染症が側頭動脈炎のプレゼンテーションに似るので、

ステロイドをやみくもに使ってはいけない代表的な疾患です



側頭動脈炎を診断する前には

疑ってなくても、とりあえず血培をとっておくと

救われることがあります



感染も除外して、検査しまくって、もう生検しかない!と

ようやく、こぎつけて生検したとしても、

側頭動脈は正常だった

という時はあります


この場合、注意しないといけないのが、

側頭動脈の周りの小血管に炎症があったとか

Vasa vasorumの炎症があった


とかです



小血管炎はPMR様症状や不明熱を呈するので、

皮疹がないかよく見たり、

腎障害がないかチェックする事が重要です


側頭動脈の生検は実は小血管炎も一緒に探せてしまうので、

お得な検査ではあります




Mimicとも言えるものもあります

最近は側頭動脈炎とVZVの関係が注目されています

JAMA Neurol. 2015;72(11):1281-1287. 


2017年10月16日月曜日

Road to 側頭動脈炎

側頭動脈炎は高齢者の頭痛、不明熱で鑑別に上がる有名な疾患ですが、

訴えが曖昧な認知症の高齢者の場合、鑑別にあがらない事があります


PMRも同じで、

施設入っている元気な認知症のおじいちゃんが、

今日は静かだねえ

全然、ベットから起き上がらないねえー

なんて言っていると、

あれ、今日も寝たままだねえ

なんて日が続いて、実は微熱があり、食欲も落ちてしまい、

精査目的に入院となる事があります


PMRもGCAも高齢者の病気である以上、

認知症を合併している人に発症してしまう可能性はあります


字面だけおうような国家試験では、

鑑別に上がるのは当たり前ですが、

目の前の認知症もあって、心筋梗塞や心不全、ビタミンb12欠乏、糖尿病、CKDもあり、

山ほど薬飲んでるおじいちゃんが、頭が重いんだよねー

といってやってきたら、

なかなか側頭動脈炎を鑑別にあげるのは難しいと思います


ですが、側頭動脈炎は放っておくと失明というアウトカムを持っているので、

膠原病の世界では、emergencyと言われています


なので、やっぱり閾値は低く、鑑別に挙げる必要がある疾患だと思います



病歴がうまくとれないというのは、内科医にはかなりの試練ですが、

だからこそ臨床はchallengingで面白いのだと思います



重度の認知症や重い脳梗塞の後遺症で

言葉を言えない患者さんは、

身体で病気を表現してくれているので、

私達はそれをしっかり受け取らないといけません


身体が上手く動かせず、動作がゆっくりになっていたり、

ベットからの起き上がりがやたらとゆっくりだったり、

食事が進まないのは、顎が疲れているせいかもしれません


これらは、身体所見というよりもインプレッションであり、

感度・特異度とかで現されるものではありません


小児の領域では、見た目が大事!と口すっぱくいわれますが、

高齢者の病気を診断する時も、見た目は非常に重要です


カルテやカンファレンスではよくわからなくても、

ベットサイドに行けば、すぐにピンと来ることもあります


なので、病歴がとれなくても諦めてはいけません


ファーストインプレッションと身体所見が勝負です



大血管炎なので、側頭動脈以外の血管も侵されることが多いです

なので頸動脈の血管雑音や頸動脈痛をしっかりみます


側頭動脈の硬結や圧痛、怒張、発赤ももちろんみますが、

動脈硬化の成れの果てとどう鑑別していいか

よくわかりません

とりあえず、痛いかどうかはチェックします


PMR症状があるかも重要です

インピンジメントサインをチェックして、

怪しければエコーを当てましょう

2017年10月15日日曜日

猫と感染症

蜂窩織炎のところで猫が出てきたので

猫と感染症のまとめです

ひっかかれても、噛まれても、なめられても病気になるので、

