2019年8月20日火曜日

亜急性甲状腺炎

昼カンファの前座の症例です

50歳 男性 主訴:頸部のこり、1週間続く発熱

病歴:7日前から咽頭痛出現し、嚥下時痛あり
そのころから頸部のコリを自覚

翌日には発熱あり、近医受診
痛み止めで帰宅となりました

しかし、改善なかったので、3日前に近医受診
血液検査にてCRPが7ということで、抗生剤処方されました

抗生剤服用後も頸部のコリや発熱が持続するので、当院内科受診

薬:抗生剤、NSAIDS、レバミピド、カルボシステイン by 近医

既往:なし

ROS:発汗や震えはなし 体重減少なし


所見 バイタル 血圧 130/89、脈 90、体温 37.7度、SpO2 98%
見た目 お元気そう

咽頭は発赤なし 扁桃腫大なし
齲歯なし 痛がる歯はなし
頬の叩打痛なし

頸部LN 前頸部から両側下顎に1cm弱のLNが数個触れる 
両側顎下腺に軽度の腫脹と圧痛あり
甲状腺は圧痛・腫大もない

本人は両側の顎から肩が凝ったような痛みがあるという
どこがということは言えず、漠然と痛いとのこと

首の前屈で軽度痛みあり 回旋は痛いか微妙




血液検査にて炎症があることは間違いないのですが、咽頭には全く所見がありませんでした


正直よくわかりませんでしたが、
ポイントとしては、
咽頭に所見がないのに「のど」が痛いというカテゴリーです





本症例は石灰沈着性頸長筋腱炎か亜急性甲状腺炎かなと思い、血液検査とCTをとりました
CTでは前者は否定的で、血液検査にてT3,T4が上昇し、TSHが抑制されていました

ESRもしっかり80まで上昇していました



ということで、診断は亜急性甲状腺炎でよいかなと思います

すごいのは、CTの読影で甲状腺の周囲の脂肪織濃度上昇と腫大があり、
読影で亜急性甲状腺炎疑いになっていました

触診で腫大は全然わかりませんでした

甲状腺の診察は難しい・・・



今年、二人目の亜急性甲状腺炎ですが、
二人とも甲状腺というよりは、顎や首を痛がっていました


首や顎が痛いというと、他の疾患の鑑別が出てくるので、見落とされやすいです


さらに、
甲状腺に圧痛がないと、鑑別から外れてしまいそうですが、
甲状腺に痛みがない亜急性甲状腺炎もたまにあります


本症例はすでにNSAIDs 服用していても改善がなかったので、PSL使用し治療しました

亜急性甲状腺炎まとめ
・甲状腺に圧痛のない亜急性甲状腺炎もある


・顎や首が痛いという症状がメインの症例も多い


・甲状腺中毒症症状はあってもよいが、ないことも多い

0 件のコメント:

コメントを投稿

今さらきけない疑問に答える 学び直し風邪診療

風邪の本といえば、岸田直樹先生や山本舜悟先生の名著があります 自分もこれらの本を何回も読み、臨床に生かしてきた一人です そんな名著がある中で、具先生が風邪の本(自分も末席に加わらせていただきました)を出されるとのことで、とても楽しみにしておりました その反面、何を書くべきか非常に...

人気の投稿