不明熱 実践編です
不明熱+αがあれば、いくらかアプローチしやすいです
例えば、頭痛があれば、GCAかなとか
皮疹があって、関節痛やリンパ節腫脹があれば、リケッチアかなとか
+αのことを、potentially diagnostic clue(PDCs)と言います
しかし、PDCsは気をつけなければなりません
そこに飛びつくとミスリーディングされる可能性も秘めているからです
PDCsのうち、80%はミスリーディングとなり、
最終診断に寄与したのは、20%だったという報告もあります
問診や診察は重要なのは、いうまでもありませんが、
一つの所見に飛びつくのは考え物と、戒めに覚えておきましょう
PDCsが何もない不明熱が一番大変です
自分一人では診断がつかなかった場合、
当たり前ですが、
第一のステップは、病院の中で一番、診断力の高い先生にコンサルトすることです
自分だけがみて、「不明熱」といっても、
あくまで、かっこつきです
この段階では、「研修医〇年目の先生にとっての、原因不明熱」です
みんなが診察して、原因がわからないとなって、
はじめて本物の不明熱かな?となります
何が言いたいかというと、
見る人によっては、
不明熱ではないかもしれない
ということです
不明熱ではなく、IEだった
椎間板炎だった
小血管炎だった
診断が上手な人が診察しただけで、
不明熱がただの感染症や血管炎に、変わってしまうことはよくあります
不明熱の病歴
ポイントは早い段階で、長い時間かけて、
病歴をとることです
早い段階でないといけない理由は、
だんだん記憶があいまいになってきてしまうことと
明日、意識障害になってしまうかもしれないからです
そして、ROSを細かくとります
ROSは一度とって、満足してはいけません
毎日、毎日、取り続けます
血管炎の進行にともない、
最初なかった顎跛行がみられるようになってきた
ということもあります
あとは、感染症の場合、必ず病原体に暴露しているはずなので、
詳細な暴露歴を聴取します
不明熱の診察
○○眼鏡をかけたつもりで診察します
つまり、この人は絶対、IEだ!
と自分に暗示をかけて、
絶対、塞栓徴候があるはず!、心雑音があるはず!
という熱い気持ちをもって、診察します
その眼鏡を、いくつかかけ直します
ツツガムシ眼鏡や小血管炎眼鏡、GCA眼鏡といった具合で、
疾患ごとのフィジカルを狙ってとっていきます
ROSもそうでしたが、診察も毎日します
毎日診察してはじめて、「昨日なかった○○があった」
という発見ができます
本物の不明熱
誰が診察や問診しても原因不明ということであれば、
どんどん検査が追加されていきます
最初は非侵襲的な検査から始まり、
徐々に侵襲度が上がっていきます
造影CTくらいで原因がわからないと、
主治医の気持ちとしては、焦りがでてきます
血培生えてくれないかな
と祈り出します
血液検査、各種培養検査、画像検査で
原因がわからない
となってからが、本番です
その後は、疑う疾患によって、検査が変わってきます
侵襲度があがるため、
優先順位をつけないといけません
不明熱診療で大事なのは、
ゴールをどこに設定しておくか
軸足をどこに置くか
ということです
鑑別を広くあげて、やみくもに検査を進めていっても、
戦略とはいえません
不明熱と戦うには、戦略的に検査を立てていきます
その中で、高齢者の場合、GCAが必ず鑑別に出てきます
失明というアウトカムがあるため、
どこでステロイド治療に踏み切るか
ということを常に、考えなくてはなりません
逆に言えば、どこまで検査したら、
ステロイド入れていいか
ということでもあります
GCAを疑ったら、ステロイドいれてもよいとはされていますが、
さすがに何の症状もないただの発熱だけの場合は、
すぐには入れにくいです
最後に、
不明熱診療の大事な武器は
PETではありません
もちろん、PETもいくらか有効ではありますが、
それよりも、
「経過観察」
という武器をどれだけ、研ぎ澄ませるか
ということが大事です
不明熱の中には、自然に軽快してくるものもあります
盲目的に型にはめて、検査のベルトコンベアを回すだけでは、
不明熱診療のスキルは上がりません
どこまで経過観察して、
どこから治療するか
ということを常に考えておくことが必要で、
一例一例、学ぶことが多いのが、
不明熱です
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