2021年6月17日木曜日

昼カンファレンス 〜名言が渋滞中〜

今回の症例は救急外来での動き方がディスカッションポイントでした

終盤で怒涛の名言ラッシュがありました


 

83歳 女性 主訴:意識障害
(※症例は一部修正や加筆を加えてあります)

昼に救急車で来院された症例です

救急隊より
83歳 女性の方

嘔吐と意識障害の主訴で救急搬送お願いします

バイタルはBP156/84, P 120, SpO2 95%, T 38.8 JCS 1, RR 20で

昼ごはんは食べられたようですが、
昼過ぎからぼんやりしていて、嘔吐が2回ありました
訪問診療してくれた先生に相談があり、救急搬送となりました

10分後に到着予定です
家族が一緒に行きます
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------
救急隊からの連絡を受けて何を考えますか?
何を準備しますか?


まず、救急隊に絶対に聞いて欲しいことは、
当院受診歴があるか?かかりつけはどこか?です


当院受診歴があれば、来院までにカルテをチェックして、
どんな既往や薬を飲んでいるか、画像や検査データをチェックすることができます



当院かかりつけでない場合は、
かかりつけのDrに電話をして情報を得ることも時には必要です

特に心筋梗塞を疑う場合は、
過去の心電図を手に入れることが救急隊が来るまでのミッションになります


この方は1年前に脳出血で当院で治療歴があるみたいですね
水頭症になり、ドレナージが行われ、
そこからMRSEの髄膜炎になった既往があるようです

その後は近医の訪問診療を受けているという背景です



さて、意識障害があるようですが、どんなステップで考えますか?



意識障害の教科書的な記載としては、

①Do don't
②AIUEOTIPS

が書いてあることが多いのではないでしょうか


AIUEOTIPSは意識障害の最初の型としては重要な語呂合わせです
AIUEOTIPSを覚えた人は、次なるステップに進みましょう


「意識障害」と一言で言っても、
暴れていて混乱状態にある人も意識障害(意識変容ともいいます)です

逆にちーんと静かで傾眠の人も意識障害です


なので、意識障害の人をみたら、
暴れているのか、ちーんと静かな状況なのか分けてみましょう


暴れている系の場合は、足りない系のことが多いです
つまり血圧や血糖、酸素、薬やアルコール(離脱)が足りていないかもしれません


急に生きていくための何かが足りなくなった場合、落ち着いていられません
カテコラミンが出て、混乱・興奮状態になります


交通事故で大量出血している人を見たことがある人はわかると思いますが、
どんどん不穏になって暴れていきます
本当に怖いです


ある時、若い女性が統合失調症様の幻覚が見えて、
失禁して混乱状態で救急搬送されました

診断はCO中毒でした
酸素が低くて、頭がパニック状態になっていたのですね



ちーんと静かな人の場合は、何かが溜まっている可能性があります

臓器不全に陥ると、何かが溜まります
溜まったものによってnatural sedationがかかり、穏やかに亡くなっていきます

人間の体はよくできていますね

薬(麻薬、BZ)やアルコールが溜まってもちーんとなります


そのため、意識障害の人を見たら、
まずはトキシドロームの観点で診察を始めることをお勧めします


ポイントは瞳孔と脈と末梢の発汗です


瞳孔はルーチンでみていると思いますが、
瞳孔所見に救われたことがある経験ありますか?


自分が瞳孔所見に救われたことは、
pinpoint pupilだった時が多いです

pinpoint pupilがきっかけでコリナージッククライシス、麻薬中毒、CO2ナルコーシスを診断できたことがあります


意識障害の人はうまく病歴を話せないことが多いので、
口ではなく目に語ってもらいましょう




あくまで上記は傾向であり、逆のことももちろんありますので、過信は禁物です
どちらとも言えなければ、網羅的にAIUEOTIPSで考えてみてください



では意識障害の人の次のステップにいきます


③〇〇対応、〇〇チャレンジです

髄膜炎対応、tPA対応、セルシンチャレンジテストのどこに進むか検討します

片側の麻痺や脳神経の異常があれば、脳梗塞の可能性があり、
時間が許せばtPA対応が必要になります



意識障害の時に原因不明で落ち込んでいく先は、
NCS(非痙攣性てんかん)と敗血症性脳症のことが多いです

NCSは脳波でもとらえるのが難しく、
脳波のアクセスが悪ければ治療を優先しても良いと思います



今回の症例は発熱があり、髄膜炎対応をするかどうかが議論になります


では、髄膜炎対応ってなんでしょうか?



