アンピシリンはEBVの伝染性単核球症には皮疹が出るから出してはいけない
というのは、学生でも知っていると有名な事です
学生時代に習った事は非常に大事な事が多いのですが、
残念な事に、whatだけ覚えていて、
Whyが抜けている事が多いです
なぜ、アンピシリンはEBVの伝染性単核球症には皮疹が出るから出してはいけない
という事が重要かというと、
アンピシリンが有効な溶連菌とEBVのIM(伝染性単核球症)は
非常に鑑別が難しい時があるからです
これは臨床にでて、そういう症例に出会わないと、
腑に落ちないでしょう
扁桃炎と微妙なリンパ節腫脹で、溶連菌の迅速検査が陰性で、
センタークライテリアの点数が高い時、
これはもう、人それぞれ言う事が違ってくる領域です
センタークライテリアとか、検査前確率とかは、
サイエンスの領域ですが、
扁桃の白苔のつき方や全体像とか言い出すと、
かなりアートな部分を含んでいます
なので、画一的な基準は作れずケースごとに
考えていかないといけません
採血や全身のリンパ節を触る、肝脾腫があるかチェックする、、、
しかし、どれも感度、特異度の問題もあり、
どちらとも言えない事があります
溶連菌を疑って、アンピシリンを出すか
EBVのIMとして様子をみるか
この問題はまだまだ臨床医にとっての悩みの種になるでしょう
しかし、時間のない中で、医師は究極の選択に迫られます
アンピシリンを出して、EBVのIMだったら皮疹が出てしまう
しかし、もし溶連菌だったら、リウマチ熱になってしまうかもしれない
どうしよう。。。
この時の医師の心情としては、
リウマチ熱のインパクトが大きすぎて、
このセッティングでは抗生剤が出る事が多い気がします
しかしリウマチ熱は非常に稀な疾患なので、気にしすぎるのもどうかと思います
日本人は副作用にとても敏感な人種で、
ビスフォスの顎骨壊死にとても敏感ですが、
海外だと稀すぎて、全然気にしていません
頻度が少なくても、インパクトの強いマイナスの事象は大きく見えるものです
なので、皮疹が出る事は、100%ですが、
リウマチ熱になる事もあたかも100%という錯覚に陥り、
皮疹をとるか、リウマチ熱をとるかで考えてしまいます
実際、リウマチ熱になる事は非常に稀であり、
(稀だからといって、目の前の患者に起きないわけではもちろんありませんが)
こういう時は抗生剤はぐっと我慢かなと
個人的には思っています
そして、よく使う手としては、「時間」に聞きます
世の中の一番の名医は、時間です
時間が解決してくれるとはよく言われる事で、
後医は名医になれます
なので、自分が後医になればいいのです
残念ながら、時間を使えるセッティングでない時もあるので、
そんな時はやっぱり悩みます
臨床のパールや自分なりの考えをノートにまとめました。自分のポケットの中だけでなく、皆様にもみていただき、ご意見ご感想を頂ければ嬉しいです。実臨床への適応は自己責任でお願いします。
2018年10月5日金曜日
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