2019年1月31日木曜日

肺塞栓

肺塞栓は苦い思い出がある人が多いのではないでしょうか

解離ほどではありませんが、診断が難しい疾患の1つです

診断が難しい理由は、症状が非特異的であり、

軽症から重症まで幅広いバリエーションがあるためです


国試に出るような、整形外科術後、初めて歩き出したら、

倒れてショックバイタル

とかなら、誰も迷いません

実際は、外来に咳が続くという主訴できて、

咳止めで様子を見ていたら、他科でたまたま造影CTが撮られて、

肺塞栓だったとか

失神が主訴できて、肺塞栓だったとか、

20歳の男性が、極度の低酸素血症できたら、

肺塞栓だったとか

(後で問診すると、車の中で三日間ずっとゲームしていたらしい)


原因がわからない喘鳴で、肺塞栓だったとか


非典型的なプレゼンテーションの肺塞栓をいかにピックアップするかというのは、

臨床家にとって非常にチャレンジングな問題です


ですが今回のまとめは、診断側ではなく、

診断後の治療です


肺塞栓は思いついてしまえば、診断まで悩むことはありません

流れは一直線です


病歴から疑えば、首をみて、

頸静脈がしっかり張っていて、

胸の音がきれいで、レントゲンがきれいで、低酸素と頻脈なら、

だいたい肺塞栓です

緊張性気胸と心タンポはレントゲンやエコーで除外できます


後は血液検査でトロポニンとBNPや凝固と一応、Dダイマーとって、

造影CTへいって、診断を確定させます


大事なのは、循環動態が破綻している場合、CTにいけない場合があるので、

その場合は、肺塞栓らしさが、超音波で高まれば、

ヘパリンうって、循環器Dr callです


Massiveな肺塞栓はいつ心臓止まるかわかりません

止まったらPCPSなので

早めに循環器を呼ぶことをお勧めします




治療の戦略で大事なのは、

循環動態が破綻しているどうかと、

右室負荷初見があるかどうかです

循環動態が破綻していれば、血栓溶解が1st choiceです


循環動態が破綻していなければ、抗凝固を開始して様子を見ますが、

慎重に経過をみて、循環動態が破綻した場合は、

すぐに血栓溶解ができる準備をしておきます

血栓溶解ができない症例の場合は、カテーテルで吸引や壊しに行きます



肺塞栓はぐるぐると悪循環に陥る疾患なので、

悪循環を断ち切らないといけません




悪循環を断ち切るためには、根元から抑えるしかありません

それ以外は全て対処療法的な感じになるので、

できるだけ早期に血栓が溶けると、この悪循環を止められます

なので早期診断、早期治療が大事な疾患です













2019年1月8日火曜日

ちゃぶ台返し系キーワード

救急あるあるです

救急していて、発熱で来た人に対して、

問診に時間をかけて、ある程度、頭の中で鑑別疾患が思い浮かんで、

よし、診察しようかなと思ったら、、、

そういえば、1週間前にタイ行きました



えーーーーーーーーーーーーー


早く言ってよ

今までの問診と鑑別疾患が無になる瞬間です

そうならないように、ある程度早めに聞いておくべき、

キーワードがあります


それを、「ちゃぶ台返し系キーワード」と名付けています

有名なのは、発熱の時の海外渡航歴です

ですが他にも色々あります

豆炭ゴタツも一酸化中毒発生マシーンなので、

寒い時期の高齢者には早めに聴取します


若い女性であれば、妊娠はどんな主訴でも聞いておいたほうが無難でしょう

薬や検査の兼ね合いもあるので


高齢者であれば、とりあえず、薬から考えます


高齢者診療のスキルを上げたければ、

薬の副作用に強くなることです




もちろん、本当に「そういうことは早く言ってよ」とか

言ってはダメですよ



これらの他にも、もちろん色々あります

胸痛できた若い男性が

自傷行為で叩いた所が痛かった

とか

ふらふらするといって来た中年女性のHbが5で、

結果、元看護師さんで、

自傷行為で点滴の針を自分で刺して、

瀉血していた

とか


早く言ってよーってなりますが、

自傷行為や性行為、お金、アルコールは

ちゃぶ台返し系とは思っていません

そもそも話したくない内容ですので、

聞いても正直に語ってくれない可能性があるからです


これらは、聞き方にコツや信頼関係が必要なので、

やや難しいです



まとめると、病歴をとるときに、考えておくことは、

この人は一体何を語っていないんだ?

ということを意識しながら聞きます


集めた情報だけで鑑別疾患を組み立てますが、

そこに矛盾が生じた時に、

何かを隠している、もしくは語っていない

と思う癖をつけると、ちゃぶ台返さなくてすみます




総合診療医が見た「集中治療」の世界

なかなか、目指したいゴールに到達できず、 途中で方針やゴールの軌道修正が迫られる それは一般病棟でもICUでも同じ ICUは何といっても細かい! 1時間、患者さんを見ていないと、ガラッと景色が変わっていることもしばしば 手術のない患者さんの全身管理をしている麻酔科医のようなイメー...

人気の投稿