髄膜炎対応のポイントはできるだけ早く抗生剤を投与することです


抗生剤の選択に関してはNarrow is beautifulとよく言われますが、
敗血症診療において抗生剤投与は、The sooner, the betterです


重要度としては、The sooner, the better>>>Narrow is beautifulです



熱があってレベルが悪くて、バイタルも頻脈で呼吸数も早いので、
qSOFAで敗血症が強く疑われますが、
focusがわからないので、抗生剤投与を何にすれば良いか迷っています・・・

→なんでもいいので早く広域の抗生剤を投与してください 笑



でも、グラム染色まだなんです

→血液培養とれていればOKです
 忙しければ、検体のグラム染色は抗生剤投与後でいいです

 早急にグラム染色ができるのであれば、
 グラム染色の結果をみて抗生剤を選択できればベストです


忘れないで欲しいことは、

 診断がつかないと抗生剤を投与してはいけないわけではありません
 グラム染色しないと抗生剤投与してはいけないこともありません
 敗血症、特に髄膜炎においては、The sooner, the betterなのです



そういう意味では髄膜炎対応は最速です
いち早く抗生剤投与をすることができるのが最大のメリットです



ということで、迷ったら髄膜炎対応して良いと考えています
大は小を兼ねます


注意点としては、上記の髄膜炎対応でカバーできていない菌がいることは、
忘れないでください

ESBLや緑膿菌が疑われる場合は、CTRXをMEPNにしましょう
レジオネラやマイコを疑うのであれば、ジスロマックを使いましょう
リケッチアを疑うならMINOを使いましょう
脳炎を疑うなら、ステロイド投与するかは慎重に検討しましょう
脳炎疑いならアシクロビルは投与しましょう


というように、髄膜炎対応にはルーチンの抗生剤に加えて、
臨床状況に応じて足し算が加わります



皆様ならこの症例、髄膜炎対応しますか?





身体所見では傾眠傾向ですが、指示は入るようです

明かな麻痺はありません

会話もできます

頭痛はなくて、項部硬直もありません


診察上は明かな熱源もないようです


さあ、どうしましょうか?髄膜炎対応しますか?



自分ならしません

「発熱と意識障害」の段階で、髄膜炎対応するかどうかのスイッチが頭に浮かびます

ですが、そのスイッチを押すためのもう一歩がこの症例ではありません


ここは言語化が難しいところですが、

例えば、

・頭痛がある

・意識障害の程度が強い

・項部硬直がある

・免疫抑制状態である

・バイタルが悪い など


もう一押しがない気がします


実際はどうでしたか?

--------------------------------------------------------------------------------------------------------------

発表者「はい、実際は髄膜炎対応をしました。

   自分としては既往に髄膜炎があったので、それを重視しました。


   自分が髄膜炎対応をしたのは・・・


  髄膜炎対応をするかどうかディスカッションするな。

  ディスカッションするべきところは、

  髄膜炎対応をした後の抗生剤をどう引くかだ!


   というM先生の言葉を思い出しました。」



T「髄膜炎対応の足し算と引き算ですね」



M「ちなみにここでどういう引き算のプランを考えていたの?


  自分がもしこの症例で髄膜炎対応をするとしたら、

  デカドロンもCTRXもVCMもビクシリンは入れますね。


  だけど、髄液検査で細胞数が上がっていなければ、抗生剤は中止します。

  他の熱源をみてCTRXだけは残すかもしれません。それ以外は全て中止します。


  おそらく、この症例は熱源が他にあって、

  熱せん妄で意識障害になっている可能性が高いと思います。

  なので、髄液の培養は待たずにビクシリンやVCMは中止します。」


発表者「僕も同じプランでした。

    おそらく、CTや血液検査、尿検査で他の熱源がわかるんじゃないかなと思っていて、

    他の熱源がわかればそれに応じた抗生剤にしようと考えていました。」



M「なるほど、気が合うね。笑」


発表者「あとこの時、N先生の言葉を思い出しました。


   髄膜炎対応っていうのは、下が声をあげて上が乗っかるもんだ!


   っていう言葉が頭にあったので、髄膜炎対応として進めていきました。」



T「なるほど〜、髄膜炎対応するかどうかは上が決めるもんじゃないんだね。


  上になると、なるべく楽な方、楽な方になりがちだから、

  研修医の先生から積極的に声を出してもらった方がいいですね。


  でも最初の抗生剤でビクシリンまで入れるか迷いますね」


発表者「その時、上級医の先生もCTRXとVCMでいいんじゃない?

    と言っていました。


    髄膜炎対応するにしても、ビクシリンまではいらないんじゃない?

