2019年8月20日火曜日

光線過敏

夏といえば熱中症ですが、光線過敏の季節でもあります

症例ベースで考えてみます

両手の蜂窩織炎で入院となった患者さんです


70歳代 男性 主訴:両手が痛い

病歴:3日前から両手が赤くはれてきた 
   外来受診し、両手の蜂窩織炎疑いにて入院

薬:皮膚科より抗ヒスタミン薬と外用のステロイド剤

アレルギー:パセリ?

所見:発熱なし、見た目元気そう
両上肢から手背まで紅皮症の状態で、赤く腫れあがり、痛みあり
両手手掌はhyperkeratosis

上肢以外にも顔は鼻や頬に湿疹がみられ、首にも発赤があり
体幹には皮疹はなし


さて、この人は本当に蜂窩織炎でしょうか?


蜂窩織炎とは局所の細菌感染症です
両側上肢に同じタイミングで細菌が感染するというのは、可能性は0ではありませんが、低いですよね

両側にパッチ―に来る蜂窩織炎様の皮疹で有名なのは、ヘリコバクターシネジーです


ということで、両側の蜂窩織炎と聞いたら、
まずは本当に蜂窩織炎か?と思った方がよいです


本症例の追加病歴は
もともと会社員で、脱サラしてパセリ農家を始めたようです
パセリ農家をするまでは、皮疹とは無縁の生活でした


パセリ農家を始めてから、両手が荒れるようになったので、皮膚科受診しました
そこではパセリによる接触性皮膚炎と診断されたようです


パセリに触れないように手袋を色々変えましたが、よくなったり悪くなったりを繰り返していました

患者さんもなかなかよくならないので、皮膚科も3か所くらい転々と変わっていました
そして、今回acute on chronicの経過で来院されたという経過です


さて、acuteな部分は感染症でしょうか?


この症例は、病歴や皮疹の部位から明らかに日光過敏があると思われたため、
慢性光線性皮膚炎(CAD)と診断しました

入院による遮光とステロイド内服で、別人のように皮疹は改善しました


パセリは光線過敏を来す有名な植物です
太陽の光は身近すぎて、まさか光が諸悪の権化とはなかなか思いにくいですよね

では光線過敏症のまとめです


光線過敏症




光線過敏症とは、普通の人なら全く問題ないくらいの光で皮膚障害が出現する病的な反応です

注意しないといけないのは、炎天下に長時間いれば、
光線による日焼けは誰でも起こるので、程度問題という事です



光による皮膚障害


直接作用と間接作用があります


直接作用というのは、光だけで起こる反応で健常人にも起こります

急性であれば、日焼け
慢性であれば、光老化です


光線過敏症の機序として光毒性皮膚炎と光アレルギー反応というのがあります
しかしどちらも起こっていることが多く、厳密に分ける必要はないです


光による皮膚障害の間接作用というのは、光+α(免疫・薬・代謝etc)で起こる反応です
こちらが光線過敏症といわれます


内因性と外因性の因子があります
つまり、体の中からの因子と体の外からの因子です



まずは体の外からの因子を探るのが大事です
体に塗っているもの、口から入れたもの、貼っているもの、、、全てチェックします


光線過敏症と外因性物質

光接触性皮膚炎と光線過敏型薬疹に分けます

機序については、光毒性と光アレルギー反応の両方が起こっていることも多く、
どちらでもよいです


外因性物質で多いのは、薬なので、それぞれ薬と薬以外で考えます



外因性ではないとなると、内因性?ということになります

内因性のコツは年齢で分けることです


書いてはありませんが、SLEやSS、皮膚筋炎にも注意が必要です



光線過敏症の行きつく先

病気には進行すると、同じような病像を作るという特徴があります


例えば、心臓ならば、
弁膜症でも虚血でも心筋炎でも、行きつく先は心不全です


光線過敏症も治療がうまくいかず、ずっと光線過敏症の状態が続くと、
慢性光線性皮膚炎(CAD)になってしまいます








光線過敏症の三角形


真ん中に患者さんがいます

⓪患者因子:内因性か外因性かを検討します


①部位:光線過敏を疑うポイントとして、どこに皮疹が出ているかをしっかり診ます
表(日光暴露)と裏(被覆部はスペア)を確認します


特徴的な分布であれば、原因が特定しやすいです


②病態:光毒性と光アレルギーというのがあります
簡単にいうと、免疫が関与しているかどうかです
前述していますが、どちらも起こることが多いので、知識で知っておく程度です


③治療:結局、遮光がメインです
他は対処療法という感じです

しっかり生活指導と患者教育をしないと絶対に治りません




光線過敏症のまとめ
・太陽の光は身近すぎて、時に鑑別から漏れてしまう
→光を浴びただけで、湿疹を来すCADという病気を知っておく



・光線過敏症の原因には、内因性と外因性がある
→まずは外因性のチェックから、特に薬やサプリメント



・内因性は年齢や病歴である程度、疾患が定まる



参考文献:uptodate
J.Clin.Immunol.,34(1)8~12(2011)
アレルギー55(11) 1382-1389.2006
診断と治療 vol.95-No.9 2007(163)
医学と薬学・第60巻 第6号・2008年12月
Dermatol Clin 32(2014)355-361

0 件のコメント:

コメントを投稿

今さらきけない疑問に答える 学び直し風邪診療

風邪の本といえば、岸田直樹先生や山本舜悟先生の名著があります 自分もこれらの本を何回も読み、臨床に生かしてきた一人です そんな名著がある中で、具先生が風邪の本(自分も末席に加わらせていただきました)を出されるとのことで、とても楽しみにしておりました その反面、何を書くべきか非常に...

人気の投稿