2017年12月3日日曜日

蚊による感染症

蚊による感染症は色々あります

温暖化の影響で蚊の活動日数は増えており、活動域が増えています

ヒトスジシマカは日本にもいるので、

今後も一時的にデングだけでなく、

ジカやチクングニアも国内発生する可能性はあります

しかし蚊は冬は越せないので、国内でプチブレイクしても徐々に終息していきます


今後も国内発生のデングのように、

本来は輸入感染症だと思っていたものが、毎年のように出てきてしまうと、

鑑別として、毎回考えないといけなくなり、気が抜けなくなります



輸入感染症は初期のプレゼンテーションはほとんど同じで、

区別できません

それでも疾患ごとに特徴があるので、その特徴を捕まえる努力をします




輸入感染症もそうですが、自分の枠組みに落とし込むことは、

臨床ではよく行われることです

枠組み、フレーム、カテゴリーなど

色々な言われ方をします


知識の整理に非常に有用で、

記憶にも残るので、万能と思われがちですが、

これにはピットフォールがあります


枠組みに入れてしまうと、そこから抜け出すことができなくなり、

鑑別から漏れてしまったり、

間違いに気がつかない事があります


アインシュタインの言葉にもあるように、

『常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションである』の通り、

自分たちが信じて疑わない医学的な常識とは、

もしかしたらただの偏見かもしれません


数年後には誰もやっていないような治療を、

もしかしたら今、やっているかもしれません


数年後には日本でもマラリアが流行しているかもしれません


今までに身につけた知識はいつまでも使えるものではない

というくらいの気持ちを持っておかないと、

自分の常識に縛られてしまい、失敗することがある

と最近実感します


例えば、

潜伏期が半年というマラリアがある

マラリアは慢性感染することがあり、いつ血液をみても原虫がいる人がいる

マラリア(3日熱)は北朝鮮でも流行している

といった事実は、にわかには信じがたいのですが、存在します


特に輸入感染症の分野は情報のupdateが凄まじく、

常識という名の昔の知識にとらわれない、

柔軟な頭で考えることが大事になります




輸入感染症の難しいところは疾患のゲシュタルトを描けないことだと言われています

有名なマラリアでさえ、日本では何例も経験できるものではありません

疾患のゲシュタルトは教科書的な知識では、身に付けることはできず、

実際の患者さんを何例もみて身に付けるものです


なので、研修医の間は、

教科書何冊読んだということを自慢するのではなく、

何人患者さんを診たということの方が、はるかに自分のためになります

ただし、よく耳にするのは、

何人さばいた、何人こなした、流すという言葉です

こういった気持ちで患者さんを診ている限りは、

自分の経験になりませんので、一例一例を大事にしてください


輸入感染症も多くの症例には出会えないからこそ、

渡航歴のある人に外来で出会った時には、

問診をたくさんとらないといけなくて、

面倒臭いなあと思うのではなく、

勉強させてもらえて、ありがたい

という気持ちで診療するのがよいかと思います



2017年12月2日土曜日

慢性下痢

 長引く下痢は鑑別が多く、難しい分野の一つです

夜寝ていても起こされるような下痢は器質的な疾患を想起しますので、

1日何行かと、寝ていても下痢をするかという問診は重要です


慢性下痢であれば、色々聞く前に、

鑑別がガラッと変わってしまうので、

まずは海外渡航歴を聞くことから開始です

海外渡航歴があれば、寄生虫感染症を疑いたくなります

渡航歴がなければ、免疫不全でなければ、非感染性を疑いたくなります


病歴ではなかなか鑑別できないので、入院精査となることが多いですが、

内視鏡以外に戦略を持っておく必要があり、

内視鏡の時にも、生検をお願いしたり、便汁を採取すべきかを検討しなければなりません


入院でまずすることは、本当に下痢しているかどうかを確認することです

そして自分で下痢便を見てみます

色で鑑別が進むこともあります

入院患者さんの下痢の匂いや色で、看護師さんが、

CDIではないかと教えてくれることもあります

えんどう豆様の下痢は腸チフスを示唆します

(注意:腸チフスは下痢よりは、便秘の方が多いです)