    と言われました。

   

    その時には、T吾先生の言葉を思い出しました。」



T「回想シーン多くない? 笑」


発表者「決まったお作法を崩す時には崩すだけの理由がいる。

   その崩し方にもお作法がいる。

   それを理解していないものにお作法を崩す権利はない。


    という言葉を思い出して、今回はお作法通りに投与しました。」



M「すごいね、名言が渋滞してるよ 笑」


M「この症例も髄膜炎だーと進んだわけではなくて、

  他の熱源だと思って進んで行ったんですよね。


  髄液検査陰性で髄膜炎対応を止めるつもりで進んでいったと思います。

  それはすごく安全で、とてもいいことです。」



T「その通りです。


  ですが逆はよくない。

  

  誤嚥性肺炎だと思っていたら、実は髄膜炎でした。だけは避けたい。


  髄膜炎対応は100発100中で当てるものではなくて、

  10回中1回当たればいいかな?くらいでやるものです。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------

経過


CTにて胆嚢腫大があって、血液検査で肝胆道系酵素が上昇していました

胆管炎と胆嚢炎の診断で、ERCPが行われました


診断:意識障害と高熱のプレゼンテーションできた胆石性胆管炎に伴う敗血症


名言まとめ

・髄膜炎対応をするかどうかディスカッションするな。

 ディスカッションするべきところは、

 髄膜炎対応をした後の抗生剤をどう引くかだ!  by M 


・髄膜炎対応っていうのは、下が声をあげて上が乗っかるもんだ!  by N


・決まったお作法を崩す時には崩すだけの理由がいる。

 その崩し方にもお作法がいる。

 それを理解していないものにお作法を崩す権利はない。  by T go  

  

2021年6月16日水曜日

アミオダロン肝 〜白い肝臓〜

ポイント

・アミオダロンはいろんな臓器に沈着して悪さをする

・肝臓の色がおかしいと感じたら、比較を行う

・アミオダロン肝はNASHから肝硬変に陥ることがある

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------

アミオダロンの有害事象はなんでしょうか?

有名なものは間質性肺炎や甲状腺機能異常、心毒性ですね


あとは、角膜、皮膚などにもトラブルを起こすことがあります


そして肝臓にもトラブルを起こすことが知られており、

アミオダロン肝と呼ばれます


   

近年ではCTが撮られることが多いため、

CTで偶然見つかることが多いのではないでしょうか


いつの間にか肝硬変になっていて、肝硬変の症状で初めて発見される人もいます


肝障害が出る前からCT値は上昇している症例もあり、

CT値が上がっている時に早期に発見したいですね



アミオダロン肝はNASHを惹起し、肝硬変に至る症例もまれではありません

アミオダロンを中止することが唯一の治療なので、気がつくかどうかです


    


アミオダロン肝はCTでは肝臓が白く見えます

ただ、一見しただけでは白い肝臓に気が付かないことが多いです


ポイントは比較です

①過去画像と比較する

②肝内血管と肝実質を比較する

③脾臓と肝臓を比較する


なんとなく、肝臓が白っぽいなと感じたら、

この3つの比較を行ってください



白っぽい肝臓をみた時の鑑別は、

主にヘモクロマトーシスかアミオダロン肝です

内服歴でアミオダロンがあれば、確定でよいでしょう


注意点としてはアミオダロン肝は内服を中止した後、

数ヶ月はCT値は高いままのことがあります


現在の内服にアミオダロンがなくても、

過去に遡ってアミオダロンを内服していないかどうかを探してください






前回の症例は、CTにてwhite liverを認め、

肝臓の萎縮も認め、肝表面は不整でした


5年前のCTではそのような所見はなかったため、

ヘモクロマトーシスかアミオダロン肝による肝硬変が疑われました


ただ、今回の入院時にはアミオダロンは内服しておらず、

鉄剤のみ内服していました


ならばヘモクロマトーシスかな?と思いましたが、フェリチンは上がっていません


おかしいな・・・と思い、過去カルテを探ると、

前回の入院時にはアオミダロンを内服されていました

そして徐脈があったため、アミオダロンが中止となっていました


さらに探ると数年前にHOCMの頻脈性のAfで入院した際に、

アミオダロンが他の病院で開始となっていました


それが在宅に戻った後もずっと処方され続けていました



というわけで、今回の高齢女性の低血糖の原因は

1、HOCMによる慢性心不全のため入っていた利尿剤が効きすぎた

2、低Naや脱水状態に陥り、食事摂取が低下した

3、低血糖になった


だけではなく、サイドストーリーとして、


1、HOCM+Afに対してアミオダロンが投与されていた

2、アミオダロンが蓄積し、アミオダロン肝からの肝硬変になっていた

3、肝硬変のため糖新生がうまくいかず、血糖をあげることができなかった


と考えることができます


まとめ

・アミオダロンはいろんな臓器に沈着して悪さをする

→しかもやめてもすぐには消えない


・肝臓の色がおかしいと感じたら、比較を行う

→過去と現在、血管と実質、脾臓と肝臓


・アミオダロン肝はNASHから肝硬変に陥ることがある

→中止することで改善が見込めるので、早期発見が重要

2021年6月15日火曜日

低血糖をみたら

 90歳 女性  主訴:呂律が回っていない、いつもよりぼーっとしている

(※症例は一部、加筆修正を加えてあります)


