2021年4月30日金曜日

日本一早いカンファレンス 〜この腹水の行き着く先は?〜

腹水の原因精査での紹介です

80歳 女性 紹介目的:腹水の原因精査(※一部症例は加筆・修正を加えています)

現病歴:昨年の夏から腹水が溜まってきた

    徐々に腹水が増えてきて、食事量低下あり

    すでに超音波検査と単純CTが施行され、原因不明 




鑑別は何ですか?取りたい身体所見は?


身体所見


鑑別疾患は?今後行うことはなんですか?



血液検査
Hb8の貧血あり、フェリチン低下なし
凝固系問題なし
肝胆道系酵素上昇なし
Alb 3.2
アンモニア上昇なし
電解質異常なし
Cr 2.8と上昇あり
炎症反応上昇なし

CA125 600と上昇あり

尿検査
タンパク尿あり、円柱なし

腹水
黄色調、混濁なし
Alb  1.5
SAAG  1.7
ADA  14
TP 3

CT
肝表面に凹凸あり
脾腫なし
大網に不整の濃度上昇あり
卵巣異常なし

UCG
心収縮良好、心嚢水なし、severな弁膜症なし



結論
細胞診を3回行いましたが、診断つかず・・・

SAAGでは門脈圧亢進を示唆しており、肝臓の形態も肝硬変で良さそうですが、
腹水以外には肝硬変を示唆するものはありませんでした

本当に肝硬変だけで良いのか、他にも腫瘍の合併があるのかどうか・・・

次の一手としては、腹膜生検になりますが、
退院希望が強く、一回退院となったという経過です


今回のように腹水の原因がわからない時も稀にあります
その場合、何を考えるか?


次回解説します



まとめ
・お腹が張っている人を見たら6Fを考える
重大な悪性腫瘍 (Fatal tumor)、脂肪(fat)、ガス(flatus)、便(feces)、水(fluid)、胎児(fetus)

・肝硬変の身体所見をいくつ知っていますか?
→くも状血管腫、手掌紅斑、テリーズ爪、女性化乳房、精巣萎縮、眼球黄染、羽ばたき振戦、腹水(波動、shifting dullness)、肝腫大、脾腫

・腹水のアプローチは知っていますか?
→SAAGが重要、門脈圧亢進しているのかしていないのか

2021年4月29日木曜日

読書感想文 〜悩める事例を抱える人へ〜

最近、「高校生の不登校」という問題に関わる機会が多く、非常に悩んでいます


入り口はbiomedicalな問題ですが、話を聞いていくと、

bioではなく、psycho、socialな問題になっていきます



ですが、最初はbio面から考えなければなりません


食欲がなく、全く食事が取れない人

→FDかなあ・・・


学校に行こうとすると、体が動かなくなってしまう人

→身体表現性かなあ・・・


朝起きようとすると、頭痛や動悸が酷くて動けない人

→POTSかなあ・・・


いろんな症状や理由で学校に行けなくなります

そして症状に無理矢理病名をつけることもできますが、解決にならないことがほとんどです



その理由はbiomedicalがメインの問題ではなく、

psycho、socialな問題がメインだからです



これは外来をしているDrであれば、なんとなく理解できると思います



問題はその後です

psyhcosocialに問題があるということは多くのDrが認識しています


ですが、明らかに家庭環境や周囲の大人の接し方に問題はあったとしても、

それをどう解決するかは非常に難しいです


問題をBPSで分けても限界があります

ガミー先生のいう通りです






解決先を探す時、関係者全員が幸せになれる方法を考えますが、

複雑に絡まった人間たちのヒューマンドラマであり、

自分だけでは歯が立たないこともあります



複雑に絡まった糸を解きほぐすような感覚です



そんな途方に暮れてしまった時におすすめの3冊を紹介させていただきます



家庭医療を一から学ぶのは時間がない!という人に、

短時間で読めて自分の世界観を広げてくれる本を選びました

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①マンガでわかる家族療法


こんなやり方があるのかと驚きます




いきなりマンガかよ・・・と思われてもいいです 

マンガでも絵でも文字でも、目的は一つです


読み手に自分の主張が伝わればいいのです


マンガはその目的を達成するにはとても良いツールです


さらに、家族療法とマンガは非常に相性が良い気がしました

家族療法が成功する時、それは一つの「ヒューマンドラマ」になります



この本を読んで、いきなり家族療法やってみよう!とはなりませんが、

「家族」という歯車が狂った時に、こういった手法もあるのか・・・と勉強になります


例えば、リフレーミング、外在化、プリテンディング処方など


家族療法に興味が湧く一冊で、家族のみかたが変わる一冊です



②援助者必携 はじめての精神科 第3版


お守りにしたい本です(通称:猫本)



疲れてしまった援助者に送る本です


医療従事者は人のために尽くしたいという献身的な方が多いですが、

時にその努力が報われないこともあります


そんな時でも仕事を続けられるように背中を押してくれる本です


自己啓発的な印象も受けました

疲れてしまったり、もう無理だと思ったら、この本をまた読みたいと思います


パーソナリティ障害の項は、

援助者だけでなく、全ての医療従事者が読んだ方がいいと思います



③まんが やってみたくなるオープンダイアローグ


確かにやってみたくなりました




またマンガかよ・・・


そうです、マンガです(笑)


2時間で読めると書いてある通り、本当にすぐ読めます



オープンダイアローグ?何それ?

