40代 女性 主訴:足に赤い皮疹ができた
Profile:生来健康
現病歴:数日前から足に皮疹ができたので、皮膚科受診
皮疹は痒みはなく、軽度の痛みを伴っている
他に症状はなく、関節痛や下痢もない
内服:なし 既往:なし 生活:アルコールなし
経過:皮膚科にて壊死性遊走性紅斑疑いで生検が施行され、壊死性遊走性紅斑と診断された
グルカゴノーマ疑いにて血中グルカゴンが測定され、わずかに高値であった
造影CTでは膵臓や肝臓に腫瘤は確認されず
腸管は全体的に軽度壁肥厚あり、浮腫状
脾腫はなく、肝臓の形態も問題なし
血液検査では肝胆道系酵素の上昇と鉄欠乏性貧血を認めた
身体所見ではバチ指を認めた
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診断は?
Deficiency dermatitis
壊死性遊走性紅斑とはグルカゴノーマのデルマドロームです
国家試験で習いましたが、全く臨床で使えない知識でした 笑
医師になって一度も壊死性遊走性紅斑をみたことがありませんでしたが、
上記コンサルトを受けたので、調べてみました
まず「遊走性紅斑」と言えば、ライム病ですね
遊走性(migration)とは中心治癒傾向を示しながら、遠心性に拡大することを言います
しかし、この壊死性遊走性紅斑の遊走は、
「鱗屑痂皮を伴う紅斑が拡大と縮小を繰り返し、通常の皮膚に戻る」ということに由来します
壊死性遊走性紅斑(NME)
NMEは1941年に膵腫瘍に伴う特異疹として報告されました
1966年にMcGavranらにより、血中グルカゴンの増加と皮疹の関連が示唆されました
1971年にWilkinsonらによって、NME :Necrolytic migratory erythemaと命名されました
1974年にMallinsonらによって、グルカゴノーマ症候群という概念が確立しました
ですが、1995年頃よりグルカゴノーマ以外の壊死性遊走性紅斑の症例報告が出てきました
肝疾患や吸収不良症候群、慢性膵炎、アルコール多飲、消化管手術後、摂食障害などの
複合的な栄養障害で出現してくることが報告されています
症例報告では栄養障害からの壊死性遊走性紅斑の症例報告は多くはありませんが、
現在では腫瘍そのものの存在が皮疹を誘発するのではなく、
グルカゴノーマで壊死性遊走性紅斑が出現する病態は、
アミノ酸低下であることが分かってきました
日皮会誌:127(6).1331-1337.
ですので、アミノ酸が低下する病態であれば、壊死性遊走性紅斑が出現します
壊死性遊走性紅斑をみた時のアプローチ
⓪他の皮疹と区別する
結節性紅斑、梅毒、遊走性紅斑、T細胞性リンパ腫、乾癬、白癬、薬疹ではないことを確認
できれば皮膚生検をするのが望ましい
①摂食障害やアルコール多飲、偏った食事がないかを確認する
②他の症状がないか確認する
下痢、腹痛、貧血、関節痛、体重減少、血便など
③内服薬の確認
オルメサンタンなどのARBはセリアック病likeの病態を引き起こす
④消化管手術の既往がないか確認
⑤血中のグルカゴン値の確認
軽度の高値はグルカゴノーマでなくてもよくある
⑥アミノ酸や亜鉛、ニコチン酸の確認と補充
結果を待たずに治療は開始してもよい
ペラグラや亜鉛欠乏による皮疹と複合的に出現してくる
⑦造影CTにて膵腫瘍や腸管の確認
⑧大腸内視鏡検査にて腸疾患の確認
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