2017年8月17日木曜日

ALSの身体所見

ALSは毎年1人は出会うか出会わないか、くらいの頻度でしょうか

個人的にはIEと同じくらいで、あまり稀ではない印象です

その目で見ると、出会う事ができます

その目で見ないと、通過していきます



しかし、自分も最初に診断した時は、診断に時間がかかってしまい、

反省し勉強し直しました

勉強した後は、ALSを疑う閾値がかなり低くなりました


そして疑った時にやる事もルーチン化されてきた感じがします


ALSの身体所見といえば、有名なのはsplit handです

ただ末期になれば、全ての手で萎縮が来ます




次に有名なのはfasciculationでしょう

皮膚の一部がピクンと一瞬、落ちるイメージです

釣りをした事がある人は、浮きが沈むイメージを思い浮かべて下さい


診断のためには
4領域の上位、下位運動ニューロン障害を探す事が重要です

そのためには普段あまりとらない反射をとります


Fasciculationは見た目では分かりにくい事もあり、

ここでも超音波を使うことで、

筋肉の中の線維の束が、グルンと動くのが確認できます


特に舌の場合は、難しいので、超音波の方が簡単にとれます




陰性所見も重要ですが、痺れや痛みはALSの人で訴えられる人は多い印象ですが、

一応、感覚障害は陰性所見に含まれています

体重減少はALSの人にはよくみられる所見で、

食べているのに痩せてきます


神経の世界では、神経疾患を診断する過程において、


Atypicalな所見は1つまではあってもいいですが、

2つatypicalが揃うと、診断を再考した方がよく、

3つ揃うと多分、その疾患ではありません


と言われているそうです

しかしALSにはALS plus症候群というものがあり、

陰性所見であるはずの神経徴候を伴うこともあり、

何事にも例外があるのだと思っておいた方がよいです

しかしまずは原則を知ることが重要なの

陰性所見があれば、ALS以外の病気を疑いましょう

診断のためのポイントはいかに他の疾患の除外に成功するかです


残念ながら、頚椎症にALSが合併する時があるので、

その時が一番悩みます






合わせ技で、ALSっぽく見えることもあります





普通、ALSは数ヶ月や数年の経過があり、

最初は整形で頚椎症と言われたり、

診断がつかなくて、Dr shoppingになります


徐々に所見が揃ってくるので、最終的にはALSと診断するのは、容易です

しかし呼吸筋麻痺型の場合はいきなりAlSと診断されることもあります


ALSは、「後医は名医」になりやすい疾患の1つです


ALSの初期症状は本当に非特異的で摑みどころがない印象を受けます


やられる部位によっても症状が異なるので、


それぞれみていきましょう




球麻痺型は誤嚥性肺炎を繰り返す中高年では一度は疑った方がいいです









1つ1つを分解すると簡単そうですが、全部が合わさると、

なんだか摑みどころがなくなります



どうでしょうか。

この流れだとALS以外に見えないと思いますが、

忙しい外来でこの病歴の一部しか聴取できないと、

どこを狙っていいのかよくわからなくなってしまいます



なので、簡単にこの人、ALSかも!?

というスイッチを入れるポイントだけ、覚えておけば、まずはいいと思います


それは


体重減少です


もちろん、甲状腺機能異常や癌がないことが前提ですが、

食べているのにどんどん痩せていくのが、

ALSを疑うきっかけにある事がしばしばあります


原因不明の体重減少があれば、まずは手を見て

Split handを探しましょう


そして筋肉のピクつきを探しにいきましょう


それだけで、十分スクリーニングになるはずです

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