2019年11月9日土曜日

急性副鼻腔炎

30代 男性 

風邪をひいた
咳や咽頭痛は改善したが、鼻水が黄色くなってきて、鼻が詰まっている

なんとなく、頬や顔が重い感じがする
仕事もはかどらず、ぼーっとする感じ


はい、自分です

風邪をひくと、自分の場合、
1/3は咳が1か月くらい止まりません
1/3は副鼻腔炎になります
1/3はそのまま治ります

これが自分の風邪が治る経過のパターンです

人それぞれ、風邪の治り方には傾向があります


今回は副鼻腔炎~鼻が詰まってます!~です

例のごとく、感染症診療の原則に従って、考えてみます


(1)背景
免疫状態で気を付けるのは、糖尿病や好中球減少症の人(化学療法中)です

ムコールは致死的ですが、非常に診断が難しいので、
常に頭の片隅に置いておきます


副鼻腔炎は外来の病気と思いがちですが、院内でも発生します

特に胃管が入っている人やワレンベルグ症候群の人は、副鼻腔炎必発です


尿カテを入れている人のUTIと同様に、胃管を入れている人の副鼻腔炎には常に注意が必要です

(2)部位
当たり前ですが、副鼻腔です

副鼻腔は鼻腔と交通しています

ウイルス性の上気道炎が起こると、副鼻腔の自然口の周囲の粘膜が腫れてしまい、
副鼻腔と鼻腔の交通が遮断されてしまいます

すると、副鼻腔内で炎症性の産物が貯留し、
細菌や免疫細胞のクリアランスが低下し、副鼻腔炎をおこします

その結果、鼻閉、後鼻漏、咳嗽、顔面痛、頭痛が出現してきます


何度もなっていますが、結構つらいです

痛みというよりは、なんとなく、顔や頭がぼーっとするような感じになります


しかも、後述しますが、数日待たないと抗菌薬の適応にならないというのも、
患者目線になると、とてもつらいです


副鼻腔と簡単に言いましたが、副鼻腔はたくさんあります

上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞が左右にあり、8つの副鼻腔が鼻腔を囲んでいます
そして、眼窩とも1mm以下の薄い骨で近接しており、頭蓋内とも近接しています


なので、たかが副鼻腔炎と侮ってはいけません

副鼻腔炎が致死的な病態に進んでしまうことがあります


副鼻腔炎をみたら、それで満足してはいけません

・周囲への波及がないかどうか:硬膜下膿瘍、髄膜炎、脳膿瘍

・血流にのって感染が広がっていないかどうか:レミエール症候群/septic emboli、感染性海面静脈洞血栓症

・毒素病態の合併がないかどうか:TSS、TSLS


上記を頭の片隅に置いておくことが大事です


(3)微生物
ほぼウイルスです

ですが、二峰性の場合や症状が持続していたり、症状が重い場合は、細菌性の可能性があります


副鼻腔炎の面白いところは、細菌性=抗菌薬治療にならないところです

G染色で菌が見えていても、抗菌薬はいらないのです


あくまで症状basedで治療します


(4)治療
ウイルス性や細菌性の副鼻腔炎は多くの場合、自然治癒しますので抗菌薬は不要です

極論、感染症は適切にドレナージすれば、自分の免疫で治す力があるので、
細菌感染=抗菌薬投与ではありません


副鼻腔炎の場合、まずは対処療法がメインでOKです

よく、鼻水をどうにかしてほしいという訴えがありますが、
鼻水をとめるのは実はとても難しいです

抗ヒスタミン剤は第一世代しか効果ありませんが、
それは抗コリン作用を利用しているからであり、
つまり、副作用(眠気、尿閉、ふらつき)が強くでる可能性があります

もちろん、高齢者には使いにくいです

そのため、小青竜湯が使われることが多いです



感染症の治療で一番大事なのは、ドレナージですので、
副鼻腔炎の場合、鼻をかんで膿を出すことが大事ですが、
強くかみすぎるとそれもよくありません


抗菌薬は症状が長引いている時か、症状が強い時に使います

ただ、患者目線になると、症状が治るのをまつのが、結構つらいんですよね・・・
そして、我慢比べに負けるように、サワシリンに手を出してしまいます

そして、自分の場合、サワシリンでは効かないという残念な感じになり、オーグメンチン飲まないと治りません


(5)適切な経過観察

抗菌薬投与していても改善がない場合、
ドレナージが上手くいっていないということになりますので、
耳鼻科にコンサルトして穿刺排膿を検討してもらいましょう



まとめ
・背景:免疫抑制状態(化学療法中)やDM患者ではムコールに注意
    院内(胃管使用、ワレンベルグ症候群)でも発生する
・部位:副鼻腔は左右4つずつあり、眼窩や頭蓋内と近接している
・微生物:ほとんどウイルス
・治療:抗菌薬は症状basedで使う
・適切な経過観察:抗菌薬で改善なければ、ドレナージを

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