食事をしていたら、急に顎の下がゴルフボールくらいの大きさに
腫れあがりました
でも今はだいぶ小さくなりました
という人は大抵、唾石が一時的につまった人です
口腔内に開口する部分のところに唾石が詰まっていれば、
見えることもありますし、触ってみるとコリコリ触れることもあります
なので、耳下腺や舌下腺、顎下腺の開口部が口の中のどこかを知っておく必要があります
唾石がつまっていると、開口部が白色に膨らんだり、発赤することがあるので、
唾液腺の開口部ということを知らないと、
「口内炎」と間違えてしまうこともあります
耳下腺の開口部は頬粘膜にあり、
顎下腺の開口部は舌の下側にあります
舌下腺も二つに分かれて開口しますが、顎下腺の管に合流して開口する管と
舌下に多数開口する管があります
耳下腺が腫れる病気はムンプスだけではありません
耳下腺が腫れている人をみたら
⓪周囲の流行を確認しましょう
ムンプスの流行があれば、可能性は高まります
男性であれば、精巣と頭痛は確認しておきましょう
①診察で大事なのは、まずは耳下腺かどうかの確認です
ポイントは下顎角が触れにくくなるのが耳下腺ぽいと言えます
②一応、両側性かどうかの確認をします
ですが、これはあまりあてにはならないので、絶対のものではありません
ムンプスも片側性だったものが、遅れて両側性になることもありますし、
化膿性耳下腺炎も両側性のことがあります
腫瘍の場合は両側が同時に腫れるということは稀なので、両側であれば、
可能性は下がると思われます
それ以外の原因はどちらも起こり得るので、あまり鑑別を絞るのに有用な所見とは言えません
③顔面神経麻痺の合併がないかチェックします
あれば、腫瘍性の可能性を考慮します
④皮膚所見をよくみます
蜂窩織炎になっていないかチェックします
⑤開口障害の有無をチェックします
咬筋が耳下腺の近くにあるため、炎症が波及すれば、開口障害はあってもよいでしょう
ただし、扁桃周囲膿瘍のように内側翼突筋に炎症が波及しても、開口障害は起こるので、
周囲組織への炎症の波及を懸念します
⑥口腔内をよく観察します
齲歯や衛生状態、乾燥具合を確認します
化膿性耳下腺炎は多くは逆行性感染で、口腔内の不衛生な人に起こることが多いです
⑦耳下腺を押しながら、頬粘膜に注目します
普通であれば、透明な唾液がシュッと出てくることが多いですが、
詰まっていると出てきません
化膿性耳下腺炎であれば、白色に濁ってどろっとした唾液が出てきます
⑧濁った唾液をすかさず培養とG染色を行います
⑨耳下腺と周囲に超音波を当てます
耳下腺内の腫瘍や膿瘍形成を確認します
周囲のLNの腫脹や頚静脈をみて、レミエール症候群の合併がないか確認します
黄色ブドウ球菌が多いと知られています
院内発症例では、MRSAに注意が必要です
外科で手術後に化膿性耳下腺炎になる人をたまに経験します
おそらく脱水が契機になっているものとを思われます
化膿性耳下腺炎に膿瘍を合併する人もおり、USや造影CTも必要になることが多いです
唾石の閉塞が原因のことも多く、閉塞を解除しないと治癒が難しいこともあり、
口腔外科にコンサルトが必要です
唾石は耳下腺には少ないといわれていますが、
CTでみえないくらいの石は耳下腺にもあると思われます
そのため、どろっとした唾液では流出も悪いので、しっかり脱水を防いで、
口腔内の衛生環境を整えてあげるのが、重要です
耳下腺が腫れた人のポイント
・まずは耳下腺かどうかの確認
・両側か片側かはあまりあてにならない
・化膿性耳下腺炎は耳下腺を押しながら、口腔内をよく見る
・黄色ブドウ球菌が多いので、TSSも起こし得る