2020年10月19日月曜日

急性好酸球性肺炎 〜with コロナ時代の鑑別疾患〜

症例 25歳 男性 主訴:呼吸苦、発熱 

(※一部、症例は加筆・修正を加えてあります)


Profile;特記すべき既往歴なし

現病歴:1週間前に東京への外出歴あり、会食あり

    来院当日、乾性咳嗽が出現

    寒気と発熱も出現

    深呼吸にて胸痛も出現してきたため、救急外来受診

内服:なし 既往:なし

アレルギー歴:なし


バイタル 体温37.5、SPO2  94%、RR24回、脈120回/分、血圧120/80

呼吸音 清

CXR   明らかな肺炎像ないが、右肺の透過性低下あり

血液検査 CRP軽度上昇、好酸球上昇なし

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この時点で外出歴から、コロナを疑うのは当然です

コロナ疑いとして対応しつつ、コロナのPCR検査を行います


このコロナ時代に疎かになりがちなのが、病歴です


追加で何を聞きますか?


外出歴や接触歴だけ聞いて満足してはいけません



喫煙歴を必ず聞きます


この人は1週間前からタバコを吸い始めたとのことでした


タバコを吸い始めた若年者に起きた急性の呼吸器症状と発熱から、

急性好酸球性肺炎も鑑別になり、C Tを撮影しました


もちろん、普通の細菌性肺炎やCOVID19の可能性もあります

痰がでない人の肺炎の場合、どうしてもCTの閾値が低くなります


あまり画像で語ってはいけないのですが、

CTである程度、肺炎の原因や微生物を絞ることができますので、

コロナ時代はCTが多用されているのが、現状かと思います

致し方ないとは思いますが、その変わりCTはしっかり責任持って読影しないといけません


CTでは末梢優位の小葉間隔壁の肥厚が目立ち、気管支血管束の肥厚が顕著でした

GGOも散在していました


パッとみたら、なんだこれ???

という感じで、普通の細菌性肺炎ではないという印象でした


急性の肺水腫は鑑別になるので、こういう時は心臓のチェックが重要になります

ということで、心電図やトロポニン、BNP、UCGを行いましたが、問題ありませんでした



急性好酸球性肺炎は末梢優位のGGOが目立つ

いわゆる逆バタフライシャドーパターンが有名ですが、

そこまでGGOが目立ちませんでしたので、

本当に急性好酸球性肺炎か自信がありませんでした


そこで急性好酸球性肺炎の画像の特徴を調べてみると、

小葉間隔壁の肥厚や気管支血管束の肥厚も急性好酸球性肺炎でよくある所見でした

ということで、急性好酸球性肺炎疑いで入院となり、

コロナ否定後にBALを行ってステロイド治療をしたという症例でした

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本症例の学び

・コロナを疑わせる暴露があり、目眩しになりかけたが、タバコ吸い始めたという病歴がkeyだった

・CXRだけでは診断できなかった

・CT所見が特徴的であり、急性好酸球性肺炎が一気に鑑別の上位に上がった

・入院後、酸素化が急激に悪化したので、外来フォローにしなくてよかった

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withコロナ時代のCOVID19の鑑別疾患

PCPやCOP、肺胞出血、薬剤性肺炎、心不全など挙げればキリがありませんが、

本症例のように急性好酸球性肺炎も鑑別になります


急激に悪化していく経過はCOVID19そっくりであり、

CT画像にてGGOを呈することが多いので、忘れずに鑑別に上げておきましょう


急性好酸球性肺炎は気管支鏡検査をして診断するので、

しっかりコロナは除外しておきたいところです



急性好酸球性肺炎はタバコを吸い始めた後に出現する肺炎という、

特徴的な経過であり、とても有名な疾患ですが、

その割には稀な疾患ですので、まとまったレビューはほとんどありません


ピンとくるヒントピットフォールがあるので、覚えておきましょう



よくあるピットフォールは末梢血の好酸球をあてにしてしまうことです
最初は好中球増多のことが多く、好酸球上昇はあてにはなりません

ですが、好酸球が上がっていたら、この疾患を思い出せると思います


電子タバコで発症した症例の報告もあります
今後は増えてきそうですね

タバコ以外の吸入した物質がないかのチェックが重要になります


GGOは100%あるという報告です
あとは気管支血管束の肥厚や小葉間隔壁の肥厚が多い所見です

胸水やリンパ節腫脹もよくある所見です

画像だけで、コロナと鑑別するのは難しいのでやめた方がいいです
ブロンコが必要になるので、さっさとPCRとりましょう



急性好酸球性肺炎は一般的に予後良好な疾患ですが、
中には致死的な症例もあります

致死的な症例の多くが、牽引性気管支拡張を伴っていたという報告が日本から報告されています


ステロイドの決まったレジメンはありませんが、
2週間で終わるレジメンが多いようです




まとめ
・with コロナ時代でも病歴をしっかりとる
→暴露歴(外出や接触歴)はもちろんだが、喫煙歴も忘れずに

・CTの閾値が低くなっている今だからこそ、CTの読影力を上げておく
→急性好酸球性肺炎のCT画像は特徴的(GGO、気管支血管束の肥厚、小葉間隔壁肥厚)

・急性好酸球性肺炎は気管支鏡検査が診断には必要なので、早めにコロナを除外しておく
→ステロイドが治療薬なので、どちらでも効いてしまうが、
 原因がタバコのことが多く、再発を防ぐためにもしっかり診断できた方が良い


参考文献:Uptodate
European Journal of Radiology 65(2008)462-467
→29例のCT所見のまとめ
Respiratory Investigation 57(2019)67-72
→日本からの報告、急性好酸球性肺炎の中には致命的な症例もあり
 その症例は牽引性気管支拡張の所見がある人が多かった
Intensivist Vol.5 NO.4 2013-10
ERJ Express. Published on May 17, 2012 as doi: 10.
→ステロイドのレジメンの推奨:2週間と4週間では効果同等



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