2017年11月15日水曜日

排尿障害

内科医は耳鼻科や皮膚科、泌尿器科、精神科が苦手な人が多い印象で、

苦手というよりは、手を出さない人も多いです

でも、手を出さない限り、勉強意欲もわかないので、

できるだけ自分で考える努力はした方がよいと思っています

「うちの科ではありません」とは極力言いたくないものです

専門がないからこそ、患者さん一人一人の専門家を自負するのであれば、

その患者さんのニーズに答えなければなりません


地域で内科医をやる以上は、

苦手な分野を作らない方がよいでしょう

今回は泌尿器トラブルです

膀胱の機能

膀胱は当たり前ですが、

①尿をためて

②尿を出す

ことを生業としています


尿をためることを「畜尿」といい、

尿を出すことを「排尿」といいます


排尿のトラブルで起こる症状を分類すると3つに分けられます

なので、排尿のトラブルがある人をみたら、どれに分けられるか考えましょう


①畜尿症状

膀胱には通常300-400mlの尿を、

途中で漏らすことなく、溜めることができます

溜まったら、脳に「たまってきたよ」と教えてくれます

これが通常の畜尿の過程です


問題が起こると、

膀胱には通常300-400mlの尿をためられなくなる
⇒頻尿

途中で漏らしてしまう
⇒尿失禁

あまり、溜まっていないのに、脳に「たまってきたよ」と教えてくれる
⇒尿意切迫感:過活動性膀胱

といった症状を引き起こします


・昼間頻尿:昼間に8回以上排尿がある
・夜間頻尿:夜間に1回以上排尿がある
・尿意切迫感:我慢できない尿意が急に起こる
・尿失禁:知らない間に尿が漏れる
・切迫性尿失禁:尿意切迫感と同時に尿がもれる
・腹圧性尿失禁:腹圧がかかった時に尿がもれる
・混合性尿失禁:上記ふたつが合併
・溢流性尿失禁:膀胱に尿が充満し、抵抗が弱い尿道から出てくる
 ⇒排尿障害も合併しており、最もひどい病態
・機能性尿失禁:ADLが低下して、トイレに間に合わない

などが挙げられます。


②排尿症状

排尿をする時には、排尿筋が収縮し、

膀胱の出口の外括約筋が弛緩して、

尿が出ていきます

そのため、出口の抵抗が上がるような、

前立腺肥大症の症状を想像するとよいと思います

膀胱の排尿筋の収縮低下も原因になります

・尿線分割
・尿線途絶
・尿勢低下
・排尿遅延
・腹圧排尿
・終末滴下

などが挙げられます

③排尿後症状

・残尿感
・排尿後滴下


この3つが、下部尿路症状(LUTS)と呼ばれています

漢字ばかり並ぶと、難しくみえますが、

あまり難しいことではないです


心臓も膀胱も筋肉の塊で、神経に支配されており、

適量たまったら、出すだけの臓器です

うまく内容物をためることが出来なければ、

心臓の場合、拡張不全と言われ、

膀胱の場合、畜尿障害と言われます


内容物をうまく押し出すことが出来なければ、

心臓の場合、収縮不全といわれ、

膀胱の場合、排尿障害といわれます


機能が破綻すれば、

心臓は心不全といわれますが、

膀胱は膀胱不全とはいわれません


膀胱の機能が破綻するというのは、どういう状況かというと、

尿意を強く訴えていた過活動性膀胱の人が、

膀胱の過剰な収縮の末、

膀胱の筋肉が徐々に疲れていき、

低活動性の膀胱となり、

ついには溢流性尿失禁の状態になってしまった

というようなストーリーでしょうか


溢流性尿失禁は膀胱の機能としては、破綻しています


LUTSに強くなる

外来をしていると、LUTSで悩んでいる人はたくさんいます

排尿のトラブルをあまり人には言いたくないもので、

外来で排尿のトラブルを言ってくれたということは、

勇気をもって言ってくれた

相当困っているんだな

と考えなければなりません


すぐに「じゃあ、泌尿器科行ってください」では、

患者さんも報われません


泌尿科に行きにくいから、

内科の先生に相談しているんだということを忘れてはいけません


ある程度、自分で考え、出来る範囲で頑張ってみることも必要です



特に過活動性膀胱はとても訴えが強く、

ADLを激しく落とします

認知症の方の過活動性膀胱は、介護者に大変な苦労をかけます

ですが、過活動性膀胱に安易に、抗コリン薬を出すのは危険です

最低限、残尿量がどれくらいあるのか、もしくはないのかを確認してからにしましょう


排尿のトラブルはどうしても主観的です

なので、よく使われるのはアンケートです

前立腺の時のI-PSS、

過活動性膀胱のOABSSといったものをうまく活用して、

治療効果判定にも使いましょう


神経因性膀胱


排尿のトラブルの人を泌尿器科にコンサルトをすると、神経因性膀胱ですね

という答えが返ってくることがあります

神経因性膀胱って、便利な言葉ですよね

どこかの神経が障害されて、膀胱の機能がうまく行われなくなった状態で、

なんと、広い概念を示していることでしょう


残念ながら、原因が明確になることは少ないですが、

膀胱を支配する神経の仕組みをしっておくと、

部位診断ができるかもしれません

考える力が湧くので、神経の流れを知っておきましょう



排尿調節

排尿中枢には上位と下位があり、

上位排尿中枢が橋にあります

下位排尿中枢はS2-4にあります

それらが膀胱に指令を出し、排尿が行われます


膀胱に尿がたまると

その刺激が脊髄を上向していき、

大脳に伝わります

大脳は抑制中枢とされており、

排尿を我慢させることができます

排尿を我慢させている時は、尿が漏出することはありません

膀胱は弛緩し、膀胱の出口は完全に閉鎖されています


排尿してもよいという、OKサインを出すと

抑制がとれて、

橋の刺激が脊髄を下降し、

S2-4に到達し、

排尿筋を収縮させます

同時に出口である外括約筋を弛緩させます

本来であれば、尿は残らず、完全に排尿することができます

この流れのどこかで問題があると、

排尿にトラブルが生じるので、

それぞれの場所で考えてみましょう









排尿のトラブルに出会ったら
・病歴から、畜尿症状か排尿症状かを見極める
・神経因性膀胱だと思ったら、
 残尿の有無や尿意の有無、
 我慢できるかどうかといった情報から
 問題がありそうな部位を予測する


0 件のコメント:

コメントを投稿

診断の本質

解説動画

人気の投稿