本当に注意です

噛まれたら、犬より感染を起こしやすいには有名ですね



猫引っ掻き病は病名が面白いので、有名ですが

自然に治ってしまったり、

とてつもなく重症化したり、かなり幅のある病気です

実臨床では片側のリンパ節腫脹の鑑別で出てきます



猫飼っている人が、昨日元気で今日ショック

の場合は、カプノサイトファーガを考えましょう

まずは脾機能のチェックです

CTとっていることが多いので、まずは脾臓があるかをチェックしましょう

次は大きさを見て、小さければもしかしたら脾機能低下があるかもしれません

脾臓の体積と脾機能低下の相関が最近言われ出しています





猫飼っている人が

肺炎や蜂窩織炎、リンパ節が腫れたりすると

鑑別が多くて大変です

ですが、猫を飼っているか聞き出せないと

先に進まないので、

ペットの飼育歴は大事です


たまにペットではなく、

猫屋敷に住んでいる人もいるので、聞き方を気をつけましょう

蜂窩織炎だったら

やっぱり、どう考えても今の所、蜂窩織炎なら次にやることは

原因と原因菌の検索です

原因は多くは白癬の事が多いですが、

リンパ浮腫がある事もあり、どうして感染を起こしたかを常に考えなければなりません

ブ菌の感染症を繰り返すアトピーが酷い子供は一度は高IgE症候群を考えましょう


次に原因菌を推定します


大抵、ペニシリン系が落とされて入院している事が多いですので、

改善がない時は抗生剤がきいていないのか

安静が保てていないのか

ASOや糖尿病がひどくて、血流が悪いのか

壊死性筋膜炎なのか


などなど考えなければなりません


蜂窩織炎は菌を同定するのが非常に大変です

血培の陽性率は低く、ほぼ病歴だけで起因菌を推定する必要があります

なのでここはシャーロックホームズばりに、聞きまくります

所詮は感染症です

必ず何かの暴露があって感染を起こしているはずです

特に水の暴露や動物関係をよく聞きましょう

暴露がはっきりしなければ、一般的な溶連菌やブ菌として対応する事が許されます


コツは職業と趣味を詳細にとることです

この職業の人で、蜂窩織炎を起こしたら

と考えるとわかりやすいです





普通、蜂窩織炎というと足をイメージしますが、

手の蜂窩織炎はかなり身構えた方がよいです

手作業をするため、足よりも傷がつきやすいので、

感染の機会に恵まれています


また手は腱がたくさんあるため、腱に沿って感染が広がることも多く、

壊死性筋膜炎でなくてもデブリが必要になる事があります

手の蜂窩織炎は要注意です


顔も要注意です

インフルエンザ桿菌や肺炎球菌といった菌が原因となる事があります


なので蜂窩織炎の場所も非常に重要です


両側に淡い紅斑が飛び飛びにあって、蜂窩織炎?

という時はヘリコバクターシネジーが原因のことがあります

やはり動物暴露を聞きましょう

蜂窩織炎と診断された人を引き継いだら

蜂窩織炎で入院です

と言われた人を引き継ぐ時は気をつけなければなりません

全ての病気でそうですが、レッテルが貼られると、

それにしか見えないか、もしくはそう思い込んでしまう傾向が人間にはあります

その思考傾向は払拭は難しいので、自覚的でいる事が大事です

以前の診断に流されてはいけません

盲信して失敗した症例は、星の数ほどあります


蜂窩織炎なら大丈夫でしょう 笑

皮膚が赤くて腫れて痛いんだから診断間違いなんて、起こるわけがないと

思っていると痛い目に遭います

実際には蜂窩織炎で引き継いだら、DVTだった

とか

痛風だったとか

壊死性筋膜炎だったとか


意外に診断根拠はあやふやで難しいのです

だからこそ、蜂窩織炎も除外診断であり、

蜂窩織炎を診断しにいく必要はありません


むしろ、DVTや関節炎、壊死性筋膜炎、皮下膿瘍の除外の方がはるかに重要です


ですが身体所見だけでは難しいし、血液検査なんて全く当てにならない

ではどうすればよいか?


