2017年11月2日木曜日

ビタミンD

ビタミンDは最近ホットな話題です

昨年から天然型のビタミンDを測定できるようになったため、

今後、VD欠乏の知見が深まっていきそうです

ビタミンDについて

ビタミンDはそもそもビタミンではありません

生体内で合成可能であり、ホルモンです



生体内の皮膚で日光にあたることで、合成することができます

食事中からも摂取できますが、圧倒的に日光浴のほうが効率がよいです

一日15分の日光浴でよいとされますが、

現代人や施設入所者、入院患者さんは、日の光にあたっている時間はほとんどありません

なので、実はビタミンD欠乏は相当数いるといわれています

しかし無症状のことが多く、症状が出ても非特異的なものばかりで、

誰に積極的に疑ってよいかは、まだよくわかりません


現状では、線維筋痛症のように全身の痛みがあり、

特に骨痛を訴えるような人は、積極的に疑ってもよいと思います

その時に測定するのが、25(OH)ビタミンD:天然型ビタミンDです


これまでは、わが国では活性型のビタミンDしか保険で測定できず、

本来のビタミンD欠乏をしっかりと診断できなかった時代が続いていました



では、なぜ活性型ビタミンDを測定することでは、

本来のビタミンD欠乏を発見できないのでしょうか?

活性化している方が、本来のビタミンの量を反映しそうですよね


ですが、それでは甘いようです


活性型ビタミンDに比べて、天然型ビタミンDの方が圧倒的に量が多く、

半減期も長く安定しているためです

活性型ビタミンDは半減期は短く、量も少ないため、変動が激しい検査です



    



活性型のビタミンDは、骨や副甲状腺、腎臓、消化管に主に働き、

血中のカルシウム、リンを上昇させる効果があります


ビタミンDのイメージ

天然型と活性型は、ダム湖の水とダムから出てきて調節された水のような関係です


湖の水を供給する雲:食事や皮膚(紫外線)

貯まったダム湖:天然型ビタミンD

貯まった水を調節して、下流に流すダム:腎臓

ダムから流れてきた水:活性型ビタミンD



    


ポイントは、腎臓以外でも天然型は活性型に変わることができるという事です


以前は活性型になるためには、腎臓を通さないとならないと考えられてきましたが、

腎臓を介さず、天然型ビタミンDが直接標的臓器に到達し、

そこで、活性型になり作用を示すことが分かってきました


そのため、活性型ビタミンDが正常でも、

天然型のビタミンDが減ると、ビタミンD欠乏として症状が現れます



    


活性型ビタミンDを測定しても、

体内に貯蔵されているビタミンの量は分からず、

必要な検査は、天然型ビタミンであることが分かります



その場合の治療は理にかなっているのは、天然型のビタミンDを投与することです

これは見たまんまです


天然型を入れても、ダム湖に一回たまって、必要な分量が下流に流れていくため、

安全に投与することができます


   


今は天然型のビタミンDを薬として処方できないのが、

実臨床で悩ましい所です

カルシチュウがランクル製剤以外の人にも処方できるようになれば、

よいのですが・・・



では、活性型ビタミンDを測定する機会はないか?

といわれると、そうではありません


高カルシウム血症の時に、PTHもPTHrPも問題なく、

腫瘍性病変が否定されているような時、

つまり、活性型ビタミンDが増えるような肉芽種性疾患を疑っている場合は、

活性型ビタミンDを測定する意義があります





この場合、ダムに異所性に穴が開いたイメージです

活性型ビタミンDが増えるので、それを直接測ることで診断します



では、薬として、
活性型ビタミンDを補うとどうなるでしょうか?

活性型ビタミンDを投与するということは、

下流に思いっきり、水を流しているようなイメージなので、

容易に過量になることが分かります

体の中に調節する場所がないので、内服量を調節するしかありません


特にエルデカシトロールは、半減期が長いため注意が必要です



          



ちなみに活性型ビタミンDを薬として補っている時に、

活性型ビタミンDを検査しても、増えているわけではありません

フィードバック機構が働くためといわれています



CKDの人は何が起きているのか?

逆にダム(腎臓)がうまく働かず、活性型ビタミンDが出てこない時を考えてみます


腎臓が悪くなると、決まった順番で、ホルモンの変化が生じます

腎臓の不調を敏感に感じ、まずは、FGF23が増えます

FGF23は骨芽細胞から分泌されるホルモンで、主にリンの排泄を促します

次に、CKDのStageが進むと、活性型ビタミンDが減ってきます

その結果、カルシウムやリンの低下を招くと同時に、PTHの抑制がとれるため、

PTHが上昇してきます

これが二次性の副甲状腺機能亢進症です





CKDが進んでくると、

カルシウム、リン、FGF23、ビタミンD、PTH、薬剤が

複雑にからみ合い、

カオスの様相を呈してきます



ビタミンDについて

・ビタミンDはビタミンではなく、
カルシウムやリンを調節するホルモンである
・天然型が問題になるのは、欠乏
⇒日光浴を推奨
・活性型が問題になるのは、過量
⇒薬物治療の際に注意が必要
・活性型と天然型のビタミンDを測定するタイミングは全く別である


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