2017年11月2日木曜日

高カルシウム血症

電解質の体内の流れ

カルシウムの流れの前に、電解質全般のお話です

大まかな電解質の体内動態の原則を知っておくと、

電解質の勉強がしやすいです


体の中に入った電解質は、腸管で吸収され、

吸収されずに便からも少し排出されます

吸収された電解質は血中に入り、リザーバーに貯蔵されます

このリザーバーが電解質ごとに違います

カリウムの場合、体中の細胞内(主に筋肉)です

カルシウムやリンの場合、骨です

マグネシウムの場合、骨と細胞です

ナトリウムにはリザーバーがなく、細胞外と血液中に主に存在します


私達が血液検査でみているのは、体内の電解質の総量ではなく、

血液中の濃度です

血液中の電解質濃度は常に一定になっています

勝手に一定になっているわけではなく、それぞれの監視役がいます

そして、監視役の命令で動く、手下になるような物質もあります

その物質によって、リザーバーからの出し入れが調節されたり、

腎臓から排泄される量を調整しています


このような機構がそれぞれの電解質で整っていることを知っておくと、

電解質の勉強がしやすいです



高カルシウム血症

高カルシウム血症が見つかる状況は大きく3パターンです

①健康診断で高カルシウム血症が偶然みつかるパターン

この時は、カルシウムの値はさほど高値にはなることはなく、

ほとんど無症状のことが多いです

この状況では、副甲状腺機能亢進症と家族性低Ca尿症を疑います

FECaを計算し、あやしければ畜尿でCaの量を測定します

家族性低Ca尿症は治療の必要がないことが多く、

副甲状腺機能亢進症と間違えないことが重要です





②高カルシウム血症の症状(便秘、腹痛、倦怠感、多尿、脱水、結石)でみつかるパターン

③意識障害があり、非常に高度な高カルシウム血症でみつかるパターン

②や③のケースは悪性腫瘍関連の可能性が高くなってきます



カルシウムの体内動態

カルシウムのリザーバーは骨です

体内のCaの99%が骨の中に存在します

血中はたったの0.1%しかありません

そのたった0.1%の濃度を測って、我々はカルシウムが高い・低いと議論しているのです

血中のカルシウムを監視しているところが、副甲状腺です

副甲状腺がカルシウムの値を感知し、PTHを分泌し、

血中濃度を一定にするように調整しています

そのため、このPTHが過剰に出てしまうと、カルシウムの濃度が高くなります

PTHが過剰になるとリンが減少する傾向になるため、

PTH関連の高カルシウム血症の場合、

・カルシウムの上昇は軽度
・リンは低め

という特徴があります


高カルシウム血症のアプローチ


高カルシウム血症を見た時の第一段階はPTHを測定します

リチウム内服患者さんは副甲状腺のネガティブフィードバックがうまくいかず

原発性の副甲状腺機能亢進症の状態となるため、

薬を中止して経過をみるしかありません


第二段階は悪性腫瘍の可能性があるかどうか検索することです

悪性腫瘍関連の場合、

1)PTHrP関連:扁平上皮癌、腺癌(肺、膵、腎)
2)骨転移・骨融解:乳がん、多発性骨髄腫
3)活性型VD産生:悪性リンパ腫

の3パターンがあります


多くは上記の二つであり、後はその他となります


カルシウム濃度はPTHだけでなく、活性型VDとカルシトニンによっても規定されています

活性型VDが過剰に作られてしまうような肉芽腫性疾患や

薬として過分に補われてしまう薬剤性の活性型VD関連の可能性もあります

その場合は、リンが上がることが多いので、予測することが可能です


骨粗しょう症の治療の啓蒙が進み、治療がしっかり入る方が増えてきました

そのため、最近の高カルシウム血症の患者さんは、薬剤関連が多い印象です


いつの間にか腎機能が悪化している高齢者は多いので、

活性型ビタミンDを処方している時は、腎機能とカルシウムの値に気を配りましょう


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