2026年7月19日日曜日

皮疹の見方

皮疹の見方
皮疹の見方と言っても状況によって考え方が異なる。
皮疹だけをみてどう考えるかだけではなく、どんな文脈で皮疹が出てきたか、
が重要である。

我々が皮疹に出会う状況は皮疹と全身症状のバランスによって3つに分けられる。

① 全身症状がメイン(発熱、関節炎、ショックなど)だが、よく見たら皮疹も伴っていた状況:救急外来、入院中でみる状況、本人が皮疹に気がついていない

② 全身症状(発熱、関節痛、呼吸苦、腹痛など)もあるが、目立った皮疹もある場合:主に救急外来や一般外来でみる状況、本人が皮疹に気がついている

③ 皮疹以外に目立った症状がなく、皮疹のみの場合:主に皮膚科や内科の予約外来、プライマリケアでみる状況



 皮疹は皮膚に限局する皮膚疾患のこともあれば、
全身性の疾患の一部として出現することもある。

青木眞先生の有名なパールとして
「昨日元気で今日ショック。皮疹があれば儲け物」という言葉通り、
皮疹は診断のヒントになる。

 皮疹を探しにいくことで診断のヒントとなる状況をいくつか挙げる。
感染症では、感染性心内膜炎(塞栓徴候、点状出血、爪下出血)、
TSS(全身のうっすらとした紅斑)、リケッチア(刺し口)、
自己免疫性疾患では皮膚筋炎(メカニックハンド、ゴットロン徴候)、
SLE(蝶形紅斑)、脊椎関節炎(乾癬)、血管炎・I V L(紫斑)などである。

これらはその目で探しにいかなければ、見落とす可能性が高い。
リケッチアならば、皮膚の柔らかい部位(膝裏、腋窩、鼠径、髪の生え際、臀部など)に刺し口があるはず!という目で探しにいく必要がある。

もう一つ、皮疹を探しにいく時のコツは、ダブルチェックである。
1回で終わらず、2回確認すること。一人ではなく、二人で確認すること。

そして、目だけではなく手でも確認することである。皮疹は手で触って探す。
そうすることで、一人でもダブルチェックができる。

そして、皮疹の暖かさや立体感、ざらざらした感じ、乾燥・湿潤といった
「手触り感」がわかる。これは教科書やネット画像では得難い情報であり、
皮疹は頭ではなく手に記憶させる。

 皮疹を診断する時のポイントは
「文脈(経過)」と「皮疹の性状」と「随伴症状」である。

内科医は皮疹以外の情報(文脈と随伴症状)から主に診断を組み立て、
そこに皮疹をプラスして考える。
そのため、皮疹以外に情報が乏しい時が苦手である。
言い換えると皮疹だけを見た時の考え方が、システム1(直感)しかなく、
皮疹をみてシステム2(論理的思考)で考えることが苦手なのだと思う。
そのため、この章では皮疹をみた時にシステム2で考えられるように解説したい。

