2020年1月23日木曜日

急性心不全の考え方 ~一見、HFpEFの先へ~

急性心不全の初期評価

①血行動態はどうか

(1)呼吸不全の有無:呼吸不全あれば、早くNPPVや挿管を!
(2)末梢循環が保たれているか:腎障害、末梢の皮膚、血圧をみる

②原因となる心臓疾患は?

(1)血行再建が必要か:ACSに伴う心不全かどうか
           →循環器内科医を呼ぶ

(2)手術が必要か:急性の弁膜症による心不全かどうか
           →心外に早く送る

(3)機械のサポートが必要か:劇症型心筋炎かどうか
           →循環器内科医を呼ぶ


あとは語呂でMR CHAMPHという覚え方もあります

③増悪因子は何か?

FAILUREという語呂があります

MR CHAMPHと重なっているところも多いです



心不全の分類

心不全の分類はたくさんありますが、時代とともに変わってきました

その時代ごとに作られた意義があります


なので、心不全をひたすら分類するのが目標ではなく、

どうしてこういった分類が生まれたのか?

この分類方法の意義はなにか?

を知っておくことが重要です


そして、分類するだけで終わりではなく、病態まで考えることがとても大事です

最近はHEpEFヘフペフとよく言われますが、

ヘフペフで思考を止めないことが重要です



HFpEFは拡張不全をメインの病態とする心不全です

収縮能が保たれていれば心不全ではないという、間違った認識を消し去った功績はありますが、
もはやEFだけで収縮能は語ることが難しくなってきましたので、EFだけでものをいうのは難しいです

病態のメインが拡張不全なので、拡張能をしっかり評価しないといけないのですが、
これがまた難しいのです

HFpEFという時は、
他の原因(心筋症や弁膜症、収縮性心膜炎など)がないことが前提です

例えば、アミロイドーシスがあって収縮能は正常で拡張能が障害されているタイプの心不全をみても、HFpEFとは呼ばないようです


それはアミロイドーシスに伴う心不全になります


ですが、入口は超音波所見で収縮能が保たれていることがスタートです
原因疾患はその時にはわかりません


実臨床では、一見HFpEFのようにみえる心不全をみたら、
原因疾患がないかを探す努力が必要です



H2FPEF scoreというものがあります

6-9点以上でHFpEFと診断できます
2-5点の時はさらなる検査(BNP、肺病変)が必要です

H:Heavy BMI30以上(2)
H:Hypertensive 2つ以上の降圧薬内服(1)
F:Af (3)
P:Pulmonary hypertension 肺高血圧 ドプラエコーで35mmHg以上の肺動脈圧(1)
E:Elder 60歳以上(1)
F:Filling pressure ドプラエコーでE/e'>9(1)






急性心不全の時に超音波をあてて、収縮がよければ、「あーHFpEFだねー」

で終わっている時もあるのではないでしょうか


HFpEFに原因疾患が隠れていれば、治療はもちろん原因疾患の治療になります

なので、一見HFpEFをみたら、原因をさぐる努力をしましょう



まとめ
・急性心不全の初期評価ができるように!
→①血行動態はどうか、②原因となる心疾患は何か、③増悪因子は何か


・心不全の分類はたくさんあるが、病態を考えるためのヒントくらいに思っておく
→分類して思考停止しないように


・一見、HFpEFで止まってはいけない
→原因疾患が背後に隠れている可能性がある

参考文献:Hospitalist Vol.6 No.4 2018.12


1 件のコメント:

  1. イラストも字もかわいくて読みやすく参考になります!これからも愛読します

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