専攻医の先生たちと外来振り返りをしています
その中で印象的だった言葉を備忘録としてのせておきます
・花粉症にみえて、花粉症じゃないもの
80歳男性 主訴:鼻水が出るから花粉症の薬が欲しい
鼻水(鼻汁)ときたら、感冒かアレルギー性鼻炎か副鼻腔炎を考えます
熱や咽頭痛、咳がなく、鼻炎だけであれば、
花粉症、つまりアレルギー性鼻炎と即決してしまいそうですね
99%は花粉症であっていると思いますが、違和感を持って欲しいのは、
「片側だけの花粉症」「花粉症が続く高齢者」です
片側の花粉症といえば、群発頭痛を含むTACsが有名です
片側の目が充血し、涙や鼻水が出て、頭痛があるので、
鼻炎・副鼻腔炎と誤診されることがあります
他にもNK/T細胞性リンパ腫の初発症状も鼻汁のことがあります
血性鼻汁や鼻閉のこともあり、花粉症と誤診されることがあります
いつも片側の症状の場合は何かおかしいと考えましょう
片側の花粉症には注意が必要です
次に気をつけたいのは花粉症が続く高齢者です
80歳以上の疫学データはわかりませんが、
実臨床で超高齢者の花粉症を診断したことはほとんどありません
実際に年齢を重ねると、花粉症の有病率は減っていきます
そのため、超高齢者が「花粉症が治らないから薬を出して欲しい」という主訴できたら、
身構えるべきです
それは本当に花粉症ですか?と
喘息の時と同じで他の疾患(EGPA、癌など)が隠れている可能性を考慮します
こんな病気もあります
副鼻腔結核の症状は片側性の鼻閉・膿性鼻汁・ 鼻出血・頭痛・頭重感・頬部痛などが挙げられています
やはりポイントは片側性ですね
・One tract , one disease
one airway,one diseaseという言葉があります
1990 年頃から上気道 と下気道を統合した病態生理学を基本に、
上気道のアレルギー性鼻炎、下気道の喘息との関連が論じられ始めました
1997年にはJay Grossmanが「one airway, one disease」という総説を発表しています
Grossman J : One airway, one disease. Chest 111 : 11S―16S, 1997.
呼吸器や耳鼻科、アレルギー領域では有名な言葉です
これをもじったのが、One tract , one diseaseです
one airway,one diseaseの消化器バージョンです
FD(機能性ディスペプシア)とIBS(過敏性腸症候群)や慢性便秘は、
きっても切り離せない関係があります
機能性ディスペプ シア(functional dyspepsia:FD)と過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)はどちらも機能性消化管障害に分類されます
FDとIBSは合併しやすく、内臓知覚過敏や消化管運動異常、心理的要因の影響、
急性胃腸炎後の発症など病態生理の部分でも似通っています
当たり前ですが、消化管の下流に問題があれば、巡り巡って上流のトラブルとして出現するというのは想像しやすいと思います
実際に繰り返す誤嚥性肺炎の予防に便秘を治すという治療もあります
消化管のトラブルをみたら、一つの管として考える癖を持ちましょう
「One tract , one disease」と覚えておくとよいかと思います
・一番予後が悪いのはどういう状態?
糖尿病患者さんで予後が悪いのはどういう状態でしょうか?
- HbA1cのコントロールが悪い
- 血糖が乱高下するのは良くない
- 1型DM
- アドヒアランスが悪い
どれだと思いますか?
正解は医療機関に通院しなくなることです
たまにいませんか?
〇年前まで△△医院に通院中だったが、途中でdrop out
その後、内服しておらず、本日、発熱・意識障害で救急搬送・・・
HbA1c 18!
毎月のように、あるあるですよね
我々がアドバイスや行動変容させたい疾患は、
糖尿病、アルコール依存症、喘息やCOPDがある人の喫煙が多いのではないでしょうか
そんな時に行動変容に熱心な医者であればあるほど、患者さんはプレッシャーを感じます
塾に通っている子供が、毎回、テストの点数が悪くて、
塾で毎回、小言を言われるような状態と似ています
1回や2回の小言(アドバイス)であれば、我慢できますが、
3回、4回と続いていくと、だんだん嫌になってきます
最終的には「行くのやめた」という結末が待っています
HbA1cのコントロールが悪かろうが、薬の飲み忘れが多かろうが、
通ってくれているうちはOKです
アルコール依存症の方の場合は特に注意が必要です
まずは毎回、自分の外来に来てくれてありがとうという感謝から伝えます
アドバイスをするのは、関係性が良好になってからです
感謝の土台の上にアドバイスがあるイメージです
医師患者の間に良好な信頼関係がなければ、どれだけ的確なアドバイスも全く意味がありません
患者さんに陰性感情を持たせてはいけません
自分の陰性感情は相手にも伝播します
陰性感情がつもり積もると、いつかdrop outしてしまいます
そうなると、次に会うときは救急外来かもしれません
自分の思い通りにならないと陰性感情が湧いてくることが多いです
そういう時は目標を下げて、自分の外来に毎回来てくれることを目標にしてみましょう
そうすると、陰性感情はわかず、感謝の気持ちが湧いてきます
まとめ
・花粉症に見えて花粉症ではないものに注意
→片側の花粉症や高齢者の花粉症は身構える
・one airway, one diseaseならぬ、One tract , one disease
→FDの人はIBSを合併していることも多い
・一番予後が悪いのは、drop outされること
→drop outされた時が一番、振り返りとして重要です
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