鳥の目、虫の目、魚の目を聞いたことがあるだろうか。
皮疹ほどこの概念がハマるものはない。
この3つの目で皮疹を見て、そこから思考していく。

① 鳥の目:全体を見る目である。
ここでは空間軸だけでなく、時間軸にも視野を広げてみてほしい。

(1)時間軸:いつ、どのような経過で出現した皮疹であるかという時間軸である。

まず季節は非常に重要である。春〜秋にかけて好発する疾患といえば、リケッチア症や毛虫皮膚炎、花粉皮膚炎である。

夏の海水浴シーズンでは、クラゲ皮膚炎やプランクトン皮膚炎(海水浴皮膚炎)、
山に行く人では植物かぶれ(ウルシ)、家にいても高温多湿の場合は
汗疹や白癬が増える。

秋〜冬は乾燥し、皮脂欠乏性湿疹やアトピー性皮膚炎が目立つようになる。
季節によって流行するウイルス疾患(手足口病など)もあるので、周囲の感染状況も重要である。

経過としては、突然なのか、急性なのか、亜急性に悪化しているのか、
再発して繰り返しているのか、慢性的に続いているものなのか、
といった時間軸が重要になる。

慢性的に再発を繰り返している場合、どのような状況で皮疹が出現するかを解像度高く聴取する。
熱が出たときだけなら、AOSDの皮疹かもしれない。
寒い時だけなら寒冷蕁麻疹やバージャー病、汗をかいた時ならコリン作動性蕁麻疹、運動や飲酒後なら食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)に代表されるようなコファクター増強型食物アレルギー(CEFA: Cofactor-Enhanced Food Allergy)、天気の良い外に出た後なら日光過敏症といった具合である。

先ほど述べた「文脈」にあたるものであり、この情報がなければ、皮疹だけをみていても診断はつかない。

(2)空間軸:空間的には皮疹以外の随伴症状や他に皮疹がないかを探す。
これは帯状疱疹が良い例である。ちくちく、ピリピリ痛い赤い発疹といえば、
帯状疱疹ではあるが、そこだけ見ておしまいにしてはいけない。
必ず随伴症状や全身をチェックする。随伴症状として頭痛を伴っていれば、
髄膜炎を発症している可能性がある。
そして、デルマトームに沿っていない部位に皮疹が出現していないか、
つまり播種性帯状疱疹に至っていないかを確認する。

皮疹の分布は診断のヒントになる。皮疹の分布が顔、首、手背であれば、日光曝露の部位の可能性が高く、日光過敏症かもしれない。
皮疹は主に外的要因(物理的な圧力、熱、化学物質、虫刺され、植物、塗り薬、白癬菌、疥癬)と内的要因(免疫反応、アレルギー、血流由来、腫瘍)と両者の組み合わせ(血管壁の脆弱な部位への物理的な圧力による紫斑、薬物によって誘発された日光過敏症)によって発症する。

特に皮疹の特徴的な分布は外的要因を示唆することがある。
帯状疱疹の皮疹に見えても、よく見ると皮疹の分布がデルマトームから外れており、服から出ている腕だけに限局した皮疹であれば、毛虫皮膚炎の可能性がある。
前日に庭の剪定をしたという情報が加われば、帯状疱疹と誤診しなくて済む。
手掌と足底にあれば、rash on palms and solesと呼ばれ、手足口病をはじめ鑑別疾患が絞られる。
全身にあれば、中毒疹と呼ばれる。
下肢に目立つ皮疹であればIgA血管炎を疑う。

皮疹の出現した順序も大事である。水痘は頭や顔から始まり、全身に広がる。
一箇所の皮疹を掻きむしっていたら、全身にも同じような皮疹が出現してきたら、自家感作性皮膚炎かもしれない。

このように、全身の皮膚をチェックするという一手間をかけて、皮疹の分布を明確にし、「なぜこの分布なのか?」を自問自答すると、皮疹の原因が見えてくる。

鳥の目まとめ
・時間軸:季節はいつか?経過は急性?慢性?どんな時に起こる?
・空間軸:随伴症状は?皮疹の分布は?

「なぜこのタイミングで、この分布なのか?」を自問自答する


② 虫の目:局所の皮疹をじっくりみてみる。

ここで登場するのが、お決まりの皮疹を表す単語である。
見た目の皮疹を言語化するのが難しいため、皮疹に苦手意識を持ってしまうが、
今の時代、写真で撮っておけば事足りる。
我々が求められているのは正確な皮疹の表現ではなく、皮疹の診断であることを忘れてはいけない。

難しいのは皮疹の言語表現がそもそも分からないことと、様々な皮疹が混在していることである。湿疹三角に代表されるように、紅斑、丘疹、小水疱、膿疱、湿潤、痂皮、苔癬化といったように見た目に皮疹が混在しており情報量が多い。

