2019年3月5日火曜日

食餌性イレウス

腹部手術歴のない、元気が高齢男性が、

小腸閉塞で入院となりました

かなりの痛がり方で、

腹膜刺激徴候もあります

腸蠕動音は亢進しています

CTでは腹水もあります

造影CTでは虚血はなさそうです

内・外ヘルニアや腫瘍もなさそうです

アニサキスを疑うような小腸壁肥厚や腸重責所見もありません

いったい、なぜ小腸の腸閉塞になっているのでしょうか?

こういう原因が不明な小腸閉塞の場合に、

食餌性を疑います


食餌性イレウスはイレウスの中でもかなり稀な原因とされています

しかし、腹部手術歴がなくて、腸閉塞になっている症例では、

一度は食餌の関与を疑った方がよいでしょう


特徴としては、普通の癒着性の腸閉塞に比べて、

急激に発症しやすいことがあげられます

食べ物が狭い部分に、

スポッ

と、はまり込んだ瞬間から、

急激に腸管が拡張し、蠕動し始めるため、

発症が急いわれています


食餌性の場合、腹水も出やすく、

特に餅の場合は、腹水や腹膜刺激徴候がでやすいとされています

回腸末端から100cm以内につまりやすく、

回腸は空腸に比べて、

口径がせまかったり、回盲弁があったり、

動きが弱かったりするためと推測されています




食餌性の腸閉塞を診断するためには、

食餌のリスク × 人のリスク

を知っておくことが重要です


腸を閉塞させやすい食べ物は、ここ数十年でどんどん変化しています

以前は柿が、だんとつでしたが、

最近はが多くなっています

海藻・昆布やキノコ類、種も多い原因とされています


どういう人で多いかというと、

腸管にもともと器質的な閉塞起点がある人

丸のみしたり、十分に咀嚼しない人

歯がなくて、噛もうにも噛めない人

精神疾患や認知症で変なものを食べてしまう人

ひたすら柿を食べたり、キノコや海藻ばかり、好んで食べる習慣のある人


こういった病歴は、本人は語ってくれません

原因不明の腸閉塞をみたら、

ここ数日食べたものと、人の食習慣を聴取しましょう


CTでやたらと高濃度な物体をみつけたら、

餅を疑いましょう

種の場合は楕円形で、小さいのが特徴です

なので、食べ物の種で腸閉塞が起きてしまうような人は

必ず器質的な腸の閉塞起点がないかを疑うことが重要です

もしかしたら、閉塞している部分に腫瘍が隠れているかもしれません


海藻や昆布の場合、

bubly mass and impactionが30-50%ほどみられるとされています

しかし、これで決め打ちは難しい印象です


やっぱり、CTをみて病歴に戻るのがよいと思います

まとめ

原因不明の腸閉塞をみたら、食べ物の病歴に戻る

CTでよくわからない物体をみたら、食べ物の病歴に戻る







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