2021年1月16日土曜日

顔面神経麻痺②  〜+αで考える〜

 前回、口を酸っぱくベル麻痺という病名を安易につけないでください、と言いました


では実際、何に気をつけて診察するかというと、

顔面神経麻痺 + α です


前回の一周回って・・・を詳しくした感じです


+αがなければ、ベル麻痺の可能性が高まります


ベル麻痺は膝神経節のHSV1の再活性化により、神経の炎症や浮腫が起こり、

腫脹した神経が骨性の神経管内で圧迫され、虚血と絞扼、浮腫の悪循環に陥り、

神経障害が増悪する病態と考えられています


顔面神経の解剖のポイント


①側頭骨の中の骨性の顔面神経管の中を通る

 ⇨狭いので、神経が浮腫むと虚血に陥りやすい

  外傷で骨が折れると、神経も障害を受けることがある

  骨メタで神経も障害されることがある


②顔面神経は運動神経だけではなく、副交感神経や感覚神経成分を含む

 その細胞体は膝神経節にある

 ⇨膝神経節にHSV1やVZVが眠っていて、再活性化をきたす

  神経が損傷や脱髄が起こった後に、回復の過程で神経線維同士での

  接触伝導や異所性興奮、迷入再生がおこると、

  病的連合運動(synkinesis):口を動かすと、目をつむってしまうなど

  Croccodile tears:食事の際に涙が出る




末梢性顔面神経麻痺+αを探しましょう


特にVZVの頻度は多いので、皮疹のチェックは念入りにしましょう

そして、皮疹が後から出現するパターンもあるので、毎日チェックしましょう


顔や首に怪我がある人は注意が必要です

実は転倒した際に、側頭骨骨折を伴っていたり、

傷から破傷風菌が入った可能性があります




難聴やめまいがあれば、AICA梗塞やVZVを疑います
何度も再発しているようなら顔面神経鞘腫を疑います


頭痛があれば、無菌性髄膜炎パターンになっていることが多いので、
髄液検査を行い、髄膜炎かどうかを確かめます

VZVに伴うものが多いので、抗ウイルス薬は必須ですが、
ライム病も原因になり得ます

腫瘍や血液疾患(特に白血病)があれば、癌性髄膜炎の病態も考慮するので、
細胞診を出す必要があります


まとめ

・顔面神経の解剖を理解すると、臨床に応用できる

⇨顔面神経管という細くて長い骨性の管の中を通るので、浮腫に弱い


・ベル麻痺以外の病気を見逃さないためには、+αに注目する

⇨特に皮疹や内耳症状に注意 


・顔面神経麻痺に頭痛があれば、積極的にルンバールを

⇨鑑別はかなり膨大だが、アシクロビルは必須

 

顔面神経麻痺① 〜ベル麻痺って言いたくない!〜

症例1      50歳 女性 主訴:右顔面が歪んでいる
特に基礎疾患なし
診察では末梢性パターン
⇨ベル麻痺で入院


症例2   80歳 男性 主訴:右顔面が歪んでいる
肺がんで治療中
診察では末梢性パターン
⇨ベル麻痺で入院


症例3   60歳 女性 主訴:右顔面が歪んでいる
シェーグレン症候群で経過観察中
診察では末梢性パターン
⇨ベル麻痺で入院


症例4   70歳 男性 主訴:右顔面が歪んでいる
vascular riskあり
診察では末梢性パターン
⇨ベル麻痺で入院
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「ベル麻痺」という診断名をつけるのは、やめにしませんか?


上記はいずれも実際にあった誤診例です


症例1はよく診察すると、右耳介がわずかに発赤がみられ、
外耳道付近に水疱の出来かけの皮疹がみられました
耳が赤いかどうかは、実際はとても難しいですが、
左右差を比べると分かります


症例1はラムゼイ・ハント症候群でした


症例2は肺がんで治療中というのがポイントです
よくよく診察すると、嚥下困難もありました
CTやMRIを取っても脳梗塞や出血はありませんでしたが、
よくみるとMRIで側頭骨がDWIで高信号になっていました


症例2は肺がんの側頭骨の骨転移による顔面神経麻痺でした


症例3はシェーグレン症候群という背景がポイントです
シェーグレン症候群は顔面神経麻痺を発症することがあると知られています
治療はベル麻痺と大きく変わりませんが、
髄膜炎や他のニューロパチーを伴っていないか、確認する必要があります


症例3はシェーグレン症候群に伴う顔面神経麻痺でした


症例4はvascular riskがあるというのがポイントです
MRIを撮ると橋の背側に小さな脳梗塞がありました
顔面神経核が障害された場合は、末梢性パターンになるので、
中枢性=脳梗塞、末梢性=ベル麻痺というわけではありません


症例4は脳梗塞でした


末梢性の顔面神経麻痺=ベル麻痺ではありません

ベル麻痺という診断は、なんだか診断した気になってしまう変な錯覚があると思いますが、
よくよく考えると、原因はわかりませんって言っているだけです


原因不明ということは、特発性です
もっと平たくいうと、ゴミ箱診断です


末梢性の顔面神経麻痺の人にベル麻痺ですね、と
ドヤ顔で言っている場合ではありません

ベル麻痺という診断をつけることは、もっと謙虚であるべきです


病歴や診察を行い、他の疾患を本気で探し十分に検討しましたが、
現時点では残念ながら末梢性の顔面神経麻痺の原因は不明ですので、
暫定的にベル麻痺という病名をつけさせていただきます・・・

