研修医の先生との会話
研修医「最近、勉強方法が分かんなくて困っています。」
T「そうなんだね、どうやって勉強しているの?」
研修医「病気について、レビューとか本を読んでいるんですけど、読んでいるだけで、
それをなかなかアウトプットできなくて。」
T「読んでいるだけ偉いよ。笑
何かにまとめているの?
Ever noteとか、Good noteとか?」
研修医「そうなんです、今はどっちにもまとめています。
ワードにも入れているので、正直こんがらがっています。
実際にやってみて、どれが自分に合うかを試しています。」
T「なるほどね、いいんじゃない?
確かに、勉強したことをまとめるのも臨床力の一つだよね。
僕も両方やってみたけど、Good noteが自分にあっていたから、
そうしているけど、Ever noteでもOne noteでも何でもいいと思うよ。
パソコンで、ぽちぽち打ちながらまとめたい人は、
Ever noteとか、ワードがいいかもね。
僕はいつでもどこでも手書きで書ける利便性が高いから、Good note使ってる。
急に上級医がレクチャーし始めたり、いいこと言うことあるでしょ?
とっさにメモれるのがいい点だよね。
上司のいいことを紙に書いて、後でまとめようと思っても絶対まとめないから。笑
あと、読んだ本で大事だと思った場所や図とかは、写真に撮って取り込んでおくといいよ。
そして、一度、調べた病気や症候群は一回おいておく。
また次回その病気や症候群を持った患者さんに出会ったら、
どんどんそれをup dateしていく感じだね。
そうすると、自分だけの「up to date」ができていく。」
研修医「なるほど。わかりました。ありがとうございます。」
T「総合診療科医をしていると、まれな病気の人に出会うこともあるんだ。
でもまれな病気って、結局、誰も専門家じゃないことが多いんだよね。
じゃあ、遠く離れた大学病院までいってもらうのか?というと、
それは現実的ではないことも多い。
なので、誰も詳しくないのなら、自分がその病気について詳しくなればいい。
少なくとも自分の病院の中では一番の専門家になる感じ。
そして、カンファレンスとかでその病気について発表したりすると、
じゃあ、あの病気については、あいつに相談しよう!っていう風になるんだ。
そうすると症例が増えていって、本当にいつかその病気についてかなり詳しくなってくる。
7年前くらいにACNESを一回レクチャーしたら、毎週のようにこの人はACNESですか?
どこに注射するんですか?
って相談受けまくったこととかもあったね。笑」
研修医「そうなんですね。
先生、よく「俺、〇〇の専門家なんだよねぇ」っていいますもんね。笑」
T「そうね。笑
でも研修医の先生にとって大事なことは、病気の専門家になることじゃないよ。
知識やマネージメントで上級医に劣るのは、当たり前。
そこは仕方ない。ひけめを感じることは全くない。
脳梗塞で寝たきりになってしまった患者さんが、明日から歩けるようになるのは難しいのと一緒。
じゃあ、研修医の先生は何の専門家になればいいか?
というと・・・
自分が担当している患者さんの専門家になって欲しいんだ。
患者さんの情報については、上級医に負けちゃだめ。
そこはプライド持って欲しい。
例えば、この患者さんのワーファリン中止理由を自分が知らなくて、
上司から教えられてしまうのであれば、それは反省した方がいい。
患者さんには歴史がある。
人生の歴史や病気の歴史、検査の歴史、薬の歴史、面談の歴史・・・
物語といってもいい。
患者さんが持っている病気の勉強をしても、患者さんのためになっていないのであれば意味がない。
患者さんの物語の中で困っているのであれば、その物語の中に自分も入っていって、
解決しないといけない。」
研修医「なるほど、自分も患者さんの物語の中の一部になるんですね。」
T「そう。それってとても貴重な経験なんだ。
それは教科書読んでも、up to date読んでも絶対に得られない。
どんなに綺麗なまとめノートを作っても、それは枝葉でしかないんだ。
自分の医者人生の幹を作ってくれているのは、自分がこれまでに出会った患者さんの物語。
だから綺麗な枝葉に夢中になる前に、しっかりとした折れない幹を作ってね。」
研修医「そうですね、わかりました。」
T「最初の問いの答えとしては、
そもそも、
勉強しよう!なんて思わなくていいよ。
困っている患者さんが目の前にいたら、なんとかしたいと思うでしょ?