Profile:HOCMで利尿剤が投与されている寝たきりのフレイルが進行した高齢女性

    コミュニケーションは可


現病歴:入院の3ヶ月前に心不全にて入院

    退院後より少しずつ食欲低下が出現

    口渇の訴えは強く、水分は2000mlほど飲んでいた

    在宅主治医によってフロセミド40mgが30mgに減量された

    その後も食事量は減っていたが、薬は飲んでいた 

    来院4日前からややぼんやりしている印象

    来院当日は呂律不良を認め、救急車にて来院した

既往:HOCM、慢性心不全、Af、鉄欠乏性貧血

内服:DOAC、鉄剤、フロセミド、スピロノラクトン、サムスカ

生活:ADLは寝たきり、車椅子へ移動も全介助


来院時のバイタル

BP110/80,P 80, SpO2  95%,RR18,T 36.5

意識レベル ぼんやりしている印象 

話しかけると会話はできるが、呂律が回っていない

話しかけると開眼するが、すぐに閉眼してしまう

粗大な麻痺はなさそう


血糖測定すると20台

→すぐにブドウ糖(50% Glu 40ml)とVB1をIV

 その後、レベル改善し呂律不良も改善した


身体所見や検査、CTでは感染を示唆する所見なし

コルチゾールや甲状腺値は正常

低血糖時のインスリンの増加なし

血液培養 陰性


血液検査にて低Na血症があった

利尿剤が効きすぎていると判断し、調節

入院後は食事摂取良好となり、元気になった


めでたし、めでたし



でいいですか?


低血糖になった理由がまだ見つかっていませんよね

-----------------------------------------------------------------------------------------------

低血糖の原因


低血糖の原因は、

糖尿病があるかどうか、

インスリンが関与しているかどうかで大まかに分けることができます


糖尿病がある人の場合

・圧倒的に血糖降下薬やインスリンが原因になります


糖尿病がない人の場合

インスリンが高値(正常値)か、低値かで分けます

正確にはインスリンの値だけでなく、血糖の値とインスリンの比やCペプの値も一緒に考えます


インスリンが高い・正常値の場合、

低血糖はインスリンが出過ぎていることが原因の可能性があります


例えば、インスリノーマやダンピング症候群、インスリン自己免疫

インスリン分泌を促進する薬(1a、1c抗不整脈薬、抗うつ薬、キノロン系、ST合剤、NSAIDs、抗マラリア薬など)


インスリンが低い場合、

アルコール、肝硬変、肝不全、敗血症、腎不全、ホルモン系(副腎不全、甲状腺機能異常など)、薬が考えられます



病態で分けるとこんな感じです


ただ、救急の忙しい現場でいろんなことを考えるのは難しいですよね

なので、これだけ覚えておいてください


低血糖の人をみたら

1、低血糖時の採血で血糖とインスリンとCペプを提出する


以上です 笑


これだけ守ってください

そうすれば、後々、鑑別が絞れます


もちろん、低血糖の原因検索も大事ですが、治療することも非常に大事です

低血糖はいち早く改善させなければならない病態なので、

VB1と血糖の補充はすぐに行ってください


ただ、ルートと同時に採血を取りますよね

その採血で、ぜひインスリンやCペプを測定しておきましょう


これが習慣化できたら、


2、次は血液培養をとるか悩んでください

全例にとるべきとは言いませんが、原因がわからなければとってください

文脈次第です


3、コルチゾールは?

コルチゾールも同様です

副腎不全を疑うならとってください


4、甲状腺ホルモンは?

TSHとT3はとってもいいですが、甲状腺異常だけで低血糖にはなることは稀です

クリーゼで下痢で食事とれていないとか、特殊な状況であれば起こり得ます


5、お酒飲んでいますか?

お酒を飲んでいる人は、VB1,12,葉酸の検査を提出し、

補充を開始しちゃいましょう


6、そして、薬の確認です

有名なのは、シベンゾリン、ペンタミジン、ニューキノロン系抗菌薬ですね


7、続いて採血・既往を確認して、腎臓と肝臓の確認です

インスリンは主に腎臓で代謝されます

腎不全になるとインスリンが代謝されず、低血糖のリスクになります


肝不全の場合、グリコーゲンの枯渇や糖新生ができず、低血糖のリスクになります


8、あとはじっくり考えましょう

インスリン自己免疫やインスリノーマなど、インスリンが高いかどうかで、

鑑別が変わるので、入院後はしばらく提出した検査を待つことになります



さて、この方の場合


1、インスリン、Cペプは下がっていました

2、血液培養は陰性でした

3、コルチゾールも正常でした

4、甲状腺も正常でした

5、お酒は飲んでいませんでした

6、薬も低血糖になるものは内服していませんでした

7、腎機能は軽度悪化し、肝酵素は上昇していました

  CTをよくよく見ると、こんな感じでした



※写真はレジデントノートからのものです


どこに異常があるかわかりますか?