くらいがちょうどよいと思います


そもそもベル麻痺は、
1830年に報告された原因不明の急性発症片惻性顔面神経支配筋麻痺を呈する症候群です






時代は進み、現在はベル麻痺の主な原因として、単純ヘルペスウイルスの関与が示唆さされており、必ずしも原因不明ではありません

ただ、実臨床では単純ヘルペスウイルスによって起きたことが簡便に証明できないため、
まだベル麻痺という病名が残っています




もしベル麻痺という診断名をつけたいのであれば、他に原因がないかをひたすら探した後にしてください


 Road to ベル麻痺

⓪ベル麻痺の人は糖尿病が背景にある人が多い

糖尿病による脳神経麻痺は動眼神経麻痺が有名ですが、
顔面神経麻痺も虚血の関与が疑われています

この時点で特発性じゃないじゃないか・・・というツッコミもあります

妊娠している人にも起きやすいということも知られています
(理由は凝固活発や体液量増加による浮腫などが考えられています)


急性に起こった末梢性パターンの顔面神経麻痺だから、ベル麻痺かな?
と思ったら、グッとこらえて他の疾患を探しに行きます


①なんといってもVZV
皮疹が出ないタイプはみなさんご存知かと思います
Zoster sine hepete(ZSH)ですね

ですが、時間が経つと皮疹が出現してきたり、
皮疹が出ていても気がついていない、ということもあるので、
安易にZSHと診断するのはよくないです

見落としやすいのは、外耳道や耳介、口蓋の皮疹です


耳の痛みが強い場合や重症の顔面神経麻痺の場合は積極的に疑いましょう

顔面神経麻痺は後遺症が残る可能性があるので、最初の治療が肝心です
重症例では閾値低めに抗ウイルス薬の治療を検討します


VZVの証明はペア血清での抗体値の上昇や
耳介皮膚擦過液や髄液、涙のVZV-DNAをPCRで検出するなど色々報告されています

抗体値はすぐには判明しませんし、
PCRは一般の病院では難しいのが現状です

もう少し簡便に証明できるキットが生まれるのを待ちたいと思います

それまでは、しっかり皮疹を探すことに尽きます


②実は脳梗塞じゃないか?


まずは末梢性か中枢性かを分けることが第一歩です

末梢と中枢の診断のポイントは
①autonomic-voluntary disscociationの有無
②おでこの皺寄せ
③Bell現象
④味覚障害や音の過敏の有無

です




ですが、末梢と中枢を見分けられても、末梢性パターンの中に脳梗塞が混じっています


末梢性だと脳梗塞はない
と勘違いしている人がいますが、
末梢性パターンでも脳梗塞のことはあります



ではどうやって脳梗塞を見極めるかというと、
vascular riskと他の神経症候です


顔面神経核が障害されれば、末梢性パターンの顔面神経麻痺になりますが、
顔面神経核を栄養しているのは、AICAです

そしてAICAは顔面神経核だけではなく、内耳にも栄養を送っています
(AICAから分岐する内耳動脈)

つまり、AICA梗塞の場合は、内耳症状(耳鳴り、難聴、めまい)を伴うことが多いです



ですが高齢者の場合、もともと難聴があったりすると、難聴が新たに起きても気がついていないこともありますので、訴えがなかったからといって除外はできません

自覚症状に頼らず、ウェーバー、リンネ試験を行いましょう


vascukar riskが高ければ、MRIの検査の閾値も低く考えた方が良いと思います


③MRIで脳梗塞がないからといって安心できない、骨は大丈夫?


特に肺がんや乳がんの既往や治療歴がある人の場合、
脳神経異常をきたしたら、身構えなければなりません

骨転移による脳神経症状が知られています

CTやMRIをその目でみると分かりますが、
その目で見ないと見落とします



④小児の場合、中耳炎じゃないか?

抗生剤が普及したため、今は少ないですが、
特に小児の場合、中耳炎の波及から顔面神経麻痺を合併することがあります


また、稀ではありますが、糖尿病患者に悪性外耳道炎という緑膿菌感染に伴う
骨を浸潤していくようなタイプの感染症があり、
この疾患でも周囲の神経を巻き込む恐れがありますので注意が必要です


最近では、OMAAVと言ってANCA関連血管炎に伴う中耳炎の報告が増えています
高齢者の難治性の滲出性中耳炎が実はOMAAVだったということもあります

ANCA関連血管炎の診断がついている人で、難聴の訴えがあった場合は、
耳鼻科で診察してもらうことが重要です


顔面神経麻痺の原因が耳の中に眠っている可能性があるので、
耳鏡を使って外耳道から鼓膜までを観察しましょう


⑤実は癌じゃないか?


骨転移でなくても癌が原因で顔面神経麻痺は起こり得ます
有名なのは、顔面神経は耳下腺を通るので、耳下腺がんです

その場合は大体悪性です

耳下腺はしっかり触るようにしましょう


顔面神経鞘腫の場合も顔面神経麻痺を呈しますが、
最初のうちは小さいので、画像でもわからないことがあります


顔面神経麻痺を6回再発した症例で、
ようやくMRIで顔面神経鞘腫が見つかったという報告もありますので、再発例では注意が必要です


何度も同側の末梢性顔面神経麻痺を再発する人は、腫瘍を疑いましょう



⑥両側性であれば特に、サルコイドーシスやギランバレー症候群を疑う

もちろん、片側もあり得ますが、両側の場合はピンと来てください

サルコイドーシスの既往があれば分かりやすいですが、既往がない場合は、
皮膚のサルコイド結節を探してください
あと、レントゲンでBHLを探してください



⑦最後にライム病じゃないか?