そのため、ここではシンプルに考える。見た皮疹を全て同じ情報として考えるのではなく、情報に優劣をつける。

「皮疹の新旧」、「水疱の有無」、「色」、「表面の性状」に着目する。

皮疹の新旧については、痂皮や水疱、紅斑などバラバラで様々な段階の皮疹があれば、「新旧混在」と表現され水痘の特徴となる。
逆に単純ヘルペスは、「同相同大」と呼ばれ、同じ時相で、同じ大きさの病変となる。
皮疹も時間が経つと変化してしまい、続発疹と呼ばれる。
皮疹を見た時には原発疹と続発疹が混在しているため、まずは原発疹を探しにいく。

原発疹:紅斑、紫斑、水疱、膿疱、丘疹、膨疹
続発疹:痂皮、苔癬化、鱗屑、ビラン・潰瘍、萎縮


(1) 原発疹で探すべきは、水疱である。水疱が1つでもあれば他の皮疹は関係なく、液疱病変のカテゴリーとして考える。水疱があれば液疱病変となり、水疱性疾患と膿疱性疾患に分けられる。

(2) 水疱がなければ赤いかどうか、赤みがあれば紅色病変、なければ非紅色病変へと進む。

(3) 紅色病変の場合、隆起しているかどうか、表面がざらざらしているかどうかで分けていく。



紅色病変の場合、表皮に問題があるか、表皮に問題がないかを確認する。
見極め方は、表皮の性状と境界である。

表皮に問題がなければ、皮膚はツルツルしており、
皮疹を作り出している解剖学的な部位は真皮以下である。

境界面は表皮→真皮→皮下組織へと深くなればなるほど不明瞭になる。
真皮以下に問題がある病変といえば、蕁麻疹や紫斑、薬疹、ウイルス性発疹症、蜂窩織炎、結節性紅斑、脂肪織炎である。

表面がざらざらしていていれば、表皮の炎症(白癬、乾癬)や湿疹の可能性が高い。この考え方は治療に直結し、表皮の炎症であれば外用剤が治療のメインになる。しかし、真皮以下に問題が起きていれば、外用薬の効果は乏しくなる。

虫の目まとめ
・時間的に新しい皮疹、特徴的な皮疹(水疱の有無)を探すことから始める
・皮疹が起きている解剖学的部位を想像する

「どの層に何が起きているか?」を自問自答する


③ 魚の目:魚が水の流れをみるように、
      皮疹の時間経過を追っていく。

 原発疹から続発疹へと変化しているか、新たな原発疹が出現していないか、紅色病変から紫〜褐色調に変化しているかなど、時間とともに皮疹が改善しているかどうかを見極めていく。

例えば、蜂窩織炎であれば、抗生剤治療とともに徐々に改善を認めるが、
壊死性筋膜炎の場合、数時間単位で局所所見が悪化していく。

悪化したかを記憶に頼るのではなく、発赤範囲と痛みをマーキングしておくと良い。壊死性筋膜炎は発赤範囲を超えて、痛みが強いことが特徴である。
マーキングすることで視覚的に悪化していることが証明でき、整形外科や形成外科Drにコンサルトし、試験切開してもらう時の診断根拠にもなる。



時間が診断の鍵になることはよくある。

例えば、典型的な蕁麻疹であれば24時間以内には消退するが、
消退せずに24時間以上も残存し、色素沈着や紫斑が残る場合には蕁麻疹様血管炎が疑われる。

不明熱で入院中に最初はなかった点状出血が入院後に新規に出現すると感染性心内膜炎や小血管炎の診断の糸口になる。

これらの疾患を疑う際には「皮疹がない」ということにも意味がある。
「新しく出現した!」と自信をもって言えるためには、日々の診察が重要になる。

魚の目まとめ
・皮疹を適切に経過観察できるかどうか
・蜂窩織炎の場合は痛みと発赤範囲をマーキングする
「これは新規の皮疹」であるというために日々の診察が大事


<皮疹の因子や機序は?>
3つの目で皮疹を見た後に皮疹の因子や機序を考える。

なぜこのような分布となり、このような性状の皮疹となり、このような時間経過と
なるのだろうか。

その原因は外因性要因か、内因性要因か、それとも両者か。

体の中でどのような機序で皮疹を作り上げているのか。
神経支配に沿ったウイルスの再活性化か(帯状疱疹)、
血流に乗って飛んできたのか(播種性帯状疱疹)、
免疫反応が皮膚で起きているのか、
免疫複合体による血管炎か、
血管壁が脆弱で出血したのか、血小板や凝固因子の問題か、
真皮の血管が拡張しているのか。それとも・・・