2021年6月13日日曜日

東京GIM (前半)

肺胞出血と急性腎不全のプレゼンテーションできた若年男性

→血管炎が疑われる状況でしたが、

 腎生検や眼底所見から結果的に悪性高血圧症だった症例



 肺胞出血と聞くと、血管炎やSLEか?と考え、

 抗基底膜抗体、ANCA、ANAなどなど提出して、

 とりあえずの広域抗生剤で感染症側をワンサイドカットすることが多いです


 できれば、とるもの(採血、生検)をとって、

 すぐにステロイドパルス、エンドキサンパルス、血漿交換!という流れになります


 この症例では抗生剤の投与はしなかったということで、すごいなあ・・・と思いました

 血圧も下げるのも忘れずに行っており、流石でした



 この症例は来院時より著明な高血圧があり、

   バイタルが重要であることを改めて勉強になりました

 実際に患者さんや検査データを目の前にするとパニックになりそうですが、

 バイタルにも注目していきたいと思います

  

(追加解説)

 血管炎以外に薬剤や凝固異常、感染症、肺水腫でも肺胞出血は起こります

 肺の微小血管が破綻すればいいので、原因はたくさんあります


 肺水腫が原因のこともあり、

 肺水腫の鑑別も同時に考えなければなりません

 

 特に今回の症例では右優位であったため、

 右優位の片側性の肺水腫も鑑別に上がりました

 右側優位の急性肺水腫は急性の僧帽弁閉鎖不全症で起こります


 僧帽弁後尖の異常による重症僧帽弁逆流症では、

 逆流が解剖学的に右肺静脈に直接吹き込みやすく、

 右肺のみに肺水腫を発症する場合があります



片側の心原性肺水腫は珍しい症状であるため 、

最初は肺炎などの呼吸器疾患と誤診されることが多いです

適切な治療の開始が遅れ 、その結果、死亡率が上昇します


後部僧帽弁尖の索状破裂による急性僧帽弁逆流は、

片側心原性肺水腫の主な原因と考えられています

患者の命を救うためには、肺炎との迅速な鑑別が重要である

Journal of Cardiology Cases 17 (2018) 8588 本文より

肺炎との鑑別

 



肺水腫を疑った場合は、心雑音をしっかり聞きましょう


 

 実は特殊背景がある場合の肺水腫


 ・腎動脈狭窄による電撃性肺水腫 (flash pulmonary edema)


                   

 参考:心不全のみかた


    ・褐色細胞腫や悪性症候群に伴うもの   参考:褐色細胞腫クリーゼ


                 


 ・妊娠高血圧に伴うもの   参考:妊娠高血圧 

 ・薬剤、違法薬物

 ・鎌状赤血球症のAcute chest syndrome   参考:鎌状赤血球症



 特殊な状況

 ・窒息後:陰圧性肺水腫

 ・アブレーションの数ヶ月後:肺静脈狭窄症

 ・輸血後:TRALI

  ・レプトスピラの治療後


       

高齢者の心不全だけ見ていると、若者の心不全や肺水腫がきた時にびっくりしますね


若年者の急性肺水腫をみた時のポイントは、

心筋炎でないか?

指摘されていない基礎疾患を持っているのではないか?

特殊な状況だったのではないか?

と考えることですね


     

2021年6月11日金曜日

メトホルミン関連乳酸アシドーシス

 鑑別診断

76歳女性での、2型糖尿病、閉塞性睡眠時無呼吸、冠状動脈疾患、駆出率低下心不全等の病歴は、悪心、腹痛、非血性下痢等の評価で参考となる。本例の鑑別診断の最初のステップは、これらの症状を惹起した可能性のある一連のイベントを再構築することである。


最近の医療イベント  

 本患者は、うっ血性心不全管理目的で約3か月前に入院し、利尿剤(トルセミドとスピロノラクトン)処方で退院した。その際体重は127kg4週間前の転倒後、再入院となった時点で、体重は約4kg低下していたことが判明した。BUNと肝機能検査値が以前の入院中の値よりも上昇した。退院後、下肢浮腫の治療目的で、利尿剤のメトラゾンが追加された。  


 この背景を念頭に置くと、現在の急性腎不全状態、悪心、下痢症状等が考慮可能となる。入院直後では、BUNCrの著明増加が判明した。  


急性腎不全   

 本患者の急性腎不全の原因は?腎不全の原因は、通常、①腎前性②内因性腎疾患、と③腎後性3つのカテゴリーに分類可能である(表2)。






腎臓損傷による腎後性要因(③)は、解剖学的理由から一般的に女性よりも男性に多い。本患者での腎超音波検査の結果から、両側性水腎症と腎結石症は除外された。これらから、本患者の急性腎不全の原因は腎前性か、内因性腎疾患なのかを検討する必要がある。  