出ました、ライム病
あえて、最後に持ってきています

海外では有名ですが、日本での報告はほとんどありません
だからこそ、見つけたいと常に思っています


ライム病の難しいところは曝露があってすぐに出現するわけではなく、
ダニに刺されてから数週間や数ヶ月後に出現してくることがあります


そのため、本人も忘れていることが多いですし、有名な環状紅斑も診察時はないことが多いです

病歴で山や林などへの侵入や
マダニに刺された覚えはないかを狙って聞く必要があります



はい、これで一周回りました
ここまで、考えたり、病歴を詰めて、何も引っかからなければ、
ようやく、「暫定」ベル麻痺という診断にたどり着きます




まとめ
・「ベル麻痺」という診断名は医者の思考をストップさせてしまう
⇨ベル麻痺はゴミ箱診断、積極的につけるような病名ではない

・ベル麻痺は実はHSV1の再活性化で起きているので、特発性ではなくなってきている
⇨ただ、HSV1が原因と断定する簡便な検査がないので、まだベル麻痺という病名で残っている

・どうしてもベル麻痺と診断したいのであれば、一周回る
⇨帯状疱疹でないか、脳梗塞でないか、骨メタじゃないか、中耳炎じゃないか、腫瘍じゃないか、GBSやサルコじゃないか、ライム病じゃないか?

2021年1月10日日曜日

中腰力

東京GIMカンファレンスの感想


今回のケースのように、超高齢者の食思不振は非常に悩ましいです

原因が見つかることもあれば、原因が見つからないこともある

原因を探すためには、侵襲度が高く体に負担がかかる検査が必要なこともある


そもそも原因があるのか、ないのかがわからないので、

どこまで原因検索すべきか非常に迷います


そして、背景には自分以外の先生なら、原因を見つけられるのではないか?と考えてしまい、

自分がその人の生死を分けてしまうような感覚になりますので、主治医には大変ストレスがかかります


迷っているのは、医者だけではありません

看護師さんやMSWさん、リハビリの方、ご家族も迷いながら過ごしています



高齢者の食思不振は、倫理的な側面が大きく、医師だけでは答えが出せません



このどちらにも進めない状況こそが、内科医としての一番求められる力だと思っています

自分は「中腰力」と呼んでいます



医学界新聞での対談にて、春日先生も同じようなことを語っておられます

〜以下、本文より引用〜

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中腰で耐える

春日 僕はそういう「中途半端なところで時間が経過するのを我慢できるかどうか」っていうのが,

援助者の実力の1つだと思っています

それは言い換えれば,精神の健全さの指標です

我慢できない人は,お手軽なストーリーを借りて妄想に走ることになる。

そういう意味では,内田先生が今回の『死と身体』で書かれていた

「中腰で我慢する力」というのはまさに,そういう力のことを言ってるのだと思いました。

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参考:対談 内田樹×春日武彦 中腰で待つ援助論



中腰で我慢する力、中腰力


みなさん、日々の臨床で、きついなぁ〜・・・と思われる瞬間はたくさんあると思います

その時には、「中腰力」という言葉を思い出して、耐えてください


我慢できなくなって、簡単なストーリーに流れていかないようにしましょう

食べられない高齢者に胃瘻やCVをいれることは簡単ですが、それが本当に正しいのでしょうか




中腰で待ちながら、我々にできることは?


高齢者の食思不振は改善できないかもしれません

原因を見つけられないかもしれません


では主治医ができることはなんでしょうか?



それは患者さんを知ることです


栄養がとれなければ、その患者さんは亡くなります

その人らしい最期を迎えるためには、その患者さんのことを知る必要があります

患者さんのことを知ろうと思えば、誰にでもできます


もちろん、研修医の先生でも


治療することだけが、医者の仕事ではありません

人を幸せにすることが、医者の仕事です


そのための話し合いが、ACPです


どうやってその人らしいケアを行っていくか?

どのような最期を迎えることができれば、その人や家族は幸せになるか?ということを話し合います


決してDNARをとることが、ACPではありません


そしてそのACPを他職種とも共有して進んでいくことが非常に重要です



今回の症例の裏では、おそらく何時間もACPが行われています

それだけでも素晴らしく、中腰力が垣間見えました


今回の症例の表のストーリーは「VD製剤の外用薬による高カルシウム血症」でした

表のストーリーも勉強になり、素晴らしかったですが、

おそらく裏のストーリーも大変だったのだろうと推察されます


GIMのような症例カンファレンスでは、focusされませんが、

裏のストーリーを聞いてみたいなあと思いました


なぜなら、それこそが臨床のリアルだからです


臨床は表と裏が逆です



この患者さんを経験した主治医の先生たちが求められたのは、

高カルシウム血症の治療ではなく、中腰で待つ力です


そして、中腰で待ったからこそ、happyな結末に進んでいったのだと思います


大変、勉強になりました。お疲れ様でした。ありがとうございました。


2021年1月9日土曜日

鷹にご用心 〜東京GIMカンファレンス(後半)〜

 前半まとめ


数十年来の乾癬でステロイド内服中の90歳女性

認知症もあり、ADLはベット上で人生の終末期を迎えているといっても過言ではない方


尿路感染症を繰り返しており、今回も発熱・食思不振があり、

膿尿や細菌尿を認め、ピペラシリン・タゾバクタムで治療が開始となった

しかし、食欲低下は改善せず転院


ESBL 産生の大腸菌の腎盂腎炎として、セフメタゾールに治療変更し、7日間投与された

相対的副腎不全の可能性も考慮され、入院3日間はソルコーテフ100mgが投与された

食思不振や発熱はその後、改善し食事摂取ができるようになったが、

入院後、10日目を過ぎてから、徐々に食欲低下と意識レベルの低下が出現した

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他の先生からのコメント

「意識障害からすると、高カルシウム血症も考えます。

 マキサカルシトールは外用薬ですが、塗布でも高カルシウム血症をきたすことはあります。」

「ステロイドで改善したというのは、例えばPMRとかもあり得ますかね。

 PMRは痛みというよりも、意識障害で来ることがありますね」

「レボセチリジンが腎機能だとdoseが多いかもしれませんね」

「腎不全は腎後性とかではないですよね?」

「心不全はどういう原因なんでしょうか?」

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経過


血液検査を提出し、これで介入できる点がなければ、お看取りの方針で考えていた


ただ、入院2週間目の血液検査にて

カルシウムが13mg/dL(Alb 2.9)と高値であった


そのため、高カルシウム血症の診断で、

ゾレドロン酸2mg静注とエルシトニン80U/日の筋注が開始され、輸液も行われた。


その後、カルシウムの低下とともに食事量は上がっていった


高カルシウム血症の原因検索として、下記が行われたが、原因ははっきりせず

リン 4.2mg/dL

PTH-intact 13 pg/mL

PTH-rp  <1.0 pmol/L

1.25- Vit D  54.9  pmol/L

25- Vit D 7.2  ng/mL


胸腹部CT 粗大な固形がんは見られず、骨病変も認めず

皮膚生検 乾癬で矛盾しない、悪性細胞なし

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ディスカッション②高カルシウム血症の原因は?