このように皮疹の病態生理を考える癖をつけると皮疹をシステム2で考えられるようになる。

例えば、右下肢の痛みを主訴に来院した40歳男性について考えてみる。


 皮疹は昨日から出現して悪化傾向。こういった皮疹は初めて。
皮疹は右下肢のみで他の部位に皮疹や随伴症状もない。
右下肢全体にうっすらした紅斑と紫斑がある。水疱や盛り上がりはない。
表皮はきれいでツルツルしている。
下肢全体の紅斑は圧迫で消退するが、紫色の病変は圧迫で消退せず、紫斑である。

体内の免疫反応や血流に乗って飛び散った皮疹であれば、
片側の下肢だけに限局するのはおかしい。
両側の下肢に目立つ紫斑といえば、IgA血管炎ではあるが、
片側なのは説明がつかない。

となると片側の理由は、なんだろうか?

同部位の感染、つまり蜂窩織炎であればあり得る。
しかし、蜂窩織炎にしては紫斑が目立ちすぎている。

深部静脈血栓症(DVT)ならどうか?片側だけ血流がうっ滞していれば、
片側の下肢の紅斑も説明できる。
うっ滞して静脈圧が高くなれば、出血してもよいだろう。

本症例は蜂窩織炎疑いで近医より紹介されたが、DVTであった症例である。


このように3つの目で皮疹を観察し、

どのような因子や機序で皮疹が成り立っているかを考えていくと、皮疹をみるのが楽しくなる。

システム1だけでなく、システム2でも皮疹を診断できるようにしていただきたい。 

2026年7月11日土曜日

総合診療科外来の役割とは?






ある一つの病気が全ての症状を作り出しているわけではなく、
器質的な疾患、機能性疾患、精神疾患、疾患とも言えないレベルの体調不調、
背景のADHDやASD器質が絡み合って、目の前の状態を作り上げています

なので、全てに精通していないと、訳が分からなくなります

全部わかっていると、病態を因数分解していく感じで、

その症状はAです
その症状はBです
その症状はCです

と綺麗に分解できていきます



診断にも治療にも「時間」が必要ですが、
その時間を使うためには、中腰力が必要になります






※症例は加筆・修正を加えてあります













質問をするというよりは、会話の中でこれらの3つが自ずとわかります

会話の後に振り返ってみると、この人にとってのmakingは〇〇だなあ〜とわかります

聞き手のアンテナの立て方の問題です

一番聞くのが難しいのが、Receivingです
自分の弱みを見せるのは誰しも抵抗があります

MakingもProvidingもpositiveな感じですが、
Recivingだけはnegativeな自分です

みなさんも見ず知らずの人に
自分の心の拠り所にしている人のことを話すことには抵抗がありますよね



地震の際にボランティアの人が来ても、
被災者の方がそのボランティアをうまく受け入れられないということで
「受援力」という言葉が話題になりました

一人で歯を食いしばって一人で乗り越えることが美徳とされる文化では
誰かの助けを借りることは「人に甘える」と批判的に考えられてしまいます

人の助けを借りてこなかった人は受援力が低く、
介護やサポートに抵抗を示されることが多いです








 

2026年6月8日月曜日

敗血症の空間軸

 
敗血症はどの科で、どのような場所で勤務していても、出会う超重要疾患である。

適切なマネージメントで予後が変わるため、 研修医であっても

少なくとも初期対応については精通している必要がある。


敗血症診療は研究が盛んであり、数年前の知識が時代遅れになりかねない。

常にアンテナを立て、時代と共に知識をupdateしていく必要がある。


本項では敗血症及び敗血症性ショック2026年版国際ガイドラインに沿って、

敗血症を空間軸(感染症としての視点)と

時間軸(フェーズによる視点)で解説する。    


(ちなみに文章や図は全てAI未使用です 笑)