という人にこそおすすめです


〜本文より〜

変えようとしていないからこそ変化が起こる――
この逆説こそが、オープンダイアローグの第一の柱です。
オープンダイアローグでは、治療や解決を目指しません。
対話の目的は、対話それ自体。対話を継続することが目的です。

そうすると、一種の副産物、〝オマケ〟として、
勝手に変化(≒改善、治癒)が起こってしまう。
裏返して言えば「対話というのは続いてさえいればなんとかなるものだ」。
これがオープンダイアローグの肝だと私は思っています。



この本に書いてある手法を全て行うのは難しいので、

かいつまんでやってみるのがいいのかと思います


「傾聴」とも少し違う、「対話」の重要性や考え方を変えてくれる本です

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治療法や解決策が見えない時に、私たちはどう支えるか?


イメージとしては、白衣を脱いでください


白衣、つまり「The 医者」「The 薬を処方する人」「ヒエラルキーの上に立つもの」

そういったものを取っ払って、困難事例と向き合います



白衣を着た一人の医者が治療するのではなく、

白衣を脱いだ一人の人間として立ち向かっていくのが重要だと思います



ですが、くれぐれも無理は禁物です

自分にできることとできないことは自覚しておきましょう





Code blue 〜チームが上手く機能するには?〜

Code blueの時にチームが上手く機能するために


引用:16 Nursing made Incredibly Easy!September/October 2019



蘇生処置は複雑なプロセスであり、チームメンバーの調整が必要です


まず強力なチームリーダーがグループを組織し、

タスクを依頼し、チームメンバーのパフォーマンスを監視する必要があります


効果的なチームワークは、コミュニケーションの失敗によって引き起こされるエラーを軽減します


Fernandezらは、CPR時のチームコーディネーションに関する63の論文を対象に、

システマティックレビューを行った

その結果、リーダーシップ、コミュニケーションがCPRのパフォーマンスに影響を与えることがわかりました



チーム力の低下

心肺蘇生の際には、チームワークが課題となります

未知の場所に到着したときに、対応するチームメンバーがお互いを知らないと、

さまざまなタスクを実行する際に役割の混乱や混沌が生じ、

生産性の低いチームワークやコミュニケーションの不備につながり、

患者の転帰を損なう可能性があります


さらに対応者は、自分の具体的な役割を認識していない可能性があります



レジデント到着

2010年にHunzikerらは、調査に参加したジュニアレジデント全員が

現場をリードしているわけではないことを発見しました

さらに、この研究では、蘇生処置に参加した最初の30秒間、

研修医は緊急事態におけるリーダーシップ能力はなかったことがわかった


後から到着した上級医は、重要な質問をしてジュニアレジデントに潜在的な問題を気づかせ、

チームをよくサポートした


有害事象の一因として、コミュニケーションの不備も指摘されている

2015年にRudy氏らが行った研究では、チームの誰が主導権を握っているのかが不明瞭で、

チームは効果的なコミュニケーションを欠いていました


あるとき、放射線科医が最初に主導権を握りましたが、

チームが到着したときに自分が主導権を握っていることを確認しませんでした

その結果、コードチームのメンバーは、誰が主導権を握るべきか混乱してしまいました

また、コードチームのメンバーは、現場に到着したときに自己紹介をしたり、

自分の役割や責任を明確にしたりすることがほとんどありませんでした


また、対応するスタッフが部屋に詰め込まれすぎていることも、

コードチームのパフォーマンスを妨げる原因となっています



密な状態が患者ケアの質に悪影響を及ぼしているのではないかという懸念から、

パフォーマンス改善プロジェクトが実施され、

その結果、急変対応時の密を解消するためのパンドル介入策が生まれました。




コードブルーの3つのフェーズは以下の通りです。


フェーズ1:起動期間

このフェーズは、コードチームが到着するまで5分間続きます

患者が無反応であることが判明し、発見者は直ちにコードブルーをコールし、CPRを実施します

駆けつけたスタッフは、救急カート/除細動器をベッドサイドに持ってきてサポートします

駆けつけたスタッフは、除細動器を自動体外式除細動器モードに設定し、

指示に従ってパッドを装着し、指示された通りにショックを与え、バックボードを装着し、

人工呼吸を行うためのバッグ・バルブ・マスクを用意します


第2段階:無秩序な時期

 コードチームのメンバーが個々に現場に到着します

自分の役割がわからず、誰が責任者なのかもわからない状態かもしれません

到着時に自己紹介をすれば、混乱を最小限に抑えることができます

この期間の優先事項は、圧迫と換気の比率を30:2で継続すること

点滴療法や薬を開始すること、そしてタイマーや記録を開始して起こったことを記録することです


第3段階:チーム編成期間

明確な指示を出すことで、チームはそれぞれの役割を整理することができます

コードチームのメンバーが到着したら、患者の周りに身を置きます

コードチームのメンバーは、ABCDEFGという頭文字を使って識別します


     