● 腎不全の腎前性原因   

 本患者は、「糖尿病とうっ血性心不全の病歴があり、嘔気、腹痛、非血性下痢等の評価目的で来院し、利尿剤も増量された腎前性腎不全を呈す入院となった76歳の女性」最初は要約される(Ⅰ)

 

 この枠組みは、臨床症状とCr増加からみて論理的であるが、嘔気、腹痛、下痢等は、利尿薬誘発腎前性腎障害とは合致しないし、BUN/Cr比率は20未満であり、尿中Na 20mmol/l以上で、FeNa1%を超える。利尿剤は来院24時間以上前に中止されたため、FeUNよりはFeNaが計算される。


 全体として、これらの所見は急性腎障害の腎前性原因(①)とは合致せず、内因性腎障害(②)をより示唆する


● 内因性腎疾患  

 内因性腎疾患の原因には、1:糸球体疾患2:急性尿細管壊死3:急性間質性腎炎等のカテゴリーに分類できる。しかし、本患者の年齢、腎障害の時間経過、身体所見正常、尿中赤血球欠如、好酸球増加欠如等は、糸球体疾患、アレルギー性、自己免疫性、感染性、浸潤性急性間質性腎炎(infiltrative ATN)とは合致しない。

したがって、次のように症例をまとめなおしrefine my summary statement)てみる(Ⅱ)


「本患者は76歳女性で、糖尿病とうっ血性心不全の病歴を有し、嘔気、腹痛、非血性下痢等の評価目的に来院し、利尿薬の大量(aggressive)使用により急性尿細管壊死を有することが判明した」と。  



胃腸症状と急性尿細管壊死の整合性(reconcilation  

 最終的診断に近づいていると思うが、急性尿細管壊死に合致しない胃腸症状については未説明である。本例では、胃腸症状と急性尿細管壊死を別々に評価し、両方に当てはまる可能性のある診断を確認する。 

急性尿細管壊死を始めとして(starting)、「利尿薬過剰使用による急性腎不全」との作業仮説である。

乾燥粘膜と、通常以下の低体重値は、過剰利尿を支持する。本患者は、メトプロロールにより頻脈反応が抑制されているか、日頃の心拍数よりも現在は頻脈である(どちらかの)可能性がある。腎梗塞も考慮されるが、本患者の腎機能障害の程度からは、両腎の梗塞でないと説明不可能であり、腹痛なく、(腎梗塞は)考えにくい。


 身体所見、X線所見、検査値等からは、腎結石症水腎症腎盂腎炎なども考えにくい。未整合の患者症状の1つの側面は、酸塩基平衡(障害)である。アニオンギャップAG)が29mmol/lであり、代謝性アシドーシスが存在し、AG(増加型)代謝性アシドーシスに合致する。


 乳酸値が著明上昇しており、乳酸アシドーシスが原因のAG(増加型)代謝性アシドーシスの可能性がある。 Wintersの式は、代謝性アシドーシスとの関連で呼吸代償によるPaCO2分圧の予測式である。Wintersの式(PaCO2 = 1.5×[HCO3-] + 8)に基づくと、本患者の代償PaCO241 mmHgとなる必要がある。PaCO2実測値の57 mm Hgよりも著明に低下しており、呼吸性アシドーシス合併concurrent)も存在する。合併呼吸性アシドーシスは、閉塞性睡眠時無呼吸による慢性的二酸化炭素貯留の可能性や、差し迫る高炭酸ガス性呼吸不全の警告の可能性等があるだろうか?  


 酸塩基平衡異常の判断には、重炭酸の変化(Δ[HCO3-])に対するAG変化比(ΔAGであるデルタ-デルタ(Δ/Δ)を判断する必要がある。このデルタ-デルタ([AG–12]÷[24– HCO3-])は、代謝性アシドーシスまたはアルカローシスの同時発生の存在を示す可能性がある。本患者のデルタ-デルタは2以上で、代謝性アルカローシスの併発を示唆している。


 代謝性アルカローシスは、おそらく①腎クリアランス低下、または②利尿剤に起因するcontraction alkalosisが原因である。検査結果を振り返ると、重炭酸塩が漸増(徐々に増加)しており、contraction alkalosis進行が現実味を増している(leading weight to


 さらに症例要約を洗練すると、「本例は糖尿病とうっ血性心不全を有し、嘔気、腹痛、非血性下痢等の評価目的に来院し、乳酸アシドーシス急性尿細管壊死が認められ、過剰利尿を呈していた」と提示できる(Ⅲ)。   