(1)敗血症の総論と早期発見  

(2)敗血症の空間軸  

(3)敗血症の時間軸      



(1)敗血症の総論と早期発見  

敗血症とは「感染に対する反応の調節不全による、生命を脅かす急性臓器不全」と定義されている。


世界中で年間1300万人が敗血症で命を落としており、

早期の診断と治療が予後改善には重要である。


生命予後だけでなく、身体的・認知的・精神的な後遺症を引き起こす可能性があり、

単一臓器だけでなく多臓器・全身管理(リハビリ、栄養)が求められ、

医師だけでなく多職種との連携も非常に重要になる。   


 敗血症の診断はあくまでも臨床診断であり、

「発熱があるから、CRPが上がっているから」という単純なものではない。


早期診断のために様々なツールが開発されてきた。

SIRSに始まり、qSOFA(quick Sequential OrganFailure Assessment)、

NEWSなどがある。


院内の急性疾患患者に対してのスクリーニングツールとしては、

qSOFA単独ではなくNEWS、NEWS2、MEWS、SIRSを組み合わせて

使用することが推奨されている。


また2026年のSSCGからは「コード・セプシス」または「セプシス・ハドル」

という言葉も加わり、スクリーニングが陽性となった後、

多職種がチームを組んで敗血症への対応を迅速に進めるための

プロトコルが提案された。  


敗血症治療はガイドラインに沿って治療を行えば大きな間違いはないが、

ガイドラインはあくまで「レシピ」であり、

一人一人味の好みが分かれるように敗血症の治療も

症例ごとにアレンジさせる必要がある。


初期輸液後の輸液をどうするか、MAPの目標はどうするか、

ステロイドはいつ入れるか、いつ水をひくか、

など個別の症例によって最適解は異なる。


昨今、敗血症だけでなくどの分野でも、

同じ病名・病態であっても患者毎に治療を変える個別化医療や

精密医療が提唱されている


俺流治療に固執するのではなく、

患者毎に治療を変える柔軟性が求められている。  




  (2)敗血症の空間軸  

敗血症は言うまでもなく、感染症が原因である。

そのため、感染症の5原則に則って考えていく。  


感染症の5原則とは 

 1 患者背景  2 感染臓器・部位  3 原因微生物  

 4 治療  5 適切な経過観察    の5つである。  




1 患者背景  

感染症、ここでは敗血症を疑った場合、まずは患者背景を確認する。


5原則の中でも最も重要なのが患者背景である。

患者背景が大事と言われても漠然としているため、

免疫・曝露・余力の3要素を考えると良いであろう。   


 (1) 免疫

局所免疫(皮膚バリア、粘膜、線毛機能、管の流れ、解剖学的な破綻など)、 

薬による免疫低下(ステロイド、免疫抑制剤、抗がん剤、Jak阻害薬、生物製剤など) 

 疾患による免疫低下(血液腫瘍、糖尿病、透析患者、肝硬変、AIDSなど)  

細胞性免疫、液性免疫、自然免疫など  


(2) 曝露

人(シックコンタクト:空気感染、気道感染、性行為、接触感染)  

動物(ペット、ネズミ、鳥、魚類、爬虫類など)