K先生「意識障害があって、腎障害があって、脱水の場合は考えなければならないですよね。

   

   一般論から言うと、

   内科外来で見つかるようなゆっくり来るタイプの高カルシウム血症は、

   副甲状腺機能亢進症の方が多いですね。

   健診で見つかるような場合なので、症状はないことが多いです。

   高くても12くらいでしょうか。

      

   救急に来るような症状を伴っている高カルシウム血症の場合は、

   悪性腫瘍やビタミンD中毒が多いです。

   13〜くらいになると意識障害が出現してくるので、

   治療はゾメタとかエルシトニンを使います。

   輸液も必要になって、AKIを改善させる意味とカルシウムを排泄する意味があります。


   今回はPTH-intactが低めなので、副甲状腺機能亢進症ではなさそうですね。

   悪性腫瘍もrpの方も低いので、違いそうですね。

   他には肉芽種性疾患も鑑別ですね。

   サルコとかの肉芽腫性疾患では、ビタミンDの活性化をきたしてカルシウムが上がります。 

   後は不動とかでも上がりますが、ここまで病的に上がることは少ないですね。


   やっぱり、薬剤と悪性腫瘍関連がトップ2ですね。

   特に薬剤ではエディロール®︎が半減期が長く、作用が強いので、特に注意しないといけないですね。

   今回はマキサカルシトールの外用ですけどね。











   外用でもNSAIDsの湿布でも腎不全になったり、

  ステロイドの外用薬をずっと塗っていても、副腎不全になったりするので、

  外用薬は注意が必要ですね。」


N先生「今回のケースでは高カルシウム血症が原因になりそうですが、

   これまでの経過、つまりG群の菌血症になったり、感染症を繰り返したりしているのは、

   今回の高カルシウム血症が原因なのか、他の背景があるのかなと思ったりしています。


   ソルコーテフ100mgでいきなり良くなっているのは、なんでしょうかね。」


K先生「ステロイドに関して言うと、ステロイドの作用の食欲亢進作用や

    カルシウムの排泄を亢進させるので、

    昔はステロイドも高カルシウム血症の治療に使ったこともあるみたいですが、

    効果も高くないので、今はもう使わないですね。


    利尿剤も今ではあまり使いません。輸液で十分なので。

    あまりに高ければ、透析するってことにはなりますからね。」


H先生「ちなみに結核ではどちらのVDが上がるのですか?」


N先生「1.25の方です。活性化されてしまうので。

    25を測るのは、材料がビタミンD不足があるかどうかです。」


T「高カルシウム血症はピットフォールが多いです。

  高カルシウム血症をみると、そこに飛びついてしまって、原因検索だー!

 ってなって、他の原因が見えなくなってしまうことがあります。

  

  オッカムだけではなく、ヒッカムを高齢者の場合は常に考えるべきで、

  高カルシウム血症は症状が多いからこそ、全てを高カルシウム血症で説明しがちですが、

  他にも何か原因がないか?という視点はまだ捨てきれないと思っています。


  今回の高カルシウム血症の原因は、おそらく外用薬でしょう。

  乾癬の皮膚の状況が現在どうなっているかわかりませんが、

  紅皮症になるくらい荒れていたり、

  菌血症になるほどバリア破綻がひどいようなので、外用薬の吸収もUPしていると思います。

  

   なので、ここで気になるのは、

  今の皮膚の状況と外用薬が入院後も塗られていたかどうかを聞いてみたいです。」


K先生「そうですね。

   今までも塗られていたはずなのに、なんでここで高カルシウム血症をきたしているか気になりますね。」


発表者「皮膚は頭まで全身真っ赤かで、鱗屑が出ているような状況です。」


T「ありがとうございます。

  あとは、乾癬もピットフォールが多くて、乾癬の診断がどれくらい正しかったのか、

  どういう検査で乾癬の診断が着いたのかが気になります。

  

  実はT細胞性のリンパ腫だった、とかもたまにあるので注意が必要かと思いました。」


発表者「私も皮膚は悪性腫瘍かと思いました。

   ですが、これまでの皮膚科のカルテを見ても、何度か生検はされていて、

   乾癬に矛盾しない結果で、悪性所見は一度も見られていませんでした。」


K先生「ティアニー先生のパールに治らない乾癬は、

  T細胞性リンパ腫を考えるというのがありますよね。

   ステロイド塗ると、微妙に効いたりするので、診断が難しいです。」


T「そうですね。

 もう一つ、治らない乾癬を見たときは、HIV感染を考えるというパールがあります。


 HIV感染している人の感染は重症化したり、治療が難しいということが知られています。

 一般論ですが、梅毒の皮疹も乾癬に似る時があるので、もっと早い段階であれば、

 梅毒も一度は考えなければならないと思います。」


S先生「乾癬の人にステロイドは出来るだけ使いたくありません。

   けど、実際は使われます。

   

   どうして、使いたくないかというと、乾癬にステロイドを使うと、

   減らしてくるタイミングで紅皮症になることがあります。

   

  乾癬のタイプの中で紅皮症はイッチバン悪いタイプです。

   

   僕らもみたくありませんし、作らないようにしています。




   