トマトジュースのような血便は腸管出血性大腸菌を疑います

白色であれば、胆汁の排泄障害を疑いますし、

黒色便であれば、実は消化管出血かもしれません


色で鑑別が進むことは稀ですが、見落としていると恥ずかしいので、

ちゃんと見ましょう







2017年11月23日木曜日

晩期関節リウマチ

関節リウマチはリウマトレックスや生物学的製剤といった薬が出てきたおかげで、

早期に見つけて、治療介入を早くすることで、

関節を守ることもできるようになってきました


バイオ製剤の恩恵を受けられるメインの人は、これからリウマチになる人々です

しかし、

これまでリウマチと戦ってきて、変形しつくしてしまい、

炎症もおさまってしまっているリウマチ患者さんにとっては、

バイオ製剤はあまり恩恵がありません


最近のガイドラインでは早期診断!早期治療!が叫ばれておりますが、

一方でこのような、晩期の関節リウマチの方はどうしたらよいのでしょうか


晩期関節リウマチ

晩期の関節リウマチをどうみていくかは、今後の高齢化してきた

日本のトピックでもあると思います

非がん患者さんの緩和ケアについての啓蒙が進んでおり、

心不全や末期腎不全、COPD、認知症については語られることも多くなってきました

ですが、リウマチ患者さんの緩和ケアについて、

述べられているものは見たことはありません


実は非常に悩ましい分野だと思っています


関節リウマチの治療は非常にポリファーマシーになりやすいです

DMARDsが複数あったり、

鎮痛薬として、NSAIDsやアセトアミノフェンが入ったり、

骨粗しょう症予防でBP製剤や活性型VDが入ったり、

ステロイドをつかったことがある人は、DMになってしまっていたり、

他の併存疾患で薬を内服していたり、

と圧倒的に薬が増えやすいです


関節リウマチのような炎症性疾患の痛みは麻薬よりも、

DMARDsの方が効果があり、

簡単に中止することもできません

なので、薬の中止のタイミングは非常に迷います




リウマチ患者さんも当たり前ですが、認知症になりますし、

年をとって死んでいきます

死因はリウマチに伴う間質性肺炎やアミロイドーシスといった

古典的な合併症ではなく、

心筋梗塞や脳梗塞、呼吸器感染症、がんといった

普通の死因で亡くなることがほとんどです



なので、晩期の関節リウマチの患者さんを診る時は、

3つの視点が必要だと考えています





①Life(生活)を守る

リウマチで困るのは関節の破壊です

関節の破壊を食い止めることが、治療の目標の一つです

関節が破壊されると、仕事や家事、趣味に支障をきたします

趣味がなくなると、元気がなくなり、ADLが落ちたり、

精神的に落ち込んでしまう人が多いので、

趣味や仕事は生活の中で非常に重要な位置を占めています


生活が守れているかどうかは、ADLやIADL、AADLといった項目で、

一般的には確認するのがよいです

(1) 基本日常生活動作(BADL)
起居動作、移動動作、食事動作、排泄動作、整容、入浴動作、コミュニケーション等の基本動作

(2) 手段的日常生活動作(IADL)
買い物、調理、洗濯、電話、薬の管理、財産管理、乗り物の乗り方等の日常生活上の複雑な動作

(3) 拡大日常生活動作(AADL)
生活の充足度、満足度、時間の使い方や過ごし方、知人との交流、趣味


関節リウマチの治療効果判定には、mHAQというものもあり、

上記を組み合わせたような指標です


なので、生活を守れているかどうかは、関節の機能がうまく保てているかどうか、

ということであり、リウマトロジストとしての腕の見せ所でもあります


②Life(命)を守る

関節リウマチの患者さんは一般の人よりも寿命が短いことが知られています

その原因は古典的な合併症というよりも、

脳梗塞や心筋梗塞、がん、呼吸器感染症といった原因で亡くなることが多いです

そのため、関節だけよく見ている場合ではありません

関節は守れたが、命は守れなかったでは、元も子ももありません


関節予後と生命予後は分けて考える必要があります



高血圧や糖尿病、脂質異常症の管理をしたり、

感染症の予防のため、予防接種を推奨したり、

転倒予防や骨折予防のため、骨粗しょう症の治療をしたり、

リウマチの治療以外にも、たくさんやることがあります

なので、外来が基本のリウマチ診療は、

外来が非常に忙しいのが特徴です


リウマチ以外の診療も適切にこなせるリウマトロジストは、

スペシャリストであり、ジェネラリストでもあります


③Life(人生)を守る

上の2つがクリアできているリウマトロジストは多くいます