食物、職業  環境(長期入院、施設、透析、刑務所)、海外渡航  


(3)余力

バイタル、背景疾患、PS、ADL、年齢、栄養状態、SOFA、qSOFA   


 患者背景ではこれら3つの情報収集を行うことで今後の感染部位や微生物の推定につながり、治療をどうするかにも関わってくる。


逆にこれらの情報が全くない場合、

感染症診療は格段に難しくなる。  



2 感染臓器・部位   

次に考えるのは、感染している臓器や部位、いわゆるフォーカスである。


敗血症の原因となりやすい臓器や部位は、5+1で覚えると良い。


中枢神経(髄膜炎)、肺(炎)、腹部(胆管炎、消化管穿孔)、

尿路(腎盂腎炎、前立腺炎)、皮膚軟部組織感染症の5つと、

感染性心内膜炎の1つである。


感染性心内膜炎(Infective Endocarditis:IE)はIEと略されることが多く、

IEのIが1に似ているため、このように覚えておく。


そして、フォーカスはないが、いきなり血流感染を起こすことが

小児や高齢者では珍しくなく、血流感染として0.5として覚えておく。


この概念は臨床で非常に有用であり、高熱・悪寒戦慄があり、

菌血症を疑う状況でフォーカスがなければ、逆に鑑別は絞られる。

いきなり菌血症パターンである。


その場合、原因微生物は連鎖球菌やブドウ球菌、

消化管からのGNRであることが多い。


感染部位の探し方は、まずは5+1を検索する。


中枢神経感染症(髄膜炎)は頻度は低いが、早期治療が重要であり、

ステロイド投与や抗菌薬の選択や投与量にも注意が必要なため、

一番最初に想起すべきである。


qSOFAの1項目である意識障害が当てはまった時点で、

ただ点数1点が加わっただけと思わず、

髄膜炎の可能性はないかを常に考える必要がある。


しかし、意識障害は他の感染症や敗血症でもみられ、

意識障害の患者全員に髄膜炎として対応するのは現実的ではない。


実際は髄膜炎対応をしないのであれば、

どうして髄膜炎対応しないのかの理由を説明でき、

どうなったら髄膜炎を再検討し直さなければならないか、を考えておく必要はある。

5+1の感染臓器でなかった場合は、さらなる検索が必要になる。


5+1が突破された時は・・・

①一手間かかる診察

(頭の先からつま先までチェック、穴のチェック:特に直腸診、叩く:脊椎、季肋部、歯、副鼻腔)


②検査に頼る

(造影CTで膿瘍探し、迅速キット、フィルムアレイ、培養、画像など)


③時間に頼る(時間が経つと病気が進行し、感染部位が明らかになることが多い、例:キャンピロバクター腸炎、椎間板炎、感染性心内膜炎)    


このようにまずは、疫学を利用し5+1で考え、

5+1が突破されたら次の3ステップで感染部位を探す道筋があれば、

感染臓器が判明しなくてもパニックにならずに済む。  



  3 原因微生物  

患者背景と感染部位がわかっていれば、原因微生物の推定は容易である。


感染症の原則は1→2→3→4→5の順に、しっかりした情報があればあるほど、

次のステップが容易になる。  


病歴や疫学情報(国、地域、生活範囲)を駆使し、

迅速キットやグラム染色を用いて原因微生物を推定する。


敗血症を疑った場合、血液培養2セットを出来るだけ早く採取し、

いつでも抗菌薬を入れておける準備をしておく。


血液培養の他に感染源と思われる部位からの検体採取を行う。

関節炎であれば関節穿刺を行い、褥瘡からの皮下の膿瘍があれば膿瘍を採取し、

肺炎であれば痰をとる努力を惜しまない。


常に血液の他に取れる検体はないか、という精神が重要である。


経過が早すぎる病歴でも原因微生物を推定できる。


「昨日元気で今日、ショック症候群」

という青木眞先生が注意喚起している病態である。


TSS:toxic shock syndrome, STSS:streptococcal toxic shock syndrome

髄膜炎菌敗血症、感染性心内膜炎(特に黄色ブドウ球菌)

リケッチア感染症

肝硬変症患者での劇症感染症(Vibrio vulnificus、Edwardsiella tarda、aeromonas hydrophila)

overwhelming postsplenectomy infection:opsi(脾機能低下患者の髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、Capnocytophaga)