(本患者の病態の)臨床仮説として急性尿細管壊死+乳酸アシドーシスが正しければ、本患者に起こったことが説明可能であり、説明を試みるため患者の病歴に戻る。長期の腎低灌流と急性尿細管壊死を来す利尿剤治療を強化(escalating)した経過(timeline)は道理にかなう。セファロスポリン-セフトリアキソンが使用されたがこれには腎障害惹起の報告がある1,2尿路結石形成による腎後性と記載が、セフトリアキソンは、今回入院の最低9週間前に投与されたので、急性腎障害の説明にはならない。


 新規薬が無関係の場合、以前の薬剤はどうであろうか?再検査や、利尿剤増量時の内服薬変更については不明である。処方薬に対し腎機能による調整を必要とするのか?または急性尿細管壊死や乳酸アシドーシスを惹起する毒性作用に関連しているのか? 


 アスピリンアロプリノールエノキサパリングリピジドロラタジンメトホルミン等はすべて、これらの①、②の少なくとも1つを満たしている。これらの薬剤中、まずメトホルミンが乳酸アシドーシスの第一被疑薬候補となる(stands out immediately as the likely reason)ことが即座に考慮される


 ウイルス性胃腸炎の同時発症というより、メトホルミン毒性作用による乳酸アシドーシスにより嘔気、腹痛、下痢等」を説明できる可能性が高くなる。低灌流を特徴とするA型乳酸アシドーシスとは異なり、メトホルミンによるB型乳酸アシドーシスは、①乳酸産生増加②肝糖新生阻害に起因する。胃腸症状に先行する腎機能障害の経過は、メトホルミン使用による毒性作用の発症と合致する。 


最後の要約として次のように提案する。「本76歳女性患者は、糖尿病とうっ血性心不全の病歴を有し、嘔気、腹部痙攣、非血性下痢等の評価目的で来院し、利尿過多時に急性尿細管壊死が判明し、乳酸アシドーシスによる混合性AG代謝性アシドーシスも呈し、これらはメトホルミン毒性と合致する」(Ⅳ)


 血中のメトホルミン測定で本仮説は検証可能であるが、ほとんどの場合不要であり、メトホルミン値の確認により治療を開始することはない。メトホルミンは2型糖尿病の管理に安全かつ効果的であると一般に考えられている。eGFR 30ml//1.73m2未満では禁忌であり、eGFR3045ml//1.73m2では一般的に推奨されない


 治療中の患者では、リスクとeGFR 45ml//1.73m2未満の場合、治療継続による利点の再評価が必要となる。腎機能正常な2型糖尿病患者での乳酸アシドーシス発生率に比し、治療を受けていた患者、eGFR3060 ml//1.73m2他のリスクを有する患者等では、乳酸アシドーシス発生は実質的には必ずしも大きくないためという理由も一部にあるため、注意深いメトホルミン使用が提唱されている4


 さらに、メトホルミン使用による乳酸アシドーシス関連死亡率は一般に時間経過で減少するとの報告もある5。しかしながら、これらガイドラインを個々の患者に適応する際には調整が重要であり、クレアチニンクリアランスの突然の変化リスクを考慮すると、当患者のような場合、メトホルミン使用は躊躇する。


最終的に、薬と毒の違い(を決めるの)は用量である。



臨床的印象

76歳女性が、慢性腎疾患(CKD)に重複した急性腎障害(AKI)について相談しているのを私は知りました(もともとのCr1.71 mg /dl)。患者は最近、積極的利尿剤治療を受けていた。FeNaの上昇(3.8%)を考慮して、AKIを内因性急性尿細管壊死と診断した。


また、AG(増加型)代謝性アシドーシス(AG 29mmol/l)、呼吸性アシドーシス(PaCO257 mm Hg)、代謝性アルカローシスからなる三つの酸塩基平衡異常を有していた。AG19mmol/l増加(10mmol/lから)と重炭酸6mmol/lのみの低下(28mmol/l22mmol/l)等の酸塩基平衡異常から代謝性アルカローシス(③)と診断され、最近の利尿剤使用に起因するものと考慮された。  



AG(増加型)代謝性アシドーシス(①)所見は興味深い。この状態は、一部は尿毒症酸蓄積を伴う急性尿細管壊死によるものであり、一部は乳酸アシドーシスによるものであった。ショックや低血圧がなく、A型ではなくB型の乳酸アシドーシスと結論付けた。急性腎不全も呈したことから考慮すると、原因はメトホルミン起因と推測された。メトホルミン値測定目的で採血したが、結果判明までは数日かかることは十分認識していた。



臨床診断:利尿剤使用による急性尿細管壊死を呈したメトホルミン毒性作用




 