ですが、人生を守れているリウマトロジストはそう多くはないと思います


なぜなら、リウマチ科の先生は基本は専門職であり、人数も少ないため、

落ち着いているリウマチ患者さんや寝たきりで看取る方針になった場合は、

自分で管理せず、開業医の先生にゆだねたり、

一般の内科の先生にお願いしているケースが多いと思います


または、癌になったり、心筋梗塞でなくなるということも多く、

最期は手を離れてしまうことも多いです


なので、「リウマチ患者さんの緩和ケア」がなかなか議論されない背景は、

上記のような理由で、

そもそも、リウマトロジストがそういった看取りに立ち会う機会が少なく、

議論されてこなかったのではないかと思ってしまいます


ですが、数年の経過でリウマチの患者さんをみていると、

最初は躍起になってコントロールをよくしようと頑張ったりしていましたが、

認知症が進行してしまったり、

フレイルが進行し、リウマチどころではなくなってきた患者さんも大勢います


そういった方の場合、リウマチの治療以上に大事なことがあります

それは、治療ではなく、人生のサポートです


ADLや認知機能の低下に応じて、適切な支援を検討したり、

ACPをして、残りの時間をどう過ごすか家族と相談したり、

最期を苦痛なくやすらかに看取ったり、

このように、家庭医や緩和医としての知識が必要になってきます



本物のリウマトロジストはこの3つのLifeが守れるDrだと思います


が、さすがに忙しい外来でそこまでできないと思うので、

家庭医の先生と一緒にタッグを組むのがよいのかと思います



晩期関節リウマチ
・寿命は一般の人よりも短いが、
古典的な合併症で亡くなる人は少ない
・心筋梗塞や癌、呼吸器感染症で亡くなることが多い
・3つのLifeを守るという自覚をもって診療する




性行為感染症

性行為感染症(STI)はカンファレンスではよく議論になりますが、

実臨床で毎回疑えている人は少ないのではないでしょうか

気が付いた時にはすでに遅いこともあるのが、

性行為感染症の怖いところです

診断の遅れが、感染の拡大につながります


HIV患者さんは生涯に4-5人に感染を拡大するといわれています

なので、一人のHIV患者さんを見つけたということは、

感染したかもしれない5人を救ったことになりますので、

とてもインパクトの多い疾患です

経済的にも社会的に本人にとってもHIVは非常にインパクトがあります


HIVは悪性腫瘍よりも難しい診療が求められます

それは医学的側面はもちろんですが、

それよりも告知やフォローが、

HIVの場合は非常にsensitveになります


HIV患者さんは誰にも相談できないのが、つらいと言われています

癌であれば、友人、家族、恋人に相談することもできますし、

同情されることも多いです

ですが、HIVの場合は、

社会的に理解が進んでいるとは決して言えない疾患であり、

差別的な目で見られてしまうことが多く、

誰にも相談できず、職場にも言えず、

一人で思い悩んでしまう人が多く、

非常にうつ病の合併も多いと言われています

唯一の相談相手が、医師であるという人も多いようです


梅毒は性行為感染症の王様的な存在でしたが、

HIVは感染症の王様的な存在です

HIV患者さんは最初から、感染症科の先生のところにはいきません

ある日、普通の内科医のところに来ます

STIを疑うポイント

外来をしている内科医は、STIに対して、

常にアンテナを張っていなければなりません


ひっかけるポイントは

病歴、既往歴、渡航歴、仕事、身体所見が挙げられます



どこかでひっかかったら、

STI関連の問診を仕切り直します

聞き方は

①まずは性行為関連の病歴を聴取する理由や前置きをします

・発熱(関節炎、皮疹などなんでもOK)があるということは、体の中に細菌やウイルスが感染している可能性があります
そういった病原菌は体の外から中へ入ってくることが多く、
入ってくる場所も限られてきます。
口や鼻、尿から入ってくることが多いですが、性行為などでも体に入ることがあります
なのでお聞きしますが・・・・

・原因がよくわからない発熱(関節炎、皮疹などなんでもOK)の方、
皆さまにお聞きしているのですが・・・

・咽頭痛を起こしたり、リンパ節を腫れさせる病原体として、
EBV、CMV、HIV、コクサッキー、エコー、HSV、マイコプラズマなどが考えられます。
お話しからはどの病原体かを絞るのは困難なため、検査を行わせていただければと思います。ただし、測定できるウイルスが限られており、
EBVやCMVやHIVはすぐに検査で調べることができますので、
調べさせていただいてもよいでしょうか