劇症型Clostridium perfringens(ガス壊疽菌)感染症などである。


あまりにも急激な経過で悪化していることが判明した場合は

これらの病態を想起する。


これらがどれくらい早いかというと、

CRPが上がっていなくてもショックになるくらいの早さである。    


4 治療

敗血症に限らず、感染症の治療の一番は抗菌薬・・・ではない


ドレナージやデブリードマンといった

外科的に感染源のソースコントロールを行うことである。


抗菌薬の投与と同時並行にドレナージや除去するべきデバイスはないか、

緊急手術が必要な病態(下部消化管穿孔、心不全を伴うIE)ではないか、

確認しておく。


ドレナージは早ければ早いほど良いが、6時間以内が推奨されている。


抗菌薬は敗血症性ショックや敗血症(ショックなし)の可能性が高ければ

1時間以内に投与することが推奨されている。


抗菌薬の選択は患者背景や感染臓器、微生物が推定できていれば容易であるが、

攻め過ぎも良くない。


抗菌薬の選択ミスは患者の予後不良因子であり、

「narrow is beautiful」と言っていられない時もある。

勝つことよりも絶対に負けないことの方を優先させる。


同じ病態であっても患者背景や重症度によっては、

エンピリックにいかざるを得ない時もある。


バイタルが不安定で感染臓器が不明な場合や検体採取が困難な場合でも

血液培養さえとってあれば、エンピリックな抗菌薬の投与は許容される。


血液培養の結果を確認し、後でde-escalationすれば良い。


エンピリックといっても、どこまで広げるかは、

患者背景(免疫、曝露、余力)、感染臓器、感染部位による。


最初から嫌気性菌やMRSA、ESBL産生菌、AmpC過剰産生菌、緑膿菌、

細胞内寄生菌、抗酸菌、真菌をカバーするかどうかは症例ごとに考える必要がある。


そして抗菌薬を開始した際には、

どの菌を外しているかを確認しておく。 


 2026のSSCGではβラクタム系抗菌薬の持続投与が強く推奨に変わった。


18のランダム化比較試験(RCT)のメタ解析により、

持続投与は短期間の死亡率を有意に低下させることが示されたが、

全例で行うかは検討が必要である。


個人的には実装されるにはしばらく時間がかかると思われる。


持続投与の研究はカルバペネムやタゾバクタム・ピペラシリン、セフェピムなどの

半減期の短いβラクタム系抗菌薬がメインである。


何でもかんでも持続投与が良いというわけではなく、

投与している抗菌薬の持続投与の研究があるかは見直した方が良い。


バンコマイシンは一見良さそうではあるが、

『日本版敗血症診療ガイドライン2024 (J-SSCG 2024)』では、

バンコマイシンを含むグリコペプチド系抗菌薬の持続投与

(または投与時間の延長)については、「行わないことを弱く推奨」されている。


2026のSSCGでは言及はなかった。  


持続投与でなくても、extended(投与間隔の半分以上かけて投与、

例:8時間毎の投与であれば4時間以上かけて投与)でもよいので、

まずはextendedで投与するのが良いだろう。


有害事象としてはルートを占領することや他の薬剤との配合変化、

せん妄のリスクがある。


注意点としては、持続投与の前にローディングとして初期負荷を行うこと、

投与期間が長くなることで効果が減弱する薬(特にメロペネム)がある。


実際は施設ごとに薬剤師・看護師ともに持続投与の方法を確認してから行う。    



5 適切な経過観察  


それぞれの項目(患者、感染部位、微生物、治療)を経過観察していく。


患者背景ではバイタル、食欲、臓器障害を確認する。


感染部位では診断する根拠となったもの

(例:肺炎であればcrackleや湿性咳嗽、頻呼吸、CXR)を追っていく。


微生物ではグラム染色で菌は減量・消失しているかを確認し、

黄色ブドウ球菌やStaphylococcus lugdunensis、カンジダであれば、

血培の陰性化を確認するため、血培を再検する必要がある。


血培再検のタイミングは初回血液培養から24時間以上経過後、

通常は2〜7日以内に実施される。


GNRでは血培の陰性化の確認のための血培再検は必須ではないが、

ケースバイケース(状態が改善しない、デバイスが入っている、除去できてない膿瘍がある、感染性心内膜炎疑いなど)で検討する。


それぞれの感染症ごとに治癒過程はある程度決まっているが、

その治癒過程に沿わない経過を辿る場合には、再評価が必要になる。


敗血症性ショックであれば、輸液のフェーズのROSDが逆戻りした場合や

先に進まない場合は合併症(デバイス感染、膿瘍)や薬の副作用、

他のトラブル(心筋梗塞、肺塞栓、出血、副腎不全)を考慮する。


感染症が治っていく過程は実際の臨床現場でしか学べないので、

しっかり患者さんから学ばせていただく。


(3)敗血症の時間軸









2026年6月2日火曜日

敗血症の時間軸 〜2026年のSSCGに沿って〜

















 1. Prescott HC, et al. “Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2026.” *Critical Care Medicine*. 2026;54(4):725–812. 

