2018年4月24日火曜日

アルコール依存の人のトラブル

アルコール依存の人が急に入院することはしばしばあります

その時の主訴は転倒だったり、意識障害だったり、

電解質異常だったり、消化管出血だったり、色々です


その場合、入院主治医のモチベーションとしては、決して高くはないでしょう

Negativeな気持ちになる人が多いと思います

医者も人間なので、その感情は変えることはできません

ですが、negativeな気持ちのまま診療が始まると、

必ず深層心理でそれが診療に影響します

例えば、急性期のプロブレムが終わったから、早めに退院させよう

となっていることが多いのではないでしょうか


なのでnegativeな気持ちになるのは仕方ないので、

negativeな気持ちに自分がなってしまったことを自覚していることが重要です

自分の感情を自覚することで、一歩引いた自分を見ることができ、

少し冷静になれます


まずアルコール依存の人を受け持つ時はこの気持ちの整理から始まる事が多いです


アルコール依存の人が、入院になった時の考え方は、

喘息の人が喘息発作で入院となったのと同じです

喘息発作で入院となった人に、negativeな感情は湧かないでしょう

それよりも発作の原因や今後発作を起こさないように、

吸入の薬の説明を行い、慢性期につなげるのではないでしょうか


アルコール依存のトラブルも全く同じです

例えば、AKAになって入院となった人がいたとして、

まずはAKAになった原因を考えます

そこまでは多くの先生もすると思いますが、

問題はAKAは比較的すぐに改善して退院できる状態になってしまうので、

すぐに急性期のプロブレムが解決すれば退院になる事が多いです

そこに喘息の時のような、慢性期につなげるというケアが抜け落ちています


喘息発作で入院になった人に、慢性期の治療をしない選択肢はないでしょう

ですが、アルコール依存の時は、negativeな感情もあいまってか、

慢性期のケアが抜け落ちてしまいます




アルコール依存の急性期のトラブルも、喘息発作と同じく、

Acute on chronicな状況です

慢性期のケアをせず、退院すれば、また何かが起きて入院となるでしょう


喘息は死ぬ病気ですが、アルコール依存の人も色々な原因で亡くなります

多いのは消化管出血ですが、自殺も多いです

アルコール依存症は慢性期のケアがおろそかだと、

亡くなってしまう病気だということを意識して、

急性期から、慢性期にうまくバトンをつなぐ努力をしていきたいものです



アルコール依存の人は多くのプロブレムを抱えています

バイオロジカルにも、ソーシャルにも、メンタルにも


アルコール依存の人のマネージメントこそ、

本当に総合的な力が求められる疾患だと思います




外来で管理するポイントはたった一つだと思っています


それは、外来に来させることです

Drop outしなければ、まずはokです

どんな肝機能でも

どんなに飲んでいてもです


見捨てない事が大事です








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