②実際聞くことは5P

Partners:パートナー
相手の性別、人数(直近1年間)、パートナーが自分以外のパートナーがいるか

Practices:行為の詳細
oral、anal sex、コンドームの使用

Prevention of Pregnancy:妊娠の予防の有無
ピル服用、リング、殺精子剤

Protection from STI:
性行為感染症から身を守るために何かしているか
コンドームの使用

Past history of STI:STIの既往
過去の既往はあるか、パートナーにSTIの既往があるか




2017年11月19日日曜日

足の痺れマップ








痺れマップ

痺れマップ

痺れは難しい症候群の一つで、どう考えてよいものか、

よくわかりませんでした


そこで、

専門医の先生に習った目からウロコのまとめ方です

頻度と神経伝導速度が診断に必要かどうか、

で分けると非常にしっくりきます

コンサルトしないといけない痺れと

コンサルトしなくていい痺れにも分けられるので、

非常に分かりやすいです



基本的に①以外はコンサルトしてもokです

あとはそのスピードです

痺れも急いで、コンサルトしたほうが病態が隠れているので、

気をつけましょう

特に血管炎の場合、ステロイドの治療の時期が遅れると、

不可逆になることもあるので、原因不明で抱え込まないように注意しましょう






2017年11月15日水曜日

膀胱に薬使ってみました

膀胱がしていることや神経がしていることが分かっても、

実際にできることは限られています

膀胱に使える薬はそう多くはありません

これらを上手に組み合わせることで、

症状緩和を目指します

ただし、アセスメントのないまま、症状緩和に走ることは危険です


良識ある内科医なら、悪寒戦慄している人に、アセトアミノフェンだして、

帰宅させませんよね


過活動性膀胱のような頻尿や尿意切迫感があったとしても、

膀胱炎かもしれないし、

前立腺炎や前立腺肥大症かもしれない

まれな間質性膀胱炎の可能性だってあるし、

最悪、膀胱がんのこともある


とりあえず、

症状緩和で安易に抗コリン薬を出して、数日は症状とれても、

もともと残尿が多い人だと、数日後に尿閉になってしまう可能性もあります

薬は上手に使いましょう

そして原因にも思いをはせましょう


畜尿を手助けする抗コリン薬や
β受容体作動薬




出口を広げるαブロッカー

排尿しやすくなると、

尿意切迫感や切迫性尿失禁といった畜尿症状にも有効




排尿を手助けするコリン作動薬



症状がうまく分類できれば、

薬も何が必要かが分かるはずです

上記の薬はあくまで、対処療法です

根本の原因(膀胱炎etc)が分かれば、そちらにアプローチしましょう


若ければ、骨盤底筋体操も有用です

薬物療法以外に、まずは非薬物療法でどうにかならないか試してみることも重要です


排尿障害

内科医は耳鼻科や皮膚科、泌尿器科、精神科が苦手な人が多い印象で、

苦手というよりは、手を出さない人も多いです

でも、手を出さない限り、勉強意欲もわかないので、

できるだけ自分で考える努力はした方がよいと思っています

「うちの科ではありません」とは極力言いたくないものです

専門がないからこそ、患者さん一人一人の専門家を自負するのであれば、

その患者さんのニーズに答えなければなりません


地域で内科医をやる以上は、

苦手な分野を作らない方がよいでしょう

今回は泌尿器トラブルです

膀胱の機能

膀胱は当たり前ですが、

①尿をためて

②尿を出す

ことを生業としています


尿をためることを「畜尿」といい、

尿を出すことを「排尿」といいます


排尿のトラブルで起こる症状を分類すると3つに分けられます

なので、排尿のトラブルがある人をみたら、どれに分けられるか考えましょう


①畜尿症状

膀胱には通常300-400mlの尿を、

途中で漏らすことなく、溜めることができます

溜まったら、脳に「たまってきたよ」と教えてくれます

これが通常の畜尿の過程です


問題が起こると、

膀胱には通常300-400mlの尿をためられなくなる
⇒頻尿

途中で漏らしてしまう
⇒尿失禁

あまり、溜まっていないのに、脳に「たまってきたよ」と教えてくれる
⇒尿意切迫感:過活動性膀胱

といった症状を引き起こします


・昼間頻尿:昼間に8回以上排尿がある
・夜間頻尿:夜間に1回以上排尿がある
・尿意切迫感:我慢できない尿意が急に起こる
・尿失禁:知らない間に尿が漏れる
・切迫性尿失禁:尿意切迫感と同時に尿がもれる
・腹圧性尿失禁:腹圧がかかった時に尿がもれる
・混合性尿失禁:上記ふたつが合併
・溢流性尿失禁:膀胱に尿が充満し、抵抗が弱い尿道から出てくる
 ⇒排尿障害も合併しており、最もひどい病態
・機能性尿失禁:ADLが低下して、トイレに間に合わない

