前半のまとめ
糖尿病で透析を行なっている62歳男性が、意識障害・呼吸不全で救急搬送となった
来院後、肺炎、心筋梗塞の診断がついたが、
暴露歴からコロナ対応しながらICU入室となった
挿管・人工呼吸器管理・CHDFにて全身管理し、
MEPN・VCMの抗生剤投与が行われていたが、呼吸状態の改善を認めず、
高熱がday4で出現した
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ディスカッション②
熱源は何でしょうか?どのような対応をしますか?
T「さて、院内での発熱に準じて考えてみましょう。
考え方は3つありましたね。何でしたっけ?」
TT「まず、入院の原因となった現病に伴うものを考えます。
つまり今回では肺炎の診断ですが、
肺炎の原因微生物のカバーができていないことが一番の原因だと思います。
次にその病気に対して、介入したものを考えます。
今回では、デバイスが入っているのでデバイスの感染や薬剤熱、
あとは褥瘡感染なども鑑別になります。
最後にそれとは全く別の原因について考慮しますが、
今回は可能性は低いと思います。」
T「はい、その通りですね、ありがとうございます。
やはり今回は肺炎が画像上も悪くなっており、
呼吸状態が改善していないことからも、現病の悪化が疑われます。
MEPN,VCMでカバーできていない感染症となると何が考えられますか?」
N「うーん、そうですね。。。真菌、PCPとかですかね。
βDグルカンは一応出しておきたいです。
あとは、CVが入っているので、カンジダとか・・・」
T「ありがとうございます。
確かに、PCPは大事な鑑別ですね。
カンジダも重要な鑑別です。
あとはクリプトコッカスやアスペルギルス、ムコールも鑑別ですね。
他にどうですか?
この人の背景を思い出してみてください。」
S「透析患者さんでしたので、結核も考えないといけないと思います。」
T「そうですね、結核は重要な鑑別です。
透析で除水しているのにも関わらず、
胸水が増悪しており、結核は考えないといけません。
痰の抗酸菌染色では検出されませんでしたが、それだけで除外はできません。
胸水を穿刺し、性状を確認し、ADAをみたいところですね。
あとはいかがでしょうか?」
T T「膿胸になっているかもしれませんので、やっぱり胸水はみておきたいと思います。」
T「はい、ありがとうございます。
この時点では他の真菌や結核をすぐに治療するのは、やや憚られる状況ですね。
やっぱり治療する証拠が欲しいところです。
あとは、他のチームの方が最初に言っていた病気ですね。
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経過
βラクタム系が効果がない肺炎であり、レジオネラ感染が疑われた
そのため、痰のレジオネラのlampを提出し、ニューキノロンを加えて治療を行なった
尿は透析患者さんであり、全く出なかった
キノロン開始後、翌日には解熱が得られ、呼吸器の設定も下げることができた
後日、レジオネラのLamp法が陽性という結果で帰ってきた
診断はレジオネラ肺炎だった
意識状態も改善し、無事退院することができた
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学び
本症例はコロナ禍での重症肺炎という症例でした
コロナ禍でなければ、
旅館→温泉という思考過程になり、レジオネラをすぐに想起できたはずでした
ですが、コロナ禍では、旅館→コロナという思考過程になってしまい、
レジオネラ肺炎を想起するのが遅かったという反省症例です
理由を挙げると
・不特定多数の人と接触している暴露歴から、コロナ対応したまではよかったが、感染対策(挿管・ゾーニング)で頭がいっぱいになってしまった
・合併している心筋梗塞や心不全、意識障害など重症な状態であり、バイタルの立て直しや処置(CV・挿管)で、頭がいっぱいになってしまった
・髄膜炎対応をして、MEPN・VCMを入れて、思考が止まっていた
・尿中抗原がすぐに出せなかったので、レジオネラのLampを出すハードルが高かった
・深夜だったので、疲れていた
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本当にコロナって嫌な感染症ですね
自分の臨床力が試されているという感じです
頭がコロナでいっぱいになったとしても、感染症診療の大事なところは忘れずにいたいものです
今回のセミナーで、改めて感染症のロジックの重要性を再認識させていただきました
発表者の方々、大変勉強になる症例ありがとうございました
一緒にディスカッションしてくれた先生方、
準備に関わってくれた先生方、司会進行をいただいた先生方、
レクチャーしていただきました大曲先生、忽那先生、ありがとうございました
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