   この方の歴史を紐解くと・・・

   おそらく、最初はこの方は違うタイプの乾癬だったと思います。


  でも治らなくて、ステロイドが開始されて、

  ステロイドを減らすと紅皮症っぽくなってしまって、  

  熱が出たり、食欲が低下したり、副腎不全っぽくなって、

  ステロイドが増やされて、

  ステロイドが長期にわたってしまって、PCP予防でバクタが始まって・・・


   みたいな歴史があるのだと思います。


   今は乾癬の治療はいいものがたくさん出ているので、ステロイドは基本は使いません。

   ですが、安いですし、いい薬ではあるので、ガイドラインにはまだ残っています。


   この人はステロイドが入っていたのは、いろんな事情があったとは思いますが、

   紅皮症になったのは、そういう背景があったと思います。


   なので、皮膚科のカルテを紐解くことはとても大事です。」



発表者「ありがとうございます。私もとても気になって、皮膚科のカルテをみてみましたが、

   日向過敏症など、いろいろな病名がついて、結局は乾癬に落ち着いているようでした。」

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経過


皮膚科医師より

外用薬のマキサカルシトールでも高カルシウム血症が起こるので、外用薬がロコイドに変更になった

その後は、高カルシウム血症を繰り返すことはなかった


マキサカルシトール外用薬の処方量を確認すると、50gを3日間のペースで消費していた

(週100g超のペース)


よくよく家族にも聞いてみると、家では節約して薄ーく使っていた

入院してからは、皮膚の状態が酷かったので、ベットり塗られていたことがわかった

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ビタミンD外用薬と高カルシウム血症


・乾癬の治療薬として標準的に用いられており、局所副作用が少ないため、認容性が高く広く用いられている

・全身の副作用として、高カルシウム血症が知られているが、

 使用上限を100g/週にすることでリスクを減らすことができる

・高カルシウム血症をきたしやすい患者群は、

 高齢者、腎機能障害、紅皮症、膿疱性乾癬患者


・マキサカルシトールは22位のCがOに置換されており、1.25-VDの測定には影響がない

 1.25-VDが上昇しないことはよくある


ミルク・アルカリ症候群からカルシウム・アルカリ症候群へ

・以前は消化性潰瘍の治療は牛乳(粘膜保護)とアルカリ(中和)の投与で、ミルクアルカリ症候群と言われた

→PPIの登場でミルク・アルカリ症候群は減った


・活性型VD→Ca濃度上昇→尿細管Ca濃度上昇

→Na排泄が進み、循環血漿量低下→近位尿細管での重炭酸の再吸収UP

→PTH分泌低下→重炭酸再吸収UP

その結果、高Ca血症+腎障害+代謝性アルカローシス


内服薬以外の副作用にもご用心を



・ステロイド外用薬による副腎不全

・β遮断薬の点眼による起立性低血圧

・NSAIDS貼付薬による消化生潰瘍、アスピリン喘息

・ステロイド吸入薬による副腎不全

・グリセリン浣腸による溶血性貧血

・フェントステープの貼りすぎによる麻薬中毒



鷹にご用心

→他科にご用心

→他科処方にご用心




鷹にご用心 〜東京GIMカンファレンス(前半)〜

 東京GIMに参加しました

とてもいい症例で、学びが多かったので共有させてください

(※発表者や主催者の先生方の許可はいただいております)


90歳 女性 主訴:食欲低下

(※一部症例は加筆や修正を加えてあります)


Profile:ベット上でのADL、認知症あり


現病歴:

1ヶ月前に転倒による圧迫骨折で入院

食欲低下は見られず、リハビリにて退院

4日前 食欲低下と発熱があり、入院

   輸液で経過観察となったが、経口摂取は数口のみであった

3日前 尿路感染症としてPIPC/TAZが開始となった

   解熱えられたが、食欲低下は持続

当日、食欲低下の原因精査目的に当院転院となった


既往歴:数十年前から乾癬による紅皮症、日向過敏症あり

複数回の尿路感染症、蜂窩織炎、心不全、G群連鎖球菌菌血症

内服歴:

内科より:プレドニゾロン6mg、ST合剤、フロセミド20、アムロジピン2.5mg、フェブキソスタット10mg、ランソプラゾール15mg、クエン酸第一鉄50mg、アセトアミノフェン1500mg

皮膚科より:レボセチリジン10mg、マキサカルシトール外用薬、ロコイド軟膏、プロペト


身体所見

BP120/100, P 75, T 36.5, RR24, SPO2  96%, 意識 E2V3M6

見た目 ぐったり

頭頸部 眼球結膜蒼白なし、黄染なし

   口腔内 乾燥あり、リンパ節腫大なし

胸部 呼吸音 清、心雑音なし、腋窩乾燥あり

腹部 平坦 軟、圧痛なし、CVA巧打痛なし

皮膚 頭皮を含めて全身に紅斑があり、鱗屑が付着している

一部、掻爬痕と苔癬化あり


血液検査 軽度の正球性貧血(8)、血小板低下(10万)

BUN(50)、Cr上昇(3)、Na 144, K 3.5, Cl 105

尿検査 タンパク+、潜血+、白血球 1 > 100/HPF

尿培養 ESBL産生大腸菌


経過 

ESBL産生大腸菌による尿路感染症として抗菌薬をセフメタゾールに変更され、治療継続

相対的な副腎不全の可能性があり、ソルコーテフ100mg/日の点滴が3日間行われた

入院3日目から食事量が徐々に増え、6日目には7割食事摂取可能となった

Cr1.7とAKIも改善傾向となった

食欲低下の原因は尿路感染症と相対的な副腎不全によるものと考えられた


が、しかし・・・


入院11日目 再度食事摂取不良隣、意識レベルも徐々に低下した


身体所見では、バイタルは著変なし

レベルはE2V3M6

口腔内は乾燥していた

他は変化見られず

血液検査では再度BUN32, Cr 2.0と腎障害が出現していた


入院中に再度出現した食欲低下として、尿路感染症、副腎不全、低活動性せん妄の可能性が考えられたが、終末期の食事摂取量低下の可能性もあった

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ディスカッション①お看取りの可能性もある中、何かを考え、この方にどこまで何をしますか?