診断テスト

治療薬のモニタリングにより、薬物血漿中濃度を治療濃度域内に用量調整可能であり、モニタリングにより、毒性作用のリスク低減と薬物有効性最大化が可能となる。 血漿メトホルミン値は、高速液体クロマトグラフィーと質量分析によって外注検査(referrence laboratory)で測定され、検出感度は0.1mg/l(以上)である。


入院2日目の血漿メトホルミン濃度は16mg/lと高値かつ乳酸アシドーシスであり、メトホルミン関連乳酸アシドーシスの診断と合致する。  メトホルミンは半世紀以上使用されている(1957年~:)が、血漿中濃度評価のための用量反応試験が不足しているため、治療範囲は未決定である。 


2016年の文献レビューでは、65の「治療」血漿メトホルミン濃度や範囲が特定された。引用された最低値と最高値は、それぞれ0mg/l1800 mg/lであり、大部分は0.14 mg/lにあった6メトホルミン関連乳酸アシドーシスは、「治療域」のメトホルミン濃度患者でも報告されているが、個々の患者には併存疾患が様々あるため、メトホルミン単独の乳酸アシドーシスに起因させることは困難である7


外注検査室では、治療域が約12 mg/lであり、乳酸アシドーシスは一般に5mg/lを以上で発生すると報告されている 



検査診断   メトホルミン関連乳酸アシドーシス

 


マネージメントの議論

検討した次の重要な臨床的決定は、腎代替療法(RRT:renal replacement therapyについてであった。AKIを考慮すると、緊急RRTの絶対的な理由はなかったが、一方で未治療のメトホルミン関連乳酸アシドーシスでは、死亡率が3050に達する8


メトホルミンは、タンパク結合(率)が最小限(体液)分布量が大き小分子8であるため、透析除去可能である。そこで、一時的血液透析カテーテルを留置し、RRTを進めた。  


次のステップは、RRT法の決定であり、メトホルミン関連乳酸アシドーシス患者に血液透析を第一選択とした以前の報告(publication9を参考にした。メトホルミンは、数時間の血液透析で簡単に除去可能であるが、血液透析単独ではメトホルミンの全除去は困難であり、蓄積メトホルミンが赤血球内に出現し、血液透析終了後に大きなリバウンドする可能性も明らかである。


したがって、本患者では、最初の4時間の血液透析(HD)と、それに続く48時間の持続的静脈静脈血液濾過(CVVHF)を施行した。RRT開始48時間後に測定されたメトホルミン値は、0.18mg/lであった。 


重症B型乳酸アシドーシスの患者でのメトホルミンを除去治療法はHDが好ましいが、血行動態の不安定な患者ではHDが不可能な場合がある。この場合、CVVHF(持続的静脈血液濾過)やCVVHD(持続的静脈血液透析)など、血行動態への影響の少ない他のRRTが利用可能である8。このよう(CVVHFCVVHDなど)な方法では、メトホルミン除去は緩徐であるが、救命は可能である。 メトホルミンは、2型糖尿病患者に対する有効な血糖コントロールのために臨床診療で広く使用されており、その使用は、eGFR 30ml//1.73m2までの低値まで(適応)拡大されている。このような患者(群)は、本患者と同様に、AKIを起こしやすく、eGFR低下を来し、メトホルミンの蓄積とそれに続くB型乳酸アシドーシス惹起の可能性が懸念される。

 


その後の経過

48時間の透析治療後、腎回復は顕著であった。入院経過は肺炎と尿路感染症合併により複雑化し、重症化の際、気管内挿管による短時間機械的人工呼吸が施行され、抗菌薬により回復した。その後、迅速に気管チューブ抜管と透析カテーテルを抜去した。メトホルミンは中止されたままであったが、その他の以前自宅での服用薬は最終的に再開となった。継続的ケア目的のリハビリセンターを無事に退院した。

 


最終診断  メトホルミン毒性作用による乳酸アシドーシス


-------------------------------------------------------------------------------------------------------
はい、ということでメトホルミンの乳酸アシドーシスの解説しかありませんでした

メトホルミンの乳酸アシドーシスに出会ったことはありませんが、
予後は未治療だとこんなに悪いのですね・・・


改めて高齢者に出すときは注意すると共に、早期発見に努めようと思いました



しかし・・・VB1は??? 笑


VB1の解説があれば、★が増えたのに・・・解説して欲しかったです

 

昼カンファレンス 〜名言が渋滞中〜

今回の症例は救急外来での動き方がディスカッションポイントでした 終盤で怒涛の名言ラッシュがありました   83歳 女性 主訴:意識障害 (※症例は一部修正や加筆を加えてあります) 昼に救急車で来院された症例です 救急隊より 83歳 女性の方 嘔吐と意識障害の主訴で救急搬送お願いし...

人気の投稿