2020年9月14日月曜日

進化する感染症

 感染症を学ぶ時、病気ごとに習うことが多いのではないかと思います

例えば、腎盂腎炎であれば、

どういう人で多くて、どういう菌が原因で、どういう治療をすればいいか、

ということが教科書には書かれています


これは、縦割りの勉強という感じです

ここでは、横軸で病気を考えていきたいと思います


感染症の5つの原則の5つ目は何かご存知でしょうか?


それは、適切な経過観察です


感染症の治療が失敗するとどうなると思いますか?


熱が下がらない、CRPが下がらないのはもちろんですが、

診断時の病名が進化してきている可能性があります


腎盂腎炎に対して抗生剤治療を行い、解熱が得られない場合は、

閉塞起点や腎膿瘍を疑い画像評価が勧められています


感染症はずっと同じ病態をとるわけではありません

治療がされなかったり、治療がうまくいっていなければ、

病態は変わります


よく臨床で「こじれてきたね」みたいな表現が使われます


ポケモンをやられたことがある方ならお分かりだと思いますが、

ポケモンは進化していきます


感染症も同じです

放っておくと、進化していきます


それぞれの感染症が進化すると、何になるのかをまとめたものはあまりみたことがないので、

自分なりにまとめてみました



感染症が進化(進行)してきた時に考える3つのこと

①急激に悪化してきた場合 → 敗血症

②じわじわ続いていた場合 → 菌血症 → 感染性心内膜炎

③じわじわ、じわじわ続いていた場合 → 膿瘍・血栓性静脈炎 


この病態の理解があれば、入院時から最悪のシナリオを想定できます


例えば、蜂窩織炎の人が入院した場合、

バイタルが悪ければ、TSSや敗血症、壊死性筋膜炎を想定します

バイタルがよければ、こんな風に患者さんや家族の人に説明します


「蜂窩織炎といって皮膚の下で細菌が悪さしている病気です。

 抗生剤で治療を行います。

 ですが今後、抗生剤が効果なかった場合は、

 壊死性筋膜炎といって、もっと深いところの感染症を考慮します。

 その場合は診断するために、小さな手術(試験切開)が必要になる場合があります

 万が一、壊死性筋膜炎だとわかった場合は、

 今度は大きな手術が必要になることもあります

 そしてそれは命に関わる病気ですので、集中治療が必要になることが多いです。

 そうならないように、しっかり治療させていただきますね。」


みたいな感じで入院時から、ワーストシナリオを話しておくことで、

治療したのに、なぜ悪化したのか?という不満を持たせないようにします



肺炎や胸膜炎の場合も一緒です

肺化膿症や膿胸のことも最初にいっておくことが大事です

抗生剤以外に何か処置が必要になりそうな場合は最初から伝えておくことが肝心です


もちろん、軽症の場合は、伝える必要はないので、

局所所見が派手で重症の場合に限って伝ええればよいと思います



進化するには、それ相応の理由があるはずです


そもそも体には、悪いものを排出しようとする機構があるので、

その機構が乱れた時に、感染症が悪化します

つまり、閉塞起点を探すことが重要です


もう一つは免疫(局所と全身)の破綻です

一番身近な免疫不全はなんといっても糖尿病です

血糖コントロールがうまくいっているかは、必ず確認しましょう



※もちろん、順番を飛ばすこともよくあります


まとめ

・感染症は放っておくと進化する

→進化の過程のどこにいるのかを意識する


・進化の段階は、急激に悪化すると敗血症、じわじわくるとIE、もっとじわじわすると膿瘍や血栓

→進化されてしまうと、治療期間は長引き、侵襲的な処置が必要になる


・進化するためには理由があるはず

→閉塞起点と免疫の破綻がないかはチェック、

 特に血糖コントロールは忘れがち

0 件のコメント:

コメントを投稿