K先生「色々問題点はありますが、

  アプローチするポイントをシンプルにするのがいいかなと思います。

   意識障害がありますので、まずは意識障害のアプローチから入るのが、よいのかなと思います。


  具体的にはAIUEOTIPSを使うことが多いです。

  神経の局在症状があれば、頭蓋内病変の可能性が高いので、画像評価へいきますし、

  髄膜刺激症状があれば、ルンバールを検討します。


  どちらもなければ、他の全身の要素や血糖、ショック、内分泌といった原因を考えます。

  この人の場合は、副腎不全の可能性があるかと思いますが、

  画像評価も必要になると思います。」


N先生「質問なんですけど、ソルコーテフ100mg入れて見違えるように元気になったのですか?」


発表者「見違えるようには元気にはなっていませんが、食事は取れるようになりました」


N先生「なるほど。お看取り間近の人にソルコーテフを入れただけで、ここまで元気になるのかな?というのが疑問です。

  ステロイドに反応する何か病態があるのかなと考えたくなりますね。」


T「今回の症例をどうとき解していくかなんですけど、

 自分だったら、「入院中のトラブル」という視点と「高齢者が食事」が取れなくなったときにどう考えるか?というアプローチで考えます。

 参考:高齢者の見方   


 入院中のトラブルで有名なのは発熱ですが、入院中のトラブルということで、

 同じように考えていきます。

 考えることは3つです。参考:入院中の発熱





 ①まずは入院の原因となった疾患に関係したトラブルです

 今回であれば暫定、腎盂腎炎ということで、セフメタゾールが開始となっています

 例えば、腎盂腎炎がこじれて、腎膿瘍や腸腰筋膿瘍になっていないか、IEになっていないか、といったことは考慮すべきです


 ②次に入院中に行った全ての介入による問題を考えます

 今回であれば、点滴の抗生剤です

 点滴をとっていたことによる静脈炎、

 抗生剤によるCDIはすぐにチェックしたいです

 

 ピットフォールとして、

 始めたことだけでなく、中止したことも大事になります

 アセトアミノフェンを入院後中止したら、熱がでたというのもあります

 実は元々熱はあったけど、マスクされていたというパターンです

 

 ③最後は偶発的な問題です

 家族の面会者にインフルエンザの人がいたとか、

 元々の他の疾患(腫瘍など)が顕在化したとかです


 この症例では、この3つのうちのどれだろうなあ〜という観点で考えます。

 commonなものから考えるのであれば、CDIだと思いますが、下痢はありましたか?」


発表者「ありませんでした。」


T「ありがとうございます。セフメタゾールはいつまで投与されていましたか?」


発表者「7日間です」


T「ありがとうございます。

  セフメタゾールは他の抗生剤よりもVKの代謝を阻害するため、出血傾向をきたしやすいので注意が必要です。

 特に絶食時には凝固が狂いやすいので、凝固の確認は必要かと思います



 今回の症例で注意しなければいけないことは、

 ①の入院の原因となった疾患が、

「暫定」腎盂腎炎ということです。

 

 腎盂腎炎はあくまで除外診断ですので、他の疾患を見つけられずに、

 腎盂腎炎として治療してしまっていることもあります。

 例えば、感染症でいえば、髄膜炎や結核、IEに対して

 腎盂腎炎として抗生剤を投与することで、パーシャルに治療されてしまうこともあります。


 ですので、腎盂腎炎としての見積もりがどれくらいだったかによって、

 考えることが違ってくるかなと思います。」


発表者「この方はご高齢で認知症もあったので、所見も取りにくく、熱源を探すのは難しかったです。

   お看取りも近いということで、検査もミニマムでした。

   腎盂腎炎という診断で前医で治療されていたので、やり切るしかないという形で、引き継きました。」


T「ありがとうございます。そうなりますよね。


 あと熱源としては、この方は乾癬があるので、関節炎の合併があったとしたら、

 乾癬かな?で流しそうなので、もしかしたら化膿性のこともあるかなと思いました。


 関節炎の所見はどうでしたか?」


発表者「関節の腫脹はありませんでした。」


T「ありがとうございます。質問ばかりで申し訳ないのですが、最後にもう一つだけ。


  確か、薬をたくさん飲まれていましたよね?

  いわゆるポリファーマシーの状態ですので、

  入院中にお薬が減量されている可能性もあるかなと思います。

  薬の調整は何かされましたか?」


発表者「薬に関しては、減らそうとは思ったのですが、

   色々検討して、結局、減らせなかったです。」


T「なるほど、そうだったんですね。


  高齢者が食べられなくなったら、どう考えるか?ですけど、

 まずは薬を考えます。



     高齢者の食思不振は、色々な要素が混在していることが多いです

     ただ、病気や老衰で食べられないのであれば、
     正直、それは致し方ない部分はあります。

     ですが、自分が行っていることで、害を与えてはいけません。
     
     なので、まず考えることは、「薬」です


   薬を見直した後は、経過の確認です。

   この中でacuteな場合は可逆的な要素が強いので、頑張って精査すべきです。

   

   現実的に一番多いのは、acute on chronicです。

   そして、この状況が一番悩みます。


   今回はacuteもしくは、acute on chronicなので非常に悩みます。

   あまり侵襲的なことはしたくないので、非侵襲的な範囲で検索を行い、

   何も引っかかるものがなければ、お看取りの方針になるかもしれませんね。」


〜前半終了〜

2021年1月4日月曜日

昼カンファレンス 〜美味しいものは最後にとっておく〜

 75歳 女性 主訴:嘔吐(※症例は一部修正・加筆を加えてあります)

Profile:豆炭使用歴なし

現病歴:来院当日の朝に上腹部に違和感があり起床した

    その後、数回嘔吐が見られた

    吐き気が持続し、一日中寝ていた

    夕方になっても改善しないため、救急車で当院搬送となった

既往歴:脂質異常症、(詳細不明の)大球性貧血

内服歴:フォリアミン、メチコバール、エゼミチブ

生活歴:夫と二人暮らし、ADL  full

飲酒なし、喫煙なし


バイタル:JCS  Ⅰ-1、呼吸数24、血圧143/83、脈78、体温36.5、SPO2 94%

瞳孔3/3、対光反射+/+

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ディスカッション①他に何か聞きたいことはありますか?