などが挙げられます。


②排尿症状

排尿をする時には、排尿筋が収縮し、

膀胱の出口の外括約筋が弛緩して、

尿が出ていきます

そのため、出口の抵抗が上がるような、

前立腺肥大症の症状を想像するとよいと思います

膀胱の排尿筋の収縮低下も原因になります

・尿線分割
・尿線途絶
・尿勢低下
・排尿遅延
・腹圧排尿
・終末滴下

などが挙げられます

③排尿後症状

・残尿感
・排尿後滴下


この3つが、下部尿路症状(LUTS)と呼ばれています

漢字ばかり並ぶと、難しくみえますが、

あまり難しいことではないです


心臓も膀胱も筋肉の塊で、神経に支配されており、

適量たまったら、出すだけの臓器です

うまく内容物をためることが出来なければ、

心臓の場合、拡張不全と言われ、

膀胱の場合、畜尿障害と言われます


内容物をうまく押し出すことが出来なければ、

心臓の場合、収縮不全といわれ、

膀胱の場合、排尿障害といわれます


機能が破綻すれば、

心臓は心不全といわれますが、

膀胱は膀胱不全とはいわれません


膀胱の機能が破綻するというのは、どういう状況かというと、

尿意を強く訴えていた過活動性膀胱の人が、

膀胱の過剰な収縮の末、

膀胱の筋肉が徐々に疲れていき、

低活動性の膀胱となり、

ついには溢流性尿失禁の状態になってしまった

というようなストーリーでしょうか


溢流性尿失禁は膀胱の機能としては、破綻しています


LUTSに強くなる

外来をしていると、LUTSで悩んでいる人はたくさんいます

排尿のトラブルをあまり人には言いたくないもので、

外来で排尿のトラブルを言ってくれたということは、

勇気をもって言ってくれた

相当困っているんだな

と考えなければなりません


すぐに「じゃあ、泌尿器科行ってください」では、

患者さんも報われません


泌尿科に行きにくいから、

内科の先生に相談しているんだということを忘れてはいけません


ある程度、自分で考え、出来る範囲で頑張ってみることも必要です



特に過活動性膀胱はとても訴えが強く、

ADLを激しく落とします

認知症の方の過活動性膀胱は、介護者に大変な苦労をかけます

ですが、過活動性膀胱に安易に、抗コリン薬を出すのは危険です

最低限、残尿量がどれくらいあるのか、もしくはないのかを確認してからにしましょう


排尿のトラブルはどうしても主観的です

なので、よく使われるのはアンケートです

前立腺の時のI-PSS、

過活動性膀胱のOABSSといったものをうまく活用して、

治療効果判定にも使いましょう


神経因性膀胱


排尿のトラブルの人を泌尿器科にコンサルトをすると、神経因性膀胱ですね

という答えが返ってくることがあります

神経因性膀胱って、便利な言葉ですよね

どこかの神経が障害されて、膀胱の機能がうまく行われなくなった状態で、

なんと、広い概念を示していることでしょう


残念ながら、原因が明確になることは少ないですが、

膀胱を支配する神経の仕組みをしっておくと、

部位診断ができるかもしれません

考える力が湧くので、神経の流れを知っておきましょう



排尿調節

排尿中枢には上位と下位があり、

上位排尿中枢が橋にあります

下位排尿中枢はS2-4にあります

それらが膀胱に指令を出し、排尿が行われます


膀胱に尿がたまると

その刺激が脊髄を上向していき、

大脳に伝わります

大脳は抑制中枢とされており、

排尿を我慢させることができます

排尿を我慢させている時は、尿が漏出することはありません

膀胱は弛緩し、膀胱の出口は完全に閉鎖されています


排尿してもよいという、OKサインを出すと

抑制がとれて、

橋の刺激が脊髄を下降し、

S2-4に到達し、

排尿筋を収縮させます

同時に出口である外括約筋を弛緩させます

本来であれば、尿は残らず、完全に排尿することができます

この流れのどこかで問題があると、

排尿にトラブルが生じるので、

それぞれの場所で考えてみましょう









排尿のトラブルに出会ったら
・病歴から、畜尿症状か排尿症状かを見極める
・神経因性膀胱だと思ったら、
 残尿の有無や尿意の有無、
 我慢できるかどうかといった情報から
 問題がありそうな部位を予測する


今さらきけない疑問に答える 学び直し風邪診療

風邪の本といえば、岸田直樹先生や山本舜悟先生の名著があります 自分もこれらの本を何回も読み、臨床に生かしてきた一人です そんな名著がある中で、具先生が風邪の本(自分も末席に加わらせていただきました)を出されるとのことで、とても楽しみにしておりました その反面、何を書くべきか非常に...

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