急変対応が上手く機能するために

模擬訓練を行うことで、コードの状況に対応する際の自信と能力を高めることができる

忠実度の高いシミュレーションは、CPRのパフォーマンスとチームの相互作用に役立つ

シミュレーショントレーニングにより、

チームは効果的なチームパフォーマンスと蘇生の成功の基礎となる練習を行うことができる



まとめ

・急変時の対応には、チームマネージメント、リーダーシップ、コミュニケーションといったノンテクニカルスキルが重要


・チームマネージメントの際には、ABCDEFGをチェックする


・急変対応チームが上手く機能するためには、日々のシミュレーショントレーニングが重要

指揮者のいないオーケストラ


Code blue ,Code blue

医師は〇〇に来てください




(あーcode blueだ・・・自分の患者だったら、嫌だなあ・・・)


と走りながら、思いをめぐらせます


たどり着くと、すでに大勢の医師が患者さんの蘇生処置を行なっています


ある専攻医は胸骨圧迫を行なっています

ある専攻医は気道確保してBVM換気を行なっています

あるスタッフは胸骨圧迫が有効になるように背板を入れようとしています

ある研修医はモニターを探しに行っています

ある専攻医はルート確保を行なっています・・・



バタバタと同時多発的に処置が進んでいるようで、実はあんまり進んでいない

にもかかわらず狭い現場には続々と医師がやってくる


勝手がわからない医師たちはモニターの場所や物品の場所もわからず、

看護師さんに頼らざるを得ない



code blueの時に何十回と見た光景


いつも感じる不協和音

まるで指揮者不在のオーケストラ



とりあえず、続々と登壇しようとしている演奏者を防ぐ交通整理をしつつ、

全体を指揮する人が誰かを確認する


遅れてきた自分がリーダーをするのはどうなのか・・・と思ってしまい、

既存のリーダーが誰かを確認し、外来主治医がリーダーとなる



到着した時に思うことは、

なぜ今の事態が起こっているかを皆が共有できているのか?ということ



到着した時にはすでに時間が経過していたので、皆で情報は共有できているのであろうと

勝手に思ってしまったので、あまり聞かず・・・



幸い点滴やモニターをつける前に、胸骨圧迫とBVM換気のみでROSCした

心電図も問題なし

UCGも問題なし

レベルも改善傾向で、自発呼吸もあり


狭い病室を抜け出し、ICUへ・・・



(ICUへ移動中)

ところで、もう一回、どういう状況だったのか聞いていい?

透析中だったの?


Ns「いえ、透析する前でした。

  造影CTから帰ってきて、車椅子にのっていると、

  気持ち悪いと言い出して、全身が強直痙攣して、CPAになりました」


え・・・

まじで??


それ造影剤のアナフィラキシーショックやん


よくみると、顔面や頸も赤いし、ゼエゼエいってるし・・・

造影剤によるアナフィラキシーだね


ICUでアドレナリンうとっか・・・



ICUにてアドレナリンを筋注

その後、バイタル安定し、レベルクリアになった

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Code blue時の注意点(自分への戒め)


・まず現場についたらリーダーを決めるか、自分がリーダーをする(これが一番重要)

 基本は早めに着いた人がリーダーをする

 自信がなければ途中交代もあり


・気道確保しなければならない時は、気道確保しつつリーダーをする


・リーダーは交通整理を

 医師は3人もいれば十分、Nsの方が重要

 循環器医師と挿管が上手な医師は残ってもらう


・ACLSの流れは誰もが知っているが故に、みんな勝手に動くことを知っておく

 人が多いと何が行われて、何が行われていないか分からなくなる


・リーダーは何もせず、全体の人の動きをみる

 手は出さない、口だけ出す


・現場の状況把握が疎かになりがちなので、大きな声で何度でも確認を

 思い込みは禁止、透析している人だから透析前だし、高Kなんだろう・・・

 実は造影CTから帰ってきた直後


・蘇生処置とともに原因検索が大事(当たり前)


・急変対応で大事なのは、いかにうまく挿管できるか?とかではない

 大事なのは、強いリーダーシップ円滑なコミュミケーション


・一番の緊急事態は自分自身がパニックになること

総合診療医が見た「集中治療」の世界

なかなか、目指したいゴールに到達できず、 途中で方針やゴールの軌道修正が迫られる それは一般病棟でもICUでも同じ ICUは何といっても細かい! 1時間、患者さんを見ていないと、ガラッと景色が変わっていることもしばしば 手術のない患者さんの全身管理をしている麻酔科医のようなイメー...

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