T「はい、ありがとうございます。では学生さんから他に何か聞きたいことはありますか?」


学「えっと生ものとか食べられましたか?」


N「食べていないそうです。」


T「はい、ありがとうございます。

 皆さん、この病歴いかがですか?

 何か最初に確認したいことはありませんか?」


学「えっと、いつまで元気だったかを確認したいです。」


T「そうですね!

 これは朝から症状がありましたということであって、

 いつまで元気だったかということではありません。

 実は前日の夜からムカムカして食事が取れなかったかもしれませんよね。

 1週間前から間欠的にある症状かもしれません。


 なので、いつまで元気だったかを明確にする必要があります。

 まずはそこからです。


 いつまで元気だったか?ということを確認する作業は、

 病歴のスタート地点に立つと呼んでいます(今日、命名しました)


 この症例はまだスタート地点に立っていないのです。

 もちろん、わざとそういうプレゼンをしてくれて、みんなに聞いて欲しかったんですよね?笑」


N「もちろんです、はい。すいません。笑

 えっと、前日の夜寝るまでは何ともなかったようです。

 深夜に起きて症状に気がついたようです。そこからはずっと同じ症状です。」


T「はい、ありがとうございます。

 寝る前までは大丈夫で、起きたら体調悪いというのはよくあります。

 ここで大事なのは、

 高齢者の大多数が夜に1ー2回はトイレに起きているという事実です。

 なので、夜にトイレで起きたときはどうだったかを聞くことで、真の発症時期がわかることがあります。

 この症例はどうでしたか?」


N「寝てからトイレに行ったかは聞いていませんでした。」


T「ありがとうございます。

 何でこれが大事かというと、例えばtPAの時とかに発症時期が明確になっていた方がいいですよね。この症例はtPAの時間は過ぎてはいますが、今後は意識してみてください。


 他に何か聞きたいことはありますか?」


E「上腹部の違和感もあったようですが、それは痛みですか?」


N「痛みだったと思います」


T「痛みなんですね?

 まあ、違和感でも痛みでもどちらでもいいのですが、

 痛みの場合、型のごとくOPQRST2を聞いてきましょう。」

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O:寝ていて上腹部の違和感と吐き気で目が覚めた

P:食事は取れていないが、水分はとっている

  水分とって悪化はしない、丸まって和らぐということもない

Q:何となく鈍痛

R:なし

S:下痢なし、頭痛なし、めまいなし、便は前日でた、呼吸苦なし

 動悸なし、胸痛なし、冷や汗なし

T:吐き気や上腹部痛については横ばい

2:こういう症状は初めて




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ディスカッション②何が鑑別であげられますか?


学「・・・腸管?」


T「そうですね、吐き気がメインですから、消化管の病変を考えますよね。

 他には何を考えますか?」


学「・・・」


Y「やっぱり、上腹部痛なのでまずは、心筋梗塞を考えたいです。

 それで心電図をすぐにとりたいです。

 あとは、上腹部痛なので胆石とかも可能性としてはあります。

 手術歴は無いようですが、腸閉塞も鑑別です。

 あとは、食事も取れていないようですし、少し意識も悪いようなので、

 低血糖や高血糖がないか、すぐに血糖は測定したいです。」


T「素晴らしいですね。他に付け加えはありますか?」


E「あと、吐き気を起こすとすると頭蓋内疾患の可能性もあるかと思います。」


T「皆さん、素晴らしいですね。その通りです。 

 学生さん、鑑別が研修医の先生はポンポンあがりますよね?

 皆さんと何が違うと思いますか?


 昼カンファにしばらく出ていれば、こんな感じで鑑別をすぐにあげられるようになりますので、ご心配なく。

 

