2019年2月26日火曜日

抗生剤関連脳症

抗生剤関連脳症


これが一番問題になるのは、ICUです

敗血症性ショックで意識障害あり

抗生剤投与している

バイタルはよくなったけど、なぜか意識が改善しない

髄膜炎があるかもしれない

しかし、ルンバ―ルしても、異常なし

ならば、よくいわれるNCSE(非痙攣てんかん重責)か

と思って脳波とるが、

なんだか非特異的な徐波ばかりで、何らかの脳症としか言えず

しょうがないから、セルシンやホストインチャレンジテストしてみるが、

あまり効果はみられない


残るは薬剤性の脳症ということになりますよね


そこで、抗生剤を疑えるかどうか、です


メトロニダゾールやアシクロビル、セフェピム脳症は有名になりましたが、

それだけではありません


ピペラシリンでも、セフトリアキソンでも、カルバペネムでも、

キノロンでも、マクロライドでも 起きます


原因不明の意識障害の時に、大事なのは、

いかに早く抗生剤関連脳症を疑い、

他の抗生剤に変更できるかです


治療はやめるしかありません

もしくは抗生剤の種類によっては、透析という手もあります


血中濃度を測定して診断するのは、現実的ではないので、

抗生剤を変更して経過みて、改善するようなら、

そうだったのかもしれないね

で終わることが多いと思います


抗生剤関連脳症が起きやすい人がいます

ポイントは、

薬の要因 × 患者の要因です

・薬要因

脳症を起こしやすい薬があります

薬のdoseが多すぎるとなりやすいです

長期に及ぶと起こりやすいものもあります

併用薬にも注意が必要です

キノロンとNSAIDS

カルバペネムとバルプロ酸などです


・患者要因

注意しなければならないのは、腎機能の見積もりです

どうしても、重症な感染症だと、

doseが少ないために、治療が上手くいかないという

可能性を消したいので、やや多めに投与してしまいがちだと思われます


腎機能が悪化した場合にも、漫然と抗生剤の量を変えていない場合には、

注意が必要です


ピットフォールとして、

ICUに長くいると、ICU-AWになってしまい

筋肉がなくなってきて、

Crでみると見かけ上は腎機能が保たれているような人がいます

そのような場合は、腎機能はCrでみるよりももっと悪いかもしれないので、

注意しましょう



抗生剤関連脳症を診断するには?

臨床的な診断につきます

経過を年表にかいて、いつから意識がおかしいか

薬を入れて何日目か

などを愚直にまとめあげるしか、気が付けないと思われます


中止して、どれくらいで改善してくるかは、症例によって様々ですが、

投与期間が長くなったり、半減期の長いもの、

組織中に溶け込んでしまっているものは、

改善してくるのに時間がかかるものと思われます


MRIや脳波は決めてにはなりません

どちらかというと、除外の上に成り立つ疾患なので、

他を除外するという意味合いが大きいと思われます




・抗生剤関連脳症は3つのタイプに分けられる

type1

ミオクローヌスや意識障害、痙攣するタイプ

おそらく起きていることは、非痙攣性てんかんや複雑部分発作、

もしくは、普通の痙攣発作なのだと思われます

こういうタイプはMRIが正常なことが多いです


type2

精神異常が強いタイプです

精神科疾患や離脱が鑑別になるかもしれません


type3

メトロニダゾールによって起こる脳症です













抗生剤を使うことは日常茶飯事です

ですが、

抗生剤関連脳症に出会ったことがあるという人は、

少ないのではないでしょうか?


それは、診断が難しい

というのもそうですが、

おそらくは見逃しているのだと思われます


自分が初めて経験したのは、外科からのコンサルトの患者さんでした

消化管穿孔の手術後、メロペン®使用中で、

入院して数日後から急にレベル300になる時が、

数時間続くようになった

ということでコンサルトがありました


見に行っても普通に会話できて、何の症状もありません

とりあえず、またレベルが悪化したら呼んでもらうようにしていると、

確かに、レベル300になっている時があり、

そしてその日のうちには、また意識清明になっていました


これはメロペン®によって誘発されたのでしょう

ということで、他の薬剤に変更すると

意識が悪くなることは、パタリとなくなりました


この症例を通じて、抗生剤関連脳症は確実にある

と思いました


病棟でやたらと寝ている高齢者をみて、

低活動性せん妄を疑ったら、

一度は抗生剤関連脳症を疑ったほうが良いかもしれません



抗生剤関連脳症のまとめ
・起こりやすい人の見積もりをする
→薬要因×患者要因

・疑ったら、早期に中止する
→漫然と投与し続けると、回復に時間がかかる

・ICUで原因不明の意識障害の場合に、
 NCSと共に鑑別に上げる

・病棟の低活動性せん妄の鑑別に、
 抗生剤関連脳症を鑑別に上げる

0 件のコメント:

コメントを投稿

今さらきけない疑問に答える 学び直し風邪診療

風邪の本といえば、岸田直樹先生や山本舜悟先生の名著があります 自分もこれらの本を何回も読み、臨床に生かしてきた一人です そんな名著がある中で、具先生が風邪の本(自分も末席に加わらせていただきました)を出されるとのことで、とても楽しみにしておりました その反面、何を書くべきか非常に...

人気の投稿