 2. Murugan R, et al. “Association of Net Ultrafiltration Rate with Mortality among Critically Ill Adults with Acute Kidney Injury Receiving Continuous Venovenous Hemodiafiltration: A Secondary Analysis of the Randomized Evaluation of Normal vs Augmented Level (RENAL) of Renal Replacement Therapy Trial.” *JAMA Network Open*. 2019;2(6):e195418.  

3. Neyra JA, et al. “Polymyxin B Haemoadsorption in Endotoxic Septic Shock (TIGRIS): A Multicentre, Open-Label, Bayesian, Randomised, Controlled, Phase 3 Trial.” *The Lancet Respiratory Medicine*. 2026;14(5):443–452. 

 4. *Intensive Care NEXT*. 2025;50(1).  

5. Barbar SD, et al. “Timing of Renal-Replacement Therapy in Patients with Acute Kidney Injury and Sepsis.” *The New England Journal of Medicine*. 2018;379(15):1431–1442.  

6. STARRT-AKI Investigators, et al. “Timing of Initiation of Renal-Replacement Therapy in Acute Kidney Injury.” *The New England Journal of Medicine*. 2020;383(3):240–251.  

7. Alamami A, et al. “Venoarterial Extracorporeal Membrane Oxygenation in Septic Shock and/or Sepsis-Induced Cardiomyopathy: A Systematic Review of Fifteen Studies.” *Journal of Cardiothoracic and Vascular Anesthesia*. 2026;40(3):935–943.  

8. Wischmeyer PE, et al. “Personalized Nutrition Therapy in Critical Care: 10 Expert Recommendations.” *Critical Care*. 2023;27(1):261.  

9. Qi F, et al. “Correlation Analysis of Norepinephrine Dose on Enteral Nutrition Tolerance and Prognosis in Patients with Septic Shock.” *BMC Infectious Diseases*. 2023;23(1):386.  

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12. Li B, et al. “Inotrope Selection in Mixed Cardiogenic Shock with Sepsis: A Comparative Analysis between Milrinone and Dobutamine.” *Annals of the American Thoracic Society*. 2026;23(2):252–260.  

13. Monnet X, et al. “Evidence for a Personalized Early Start of Norepinephrine in Septic Shock.” *Critical Care*. 2023;27(1):322. 

14. Wischmeyer PE, et al. “Personalized Nutrition Therapy in Critical Care: 10 Expert Recommendations.” *Critical Care*. 2023;27(1):261.  

15. McClave SA, et al. “Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Adult Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine (SCCM) and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition (A.S.P.E.N.).” *JPEN Journal of Parenteral and Enteral Nutrition*. 2016;40(2):159–211. 



皮疹の見方

皮疹の見方 皮疹の見方と言っても状況によって考え方が異なる。 皮疹だけをみてどう考えるかだけではなく、どんな文脈で皮疹が出てきたか、 が重要である。 我々が皮疹に出会う状況は皮疹と全身症状のバランスによって3つに分けられる。 ① 全身症状がメイン(発熱、関節炎、ショックなど)だが...

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