 鑑別疾患の考え方としては、解剖と病態を考えてみると良いです。

 痛みであれば、ABCの考え方がとても相性がいいので、

 今回もABCで考えても良いと思います。


 例えば今回の嘔吐や吐き気で考えてみましょう。

 嘔吐の中枢はどこでしたか?」


学「延髄?」


T「そうですね、嘔吐中枢は延髄の孤束核近傍にある外側網様体の背側に存在します

     嘔吐中枢を刺激する神経刺激の経路は 3 つあります


  1 つ目は咽頭や胃、小腸などからの刺激が迷走神経を介して嘔吐中枢へ伝えられる経路です

  消化管以外にも胆管や心臓、睾丸などからの刺激もこの経路で嘔吐中枢に到達します

  腎盂腎炎や精巣捻転で、嘔吐が頻回になる人もいますね。


  2 つ目は CTZ(化学受容体引金帯)を経由する経路です

   CTZ は第四脳室底に存在し嘔吐中枢を刺激します

  CTZ は血液- 脳関門 (blood- brain barrier; BBB)の外側にあり、

  内因性や外因性催吐物質を検出します

  主に薬ですね


  3 つ目は大脳皮質、脳幹、前庭系など他の中枢神経系から伝えられる経路です。


  もっと簡単にいうと、

  嘔吐をきたす原因は頭蓋内疾患、消化管、消化管以外に分けて考えます。



  考え方のコツは、みんなが考える腸管を一番、最後に考えます。


  最初は臓器以外の薬や代謝、内分泌、頭蓋内の問題を考えて、

  次に消化管以外の臓器(特に心臓)を考えます

  そして、最後に消化管の問題を考えます。


  なぜこの順番かというと、最初に消化管と思ってしまうと、

  無理やり「腸炎」という病名をつけて、他の疾患を忘れてしまうためです。

  なので、忘れようのない消化管のトラブルは後に考えましょう。


  こうやって解剖や病態生理を思い浮かべることができれば、

  おのずと鑑別疾患も上がります。


  最初は出来る限り、たくさん鑑別疾患をあげられるようにトレーニングしてください。

  じゃないと、見逃します。


  そして、たくさん鑑別疾患をあげられるようになったら、

  次にすることは、その中で優先順位をつけることです。


  発散させて、収束するイメージです。





  今回であれば、心筋梗塞は緊急性が高いので、まず心電図をとりたいですよね。

  鑑別疾患を思い浮かべることが出来なければ、診察や検査は出来ません。


  今、思い浮かべた疾患を考えながら診察することが大事です」

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身体所見

見た目 閉眼しじっとしている

末梢 冷感や冷汗なし

眼瞼結膜 蒼白あり

口腔内 綺麗

呼吸音 清  心雑音なし

腹部 平坦 軟 圧痛は心窩部から臍周囲に軽度あり 筋性防御なし

マーフィー陰性

腸蠕動音 亢進

直腸診 黒色便なし 

下肢 浮腫なし


超音波検査 胆嚢壁肥厚なし 胆石なし

ソノグラフィックマーフィー陰性

心電図 ST-T変化なし


経過としては、吐き気が強そうであり、

プリンペラン®︎を投与しつつ、採血の結果を待ちました


採血では、特に嘔吐の原因となるようなものはなし

炎症所見も見られず トロポニン上昇もなし

Hb 8台(MCV120)、BUN/Crの上昇はなし

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ディスカッション③追加でとりたい所見や検査はありますか?


T「さあ、この身体所見や検査でさっきあげた鑑別疾患がどうなりましたか?

 心筋梗塞の可能性はいかがですか?」


学「減ったと思います。」


T「そうですね、トロポニンは6時間以内だと感度悪いですが、

 朝から発症で夕方こられているので、さすがに心筋梗塞なら上がっていますよね。

 では、胆石はどうですか?」


学「エコーでなければ、ないのではないでしょうか。」


T「そうですね、さすがになさそうですね。

 では、腸閉塞は?」


学「うーん。わかりません。」


T「腸閉塞も普通、診察と超音波があれば大体わかるので、

 ないんだろうね。

 血糖の低下や上昇もなかったね。

 じゃあ、頭蓋内疾患の可能性はどうだろう?」


学「まだ、わかりません。」


T「そうだね、だって診察してないもんね。笑

 なので、追加でとる診察は神経診察ですね。

 どうでしたか?」


N「この時点では神経診察はしていませんでした。


 嘔吐と上腹部痛がメインだったので、腹部のC Tを撮りましたが、

 嘔吐の原因となるものはありませんでした。

 そして、ベッドから移動するときに初めて、めまいがするとおっしゃったので、

 頭蓋内疾患もあるかもしれないと思い、頭部CTを追加しました。

 

 頭部CTでは、小脳に低吸収域はありましたが、これが新規のものか、

 古い梗塞かわかりませんでした。

 

 実際に診察すると、確かに左手は小脳失調とも取れる稚拙さはありますが、

 元々こんな感じですと言われてしまったので、

 新規の小脳梗塞からの吐き気や上腹部痛でよいのかは判断に迷いました。


 ですが、翌日にMRIを撮るとしっかり新規の小脳梗塞がありました。

 

 一応、貧血もありましたので、上部消化管内視鏡検査も入院後行いましたが、

 特に所見はありませんでした。


 最初から小脳梗塞をあまり疑えておらず、CTとっても診断出来なかったので反省です。」



T「なるほどね。

 この症例は頭痛やめまいの訴えが乏しく、

 かわりに貧血があったり、腹痛があったりして、目眩しがたくさんあって難しかったですね。 

 でも実際は心臓のことも考えているし、直腸診もしっかりしているので、

 プラクティスとしては素晴らしいと思います。


 確かに、腹痛の訴えがあって、診察でも圧痛があると、

 小脳梗塞だけで片付けてよいか、迷いますね。


 結果的には、嘔吐が頻回だった事による心窩部の不快感ということだと思います。

 皆さんも嘔吐しまくった後は、心窩部が不快な感じになりますよね。


 この人も何度も嘔吐していたということなので、二次的に出てきた症状だったのでしょう。


 この症例のように消化器症状というのは曲者です。

 全身疾患の一部として出ることもありますし、消化管以外の臓器の病気でも、

 消化器症状は出ることがあります。

  

 なるべく、消化管以外から考えるくせを作っておくと、

 見逃しが減ると思います。ありがとうございました。」





まとめ
・いつまで元気だったかを確認する作業は、病歴に置いて「スタート地点に立つ」ということ
→いつ発症したのではなく、いつまでいつも通り元気だったか?から聞くようにしましょう

・嘔吐や腹痛といった消化器症状は、消化管以外の病変から考える
→美味しいものは最後にとっておく精神で


・鑑別疾患を挙げるコツは、最初のうちはたくさん挙げられるように

→慣れてきたら、そこから優先順位をつける練習をする



一酸化炭素中毒 〜この季節がやってきました〜

 当地や寒冷地域特有の病気が、一酸化炭素中毒です

おそらく日本で一番、一酸化炭素中毒患者を見ているのではないかと思っています


一酸化炭素中毒は当地では冬ならコモンディーズですので、しっかり理解しておきましょう




































































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