USが一番手っ取り早いです


もちろん、病歴も重要ですし、身体所見も重要ですが、

US当てて、血栓あればDVTで確定ですし、

関節に液体貯留あれば、関節炎です

壊死性筋膜炎っぽければ、筋膜の上に液体貯留する事があり、

皮下膿瘍は膿瘍が簡単に見つけられます

他にもベーカー嚢胞を見つける事ができたり、とても使える検査です

なので、何でもかんでも、とりあえずエコーの時代が来てしまった気がします


所見が分からないから当てられないと言っていると、

永遠に当てられないので、分からなくてもとりあえずあててみましょう

出来れば上級医とともに



蜂窩織炎を引き継いだら、まずはバイタルの確認です

壊死性筋膜炎、TSS、敗血症性ショックなど、バイタルが崩れやすい原因は多々あります




TSSは見落としが多く、他科から紹介になる事も多いです


例えば婦人科から、乳腺炎で抗生剤を使ったら、身体が赤くなり、ショックになりました

的な感じで紹介になる事もあります


確かにアナフィラキシーショックは鑑別ですが、

TSSも鑑別になります


ドレナージが大事なので、TSSを疑ったら、必ずドレナージを急いでやりましょう


ちっちゃな皮下膿瘍でもショックになります


副鼻腔炎からTSSをきたした人もいました


そんな時は緊急で耳鼻科callです



2017年10月3日火曜日

Road to 橋本脳症


いつもと違うという主訴はだいたい、病気です

小児でよく言われることですが、高齢者でも当てはまります

ここは非常に重要で、普段といったい何が違うんだ?

という確認がおろそかだと、

治療や検査をやりすぎてしまうことに繋がります


この前は救急にレベル300で、急激な呼吸不全を呈した高齢男性が運ばれて来ました

SAHにともなう神経原生肺水腫などを考えましたが、

結局、ただの電撃性肺水腫でした

後から来た人に聞いたら、元々のレベルが、眉間に皺がよる程度とのことでした


スタートが分からないと、誤診に繋がります



ろくに話も聞かずに検査をすると、たいてい間違えます

そして検査をすると、主治医はなんだか、その患者を理解した気になってしまい、

病歴をおろそかにしがちです


もちろん、緊急性が高い疾患は別ですが、神経の疾患は病歴がとても重要です

神経疾患を診断する時の病歴はコツがあります


それは目の前の患者の伝記を作るくらいのつもりで、元気だった頃の話を聞く事です

もはや現病歴を超越して、その人の人生史を聞き出します

そうする事で、元気だった頃の患者さんが目に浮かんできます

その元気だった頃の患者さんから、今の患者さんを引き算すると、

プロブレムが見えてきます


そして、家族ですら、プロブレムと考えていなかった事を聞き出す事ができます


神経疾患は病気の発症時期が何時だったのか、

ということが分からないと診断できません


普通に病歴をとると、現在から過去に戻って、

物忘れが出たのはいつからですか?

と聞いてしまいがちですが、これでは上手に情報をひきだせません


例えば、趣味のマレットゴルフをやめたのはいつ頃ですか?

そしてそれはどうして止めたのですか?

と趣味や仕事にこじつけて聞いたりします


さて、急速に進んできた認知症や原因の不明の意識障害の時に、

よく鑑別にあがるのが橋本脳症です


ですが、誤解がたくさんある疾患です

例えば、

甲状腺機能の異常がある

髄液で異常が出る

画像で異常が出る

ステロイドが絶対に効く


といった感じです

Treatble dementiaの鑑別によく出てきますが、

精神疾患と見間違えたり、

小脳失調できたり、

プレゼンテーションに幅があるので、

鑑別にはとりあえず、あげてもよいと思います


コツはCJDだと思ったら、

橋本脳症を鑑別にあげることです

なぜなら、プレゼンテーションも似ていて、

CJDは治りませんが

橋本脳症は治癒が見込めるからです


ただし、橋本脳症は確定診断が非常に難しいです

NAE抗体は特異度高いようですが、

帰ってくるのは何週間後か、何ヶ月後になることが多いようで、

待っていられないので、見切り発車で治療に踏み切る事も多いです




診断的治療を否定するつもりはありませんが、

その前にしっかり他の疾患を除外しなければなりません


橋本脳症だ!と突っ走って、

ステロイド入れました!

治りました!


では結果オーライではりますが、

ちょっと困ります


橋本脳症と口にした時点で、

膨大な鑑別疾患を否定する旅が始まります


その旅の途中で、何か別の疾患が見つかれば、

旅は終了です


結局、橋本脳症まで、たどり着く人はあまりいません





たまたま、橋本脳症疑いまで行ったとして、

ステロイドの反応性を見て確定!というわけにもいきません


ステロイドに反応する疾患はたくさんあります

結核やヘルペスにまでステロイドを併用するので、

診断的治療は盲目的に行うと、何がなんだかわからなくなるので、気をつけましょう

せめて、後で検査を追加できるように、

ステロイド前に検体を保存しておきましょう





ステロイド入れて治ったとしても

本当に橋本脳症だったのかなあ

他の可能性はないのかなあ

と疑い続けることが重要です


特にステロイドを減らして、悪化してきた場合は

副腎不全だった可能性があります

副腎不全もステロイドで著効しますが、

忘れがちなので、覚えておきましょう