2020年7月15日水曜日

勉強法 〜枝葉と幹〜

研修医の先生との会話

研修医「最近、勉強方法が分かんなくて困っています。」

T「そうなんだね、どうやって勉強しているの?」

研修医「病気について、レビューとか本を読んでいるんですけど、読んでいるだけで、
    それをなかなかアウトプットできなくて。」

T「読んでいるだけ偉いよ。笑
  
  何かにまとめているの?
  Ever noteとか、Good noteとか?」


研修医「そうなんです、今はどっちにもまとめています。
   ワードにも入れているので、正直こんがらがっています。

   実際にやってみて、どれが自分に合うかを試しています。」


T「なるほどね、いいんじゃない?
  
  確かに、勉強したことをまとめるのも臨床力の一つだよね。
  
  僕も両方やってみたけど、Good noteが自分にあっていたから、
  そうしているけど、Ever noteでもOne noteでも何でもいいと思うよ。

  パソコンで、ぽちぽち打ちながらまとめたい人は、
  Ever noteとか、ワードがいいかもね。
  
  僕はいつでもどこでも手書きで書ける利便性が高いから、Good note使ってる。
   
  急に上級医がレクチャーし始めたり、いいこと言うことあるでしょ?
  とっさにメモれるのがいい点だよね。

  上司のいいことを紙に書いて、後でまとめようと思っても絶対まとめないから。笑

  あと、読んだ本で大事だと思った場所や図とかは、写真に撮って取り込んでおくといいよ。

  そして、一度、調べた病気や症候群は一回おいておく。
  また次回その病気や症候群を持った患者さんに出会ったら、
  どんどんそれをup dateしていく感じだね。

  そうすると、自分だけの「up to date」ができていく。」

研修医「なるほど。わかりました。ありがとうございます。」


T「総合診療科医をしていると、まれな病気の人に出会うこともあるんだ。

  でもまれな病気って、結局、誰も専門家じゃないことが多いんだよね。
  
  じゃあ、遠く離れた大学病院までいってもらうのか?というと、
  それは現実的ではないことも多い。

  なので、誰も詳しくないのなら、自分がその病気について詳しくなればいい。
  少なくとも自分の病院の中では一番の専門家になる感じ。

  そして、カンファレンスとかでその病気について発表したりすると、
  じゃあ、あの病気については、あいつに相談しよう!っていう風になるんだ。
  
  そうすると症例が増えていって、本当にいつかその病気についてかなり詳しくなってくる。
  
  7年前くらいにACNESを一回レクチャーしたら、毎週のようにこの人はACNESですか?
  どこに注射するんですか?

  って相談受けまくったこととかもあったね。笑」


研修医「そうなんですね。
    先生、よく「俺、〇〇の専門家なんだよねぇ」っていいますもんね。笑」


T「そうね。笑

  でも研修医の先生にとって大事なことは、病気の専門家になることじゃないよ。


  知識やマネージメントで上級医に劣るのは、当たり前。
  そこは仕方ない。ひけめを感じることは全くない。

  脳梗塞で寝たきりになってしまった患者さんが、明日から歩けるようになるのは難しいのと一緒。
  

  じゃあ、研修医の先生は何の専門家になればいいか?

  というと・・・

  自分が担当している患者さんの専門家になって欲しいんだ。


  患者さんの情報については、上級医に負けちゃだめ。
  そこはプライド持って欲しい。

  例えば、この患者さんのワーファリン中止理由を自分が知らなくて、
  上司から教えられてしまうのであれば、それは反省した方がいい。


  患者さんには歴史がある。
  人生の歴史や病気の歴史、検査の歴史、薬の歴史、面談の歴史・・・

  物語といってもいい。

  患者さんが持っている病気の勉強をしても、患者さんのためになっていないのであれば意味がない。

  患者さんの物語の中で困っているのであれば、その物語の中に自分も入っていって、
  解決しないといけない。」


研修医「なるほど、自分も患者さんの物語の中の一部になるんですね。」


T「そう。それってとても貴重な経験なんだ。

  それは教科書読んでも、up to date読んでも絶対に得られない。


  どんなに綺麗なまとめノートを作っても、それは枝葉でしかないんだ。
  
  自分の医者人生の幹を作ってくれているのは、自分がこれまでに出会った患者さんの物語。

  だから綺麗な枝葉に夢中になる前に、しっかりとした折れない幹を作ってね。」


研修医「そうですね、わかりました。」


T「最初の問いの答えとしては、

  そもそも、

  勉強しよう!なんて思わなくていいよ。


  困っている患者さんが目の前にいたら、なんとかしたいと思うでしょ?
 患者さんの問題を解決するためには何が必要か?

  そこだけを考えて、問題を解決する努力を惜しまなければ、それが一番の勉強になる。


 困っている人が僕らの目の前にいる。
 どうにかして、その困っている状況から抜け出せないか?

 その問題を解決するために、僕らがいる。

 自分はこれまでの経験や知識を使って、
 Y君は患者さんのありとあらゆる情報を手に入れて、
 チームとして問題解決のために取り組んでいる。


 そこに上下関係はないんだ。
 一緒に困っている人の問題を解決するための横並びのチームメイト。

 ということで、明日からもよろしくね。」

You tube解説動画:https://youtu.be/lIulDtH61-s

  


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