患者さんの問題を解決するためには何が必要か?
そこだけを考えて、問題を解決する努力を惜しまなければ、それが一番の勉強になる。
困っている人が僕らの目の前にいる。
どうにかして、その困っている状況から抜け出せないか?
その問題を解決するために、僕らがいる。
自分はこれまでの経験や知識を使って、
Y君は患者さんのありとあらゆる情報を手に入れて、
チームとして問題解決のために取り組んでいる。
そこに上下関係はないんだ。
一緒に困っている人の問題を解決するための横並びのチームメイト。
ということで、明日からもよろしくね。」
You tube解説動画:https://youtu.be/lIulDtH61-s
臨床のパールや自分なりの考えをノートにまとめました。自分のポケットの中だけでなく、皆様にもみていただき、ご意見ご感想を頂ければ嬉しいです。実臨床への適応は自己責任でお願いします。
2020年7月15日水曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
人気の投稿
-
デルタ株編 今回の波はこれまでで最大です デルタ株と夏休みが重なり、大流行になっています 今のところ、緊急事態宣言の効果もみえてきません 頼みのワクチンは今回の波を抑えることはできません ワクチンは次の波を抑える作用しかありません 今のところ、有効な対策はなさそうです 燃える...
-
ALSは毎年1人は出会うか出会わないか、くらいの頻度でしょうか 個人的にはIEと同じくらいで、あまり稀ではない印象です その目で見ると、出会う事ができます その目で見ないと、通過していきます しかし、自分も最初に診断した時は、診断に時間がかかってしまい、 ...
-
意識障害が遷延し、ICUで長期挿管管理となったため、 気管切開をした人がいました その後、一般床にいき徐々にレベルが改善したため、 人工呼吸器を離脱することができ、 さらに嚥下機能も復活したため、 徐々にカニューレを変えていく必要がありま...
-
オミクロン株BA.5編 7月〜8月にかけての第7波はひどい状態です ウイルスの脅威は以前よりもなくなっているにも関わらず、 なぜ現場は以前よりもひどい状態になっているのでしょうか・・・ 新型コロナウイルスが見つかってから、はや2年と8ヶ月が経ちました この間で 変わってきたこと、...
-
症例 88歳 女性 椎体の圧迫骨折で入院中 内服はリセンドロン、ドネペジル、アルファカルシドール 本人は腰の痛みの訴えが強く、トラムセットを入院後から開始している 入院の初めは食事がとれていたが、入院後食事量が減っていった さあ、食べられない高齢者に対して、 どのようにアプロー...
-
元々四つん這いで歩行している高齢女性が、 意識障害を主訴に救急外来受診しました 受診後、徐々にレベルは回復し、 家族がみてもいつも通りになりました MRIをとっても、血液検査をしても、心電図検査をしても、 脳波検査をしても、原因はみつかり...
-
不明熱 基本編です 不明熱を定義したのは、ピータゾロフ先生で、 持続時間を3週間以上続く発熱としたそうです その理由は、 自然に改善するウイルス疾患を除外したかったためのようです 38.3度にしたのは、習慣性高体温の人を含めないようにした...
-
たまに来ます耳下腺や唾液腺が腫脹してくる人 食事をしていたら、急に顎の下がゴルフボールくらいの大きさに 腫れあがりました でも今はだいぶ小さくなりました という人は大抵、唾石が一時的につまった人です 口腔内に開口する部分のところに唾石が詰まっていれば、 見え...
-
症例 中年の男性 主訴:発熱 Profile:生来健康 現病歴:2週間前から鼻汁、咳が出現 近医受診。インフルエンザ検査実施され、陰性だった 10日前から発熱出現(38度前後) 近医受診。インフルエンザ・溶連菌検査実施さ...
0 件のコメント:
コメントを投稿